「蒼穹の絆3-1」
-蒼穹の絆3- 通常の常識あるハンターが異次元移動した場合の考察
-第一日-天国の門
冬の訪れを感じる北海道。エゾマツの金色の葉がクルクルと回転しながら舞い落ちる道を、俺は愛犬と共に
古いが信頼できる車で走っていた。北海道に入って3日目。小樽から道東へ。既にエゾ鹿の肉は家の冷蔵庫
に入る分は確保した。あとは、知人に所望された分を獲るだけ。休みの残りは後8日。道内で6日は過ごせる。
気楽なもんだ。
四駆の窓を開け、音楽を聴きながらひた走る。今日は、中標津の『からまつの湯』で無料露天風呂を
楽しんで、脇の駐車場で一泊するか。まあ、このシーズンだ。観光客の女の子は絶対居ないだろうが。
今日は移動日。北海道を楽しもう。愛犬も助手席の開いた窓から身を乗り出して、風を感じて楽しんでいる。
帯広手前で昼飯。「古母里」の定食を食う。味噌野菜炒め。ボリュームもあって美味い。北海道へ行くと
寄るのが恒例となっている。足寄で右折。一本道の国道だ。阿寒湖の先で注意するだけで弟子屈に行く。町名
が変わったらしいが知るか。たまにレーダー搭載の白黒がチョッカイ出してくるから速度は制限プラス10キロ。
ここは昼間でも馬鹿なエゾ鹿が横断する。注意するに越したことは無い。エゾ鹿と激突すれば、カンガルーバン
パーをつけていても車は大破する。それが無ければ全損だ。
ふと気付くと谷間の空が真っ黒になっていた。降るか?今日の天気予報は快晴だったが。
「ぷう。窓閉めるぞ。雨か、雪かみぞれかな」
犬に話しかけつつPWを操作。奴は、がっかりした表情で助手席に丸くなる。
ヒーターを弱めて。おお?こんなに暗くなるっておかしいぞ?ヘッドライトとオフロード用フォグを点灯。
こんなのは
初めてだ。黒い霧?ちょっと停めて、ラジオを聴こう。
オーディオに伸ばした手は、届かなかった。全身が強度の感電をしたかの様な激痛と共に筋肉が痙攣する。
ぷうものたうっている。そのまま意識が途絶えた。畜生。
***
俺は助手席のぷうに覆いかぶさる格好でノビていた。ああ、くそ。生きている? おい!ぷう!
揺り動かすと、ぷうも気付いた。俺の顔を舐めてくる。良かった。
外を見る。快晴?・・・・。なんで海が見えるんだ?! 俺達、落雷のショックで死んだのか?
草木が生い茂り、青空の下、白波が砂浜に打ち寄せている。はー。天国かい。まあ、ぷうも一緒ならいいか。
とりあえず降りてみようぜ、ぷう。そうか、俺たち死んでしまったか。自分の車であの世まで?
なんだかなあ? まあ、死んだならしょうがない・・・。
ドアを開けると、ムッとした熱気が襲った。ありゃ、常夏の天国?常春じゃないのかよ?これだから霊能
者とか宗教関係者の言うことは信用できない。
ぷうも降りたがる。余り遠くに行くなよ?そのうち、天使だかがお迎えに来るらしいから。
道路だったんだな。エンジンを切る。
海岸を見下ろすと、水着姿の女の子が3人、砂浜に寝ているのが見えた。はー?変わった天使だな。羽根は
無いらしい。時代と共に仕様も変わるんだな。古代ギリシア風よりゃいいか。
海岸と反対側に建物の尖塔が見えた。あそこか?神様とやらが居る場所は?
ちょっと考えたが、こっちから出向いてみることにする。暑いので猟服を脱ぎ、ジーパンとTシャツ、それに
革ジャンを着る。死ぬと解っていたら、背広でも持ってくりゃよかったな。まあ、神様の前に行くのに、
ジャケット着てないと怒られるかもしれんし。あ。帽子も被ったほうがいいか。靴は猟ブーツだが。
車の鍵はどうでもいい。財布と免許と、銃に弾薬だけ持って。癖だな。あ。携帯電話も。
ケースに入った銃2挺を肩にかけ、ぷうに声を掛けてのんびり道を歩く。花壇もある。よく手入れされて
いる。樹木は・・・剪定していないか。野の花が咲き乱れる草原とか聞いていたけど。違うもんだ。
?「Whoa!」
俺「うおっ!」
誰だ?余所見をしている俺に横からぶつかって来た。反射的に抱きとめる。
?「Ouch!」
英語?なら、えーと。
俺「ごめん。怪我は無い?」
?「痛たた・・・。いえ、大丈夫です」
天使?ブレザー姿?スカートは無し?ニーソックスで? で、英語か。俺の胸に思い切り顔をぶつけて
しまった様だ。変わった案内天使だな。跳ね毛まで付いてる。ジジババ歓迎担当じゃなく、俺みたいな
若目のご新規さん担当なのか。まあ、いいや。
俺「失礼?ちょっと――」
?「キャーーーーーーーーーッ!男の人!」
なんだよ。悲鳴上げて逃げちまったよ。ぷうは天使の後を追っかけて行っちまった。あいつ、若い娘が
好きだもんなあ?飼い主に似たのか。しかし。ここには男女の別なく来るだろう?なんだよ、ありゃ?
