劇の練習その1

劇の練習その1
参考動画

;寮食堂

真緒
「突然だが聞いてくれ」

莉緒
「なによ」

芽衣子
「なんでしょう」

せえら
「まったく朝っぱらから全員呼び出して」

真緒
「今度各寮で催し物をする事になったんだ」

北上
「もよおし?」


「なんだいきなり」

寮長
「珍しいですね」

真緒
「学園長がいうには、寮に住む子の結束を固めるためにって事だ」

莉緒
「結束? ふざけないで!!」

芽衣子
「真緒様、そのような事など時間の無駄かと思われます」

真緒
「……やっぱり噛み付いてきたか。でもな、もう決まった事なんだ」

莉緒
「な、なんですって!?」

芽衣子
「真緒様? はっ……これはもしや作戦?
そうとはしらず失礼な事を……」

真緒
「……」

真緒
「ま、とにかくそういう事だから、ここもやるしかないって事。
で、何をするかなんだけど」

せえら
「他の寮は何をしますの?」

真緒
「えっとだな、わりと簡単に出来る合唱とかが多いみたいだな」

せえら
「合唱……」

真緒
「あ、ああ」

せえら
「まさかセンコー」

真緒
「いや、そうしようと思ったけど、同じになるし止めとこうか?」

せえら
「え、ええ。同じなんでつまらにゃーですわよね、かなちゃん?」


「んん……歌いたいのに」

せえら
「ですけど、たかだか学園の催しにかなちゃんの歌を披露するなんてもったいにゃーと思いません?」


「そだね。安売りしちゃいけないし」

せえら
「ええ、ええ、ですわよ」

真緒
「……それじゃ別の事をするか」


「なにをするんだ?」

寮長
「合唱以外となると……」

真緒
「劇とかどうだ?」


「劇か、いいかもしれんな」

寮長
「ええ、面白そうですね」

真緒
「ここの皆は演技上手いだろうしな。なぁ莉緒?」

莉緒
「……気安く名前呼ばないで」

芽衣子
「………」

真緒
(な、なんで怒る)

