【少年の力】

「誕生日祝いありがとう!これで僕も11歳だね!」

黒い髪をした洋風の顔立ちの少年が喜んでいる

祝いの品の中には匠が作った刀・・・・ではなく木刀も混じっている



「この木刀で明後日の剣術大会に勝つよ!」

少年は剣術の才能に恵まれていて、更に努力も惜しまなかった

そのため周りの誰よりも上達し、既に大の大人と手合わせしても勝てるほどだった

大会の優勝候補とかのレベルではなく、優勝確定とまで言われた


「でも決勝の相手は・・・・・・・ううん!何でもない!」

少年はとある少女に恋をしていた

年は3歳年上で、剣術の腕も確かだった

そもそも大会出場者の平均年齢は14歳位だ

11歳で参加したのは少年だけだ

その決勝の相手が少年が恋をしていた少女であった


そして夜が明け、決勝戦まで1日となった


「それじゃあ稽古に行ってくるね!」

「あ!付いてきちゃダメだよ!危ないからね!」

「そんな可愛い顔してもダメだよ~!」

少年はそう言って妹に留守番をさせて稽古場へと向かった

両親はもっと幼い頃に亡くしてしまっていた、

今は少年が大会で優勝した賞金やちょっとした雑用をして生活してきた


稽古が終了し、少年は帰り道を歩いていた

既に日は落ちていて、街頭も無いせいで辺りは暗闇に包まれていた


「そこを動くな!動いたらこの短刀で刺すぞ!」

男の荒々しい怒声が聞こえる


「やだよ!僕を誰だか知ってるの?」

少年は木刀で抵抗した

しかし短刀とは言え殺傷力は当然有り、とても木刀では歯が立たなかった

その時、少年の腹部には短刀が刺さり、紅い血がドロドロと流れ出す


少年は泣きながら走り出した

茂みに入った所で短刀を抜き、服の裏に隠した

男は段々と近付き、とうとう捕まってしまった


少年は檻の中で目を覚ます

鉄格子と壁しか見えず、鉄格子の向こうには男が二人何かを話していた


「ありゃあ中々の獲物だな、剣術の腕もよし、顔もよしなら貴族の方は大変喜ぶだろう」

「まったくだ、あの少女には良い情報をもらった」

「大金を払っただけはある」


少年は酷く恐怖した

そして少年は思った

「僕だけの世界に行きたい、何処へでも行けて、何処からも行けない世界に」


少年の願いは叶った

足元には血や異空間の入り口だらけの男の死体が二つ転がっている

少年の服はボロボロにで血も大量に付いていた

少年は自分の力に恐怖し、誰にも言わない事にした


大会当日の朝に少年は家へ戻った

妹は少年の姿を見て顔を涙で濡らしながら心配した

「ちょっと喧嘩しただけ」

少年はそう一言妹に言って決勝の会場まで向かった


結果は惨敗だった

少年は少女を人気の無い場所へ呼んだ

少年は質問をした

「君が情報を流したの?」


少女はこう返した

「それが何?」


少年の足元にまた死体が増えた


それから少年の足元には死体が一つ二つ三つと増えてゆく


少年は思った

「感情なんて必要ない、少なくとも怒りさえあれば」

「この顔もこうなった原因だ、醜い」

「誰も僕の顔を知らない所へ行きたい、遠いところへ」


方法は簡単だった

それが少年の能力なのだから

少年は何も言わず会場を後にした

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最終更新:2010年05月26日 17:10
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