白い清潔なTシャツ。使い込んで味のあるジャケット。清潔なジーパン。うん、腰にナイフなんてつけていな
い。銃だってちゃんとケースに入れてあるじゃないか。俺の顔がそんなに怖い?失敬な天使だぜ。何処から
見ても、ちょっと足の短いインディー・ジョーンズだろうがよ。けっ。鞭は無いけど・・・。
ぷうも追尾していっちまったし。まあ、ここであの子が帰ってくるのを待とうか。手順を俺が無視しちまった
からかもしれん。タバコでも吸って待つとしよう。
・・・・・いい天気だねぇ。
・・・・・・・・・・天使って。マジ可愛いんだな。ジジババ担当は、落ち着いた年頃がやるのかね?
?「フリーズ!手を上げろ!」
!なんだ?
?「聞こえんのか!其処の不審者!動くな!手を上げろ!」
不審者だと?招待状は貰ってないが。動かずに手を上げろって無理だろう!あ、また英語だ。日本人には
不親切な天国じゃないか。
ゆっくり振り向くと、俺に拳銃を向けている制服姿の天使。拳銃持つの?天使が??綺麗な人だけど。
?「手を上げろ!!!最後の警告だ!」
俺「解った。落ち着いて。従う」
くそ。武器を持った相手だと卑屈になっちまう・・・。そっと両手を頭の後ろで組む。これでいいか?
?「よし。右に5歩歩け。そして地面にうつ伏せになれ」
言われたとおりにする。背中がぞくぞくする。早まるなよ、天使。二度死ぬのはごめんだ。死ぬのかな?
?「足を組め!」
組んで待っていると、徹底的に身体検査された。おい!股間はやめろ!てめ。このクソ天使。タマが痛え。
所持品は全部取り上げられた。山賊か?
?「ゆっくり立て。両手はそのまま!歩け。方向は指示する!」
うーん。天国は暴力警察が跳梁している暗黒世界なのかよ・・・。ぷうは大丈夫かなぁ・・・。あいつ、すぐに
腰振るからなぁ・・・。
*
大きな建物に誘導された。長い廊下を手を上げたままで歩かされる。官僚主義な天国だ・・・。
?「止まれ。そのドアから二歩下がれ。妙な真似をしたら警告なしで撃つ」
俺「解った。二歩だな」
このクソ天使、トリガーハッピーだと困る。
俺の前に来た天使は、拳銃を腰だめにしたままでドアを開けた。横にはちびっ子の天使が俺の銃や装備を
持っている。こいつも可愛いが制服着てるよ。やばいな、この天国入り口・・・。
?「ミーナ!不審者を逮捕、連行した。入れるぞ?」
?「不審者ですって?連れて来て」
女の声だ。英語が公用語なのか、天国は。おお、美人だな。
?「東の庭でリーネを襲った。銃を二挺と弾薬を携帯していた。抵抗はしなかったが・・・」
?「リーネさんを襲った?!」
急に目付きが怖くなったぞ。この美人天使も。こいつが天使長とかいう奴か?ガブリエルだっけ?
おっさんだと思っていたが。
俺「ちょっと待ってくれ。襲っていない。出会い頭にぶつかってしまっただけだ!」
?「あなたの所属と氏名を」
俺「私の名は『俺』だ。所属?組織には属していないぞ。出身は日本」
?「ジャパン?そんな組織は知りません」
俺「組織じゃない。国名だ。おれはジャパニーズ」
天使長は馬鹿らしい。
?「そんな国はありません!」
ああ、この野郎。白人至上主義かよ?
