【自由に縛られた日】

う~~路地裏、路地裏
今路地裏を求めて全力疾走してる僕は
夜遊びをしてるごく普通の男の子
強いて違うところをあげるとすれば
警官に追われてるってことかナー
名前は特に決めてない


「コラーッ!待ちなさい!」
「逃がさんぞ!」
「待つって言って誰が待つか!バーカ!」
【金髪の少年が後ろに二人の警官を連れて、暗い夜の街を駆ける】
【少年と警官とは一定の距離を保っている】

(ち、めんどくせぇ…路地裏まで行けば撒けるのに)
(ここら辺には無いんだよな…ちくしょう)
(大体、信号無視くらいで一々大人気ねぇ…法律ってのはそんなに大事なのか?)
(はぁ…つーか、絶対顔ばれてるよな…)
(またあのクソジジイに殴られんのか…うぜぇ)
(こんなことなら、出なけりゃ良かったぜ…)





「ちょっと、こんな時間にどこへ行くの?」
「あん?うっせ―な、テメーには関係ねーだろ!」
【屋敷の玄関で言い争いをしている親子】
「親に向かってなんて口の聞き方なの…いい加減にしなさいっ!そんな風だからあなたはごくつぶs…」
「うるせぇ!」
【少年が荒々しく玄関から出ていく】

「ち、うぜぇババアだ…」
【夜の街を歩いていく。辺りには誰も居ない。少年ただ一人の世界】
(いい気分だ。まるでこの街の王様にでもなったようn…)
ぶおおおおぉぉぉん!
【車が走り去る音を聞き、少年は現実に戻される】
【どうやら歩きすぎて、まだ活気がある街の中心部の方へ来てしまったようだ】
(ち、ムード壊しやがって!…なんでこんなとこで車走ってくんだよ)
(ムカつく…ちょっくらやりますか!)

【信号機の前で信号が緑になるのを待つ】
【やがて、信号機が緑に染まる】
【それと同時に、止まった車が再び動き出そうとする】
「どけどけ~!」
【今まさに動こうとする車を無視し、道路をスキップで渡る】
グシャッ!バキッ!ドカッ!
【そのおかげで道路は大混乱。車同士が衝突し、激しい音を立てる】
(ヒヒ、わざと飛び出して滅茶苦茶にするのがたまんねーんだよな)
「~~~~!」
(何か言ってるけど、聞こえねーよ!バーカ!)
「~~この少年、そこの少年、今すぐ止まりなさい!」
「やばっ、お巡り!?」





「ハァハァ、さっさと諦めろ…クソマッポ!」
「大人を、舐める、な…ヒィヒィ」
「もう…だめ…」
【弱音を吐きながらも、警官はひたすら追いかけてくる】
(あ~、もう!何とか撒けないかな…?)
【その時、少年の視界に入る緑色の光を放つ信号機】
(こいつだっ!)

【少年は躊躇もなく、道路へと踏み出す】
「あ、またやりやがった~」
「わ、渡れない…」
【警官は躊躇して、一歩も踏み出せない】
「ハハハ、バーカ!テメー等はそこで一生そうしてな」
「何しろ警官が信号無視しちゃいけませんからねぇ…ニヒヒ」
【少年は勝利の笑みを浮かべる。しかし】

「バカ、危ない!」
「えっ!?」
ぶおおおおおおおぉぉん!
【少年のすぐ目の前まで迫る、巨大な鉄の化け物】
「うわあぁぁああ!」

(何で俺がこんな目にあわなくちゃなんねぇんだよ…)
(ルール破って、追われて、またルール破ったら次は死ぬなんて…そんなの認められるか!)
(俺がそんなもんに従ってたまるか!)
【少年の中で、何かが崩れ、何かが生まれる】

「俺に近寄るんじゃねぇ!」
ガシャン!
【少年を吹っ飛ばそうとしていた巨体は、真下から現れたそれに対処することができず、横転する】
【それは信号機】
【すぐ側にあるソレと殆ど同じモノが、まるで少年を守るかのように盾となって現れたのだ】

「何…あれ?」
「信号機?いったいどこから…」
「あのガキが出したのか…まさか能力者?」
(辺りが五月蠅い。けど、関係無い…今出たこの信号機は何だ?)
(いや、何でもいい…俺の役に立つならそれで)

「おい、少年!何をやった?答えろ!」
「とりあえず、確保だ確保」
「身元は分かってるんだ。さっさと連絡をしろ」
【先程のも含め、警官が辺りに二人、三人と集まってくる】
(ククク…この力さえあれば、俺は…)

「おい、聞いてるのか!」
【警官が少年に手を伸ばす】
「うるせぇ!ちょっと黙ってろ!」
【先程の信号機が赤く染まる。それと同時に、少年は目を閉じる】
「あばよ、うぜぇルールに縛られたクソ野郎ども!」
【目を瞑ったまま、少年はその場を後にした】

【路地裏】
「…変えてやる」
「この世界の腐ったルールを全てぶち壊して、俺が、俺だけの、俺のためのルールを築いてやる!」
「何にも縛られないで自由に…」





その夜、一人の少年が街を出た
誰も少年を連れ戻そうとはしなかった。少年が引き起こした事件と、その存在は街の歴史から抹消された
だが、それはもう少年には関係ないこと…
少年はこの力を持ったあまり、この力を望んでしまったあまり
過酷な未来へと歩き出す
その先に自由があると信じて…

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最終更新:2010年06月01日 00:40
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