真緒
「ま、まぁ、とにかく劇でいいな。じゃあ問題は」


「ロックバンドの半生を劇にすれば面白いと思うよセンセ!
主役はもちろんアタシね」

せえら
「いいえかなちゃん。ここはわたくしの半生を劇にするべきですわ。舎弟もそう思いますわよね? まぁ、聞かなくても分かってますけど」

真緒
「い、いや、そういうのじゃなくてだな、もっと普通の題材を」


「普通とかつまんないし」

せえら
「ですわよ」


「普通の題材ね、なにするんだ」

真緒
「そうだな、例えば白雪姫とかシンデレラとかさ」


「ほう……ならオレの配役は決まったな」

真緒
「ま、配役は後で決めよう。題材はなにがいいかな」

寮長
「そうですねぇ」

莉緒
「真緒くん、美女と野獣とかどう?」

真緒
「ああ、いいな。他の皆は?」


「野獣だと! だめだぜ寺井さん!」

莉緒
「どうしてよ、いいじゃない」


「普通のじゃつまんないし」

せえら
「ですわ、もっと面白いのにしろですわ」

真緒
「十分面白いと思うけどな。まぁ、でも普通じゃない話となると」

芽衣子
「真緒様、人魚姫などいかがでしょう?」

真緒
「お、たしかにいいかもな」

寮長
「悲恋の話ですね。切ないですけど、私好きです」

真緒
「うん、ハッピーエンドじゃないけど、面白そうだ。みんないいか?」


「たしか王子は出るしな……いいぜ!」


「別になんでもいいし」

せえら
「まぁ、別にいいですわ。わたくしの半生以外ならどれも同じですわ」

真緒
「莉緒は?」

莉緒
「………」

真緒
「おい莉緒」

莉緒
「……まぁ、配役しだいよね。ええ、いいわよ」

真緒
「なんだ?」

莉緒
「いいから役を決めなさいよ!」

真緒
「怒るなって。じゃあ題材は人魚姫で、次は配役だ」

寮長
「先生は参加するんですか?」

真緒
「いや、ぼくは監督って立場になるから参加しないよ」

寮長
「じゃあ六人ですね」


「人魚姫だと、人魚と王子と他はどれがいたかな」

芽衣子
「魔女だ」

莉緒
「ふふ、あなたにぴったりの役だわ」

芽衣子
「なんだと貴様……」

真緒
「それと、王子の結婚相手と人魚のお姉さんもいるかな」

せえら
「ちょいとセンコー、それじゃ五人しか出れませんわよ」

真緒
「あ、そうだな。もう一役は」

せえら
「人魚姫の友達とかでいいんじゃにゃーです」

真緒
「友達」


「イルカとか魚とかだよセンセ」

真緒
「ああ、なるほどな。うん、それじゃそれでいいか。
じゃ、人魚と王子と、人魚の姉と王子の結婚相手と、魔女と人魚の友達でいいな」


「問題ないな」


「あるし」

真緒
「なんだ?」


「人魚の名前決めなくちゃ」

真緒
「ああ、そうだな。人魚と結婚相手は名前決めるか」


「人魚はねージェームスでいいよ」

真緒
「い、いや、ジェームスっておま」


「なら王子はオレの名前をいじって、高和(たかかず)だな」

真緒
「いや、王子は王子でさ」

せえら
「名前なんてどーでもいいですわ。とっととやれです」

真緒
「……まぁ、ここの寮らしくていいか。じゃ、配役な」


「ふ、王子はオレだな」

真緒
「ん、他に王子したい人がいなければいいぞ」


「……誰もいないな。決定だ」

真緒
「おっけ。じゃあ人魚や魔女は」

芽衣子
「真緒様! 芽衣子が主役を!」

真緒
「お、人魚やるか。それじゃいいか?」

芽衣子
「異論はないようです」

真緒
「人魚は岸岡と、じゃあ結婚相手は…」

せえら
「楽そうだしわたくしがそれでいいですわ」

真緒
「八十記な、後は魔女と姉とイルカ」


「寺井さん、魔女はどうだい?」

芽衣子
「………」

莉緒
「魔女なんて……」


「ふ、そうか」

莉緒
「……ううんまって、たしか魔女は人魚に」

芽衣子
「貴様……気がついたか」

真緒
「………」

莉緒
「真緒くん! 魔女やるわ!」

真緒
「うん、頑張れよ。じゃあ次は姉とイルカだけど」


「……」

寮長
「……」

真緒
「姉は寮長で、イルカは北上でいいか?」


「いいよ」

寮長
「はい」

真緒
「あ、ついでにナレーションも寮長頼む」

寮長
「ええ」

真緒
「よし、役も決まったな。さっそく練習しよう」





