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魔女と鋼鉄の巨人2.5

6・俺「ストライクウィッチーズ?」>>888-920



2.5話『フィレンツェ要塞防衛戦』





「あの日のことは良く覚えてる。あれは良く晴れた暑い夏の日だった」
 ――ある兵士の日記より




~フィレンツェ要塞 監視所~

オストマルクにネウロイ出現した頃、

ローマの防衛の為に急造されたこの要塞は
現在ヴェネチアに巣を構えたネウロイとの戦いの最前線となっていた。

急造要塞とはいえ何度も補強を繰り返して防御力をあげているため
今までに何度もネウロイの攻勢を跳ね返している。

「よ~男。昼飯の時間だぞ。」

ひとりの兵士が双眼鏡を覗き込んでいる兵士に声をかける。

「昼飯って、あと30分も後だろ兄さん。」

男は呆れ顔で彼の兄をたしなめる。

「い~んだよ。此処んとこ赤目どもは全然攻めてこねぇし、
 俺たちが飯食ってる間ぐらい、連中も飯でも食ってるさ。」

男の注意にこたえた様子もない兄。

ちなみ赤目とはネウロイのことで、
彼らのコアが赤く光ってまるで目のように見えることからそう言われている。

「ネウロイの飯ってなにさ。」

「人間とか?・・・なんてな。」

そういって笑いあうふたり。

「あはは!冗談じゃないよそれ。まあ、とにかくもう少しなんだ我慢しなよ。」

「しかたねぇ。弟のいうこともたまには聞いてやらんとな。
 ・・・おい、あれはなんだ?」

指をさす兄。男はその方向に双眼鏡を向けた。

「ネウロイ・・・!!」

そこには土煙を巻き上げ、多数のネウロイが迫っていた。
兄がサイレンのスイッチを入れ無線機に叫ぶ

「敵襲!ネウロイの大部隊が接近しつつあり、指示を請う!繰り返す……」





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 ※=要塞線
 ▼=ネウロイ機甲戦力






~要塞 司令部~


「なぜこんなに近くにくるまで気付かなかった!」

要塞司令が参謀長に怒鳴りつける。

「ここ最近まったく攻撃がなかったことで兵士の士気が低下し、
 警戒を怠っていたのが原因の様です。」

参謀長は冷静に答える。

「まったくたるんどる!この戦闘が終わったら鍛えなおさなければな。」

「ぜひそうなさってください。
 つきましては閣下、その為にも今は戦闘指揮に集中なさるべきでしょう。」

「そうだな。参謀長、現状を報告しろ。」

「はい閣下。現在敵は要塞砲射程内に侵入。目下これを迎撃中です。」

別の参謀が発言する。

「敵の戦力は中型ネウロイを中心とした機甲部隊で、
 これまでの攻勢と同じくひたすら突撃をかけてきています。
 また、これの近接支援にフライングゴブレットが多数確認されています。」

参謀の報告に頷くと将軍は自身の意見をのべる。

「では簡単だ。今まで通り敵を引き込んで包囲し撃滅する。
 数が多いとはいえこの要塞が有る限り問題はない。」

自信たっぷりに言う将軍。

「はい閣下。基本方針はそれでよいかと。
 くわえて後方の部隊に援軍を要請するのがよいでしょう。」

「いいや、それは駄目だ。」

将軍は参謀長の意見を却下する。

「なぜでありますか?」

参謀が尋ねる。

「この程度の攻勢ならば手持ちの戦力で十分だ。」

「ですが、援軍があれば勝利はより確実なものに・・・」

「そう、それだ。確かに勝てるだろう。
 だがそうなれば手柄は援護に来たそいつらのものになる。」

いま援軍を要請すればおそらくあのリベリオンやカールスラントなど外国の部隊が来るだろう。

そうして勝てばただでさえ連合国内で発言力の低いロマーニャは
自国内の戦争にも関わらず主導権を失う恐れがある。

祖国のためにも、また自身の昇進のためにもそれは避けるべきだと将軍は判断する。

「とにかく援軍は要請しない。
 こちらの機甲部隊を敵の後背に展開させて退路を断たせる。
 敵の航空戦力は要塞航空隊と高射砲部隊に対処させろ。」

「了解しました。」


参謀長は手近にいた通信兵のところまで行き指示を飛ばす。

「第5陸戦魔女中隊と第1戦車隊に要塞側面より出撃して敵の背後を突かせろ。
 第2航空歩兵小隊及び第1高射砲隊は敵航空勢力に対応せよ。それと・・・」

参謀長は声を落として通信兵に耳打ちする。

「それと、後方の部隊に援軍を要請しろ。」

「宜しいので?」

通信兵が尋ねる。

「構わん。私が責任を取る。」

「了解。」

通信兵が各所に連絡するのを見ながら参謀長は思案する。

(たしかに今のままでもこれまで通りなら勝てる。
 だが赤目どもとて馬鹿ではない。自分が勝てないことくらい分かっている筈だ。
 これは、なにかある。)

