元異世界『地球』の人間。
しかし、ある日勇者召喚に間違って呼び出されてしまう。
その時に手に入れたのが今の力、到底勇者スキルとは呼べない代物。
その世界ではキチンとした勇者が召喚し直され、青年はお払い箱になる。
王たちは青年を自分が勇者モドキだと言わないという条件付きで開放した。
青年は気ままに放浪し、様々な厄介事にも遭遇していく。
その村は、青年が何日か遭難したあとにたどり着いた場所。
青年は満身創痍で、倒れればいつ死んでもおかしくない状況にあった。
魔族の集落、そういう表現が正しかった、皆が笑っていて。
青年を見たとき表情が固まったが、青年が今にも倒れそうなのを見るとすぐに介抱してくれた。
それから話していくうち、村の皆と仲良くなっていった。
青年の召喚された国で魔族は基本『悪』と伝えられており、見たらすぐに殺せというふうな雰囲気であった。
そのことを魔族の皆に話すと、どうやら相手側も人間のことを同じように思っていたらしく、バカだったなぁとか笑い合いながら過ごしていた。
青年には居心地が良かったのだろう、自分を認めてくれる人、自分を気遣ってくれる人、たくさんの人たち。
地球で青年の居場所はなかった、人の噂話に自分のことなんではないかという被害妄想までするほどだったのだ。
そして、村に来て二週間がたたんとしていた頃。悪夢はやってきた。
夜に何故か胸騒ぎがして寝付けなくなり、村からやや遠い切り立った崖のような場所へと向かう。
そこは青年が発見した秘密の場所、そこからはどんな遠くのものまで見渡せた。
村を出て三十分程度たったころに、一つの悲鳴が聞こえる。 それは今世話になっている村長の娘
『アイナ・センブルグ』の紛れもない悲鳴だった。
青年は走った、今まで出したことがないんじゃないかというスピードで、息が切れるのも構わずにただ一心に走った。
そこで目にしたのは、赤く燃え盛る炎の渦と『村の皆を勇者が殺している』惨状。
悲鳴だけでも薄々気付いてはいた、怖かったのだ、さっきまで感じていた幸せが崩れ去るのが。
さっきまで笑いかけてくれた少女の無邪気な笑みが、もう二度と見れなくなるのは。
青年は勇者に殴りかかろうとした、渾身の力を使って、相打ちでもいいから殺すと。
しかし、攻撃は届かない、阻んだのは勇者の従者に選ばれたエリートたち。 五人程度のパーティを組んでいたようだ。
青年は何もできず、無力に打ち震える。 勇者に一撃も入れることもできないまま、勇者に相手にすらされなかった。
数時間後、雨と何かに濡れた青年は決心した
『奴をどんな手を使ってでも殺してやる』と。