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管理人コメント「嵐が過ぎ去るのを待つな。雨の中で踊ろう」

エントリーNo19

(このようにバースティと斜視子が雨を追います)
公開先d19 感想掲示板
タイトル 雨を追う もしも通り過ぎたあとに
作者 わてりちゃん
ジャンル:短い時間の物語
使用ツール:RPGツクール2000
プレイ時間:5分程~F12を押すまで
内容
ノスタルジックでセンチメンタルな見るゲです。
※全画面モード推奨
「おかえり」口角を上げて、目尻を綻ばせ、頬を緩める。私は遠く離れていくそれを見送った。言葉は空に融けていき、やがて静寂が襲った。傘を差しているのに首筋が濡れていた。虫の音が聴こえる。もうすぐ夜だ。仰いでみても、もう顔に降りかかるものはない。私は傘を放り出してくるぐる回った。何度も何度も、景色を回した。跳ね上がる雨の飛沫がまるく飛んで、そこに妖精の環ができるように。私はずっと踊っていた。踊り疲れて、泥の中に沈むまで、ずっと踊っていた。「ねえ、怖くなかったかな?」語りかけた。手の温もりはまだ思い出せる。背中から泥に落ちて、空を全身で見上げる。吐いた息が消えていく、そんな気配がした。「私、ついていてあげたからね」真っ黒のドレスが、雨の残滓で端から冷たくなっていく。いいんだ。もう着ないし。目を閉じる。耳の奥には雨音が残っている。懐かしい音―――――思い返す。誰かに会って、誰かと別れて、そしてまた旅して。帰らなきゃ……立ち上がり、来た道を戻っていく。いつか来る日のために。待ち続ける日を終わらせるために。明かりはない。けど、全部覚えていて……私は、無意識の内に扉を開けて、帰っていた。床に散らばったぬいぐるみを見る。部屋の真ん中まできて、私はドレスを脱いだ。真っ暗で輪郭しかない世界で、ただ、背中に雨の冷たさだけが残ってる。喉は熱くて、衝動そのままに何かを口走ろうとして、声を失った。時がゆっくりと滞りはじめて、私は虚空を見つめた。闇はくるぐる回りはじめて部屋を覆い隠した。「うん」頷いて、足を持ち上げて、寝室へと向かい、その姿のまま、ベッドに倒れ込んだ。浮かんでくることから目をそらして、ズレた片側の目で、眠りの向こう側を見た。瞼の裏はやがて星の海になり、私は深く、長く息を吐いた

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登録作品
最終更新:2024年06月27日 16:49
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