漠然とした不安が参謀長の胸にはあった。





~要塞 第三トーチカ~

「次弾装填。弾種・徹甲。目標敵中型ネウロイ!」

カールスラントから給与された88mm高射砲が敵中型のコアを砕く。

「次弾装填。弾種・榴弾、信管VT。 目標、敵戦列中央!」

兵士たちは日頃の訓練通りに弾を運び、装填し、撃つ。
そのたびにネウロイは確実に数を減らしていく。

「よし!いいぞもう一発同じところに榴弾だ。さっさと終わらせて飲みにいくぞ!」

「隊長の奢りですね。ゴチになります!」

「バァカ、割り勘だ。よし、いまだ撃て!」

88mmがみたび火を吹いた。

再び咲いた榴弾の花に巻かれるネウロイ。

(おかしい。敵が脆すぎる。こんな程度の奴等だったか?)

隊長が不審に思ったその時だった。

「隊長!敵が急降下してきます!!」

部下が悲鳴にも似た声をあげる。

隊長が小窓から覗くと円盤型のネウロイが此方に向かってくるのが見えた。

(何だあれは?)

それが隊長の最後だった。

ネウロイが急降下の勢いのままトーチカに体当たりをかけたのだ。

隊長の意識は瓦礫に飲み込まれ二度とかえってはこなかった。





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            ※×※  ▼▼  ※××※
               ×※※※×※


※=要塞線      ▼=ネウロイ機甲戦力
×=撃破された部隊  ●=大型ネウロイ







~要塞 司令部~

鳴り響く轟音とともに司令部に次々と悲報が届く。

「第3トーチカ壊滅、生存者なし!」

「第2、第4、第8高射砲小隊、通信途絶!」

「第6歩兵中隊より入電。要塞内に敵侵入。戦闘状態にあり、至急来援を請う!」

「何が起きた!」

将軍が怒鳴る。参謀が答えた。

「敵の自爆兵器のようです。要塞の各所に着弾し、
 こちらの戦線を寸断しています。
 さらに敵が開けた穴から小型のネウロイが入り込んだ模様。
 現在要塞内部で白兵戦になっているとのこと。」

通信兵の近くにいた参謀長が付け加える。

「さらに大型ネウロイが要塞砲射程ギリギリに出現。長距離攻撃を仕掛けてきています。」

将軍が手を顔の前で組んで唸る。

「・・・第5陸戦魔女中隊と第1戦車隊はどうなった?」

参謀長が答える。

「先程から両隊ともに通信が途絶。
 敵に挟撃されおそらくは……全滅かと。」

「そうか。……後方の部隊に援軍を要請しろ。残された戦力を掌握して時間を稼ぐ。」

「僭越ながら、援軍要請はすでにしてあります。」

将軍は参謀長を責める事はせずただ感謝した。

「分かった。俺はいい部下をもったな。全軍に通達せよ。援軍が来るまで耐え抜け!」




~最前線 迂回部隊集結予定地点~


大型ネウロイが蠢き、瘴気がたちこめるなか、
兵士がひとり、重症を負った足を引きずりながら歩く。彼の名は男

「ゲホッ、ゴホッくそ!なんでこんなことに!」

ネウロイを後背から強襲するはずだった彼らは突如現れた敵の増援に鉢合わせた。

奇襲をかけられた部隊はあっという間に蹴散らされた。

その時に彼は乗っていたトラックから吹き飛ばされ、足に怪我を負ったのだった。

「兄さん、兄さんの戦車はどこに?」

兄の姿を求めてさまよう男、その目に一台の戦車が写る。

その戦車は奇跡的にキャタピラをやられて動けなくなっているだけだった。

ハッチは開いていない。中の人間はまだ脱出していないようだ。

「兄さん!よかった、生きてた!」

急いで戦車に駆け寄ろうとする男、その時だった。

グジャァアアアア!!