真緒
「じゃあ、そういう感じで頼むぞ。よし、スタート!」





海の岩場で歌を歌う人魚姫。
そしてそれを聞いていたイルカの友達は、あるものを見つけました。


芽衣子
「ねぇ、北上、あの船を見て」


「立派な船だねジェームス」


真緒
「カーーーーーーーーーーット!」


芽衣子
「え、だめでしょうか?」


「なんでー?」

真緒
「名前がだめだ。そんなんじゃ劇の世界に入り込めないって」

芽衣子
「ではどうすればよろしいですか?」

真緒
「……そうだな。名前は後でちゃんと決めるとして、とりあえず下の名前で呼び合ってみてくれ」

芽衣子
「了解いたしました」


「ええー!? ジェームスでいいじゃん」

真緒
「今度やる時はジェームスな。今は名前で頼むぞ北上」


「うー」

真緒
「じゃあ再開!」



海の岩場で歌を歌う人魚姫。
そしてそれを聞いているイルカの友達は、あるものを見つけました。


芽衣子
「ねぇ、カナデ、あの船を見て」


「立派な船だねメーコ」

芽衣子
「あら、誰か男の人が乗ってる」


「王子様だね。綺麗な格好してるから。
でも、ロックじゃないね」

芽衣子
「うむ、光の国の騎士を思い起こさせる格好だな。気に入らぬ」


真緒
「かぁあああーーーーっと!」


芽衣子
「な、なぜです?」


「どしてー?」

真緒
「役になりきってくれ……進まない」

芽衣子
「分かりました」


「ほーい」

真緒
「じゃあ再開!」



芽衣子
「あら、誰か男の人が乗ってる」


「王子様だね。綺麗な格好してるから」

芽衣子
「………」


人魚姫は船の上の王子様に目を奪われました。
そうです、人魚姫は王子様に恋をしてしまったのです。



「………」

芽衣子
「……素敵」


「嬉しい事言ってくれるじゃないの。やらないか」


真緒
「かーーーーーーーっと」



「なんだと」

真緒
「その台詞はいらないぞ」


「だが聞こえてないしいいだろ。船の上で、向こうは海の上なんだぜ」

真緒
「そうだけどこれは舞台だからな。台詞はカットして、一瞬視線を合わせる感じで頼む」


「しょうがない」

真緒
「じゃあ再開」


芽衣子

「……素敵」


「………」


王子を見つめる人魚姫。
その時、晴天の空は突然曇り始め、嵐になりました。
王子の乗った船は傾き、そして海へと沈んでいきます。


芽衣子
「王子が海に落ちたわ!」


「………」


海の底へと沈んでいく王子を助ける人魚姫。
浜辺へと運び、王子に何度も呼びかけます」



「……う、う」


「……だ、だれ?」


そう言った後、王子は再び意識を失いました。
でも、人魚姫は胸を撫で下ろします。


芽衣子
「よかった、生きていたわ」

芽衣子
「ハッ! この足音は!」


村娘がこちらへ歩いてきます。
人魚姫は慌てて海に身を隠しました。


せえら
「……誰か倒れてますわね。なさけねー野郎ですわ」


真緒
「かーーーーーーーーーっと!」


せえら
「な、なんでカットですの?」

真緒
「だから、そういう自分の気持ちはいらないってば」

せえら
「ですけど、なさけにゃーですわよ」

真緒
「八十記、頼む……」

せえら
「しょーがにゃーですわね」

真緒
「じゃあ再開」



村娘がこちらへ歩いてきます。
人魚姫は慌てて海に身を隠しました。


せえら
「……誰か倒れてますわね」


「……う」

せえら
「は!? まさか王子様!?」


「……き、きみは? 君が助けてくれたのか?」

せえら
「王子様しっかりするですわ!」


こうして王子様は無事お城へ帰る事が出来ました。
ですが、命を救ったのは人魚姫ではなく、村娘だと勘違いをしたまま……



「メーコ、暗い顔してどしたの?」

芽衣子
「……カナデ、私は人間になりたいわ。人間になって王子様の横を歩いてみたいの。手をとりあって、一緒に……」


「それは無理だよ。だって人魚じゃん」

芽衣子
「そ、それはそうだが、だが私は……」


「海の中の方がずっといいし。王子とかロックじゃないし」

芽衣子
「し、しかし私は王子を……」


真緒
(……まぁ、続けようか。でも岸岡の人魚姫ははまり役だな)