俺「君は、レイシストか?嘘をつくとは。大した責任者だな?」
?「私が人種差別主義者? 嘘も言っていません。ふざけているのはあなたでしょう!」
おもしれぇ。怒らせて本音と情報を引き出してみるか。俺も怒りっぽいがあんたもなかなか。
俺「レイシストでなければ、低学歴か?地理の授業はFスラッシュ評価か?はん!」
?「なんですって?」
俺「12段階の最低成績だよ。それでよく学校を卒業出来たな?」
?「・・・軍の学校は一応首席ですが?」
軍?ああ、天使の軍勢がルシファーとドンパチだかチャンバラやったとか。その子孫か。
教育程度はよくない様子だな。
俺「ほぉ。天国を挙げて馬鹿ばかりか?世界地図も読めない軍人?あはははは」
?「ふざけないで!カールスラントは教育制度が充実しています!!」
俺「かーるすらんと?知らん!」
ラント?カール's?ドイツ語などとうに忘れたが?制服もちょっとドイツミリタリー?ああ、教皇が
ドイツ系だから、これが流行ってるのか?眼が怒りで燃えていますな。視線で人は殺せないぜ?
?「お前、私達の母国を侮辱するとは。いい度胸だな」
おや。俺を連行した天使も怒ってるわ。拳銃が震えてる。
俺「地図帳はないのか?世界地図を出してくれ」
?「・・・・」
責任天使が書棚から分厚いのを持ってきた。最初のページを開いて、机の上に載せた。
?「そのジャパンとやらは何処にあるの?指し示してみなさい」
動くぞ、と拳銃天使に眼を向ける。銃を振られた。よし。ワルサー、いや、バルターか?
けっ、いい趣味してるな。まあ、いい銃だよ。古いけどな。
俺「日本はここ――」
指が止まった。なんだ?この地図??中国大陸が・・・。 いや、全体もどこかおかしいぞ?
?「フソウじゃないの!」
構わず、地図帳を手にとって眺める。なんだこりゃ!
俺「手の込んだ冗談が好きな天使だな。ドッキリカメラかよ。ばかばかしい」
日本語で思わず呟く。どうせこいつ等には、解りっこない。
?「お前、扶桑人だったのか?ここで何をしている?」
日本語?!思わず振り向くと、白い制服姿の天使が日本刀を持って立っている。今度は何だよ。
俺「なあ、一体この冗談はなんなんだ?これが天国の門を通過するときの
テスト?くだらんな」
?「冗談など誰も言っていない。お前は軍事施設に無断侵入し、部下を襲った。で?お前は誰だ?」
*
どえらい手間を掛けて、何とか説明を終えた。完全に疑われていたが、所持品を検査されてから
少し疑いが別方向に向いたらしい。なんと、1945年だと。眼がテンになる、という表現がよく
解ったよ。呆然としていたら、手を下ろさせてくれてコーヒーももらえた。自己紹介も互いに
済ませた。
皆に深く謝罪をする。けっしておちょくる積もりではなかった、と。実際のところは、言う必要
もない。これ以上ややこしくする必要は無い。
車に案内させられる。車には、既に水着の女の子たちが群がっていた。さっきの子達か。
?「ああ、ミーナ隊長!ソイツがこれの持ち主かい?」
ミーナ「ええ。今はスパイ容疑者です」
俺「まあ、見てくれ。特に電子関係な。この時代のテクノロジーではないから」
気をつけていても、うんざりした声が出るのはしょうがないさ。バルクホルン大尉とやらは、まだ
拳銃を抜いたままだし。スパイねえ?エージェントとか呼ぶんじゃないのか。
?「ボンネット開けりゃいい?あ、私シャーリー。あんたは?」
俺「『俺』だよ。会えて嬉しいよ、シャーリー」
スタイルも解放的だが、あけっぴろげな子だな。ボンネットリリースを引っ張り、開ける。
俺「ディーゼルモーター、3000cc。ターボつき。電子コントロール」
シャーリー「へぇぇぇぇぇ!ターボかぁ!電子制御ねえ?フーン。エンジン掛けていいか?」
俺「ミーナ隊長がいいなら、俺は異存ないよ?乗ってみればいい」
ミーナ「ええ、いいわよ?1996年の車ですって!私も乗ろうかしら」
あら。ノリがいい。もう怒っていないかな・・・。
俺「どうぞ。あ、後ろの座席起こすよ。バルクホルン大尉、荷物を降ろす。見張っていてくれよ」
バルクホルン「ああ。へんな真似はするなよ!」
ハルトマン「手伝うね!」
一番早く打ち解けてくれた金髪の子が手伝ってくれて、荷物を下ろす。後部席を起こす間に、バルク
ホルンはそれらをもチェックしていた。あー、あの箱の底には・・・・。
隠していた弾薬をしっかり見つけられる。こっちを見るので、笑っておいた。悪気は無いぜ?
