206 名前:続き1/4[sage] 投稿日:2011/05/09(月) 04:20:32.25 ID:76gP5y1c0 [2/5]
595-89の続き
で、母の日でカレーを作ることになった。
結局、なぜか意地でもビーフカレーを作りたいちなみと一緒に買い物に行き、カーネー
ションと牛肉(他の材料は全部あったわけだし)を入手。
そして、帰って来たのだ。いざ、カレーを……
「……で、何で他人んちの母の日でかなみがプレゼント持ってきてんだ?」
そう、何故か家に帰ってきてすぐに、見計らったようなタイミングでかなみが入ってき
た。しかも、他人の母の日なのにケーキなんぞ持って。
「あら、悪いの?」
「いやまあ、義母さんも喜ぶだろうけど……」
「そうそう、母親も同然だもの。……念のため言っておくけど、深い意味はないわよ?」
「深い意味?」
「な、なんでもないわよ!」
よくわからないが逆ギレられた。
というか、うん、やっぱり『母の日→他人の母親にプレゼント持ってくる』って図式は
おかしいと思うんだ。
しかしまあ俺個人としては違和感があるだけで、悪いことじゃないと思うんだが……問
題は、妹君のほうはお気に召さなかったらしいことだ。
「……かなみさん、ご丁寧にありがとうございます。……では」
「あら、帰れってことかしら? ご挨拶ね」
「……これから用事がありますので」
「用事?」
「……兄さんと二人で、料理を作らなくてはいけません」
『二人で』のところに少しアクセントが置かれていた。やっぱり母の日だから、子供で協
力しましたみたいな空気は必要なのかもしれない。……かなみが不機嫌なのは謎だが。
「あら、なら私も手伝うわよ?」
「……結構です。母の日ですから、母さんの子供二人だけでやりますので」
207 名前:続き2/4[sage] 投稿日:2011/05/09(月) 04:21:10.07 ID:76gP5y1c0 [3/5]
きっぱりと言い放つちなみであった。
「……あら、なら私もいいんじゃない? 子供みたいなものでしょ?」
「ああ、たしかにそうかもな」
「――っ!?」
「え……っ……?」
「いや、何で二人とも驚いてるんだ? かなみだって小さいころからの知り合いだし実質
母さんの子供みたいなもんだろ」
「…………そうですね(……ほっ」
「……そうね(……はぁ」
実に対照的な反応だった。何か変な事言ったか?
「でだ。とにかく、ケーキはありがたく頂戴するとして……カレーは?」
「……二人だけで作ります」
「なら、私とタカシで作ればいいんじゃない?」
「待て、当初は俺が花でちなみが料理の予定だったんだ。……かなみと俺で作ったらもは
や意味が分からん」
「……では……やはりここは、二人だけで料理をするということで……いいですね、かな
みさん?」
「せっかくだから私も手伝うわ。……あ、別に、ただヒマだからよ?」
「……兄さん、どうしますか?」
「あー……」
睨みあいの末にちなみに催促され、しばし考える。……二人で料理をしたいちなみと、
ヒマだから手伝いたいかなみ……。
「――あ、そーだ。そもそも俺はカーネーション買ったわけだし、かなみとちなみで作れ
ばいいんじゃね?」
「「却下。……それなら三人でやるわ(やります)」」
「あ、ああ……」
二人の発するよく分からない圧力に押され、結局三人でやることにした(なった?)。
208 名前:続き3/4[sage] 投稿日:2011/05/09(月) 04:23:05.24 ID:76gP5y1c0 [4/5]
「ありがとう。とっても美味しいわ」
「……良かった」
「そうね」
ほっと息をなでおろす二人。なんだかんだで、姉妹のように息の合った二人が作ったカ
レーは義母さんにも好評だったようだ。
息が合いつつも二人が競うように作業するもんだから、俺は野菜洗ったり米炊いたり、
あまり味とは関係ないことばっかりやってたわけだが。
「それにしてもまあ、二人とも料理上手いから、そりゃそうだよなぁ……。つか、いつか
らだったか……二人揃っていつのまにか料理上手になったよな」
「あら、タカシ……あなた知らなかったの?」
「え、何が?」
「かなみちゃんもちなみも、タカシが出かけて家に居なかった日には、私が料理を教えて
たのよ?」
「そりゃ居ない日じゃ分からんけど……それにしてもまあ、いつのまに……」
まったくの初耳である。
言われてみれば、今日のカレーも『いつもの味』っぽさがある気がする。カレーじゃ分
かりづらいが。
「初めは卵も割れなかったのに、二人とも競うように覚えちゃってねぇ……」
「べ、別に競ってなんていません!」
「……そ、そんなことない」
感慨深げに言う義母さんと、真っ赤になって否定する二人。影での努力が晒されるとい
うのは、第三者の前ではやっぱり恥ずかしいものらしい。
「ふふ、でもその調子だと……まだ勝負は決まってないみたいね」
「勝負って……二人とも何か勝負してるのか?」
二人に聞いたつもりが、最初に口を開いたのは義母さんだった。
「そうねぇ……。一つ言えるとすれば、タカシにとっては、良い事ではないのかもしれな
いけど……タカシは、私と血が繫がってなくて良かったかのもしれないわよ?」
「は? いきなりどうしたのさ?」
質問に返ってきた的外れな回答に思わず聞き返すが、義母さんは微笑むだけだった。
209 名前:続き4/4[sage] 投稿日:2011/05/09(月) 04:27:03.09 ID:76gP5y1c0 [5/5]
「……母さん……余計なこと言わないでっ……!」
「あらごめんなさい」
義母さんは何故か凄んでいるちなみを平然と受け流し、
「あ、でも……血が繫がってたほうが良かった子もいるかしら?」
「べ、別に私は、し、知りませんっ!」
かなみのこともからかっていた。
結局、その後も最後の勝負が何なのかは分からず仕舞いだったが、そんな三人の漫才を
見ながらいつもより数倍楽しい食卓を堪能したのだった。
「……あれ、かなみ、そういえば」
「何よ? アンタには料理なんてしてあげないわよ」
「いや、そうじゃなくて……母の日で、かなみのお母さんには何渡したんだ?」
「……………………あ」
「お前っ……うちの義母さんに渡して、本物に忘れてどうすんだよ!」
「あ、明日っ! 明日買いに行くわよっ!! 付いてきなさいっ!」
「いや、一人で行けるだろ……」
翌日、かなみに強制連行された買い物先で学校帰りのちなみと鉢合わせて修羅(ry
最終更新:2011年06月09日 21:27