海の良さを分かっていても、どうしても人間の世界に行きたい人魚姫。
ある日、その願いを叶えてくれる魔女の元へと向かいます。


莉緒
「……来たわね」

芽衣子
「私を人間にしてほしい」

莉緒
「……できるわよ」

芽衣子
「ほんとうか?」

莉緒
「ええ、この薬を飲めばね」

芽衣子
「その薬を私に!」

莉緒
「その代わり、あなたの声を貰うわ」

芽衣子
「声…だと?」

莉緒
「……ひっひっひっ」

芽衣子
「………」

莉緒
「さぁ、どうするの?」

芽衣子
「……くっ、仕方あるまい。よこせ」

莉緒
「……そんな横暴な態度じゃあだめね」

芽衣子
「……欲しいです」

莉緒
「あら、土下座がないわよ?」

芽衣子
「……貴様」


真緒
「カーーーーーーーーーっと!」

莉緒
「なんでよ!」

真緒
「二人ともだめ。素が出てるぞ」

芽衣子
「……申し訳ありません」

莉緒
「……まったく」

真緒
「再開!」



芽衣子
「……欲しいです」

莉緒
「そうかいそうかい、なら持っておいき」


そして人魚姫はその場で薬を飲みました。
その薬はとても苦く、人魚姫は苦しみます。
そして……



「大丈夫かいキミ!」

芽衣子
「………」


「どうしてこんな所で倒れていたんだ」

芽衣子
「………」


いつのまにか浜辺で倒れていた人魚姫。
偶然にも、王子様が助けてくれました。



「キミ?」

芽衣子
「………」


王子様に会えた事、人間になっている事を喜ぶ人魚姫。
でも、感謝の言葉を言いたくても声が出ません。



「まさか、声が出せないのか?」

芽衣子
「………」


人魚姫を不憫に思った王子は、人魚姫を連れて城へと戻ります。
そして二人は、お城の中で時を重ねていきます。



「今日はお城の中を散歩しようか」

芽衣子
「………」


「ふ、いいトイレがあるんだが、いかないか」

真緒
「カット!!!」


「やはりか」

真緒
「トイレはだめだって。ロマンもなんもないだろ」

真緒
「再開!」



「庭を散歩しようか」

芽衣子
「……」


喋れない自分に代わって、色々話をしてくれる優しい王子様。
人魚姫はとても幸せでした。
そう、声が出せないでも……



「実はねメーコ、ぼくも君と同じようにあの浜辺で倒れて助けられた事があるんだ」

芽衣子
「…」


「あの時助けてくれた女の子、ぼくは女神に見えたよ」

芽衣子
「…」


「実はね、こんどその子と結婚しようと思うんだ」

芽衣子
「…!?」


「キミも知ってるだろう。セーラさ」

芽衣子
「……!?」


人魚姫は驚きました。
王子様を助けたのは自分なのに、王子様は勘違いをしてる。
それを伝えれば、王子様はきっと自分と結婚してくれる。
そう思っても、思いを伝える事が出来ません。



「泣いて喜んでくれてるのかい。ありがとうメーコ」

芽衣子
「……」


悲しみに暮れる人魚姫。
そんな様子を見ていた人魚姫の姉が彼女の元へおとずれます。


芽衣子
「……」

寮長
「メーコ、人間の世界は辛い事だらけなのよ。
あなたもよく分かったでしょう」

芽衣子
「…」

寮長
「人魚に戻って、また私たちと暮らしましょう。
それがあなたの幸せよ」

芽衣子
「…」

寮長
「人魚に戻るための方法を魔女から聞いたわ。
この短剣で王子様の心臓を貫くの。
そしてそこから流れる血であなたは元に戻れるわ」

芽衣子
「…」

寮長
「メーコ、待ってるわよ」


短剣を渡された人魚姫。
王子様を殺せるはずもなく、でも叶わぬ恋をまじかで見る事も耐えられない。
そんな葛藤の中、いつしか人魚姫は王子の寝室へと来ていました。



「すうすう」

せえら
「すうすう」


「ん、八十記さん香水を変えたのかい?」

せえら
「あら、よく気づきましたわね」


「まぁ、こう密着してたらな。いい匂いじゃないか」

せえら
「くんくんと嗅ぐなですわ!」


「うほっ、いい匂い」

真緒
「かーーーーーーーーーーっと!!!」


せえら
「またですの」


「やれやれ、キミときたら」

真緒
「もうちょっとなんだからさ、真面目に頼むって」

真緒
「じゃあ再開するぞー!」




「すうすう」

せえら
「すうすう」

芽衣子
「…」

短剣を王子にむける人魚姫。
しかし、愛する人を殺す事は出来ませんでした。


人魚に戻る事も出来ない人魚姫。
失意の中、あの浜辺へとやってきました。


芽衣子
「……どうせ捨てる命ならば、私の恋を邪魔したあの女を道連れにすべし」


そして人魚姫は、短剣を握り締め魔女の元へ向かいました。


真緒
「かーーーーーっと!!!」


芽衣子
「だめですか? やはり復讐をせねばと」

真緒
「しなくていいし、喋っちゃだめ! 寮長ものっちゃうし……」

寮長
「ごめんなさい、ちょっとふざけちゃいました」

真緒
「ま、まぁたまにだしさ、気にしないで」

芽衣子
「……真緒様、早く続きを」

真緒
「よし、再開!」



人魚に戻る事も出来ない人魚姫。
失意の中、あの浜辺へとやってきました。


芽衣子
「………」


そして人魚姫は、そのまま深い深い海の底へ沈んでいきました。
やがて泡となって消えるまで……




寮長
「……おしまい」

真緒
「うん、いいね。お疲れ様」

寮長
「悲しい話ですね……」

真緒
「寮長……」

寮長
「ごめんなさい、ちょっと悲しくなってしまって」

真緒
「いや、女の子だなぁって思ったよ」

寮長
「先生……」

莉緒
「ちょっとそこ!」


「寮長め……やるじゃないか」

真緒
「またお前らは……」


「出番少なくてつまんなかったし」

莉緒
「そうよ、配役変えなさいよ!」

せえら
「ですわね」

真緒
「そうだな、色々やってみるか」

莉緒
「じゃあ次の配役は……」





人魚;芽衣子
王子:阿部高
王子の結婚相手:せえら
魔女:莉緒
人魚の姉:寮長
その他:人魚の友達イルカとか:北上


気が向いたら題材や配役変えたの書くかも
こういうの楽しい



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最終更新:2011年10月23日 12:11
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