アットウィキロゴ

ブリタニアの利益代表1

ブリタニアの利益代表 1話



928 :名無しの俺:2012/03/21(水) 03:14:37 ID:58ote/mI
夜間奇襲。

ちょっと裏戦史モノに見せかけた系のアレ。
とりあえずパイロット版としてプロローグだけ。


929 :名無しの俺:2012/03/21(水) 03:16:05 ID:58ote/mI
突然だが。
軍において上官というものはとかく批判の矢面に立たされるものだ。
特に将やら参謀やらによる組織、いわゆる『上層部』というものはとかくダーティな印象が強い。

戦場に出ず、泥を被らず、高みから人の生き死にさえ好きにする。
狡知にばかり長け、失敗をなすりつけ、手柄を横取りし、保身ばかりを考える……
おおつかみな印象はこんなものだろうか。

戦に慣れた将兵などの中には、上層部などいないほうが戦争には勝ちやすいなどと大言するものさえいる。
いわく、足を引っ張られてばかり、横槍を入れられてばかり、と。
現場の臭いをかがず、戦を識るが戦いは知らぬ者たちのボードゲームに付き合う道理はないのだ、と。

まあ、実際に血を流す者たちの言葉は、それだけで一定の重みがあるものだ、が果たしてそれだけが真実か?
否、それはあくまで人の数だけ存在する現実といういちエピソードに過ぎない。真実『味』が強いというだけの、だ。

例えば、かの戦争。あの異形どもとの不毛な戦争において、戦場に立ったものたちは何を思い何を成したのか。
そして、高みに立つ者たちは何を理想し、何を企んだのか。
戦争が終わった今、私は、わたしの視点から見た戦争を語ろう。
それもまた真実ではないかも知れない、だが一つの現実ではある。

要約すればそれは、年端もない少女たちの戦いの物語であり、
国を軍を動かすものたちの蠢動のその一端を明かす暴露話であり、
理想という火打石を音高く叩き合わせて野望の火種を燃え上がらせる、その炎と煙の色彩であり、
表舞台に立たない者たちのこぼれ話であり、

……そして、私の拙く、舌に乗せるも苦くほの甘い恋の話でもある。

そう、あれは1944年。
第二次ネウロイ戦争とよばれたあの戦争において、もっとも厳しいいち戦局を迎えていた欧州。
ブリタニアそしてガリアが舞台となった、あの第501統合戦闘航空団の――。


930 :名無しの俺:2012/03/21(水) 03:19:23 ID:58ote/mI
広々とした会議棟に、4人。
座席につき報告を受け取っているのはブリタニア首相チャーチルと、同国の空軍大将トレヴァー・マロニー。
それに対峙するは、第501統合戦闘航空団司令、ミーナ・ヴィルケ中佐。

チャーチル「無事、扶桑からの補給が届いたようだな」
ミーナ「坂本少佐以下、扶桑皇国より宮藤芳佳が着任しました。通常通り軍曹待遇としております」
チャーチル「戦力の強化はありがたいことだ」

マロニー「だが最近、ネウロイの動きに変化があるようだが」

マロニー大将の露骨な話題の切り替え方に動じぬヴィルケ中佐だが、ぴくりと動いた眉を私は見逃さない。

ミーナ「確かに、週一回のペースが狭まりつつあります」
マロニー「このままでいくわけには、いかんだろうな」
ミーナ「現場を無視した空論を押し付けられるのは、お断りしたはずですが」

マロニー大将の、遠まわしな主張をぴしゃりとはねのけるヴィルケ。
檀の下と上から、ヴィルケとマロニー大将が睨み合う。
収集がつかなくなりそうな空気に、「結果が出せれば良いのだよ」とすかさずチャーチル首相がやんわりと言い添える。
この場で最高級の指揮権を持つ男の言葉に、両者は爆発しそうな敵愾心をなんとか抑えたようだ。