俺「オートマチック・シフトは4速の電子制御。今は乾燥路だから、このまま二輪駆動で走ってくれ」
シャーリー「へぇ!ミッションもかぁ!で?四駆にするには?すぐ先に砂浜に降りる道があるんだよ!」
俺「砂浜を走るなら、4Lだ。停止する前にこのボタンを押す。メーターの中に緑の表示が付く。次に、完全
停止してからこのレバーをこっちに。砂はトラクション取られるから、波打ち際がいいよ。スタックしたら
面倒だ」
シャーリー「ありがとう!ジャ早速!ルッキーニ!乗れよ!ミーナ中佐も、坂本少佐も行こう!」
ノリノリだな。車が好きなのか。気を利かせて、ステレオをCDチェンジャーを選択。夏だからサザンで
よかろ。
シャーリー「わおっ!すっげー!こんな音楽聴いたことないよ!」
?「うぇー。なにこの音楽?」
ミーナ「それは・・・ラジオ?」
俺「この時代のレコードみたいなもの。ずっと小さくて大容量だけど。ラジオもあるけど、周波数帯が
違うと思う。・・・・日本の割り当て周波数帯だから・・・」
ちょっと、辛くなった。タイムスリップか。SFでもベタ過ぎる設定だ。
ミーナたちもそれを察したか、それ以上聞かずに試乗に。バルクホルンは俺についていた。ハルト
マンは無理やり乗り込んで、サンルーフから身を乗り出している。
波打ち際を走るサーフを眺めつつ、座ってタバコをふかす。なんか、夢のような・・・明晰夢とやらじゃ
ないか?二の腕を抓るが、思い切り痛い。それだけ。
俺「バルクホルン大尉。すまないが、俺の犬はどうしただろう?最初にぶつかった・・・リーネかい?その
子の後ろを追いかけて行っちまったんだが・・・」
バルクホルン「ああ。預かっている。大事な犬なのか?」
俺「私の家族なんだ。すまないが、頼む」
気のせいか、バルクホルンが笑ったように見えた。
**
小部屋を与えられ、そこで音沙汰を待つ。ぷうは、少女達と遊んでいるそうだ。
車に置いてあった携帯ナビゲーションが決定打となった。ガーミンのカラー液晶タイプ。GPS衛星がないので
現在地を捕捉するわけはないが、世界地図がそのまま残っている。金を惜しんでアメリカから取り寄せたもの
に、国土地理院の電子地図データーを変換して入れたから。日本の国名も英語基準の表示。国外もそれに準じ
ている。皆、母国を探して国名・都市名の差異を確認していた。日本国内、北海道と居住地に残っていた走行
軌跡も坂本少佐が確認。説明には苦労した。計算理論まで聞くな。お前たちも解らんじゃないか。
ステレオ、車載ナビ、ETC車載機、レーダー探知機、CDチェンジャー。坂本少佐も読めるマニュアル類。時代
の差を納得して貰えただろう。ETCとレーダー探知機は、メカマニアと判明したシャーリーにプレゼントした。
今頃は分解をして・・・のけぞっているんじゃないかな。
銃器はミーナ隊長とハルトマン中尉が希望したので渡した。M1Aだけだろう、時代錯誤は。
車は、ミーナ隊長の権限で立ち入り禁止区域を作ってもらい、そこに搬入した。ま、そのほうがいい。
コイツを手にした奴は、運がそこそこあるだけで億万長者だ。頭のいい奴は特許を取り捲るだろう。
俺も、許可を貰えば車の荷物はいつでも取りにいける。
しかし、この世界の女の子の服装。ちと俺には刺激的過ぎるな。スカートがないのか?制服なのだから、何
か意味もあると思うんだが・・・。まあ、目の保養にはなる。中高校生の時分だったらヤバかったな。
今後のことを考えている間に寝てしまった。ノックの音で眼が覚める。
俺「はい!どうぞ!」
バルクホルン「夕食の時間だ。その前に、皆に紹介する。ついてきてくれ」
拳銃は無し。顔つきも普通なんだろう。キリリとしているが、敵意は無いと思う。ありがたや。
彼女の後について歩く。世間話を、とも思ったがやめておいた。取り付くしまがない。軍人なんだな・・・。
ミーナ「着たわね。其処に座ってください。隊員を紹介します。まず、あなたから自己紹介をしてください」
ぷうが飛びついてきた。やあ、元気だったな。良かった・・・・。
俺「皆さん、はじめまして。私の名は『俺』です。ええ・・・と。皆さんの時間軸・・・と世界が違う場所から
来ました。そうとしか説明が出来ない。こちらの世界では、扶桑という国ですか。坂本少佐、宮藤軍曹の
母国と同じと思われる場所から来ました。今後の身の振り方が決まるまで、お世話になります」
セーラー服の女の子がにっこり笑ってくれた。この子が宮藤君なんだろう。すっげー癖毛。シルエットだと
キツネに見える。
その後、席順に自己紹介を受ける。国名が殆ど解らん。ガリアは・・・ガリア戦記のガリアかな?ブリタ
ニアは、まあイギリスだろう。リベリオン?イェーガー大尉はアメリカを見ていたっけな・・・・。オラーシャ?
