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シナリオ 北上ルート 8月9日(木曜日)・その2

 八十記からの誘い


真緒(もう日も落ちるな)

奏「………」

真緒「そろそろ戻ろうか」

奏「………」

真緒「あ」

何も言わず帰っていく北上。
これもまた昨日と同じだな。

はぁ……いつまで続くんだろう。






四人だけの夕食が始まる。
莉緒たちが実家に帰ってかだいぶ経つせいか、この食卓にも慣れて来た。

莉緒と岸岡がいないだけで、こんなにも静かになるんだと最初は驚いた。
でも近頃、全員そろったあの騒がしさがない事に寂しさのようなものを感じてる。

北上はすぐ帰ってくると言っていたけど、莉緒たちはいつ戻ってくるんだろう。
この広い食堂で四人だけというのも味気ない。
なんならメイド長を呼べば良いのに……


せえら「今日は寮長ですわよ」

寮長「あ、はい。でも……」

真緒「どうしたの?」

寮長「いえ、八十記さんの方が良い気がして」

せえら「あ、それもそうですわね」

真緒「ん? なんかあるの?」

せえら「ええ、ありますわよ」

せえら「明日、八十記家のビーチへ行きますの。よろしくて?」

真緒「え? 八十記のビーチ?」

せえら「もっともセンコーに選択肢などありませんけれど」

寮長「ふふ」

真緒「ビーチへ行く……つまり海に行って遊ぶって事?」

寮長「ええ、去年もお世話になってるんです」

真緒「へえ」

せえら「そういうことですわね。カナちゃんも用意しとくのですわよ」

奏「……アタシは行かないし」

せえら「な!? なにを言ってますの!」

奏「だって、誰かさんも行くんでしょ?」

寮長「北上さん……」

真緒(誰かさん……ぼくの事か)

せえら「誰が来ようと関係ありませんわ。明日は無理にでも連れていきますわよ」

奏「………」

真緒(少しはマシになったと思ったんだけどな……)

真緒(て、弱気になってちゃ駄目だな。話もしなくちゃいけないしさ)

真緒「北上、せっかくの夏休みだし行こうよ」

奏「………」

せえら「心配しなくても連れていきますわよ。全員こないと面白くにゃーですし」

真緒「ん、全員?」

せえら「ええ」

寮長「先生、寺井さんや岸岡さんたちも来ますよ」

真緒「お、莉緒たちもか」

寮長「ふふ、なんだか嬉しそうですね」

真緒「や、べ、別に嬉しいわけじゃないけどさ」

せえら「……まったくセンコーときましたら」

奏「………」

せえら「そういうわけで明日は朝から出かけますわよ。よろしいですわね?」

真緒「ああ、楽しみだ」



どんな所なのか知らないけど、海で泳ぐのは楽しみだ。
八十記も寮長もいつもよりはしゃいでて、すごく楽しそう。

それに莉緒たちも来るみたいだし、明日はにぎやかになりそうだな。

奏「………」

真緒「………」

……北上。
盛り上がるぼく等を冷めた目で見てる。

だけどそれはきっと中二病のせい。
こんなので盛り上がるなんてお子さまだって心の中で言ってるのが、なんとなく分かる。

きっと北上も、開放感のある海で遊べば素直になると思う。
そしてぼくにもまた心を開いてくれるかもしれない。

そう、明日海を見ながら北上と話ができればと……
可愛い水着姿の北上と落ちる夕日を見ながらロマンチックに……
そして目を閉じた北上の──

って、ぼ、ぼくはいったい何て事を……

北上は生徒でぼくはその先生。
それ以上の関係など断じてない。

ないんだけど……一番気にかかる子だよな。


せえら「では食べますわよ」

寮長「ええ、いただきます」

真緒(うん、場所が変わればきっと)

真緒「ああ、食べようか」

奏「………」


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最終更新:2010年07月13日 23:05
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