この方の状況の把握力と取りまとめ能力の高さには関心させられる。

―そうしてひと通り報告事項も終わり、最後に
ミーナ「ブリタニアの、いえ世界の空は、私達ウィッチーズが守って見せます」
そう、ヴィルケは報告の締めくくりとして胸を張り鋭く言い放ち、敬礼して退出した。

私達3人のいる会議室から、退出した。


931 :名無しの俺:2012/03/21(水) 03:22:29 ID:58ote/mI
マロニー「何が『世界の空はウィッチが守る』だ、小生意気な魔女共が!」
ヴィルケ中佐が去った後、いかにも抑え込んでいたものを吐き出すような調子でマロニー大将が呻いた。

国家の最高権力者の目前でこのような乱暴な言葉を吐くなど、下手をすれば彼の評価を落としそうなものだ。
だが、仮にも大将に上り詰めた男が、ただ感情のままに口を開くはずがない。
チャーチルに敢えて『怒って思わず暴言をこぼした大将』を演じてみせる事で、自分の意志を強調するつもりか。

マロニー「まるで自分たちだけで戦っているようなことを、よくも言う」
チャーチル「まあ、士気が高いのは良いことだ」

チャーチルはマロニーをたしなめ、そして私に――部屋の隅でこの会議の推移を見守っていた私に――話を振った。

チャーチル「…彼女たちのそばにいる君の目からは現状の彼女たちの働きをどう思う?
        そう、501JFW航空団幕僚長にして、我がブリタニアの利益代表たる君からの意見を」
この国の最高権力者、その底知れぬ深さの瞳にしらず喉がわななくのを抑え、言葉を紡ぐ。

私「問題も見受けられはしますが、現状彼女らはよくやっていると考えます。
  ウィッチ隊員が定員に満たない状況にも関わらず、敵の本土侵攻をよく防いでおります」

これは事実だ、だが指摘しなければならない事もある。

私「ですが、それは我がブリタニア軍すべてにも言えることであります。
  世界各国からの精鋭として集められた統合戦闘航空団には、より大きな、具体的な戦果を期待して然るべきですし
  また、潜在的には今の501でもそれに応える能力はあるものと考えます」

チャーチルはうん、とうなづき、先ほどと同じ言葉をもう一度、言った。

「なんにせよ結果が出せれば、それでよいのだ」

――この言葉が、誰に向けられたものだったのか、この当時の私は誤解をしていた。


932 :名無しの俺:2012/03/21(水) 03:25:09 ID:58ote/mI
――あれからすでに3月ほども経った、8月のある日。

夜の空を飛ぶJu52輸送機、そのキャビンに4名、向かい合わせになる形で座っている。

ミーナ「不機嫌さが顔に出てるわよ、坂本少佐」
坂本「顔にも出るさ。わざわざ呼び出され何かと思えば予算の削減だなどと聞かされればな」

坂本少佐が顔いっぱいに不満を表しているのを見もせずに、手元の書類に目線を落としつつヴィルケ中佐が嗜める。
私の正面に座る宮藤軍曹はふたりの様子を伺うように小さく俯き、上目がちに視線を泳がしている。

ミーナ「彼らも焦っているのよ、いつも私達だけに戦果を上げられてはね」
坂本「連中が見ているのは自分の足元だけだ」
ミーナ「戦争屋なんてあんなものよ。
     もしネウロイが現れていなければ、あの人達今頃は人間どうしで戦い合って――」

俺「無責任な軽口はそこまでに願いたい」

ぴしゃりと言い放った私の一言に、坂本少佐はむむと眉をひそめ、ヴィルケ中佐は目線だけをこちらに向けた。

ミーナ「何か御用、俺少佐」
俺「自らを棚に上げた中傷は無用に願いたいと言った、中佐」

一拍整え、続ける。

俺「ブリタニア連邦の利益代表として、我がブリタニアの将官を悪しざまに揶揄されては、看過することはできない」
ミーナ「連合軍西部方面統合司令部、じゃないのかしら」
俺「君と言葉遊びをしたいのではない、ヴィルケ中佐」

