※SSです
――――子供の泣き叫ぶ声
恐らくは少女、可哀想に、親とはぐれてしまったらしい
うぇーんうぇーんと泣けど、周りの大人は面倒ごとは嫌だと避けてしまう
周囲の景色はレンガ造りで、時代は中世であろうか
「おや、迷子かい?」
そこへ、一人の男性が少女に声をかけた
微笑みを浮かべ、だけど、どこか心配そうな
金色の髪を揺らした少女は、それをコクリと縦に揺らす
「そうか、じゃあ、こっちへおいで」
「あ、でもこれだと誘拐だと思われちゃうな……まいった」
そして、あれこれ問題を述べ始め、困り果てだす男性
少女はその様子を見て、思わずくすりと笑った
「……大丈夫」
少女は呟き、男性の手を握った
「……子供は純粋だね、でも、私が悪人だったら危ないよ」
「まぁ……私は、悪人じゃないけど」
しかし、行く途中でまた少女が泣いてしまわないとも限らず、まだ若干困っている男性
数秒して、何かを思いついたかのように、肩に下げたカバンからクマのぬいぐるみを取り出す
いや、それはぬいぐるみと言うよりかは、クマの人形
中世にテディベアは存在しないのだから、当然である
「これ、あげるよ」
「物で釣ってるみたいで、余計に悪人に見えるけど……これで、泣かないでほしいな」
少女は笑顔でそれを受け取った
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子供の泣き叫ぶ声
それは、恐らくは少女の泣き声
猿ぐつわをされ、冷たい床にごろんと転がされている
勘違いなきように言わせて貰うが、あの後、少女は無事に家に帰った
だが、お礼をしに行こうと一人で男性に会いに行こうとしたら―――複数の男たちに捕まってしまった
そう、彼らは悪人
「こんな貧乏市民の娘を攫ってどうする!!」
部屋中に響くガタイの良い男の叫び声
彼らは貴族の子供を攫い、身代金によって生計を立てていた
「そ、それは……あ、ああ!そうだ!奴隷商人に売っちまいやしょうよ!」
怒鳴られた男たちの一人がそう提案し、得意顔になる
そして、次々と賛同の意見を示しだす仲間たち
うぇーんうぇーん
その内の一人が、少女の泣き叫ぶ声にいらついたのか、少女の腹を蹴り上げる
少女の口から粘り気のある液体が飛び散り、その軽い体躯はかなり飛び上がり、床に叩きつけられる
胃を直撃したのか、先程飛び散らした液体とは違う粘り気のある液体を胃から吐き出し、床を汚らしく汚す
「頭、このガキ……ヤっちまいましょうよ」
……そいつの提案に周りは一瞬ドン引きした、空気が冷めた
だが、全員、小児愛趣向は無いとは言え……やはり、少女の体は少女らしく白く華奢で柔らかそうであり
泣き叫ぶ少女を無理矢理すると想像をめぐらせると……それもあり、と考えるようにもなる
元々、道徳観など無い連中、あったら人攫いなどしない
そして、誰かが少女の髪の毛を掴み、宙へと引っ張り上げる――――――――
―――――――蹴り破られる扉、中へと大挙として押し寄せる白いローブを着た者たち
正に問答無用の勢いで、次々と紅い液体を部屋中に撒き散らしていく男たち
突然の出来事に対応できる訳も無く……悪人は全て息絶えた
「……来るのが遅いと思ったら、また迷子になったみたいだね」
そのリーダー格らしき男性が、呟いた
「硬いのはあれだから、布に綿を詰めたクマを職人に頼んだんだけど……いる?」
男性は、泣きかけの少女の涙を止めようと、それを差し出した
最終更新:2010年12月28日 22:24