タ「お、椎水さんからメール来てる。"このお店いい雰囲気っぽいし評判もいいみたいだから、今度行ってみない?"だって」
つ『すっかりメッシー君ですね』
タ「ちゃんと割り勘だって!・・・それにしても、椎水さんもかなりネットを有効に使えるようになったなぁ」
つ『タカシよりよっぽどリア充的な使い方ですよね』
タ「悪かったな・・・」
つ『でもまあフリーみたいですし、誘ってくれてるってことは十分脈ありますよ。そろそろ次のステップへ進みましょうか』
タ「次のステップというと?」
つ『食事だけじゃなくて、デートしましょう』
タ「で、でででデート!?D・A・T・E!?」
つ『恋したっていいじゃない・・・って誰得なネタ言ってる場合じゃなくて・・・今時、小学生でもそんなにドギマギしませんよ。本当にヘタレですね』
タ「そう言われても、女の子とデートなんてしたことないから・・・」
つ『大丈夫です。ヘタレタカシでもうまくいくようにフォローしますから』
タ「(映画って・・・デートとしては良くないんじゃなかったか?)」
つ『(初心者のタカシには喋らなくてすむ映画はちょうどいいでしょう。観終わった後は自然に話題ができますし)』
か「この映画観たいと思ってたの!でも人気あるから結構並ばないといけないって聞いてて・・・」
か「別府君がチケットレスで観る方法教えてくれて助かったわ。携帯電話でこんなことできるなんて」
つ『(ほら、誘う口実としては良かったでしょ?)』
タ「(まあ確かに・・・)いや、俺も観たかったしちょうどよかったよ。じゃあそろそろ入ろっか」
か「うぇぇぇん・・・あんな切ないラストだなんて・・・」
タ「あのセリフは泣けるよね・・・"悔しいが、オレはお前に憧れた"・・・って」
か「ふぇぇ・・・」
つ『(タカシ、そこでハンケチの出番です)』
タ「(ハンカチだろ・・・なんで関西訛りなんだ)・・・椎水さん、ほら、これ使って」
か「ぐすっ・・・ありがと・・・」
か「・・・別府君って新しい技術とかには詳しいのに、時々やることが昭和よねwww」
タ「昭和!?・・・そ、そうなのか・・・」
か「別にけなしてないわよ。そういうのってなんか落ち着けるし」
タ「あ、ありがとう(///)」
か「さて、泣いたらなんかお腹空いちゃった・・・もしまだ時間あるなら、ご飯食べに行かない?」
か「ああ美味しかった!やっぱりデザートが美味しいお店っていいわよね♪」
タ「肉が脂っぽいって文句言ってたくせに・・・椎水さんは甘いものに弱いよねwww」
か「うるさい!女の子はスイーツ()があれば幸せなの!!www」
つ『(すっかり仲良くなってる・・・私、今日はほとんど何もしてないのに・・・)』
つ『(このまま・・・二人くっつくのかな・・・)』
つ『(・・・"くっつくのかな"って何言ってるの・・・そうするのが私の役目でしょ・・・)』
タ「じゃあ今度ケーキバイキングでも行く?」
か「いいわね。私ブリッ子じゃないから、本気で元とりにかかるわよ?www」
タ「採算気にするのかwwwしっかりしてるなぁ」
か「もちろん!・・・あ、ちょっと向かいのコンビニ寄りたいんだけど、いい?」
タ「ああ、いいけど」
か「じゃあ行こっか」
タ「あ、まだ信号赤だy・・・」
ブーン
か「え?」
タ「あ、危ないっ・・・」
つ『(バイクが突っ込んでくる!・・・椎水さんぶつかりそう・・・)』
つ『(助けないと・・・)』
つ『(でも・・・)』
つ『(・・・)』
つ『(・・・なに躊躇ってるの!?・・・そんな場合じゃ・・・)』
タ「椎水さん!」
ガバッ
か「きゃっ!?」
ズザーッ
タ「ぐっ!」
か「っ!!!・・・いたた・・・」
か「・・・え?・・・な、なに?・・・どうしたの?」
バイク乗り「バーロー!信号無視して飛び出すんじゃねー!!死にてーのか!!!」
ブロロロロ
タ「はぁ、はぁ・・・椎水さん、大丈夫?」
か「う、うん・・・別府君・・・助けてくれたの?」
タ「間一髪だったね・・・良かった・・・」
か「あ、ありがとう・・・」
タ「立てる?」
か「う、うん・・・」
ガクガク
か「・・・ちょっと・・・無理みたい・・・」
タ「わかった。じゃあ俺の手に捕まって」
か「うん・・・」
ギュッ
タ「よっと!」
グイッ
か「・・・」
タ「よし・・・歩ける?」
か「だ、大丈夫・・・うん・・・」
タ「あ、足すりむいてる!ストッキングも破れちゃったね・・・」
か「これぐらい・・・大したことないわよ」
タ「俺んちこの近くなんだけど、ちょっと休んで行く?救急箱あるから手当てぐらいできるよ」
か「え?・・・でも、そんなの悪いわよ・・・」
