夏。憂いを感じ始めた学園生活。
主人公、高峰 怜悟は一人焦りを感じていた。
卒業後の進路に向け、悔いのない毎日を謳歌する周囲。
自分の指し示す夢を誰もが嬉々として語り、そして誰もがその道を歩んでいく。
そんな中、怜悟は何の夢を持たなかった。
進路もろくに決めず、日々を無駄に過ごして残り少ない毎日を消費していく。
なりたい職業などない。学びたい学問などない。
進路用紙に書くのは、いつも『未定』の文字。
―――それでいいのだろうか?
自問するも、焦りを感じるばかりでやはり道は見えない。
このまま夏を過ごしてしまうのだろうか……。
しかし、そんな鬱屈な気持ちさえも忘れさせてくれるものがたった一つだけあった。
亡くなった父親が教えてくれたギター。
幼き頃、優しい旋律を奏でていた父親に憧れて学んだものだ。
今でも落ち込んだりした時は一人で黙々と演奏して、自分を勇気付けている。
音楽をしていると、悲しい気分さえも忘れさせてくれた。
そうして、いつものように一人でギターを弾いていると、一人の少女と出会った。
どこからともなく流れてくるメロディーに引かれてやってきた彼女は、初対面にも関わらず明るい性格ですぐ怜悟と打ち解ける。
そして彼女もまた、自分の進路に疑問を持ち始めていた。
ある日、彼女は、ぽつりと呟く。
「思い出……作りたいな」
その一言は、怜悟の心を大きく揺さぶり……そして、ある決意をその目に燃えさせる。
「一緒に……バンド組まないか?」
忘れえぬこと。
かけがえのないこと。
今年の夏は……そんな忘れかけていた思いを、思い出させてくれた。
だからこそ、想いを込めて―――。
最終更新:2007年12月16日 00:55