スオスム?全く解らん。ロマーニャ?ああ、ローマ半島、か。カールスラントはドイツ近辺らしい。
途中で地図を出してもらって再確認させてもらう。ヨーロッパもかなり地形が異なる。国境も。
食事は洋食。イギリス風と大陸風の混合かな。美味い飯は有り難い。
食べている間は、現在の世界情勢などの話を聞かされる。あと、皆が戦う敵についても。なるほど。
かなりの程度で人類連合が出来ている。国際連合は存在しないのか・・・・。彼女達も多国籍軍、か。
食事の後、談話室のような場所でこちらが質問攻めに会う。
バルクホルン「お前の世界で、1940年から2010年まではどうだったんだ?やはり戦争はあったのか?」
ああ、やっぱりそうきたか。でも、話したほうがいいだろう。俺が、さっき感じた安堵・・・救いは感じて
貰えるかも知れないし・・・。
俺「最初に皆さんにお願いしたい。これから話すことは『私の世界』で起こったこと。皆さんの居る世界とは
違います。決して影響されないで下さい。未来予知では有りません。理解して、約束してくれますか?」
皆が頷いた。少し安堵するけど・・・大丈夫か?
俺「簡単に説明する。国名はこちらにあわせるよ。戦争の発端は、経済だ。1938年、カールスラント地域に
存在していた独裁国家と極東扶桑の位置にあった軍事国家、それに現在のロマーニャ地域の国の三カ国・・・」
つっかえつっかえ喋る。言葉の問題もあるが、内容がな・・・。オラーシャ人とカールスラント人そしてスオ
スム人にブリタニア人に・・・・敵ばかりじゃないか。人的被害だけは具体的に言うまい。あと、核の問題。
俺「・・・1945年、扶桑は連合軍に無条件降伏して第二次世界大戦は終わった。世界規模での人的被害は口外しない。
察してくれ」
やはり・・・皆ショックを受けてしまったか。済まない。
坂本「・・・・そうか。『日本』はその後?」
俺「あの車を見たでしょう?日本は復活しました。ドイツ・・カールスラントもね。皆、立ち直ったわけです」
シャーリー「その後、戦争は?」
俺「まあ、地域紛争はある。宗教対立、民族紛争だね。でも、世界規模での戦争は無かった」
ミーナ「宗教で?」
俺「先ほどお聞きした時点で、こちらでは宗教が原因で憎しみ合うことはないようですね。良いことです。
私の世界では、民族差別・対立よりも宗教がらみのほうが・・・酷いことになっています」
核の事はヒントだけでもヤバイ。ガンバレル方式とかな。アインシュタインとか居るのかな。
ミーナ「そう・・・・」
俺「こちらの世界に来て、まだ数時間ですが・・・こちらの世界のほうがいいかも・・・」
バルクホルン「そうか?世界規模で戦争をしているぞ?お前の世界と大して違わん」
俺「今は人類が協力して、人間では無い敵と戦っている。大きな違いだと思うよ」
皆、考え込んだ。エイラ君とサーニャ君は、ぷうを抱っこして撫でながら考えている。ぷう、お前は
いいな。深く考えることがないのは・・・幸せなことだぜ。
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宛がわれた部屋のベッドでぷうと寝ている。鍵などは掛けられなかったが、このフロア以外には出る
なと。明日の朝、眼が覚めたら。俺の世界に戻っていたりしないかな・・・。まあ、無理なんだろう。
眠りの中、懐かしい友がやってきた。ぷうと同じシーズーのチャーミー。先代犬だ。
やあ、チャー君。覚えていてくれたか!おい、抱っこさせてくれよ。なぜ俺のシリばかり追いかける?
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最終更新:2011年01月19日 19:53