彼の兄を乗せたままその戦車は大型ネウロイの脚部に踏み潰された。

「ああ!うそだ。嘘だあああああああああぁぁぁぁ!!!」

泣き叫ぶ男。彼に気づいたのかネウロイがビームを放つ。

「危ない!」

俺の傍にひとりの少女が駆け寄ってきてシールドで男を守る。

陸戦魔女の生き残りのようだ。

「なにやってるの!急いで逃げるのよ!」

男の腕を引っ張りながら少女が言う。だが男はその場を動こうとしない。

「逃げる?嫌だ!あいつを殺す!ころしてやるーーーー!!」

「だめよ!あなたが逆に殺されるわ!」

怒り狂った男を必死に彼女が止めるが、

「あいつは俺の目の前で兄さんを殺した!兄さんが乗ってた戦車ごと踏み潰したんだ!
 許さない!あいつだけは、あいつだけは絶対に殺してやる!!」

そんなふたりのやりとりを意にも介さずネウロイは第二射をチャージした。




~要塞内部 塹壕~

要塞内部に入り込んだネウロイは、
内部にいた兵士をそのビームで焼き殺し、外殻を変形させた刃で切り殺して制圧していく。

兵士達は塹壕に立て篭もって手持ちの小火器で応戦する。

「撃て撃て!撃ちまくれ!赤目どもを近づけるな!!」

伍長の階級称をつけたスキンヘッドの男が檄を飛ばす。

「伍長!弾がなくなったらどうするんですか!?」

金髪のひょろながの男が伍長に尋ねる。

「銃剣で突き殺せ、ジャック!」 

「折れたときは!?」

「銃床で殴り殺せ!」

「それでも駄目なら!?」

「安心しろ、そのときゃ仲良くあの世行きだ。おいダニー!」

伍長は塹壕内でうずくまっている黒髪の小太りに声をかけた。

「いつまで寝てんだ、さっさと撃て!てめぇ俺を殺す気か!?」

伍長に怒鳴られてもなおうずくまっているダニー。

「いやだ!しんじまう!こんなんきいてねぇよ、おれは病気なんだ!!」

泣き叫ぶダニーを伍長は叱り付ける。

「しっかりしろダニー!お前の病名は『臆病』だ!
 治療法は簡単だぞ、一匹でも多くのネウロイを殺せ!!」

「いやだぁ!おれにはできねぇよぉ、たすけてくれかあちゃん!!」

キレた伍長がダニーの襟首をつかみあげてたたせる。

「いいか!俺達の墓にかかれる碑文はもう決まってる。

『すごくかっこいい兵隊がわるいネウロイをやっつけてすごくかっこよくここに眠る』

だが、おまえのせいでそれがかわっちまう!

『ヘタレの根性無し、糞ガキの様に泣きながら虫の様にくたばる』

冗談じゃねぇぞ、無理やりにでもお前にゃカッチョよく死んでもらう。

女にモテたいとかいって好き好んで兵隊になったんだろ!

だったら好き好んで戦って死ねや!!」

その言葉にダニーがようやく銃をもって撃ち始める。涙を滝のように流し、鼻水たらしていた。

「ファック!ファァァアアック!!」

その姿に満足する伍長。だが彼も気づいていた。

「にしても本格的にヤベェぞ。援軍はまだか?」




~要塞 司令部~


要塞の様々な場所で戦闘が起きる中、ここも例外ではなかった。

突入してきたやつらを何とかしたものの、
参謀をはじめとしたかなりの犠牲がでている。

将軍は肩を抑えて叫ぶ。

「参謀長!まだ生きてるか!?」

「悪運しぶとく生き残っとります将軍!」

ぼろぼろになりながらも答える参謀長

「よし、戦闘はどうなっている?」

「組織的抵抗は限界に達しつつあります。援軍がくるまで持つかどうか・・・」

その報告を聞いて将軍はやはり要塞を放棄するべきだったかと後悔する。

「(いや、それは私の命令に従って死んだ者達への冒涜だ)・・・なんとしてでも持たせろ!」

無茶なことは分かっている。それでも将軍はそう指示するしかない。

「敵の自爆兵器、突っ込んでくる!」

そこに悲痛な叫びが響く。兵士が天井に開いた穴から見えたものを確認したのだ。

全員が戦慄し、覚悟した

(ここまでか・・・・ん!?)