睨みつける、と言っても構わないほどに視線に力を込めて、501司令たる彼女を見据える。


933 :名無しの俺:2012/03/21(水) 03:28:27 ID:58ote/mI
そう、私はブリタニアに拠を構える、この第501統合戦闘航空団の航空団幕僚長を任じられたブリタニア軍少佐、
であると同時に、第501統合戦闘航空団に常駐しブリタニア連邦を代表して意志を表明する、国家利益代表を兼ねている。

だが、このあたりの政治的な関わりについては、その折に改めて触れよう。
『今の俺』いや私は、ヴィルケ中佐へ忠告すべき立場であり、その職務を遂行中なのだった。

私「現在の西部方面総司令部は、その構成員のほとんどがブリタニア連邦の軍人、文官だ。
  司令部への批判は、そのまま我がブリタニアへの批判と重なるものと考えている」
ミーナ「他の国の人たちが聞いたら怒りそうなセリフね。
     ブリタニア連邦は西部方面総司令部を私物化しているのかしら」

む。

私「…だいたい、司令部を戦争屋と揶揄するのは勝手だと言いたげだが、なら貴官らはどうなのか。
  士官として軍服に袖を通したる君らも、『所詮は戦争屋』風情という事になるのではないか」

ヴィルケが眉根を寄せた。

私「それとも貴官には軍人としての自覚がないと――」
坂本「いや、すまない、そこまでにしてくれ」

坂本少佐が割って入る。

坂本「確かに、私達自身も志願して士官となった身だからな、他人を戦争屋などと言えた義理ではない、か。
    まあ、始めに言い出した私が悪かったのだから、ここは鉾を納めてはくれないか?」

私は、しばし考え、無言でうなづく。
知らず浮かせていた腰を再び座席に下ろすと、坂本少佐がふ、とため息を漏らす音を聞いた。

…私は、ヴィルケとは別の意味でこの坂本少佐という扶桑軍人が苦手だ、この人はよくわからない。


934 :名無しの俺:2012/03/21(水) 03:30:33 ID:58ote/mI
疲れて視線を正面に落とすと、同じく視線を下げていた宮藤軍曹と目が合った。

宮藤「あ、すいません…」
私「なぜ謝る」
宮藤「えと、その…」

よくわからないまま謝ったらしい。

宮藤「えーと、私は軍人の自覚がどうとか、よくわからなくて…」
私「軍曹は、坂本少佐にスカウトされた元一般人だろう。
  軍人としての自覚がどうだの、君が気にすることではない」
宮藤「は、はあ」

自ら志願し、士官教育を経て成った士官・将校と、元一般人だろうがなんだろうがウィッチというだけで
自動的にそう成る軍曹とでは、求められる自覚は全く異なるというのが私の思想だ。

極端な話、兵卒なぞ能なしで構わない。

私はもうこの3人に干渉する面倒は放棄する、とばかりに目を閉じた。

気圧変化によりわんわんとから鳴る耳に、小さく歌声が聞こえた気がした。


――
この後、夜間哨戒のリトヴャク中尉が合流、そしてネウロイを補足、交戦にいたる経緯については
戦史において有名なエピソードになるので、この場で改めてその情景を再現する必要はないだろう。

再び私が話し始めるべきは、夜間専従班編成の前後に何があったのか、その経過および顛末になる。

では、その時まで。


935 :名無しの俺:2012/03/21(水) 06:37:29 ID:27rNjicI


936 :名無しの俺:2012/03/21(水) 13:39:05 ID:q1K.m8aM
乙乙


937 :名無しの俺:2012/03/21(水) 14:21:48 ID:LYWKJt3k
乙!
これは俺のツボにどストライクな予感

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年04月24日 02:52
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。