目をつぶってきたるべき衝撃に身を固めるが、肝心の衝撃が来ない。

将軍が目を開けて確認すると、ネウロイの特攻兵器はそのコアを撃ち抜かれ四散していた。

唖然とする司令部の面々。そこに天井からひとりの少女が舞い降りてくる。
彼らにはその姿はまるで天使のように見えた。

彼女は両足にストライカーをはいており、その国籍マークは、

「黒地の太陽に、赤い三日月のマーク。扶桑のウィッチか!?」

「はい!501の宮藤 芳佳です。みなさんを助けに来ました!!」



~前線 迂回部隊集結予定地点~


目の前の光景に男は夢を見ているのではと思った。

なにしろ突然だった。

いままさに自分と、自分を助けようとしてくれた彼女の命を
奪おうとしたネウロイが悲鳴をあげて倒れこんだのだ。轟音が響く。

「いったい、何が?」

男が呆然と呟く。

「あ、あれみて!」

少女が指差したそのさきにいたのは

「鋼鉄の、巨人……」

巨大な狙撃銃を抱えた士翼号だった。


~要塞上空~

「命中。次弾装填。」

レバーを引いて排夾し、次弾を薬室に送り込む。
直径92mmの弾を包んでいた薬莢が飛び、地に落ちる。

「命中確認。次の目標は先ほどのやつの右側。コアは先と同じところだ。」

美緒がその魔眼で敵のコアの位置を確認し、俺に伝える。

俺は頭の中でスコープのレンズを覗くイメージを描くと、士翼号のメインカメラが
ズームアップされる。教えられた敵のコアの位置を捉え、引き金を引く。

響く轟音、強烈な衝撃を受け流す士翼号。

弾は音速を遥かに超えてネウロイに突き刺さり、
コアを砕かれたネウロイが悲鳴をあげて爆散した。

「ホバリング状態でこの精度。なかなか使えるなこの銃は。
 惜しむらくは弾数が少ないことか。」

俺はそういって手に持った92mmライフルを評価する。

マガジン装填弾数は4発と少ないが、
陸戦型とはいえ大型のコアを一撃で粉砕できるのは十分魅力的な威力だし、精度も高い。

「これは量産化決定かな?」

俺がそう思案していると美緒が注意する。

「少尉。評価をつけるのは後にしろ。いまは戦闘中だ。」

俺は彼女にあやまりつつ、次の目標に狙いを定めた。





~要塞内部 塹壕~

ついに弾が底をつき、銃剣を装備して敵を待つ兵士達。

「(これは、こんどこそ死んだかな。)」

伍長が覚悟をきめ、銃をネウロイに突き刺そうとしたそのときだった。

轟音とともに目の前のネウロイが吹き飛ぶ。

あわててそちらをみると、

「ハァ~イ!『パットンガールズ』ただいま参上!!」

リベリオンの陸戦ストライカー『M4:シャーマン』を履いた少女達がいた。

その後ろにはとても大きな、ストライカーのお化けといった感じの、
カールスラント製大型陸戦ストライカー『ティーゲル』を履いた少女もいる。

彼女達はすばやく展開すると。ネウロイを駆逐しはじめた。

その光景にその場にいた全将兵の士気はどん底から一気に頂点まで沸き上がった。

兵士達は『すごいぞ~!』や『きてくれてありがとう!』とか、『俺と結婚してくれ~!!』
といった歓声を飛ばす。

兵士達は彼女たちの後を追って反撃に転じ始めた。





こうして、敵の攻勢は頓挫し、結果人類側は勝利したが、
短期間でのの修復が不可能とされたフィレンツェ要塞は放棄されることになる。

その後、再び幾度かに渡ってネウロイが攻勢を仕掛けるも、人類はこれに粘り強く対応。
敵の攻撃限界まで耐え切ったのだった。





~2週間後 ローマ市内 軍人共同墓地~


松葉杖をついた青年が墓石の前にたっている。

「兄さん、俺、生き残ったよ。生き残っちまった。」

男がしずかに語りかける。

「なんでなんだろな?
 殺しても死なないと思ってた兄さんが死んで、俺は生きてる。」

墓石は何も語らない。

「あのあと、軍を辞めようと思ったんだ。だけどできなかった。
 あのとき俺を助けてくれた娘がいたろ?彼女は軍に残るんだって。」

「なんで残るんだ?こんなことがあったのにって聞いたらさ、あの娘、
 『戦ってたくさんの人を助けたいんです。死んでしまった仲間のためにも』
 っていうんだ。」

「馬鹿だよね。そんなことしても、
 死んじゃった人たちが帰ってくるわけでもないのに。
 でも俺は、彼女のこと笑えなかった。」

ぽつぽつと語り続ける男。

「でもそんな彼女を見てたらさ。この娘はどこまでいくんだろう。
 って気になった。だから軍は辞めなかった。」

「彼女のことが気になった。彼女がどうなるか見届けるまで、
 俺はまた軍人をやってみることにする。今日はその報告に来たんだ。」

そういって彼は空を仰ぐ。

どこまでも澄み切った空をウィッチとあの巨人が横切って行くのがみえた。

彼はふたたび墓石に向き直る。

「じゃあ、さよなら兄さん。
 また今度来るときは、結果を報告するよ。またね。」

そういって男は松葉杖をつきながら、墓地をあとにした。




  ストライクウィッチーズ2~魔女と鋼鉄の巨人~

     『フィレンツェ要塞防衛戦』

         ~Fin.~

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最終更新:2011年01月07日 14:37
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