タ「別に遠慮することなんかないよ。・・・まあ、無理にとは言わないけど」
か「・・・」
か「じゃ、じゃあ・・・ちょっとだけ、お邪魔しようかな・・・」
タ「OK。こっちだよ」
つ『(・・・)』
つ『(何もできなかった・・・)』
つ『(なんであそこで一瞬躊躇ったんだろ・・・)』
つ『(・・・私は・・・)』
タ「どうぞ。狭い所で申し訳ないけど」
か「お邪魔しまーす・・・へぇ、意外ときれいにしてるじゃない」
タ「意外かなぁ・・・(ま、つぼみに普段から部屋を片付けておくように口うるさく言われてたからだけど)」
タ「その辺座っといて。今救急箱持ってくるから・・・(ガサゴソ)」
か「ありがと。救急箱なんかがある辺りが、やっぱり別府君らしいwww」
タ「そ、そう?」
か「ところで、その前に・・・その・・・お手洗い・・・借りていい?(///)」
タ「トイレ?そこの右にあるドアがそうだよ。ユニットバスで悪いけど・・・」
か「ううん、大丈夫。じゃ、ちょっとお借りするわね」
か「ありがと・・・(///)」
タ「(うぉ!?生足!?・・・そっか、破れたストッキングを脱いだのか・・・)」
タ「(・・・いかんいかん!生足ぐらいで興奮してどうする!!)」
か「あ、あの・・・手当ては自分でするから・・・救急箱借りていいかな?」
タ「へ?あ、うん・・・はい、どうぞ」
か「ありがとう・・・」
タ「ゴミはそこのゴミ箱に入れといて。その間にお茶でも入れるよ」
か「あ、そんな・・・お構いなく・・・」
タ「いいっていいって。あったかいもんでも飲んだ方が落ち着くだろうし」
タ「(つぼみ・・・)」
つ『(はい・・・?)』
タ「(なんか・・・今日は大人しいな。手助けしてくれないのか?)」
つ『(いえ、そういうわけでは・・・大丈夫ですよ。私が手を出すまでもなくうまくいってますから・・・)』
つ『(この調子で・・・頑張って下さい・・・)』
タ「(わかった。でも、いざとなったら頼むぞ?)」
つ『(はい・・・)』
つ『(・・・)』
タ「はい、ミルクティー。椎水さん、好きだったよね?」
か「ありがと。ちゃんとわかってるのね」
タ「これだけ一緒に食事してれば、好みは大体把握してるよw」
ゴクゴク
か「あ、美味しい・・・」
タ「こないだ椎水さんが言ってたやつなんだ」
か「あれなの!?ちょっと、なに黙って買ってるのよ!」
タ「いやぁ、こんなこともあろうかと、黙っといて驚かすつもりでw」
か「もぉ、意地が悪いんだから・・・って、え?"こんなこともあろうかと"って・・・」
タ「あ、いや、別に変な意味じゃなくて!・・・た、ただ、一緒に飲む機会があったら・・・って思っただけで・・・」
か「・・・」
か「・・・うん、美味しい・・・」
か「・・・」
か「今日は本当にありがとう。別府君が助けてくれなかったら私・・・」
タ「気にしないでよ。上手く助けられなくて怪我させちゃったし・・・」
か「そんな・・・あのままぶつかってたら、こんなのじゃすまなかったし・・・」
タ「いいからいいから・・・それより、俺の方こそありがとう。怪我はあれだけど、今日は楽しかったよ」
か「私も楽しかったわよ。映画も良かったし、食事も美味しかったし・・・怪我はあれだけどwww」
タ「あれってなんだよwww」
か「自分が言い出したんでしょwww」
つ『(・・・仲・・・いいなぁ・・・)』
タ「あ、おかわりいる?入れてくるよ」
か「じゃあ、今度は私が入れてくるわ。別府君は休んでて」
タ「いや、それは悪いよ。怪我だってしてるのに」
か「大丈夫よ、こんなかすり傷ぐらい」
タ「いいからいいから。椎水さんこそ休んでてよ」
か「大丈夫だって・・・」
つ『(・・・)』
つ『(・・・えいっ!)』
ガタッ
か&た「「あっ」」
タ「・・・」
か「・・・」
タ「(え?なにこの状況・・・)」
タ「(二人ともこけて・・・俺が椎水さんの上に馬乗り状態に・・・?)」
か「・・・」
タ「(うわっ、ど、どうしよう・・・)」
か「・・・」
グッ
か「・・・」
タ「(え?ええぇっ!?椎水さんが目を瞑った!?・・・こ、ここここれって・・・)」
か「・・・」
タ「(うぅぅ・・・俺も男だ!やってやる!!)」
チュッ
か「ん・・・」
タ「(キ、キスしてる・・・俺が・・・椎水さんと・・・?)」
か「んん・・・」
タ「(こっからどうするんだ!?・・・初めてで舌はマズイよな?・・・)」
か「・・・」
タ「(一旦・・・離すか・・・)」
スッ
タ「・・・」
か「・・・」
タ「あ・・・いや、その・・・」
か「・・・」
タ「・・・椎水さん」
か「・・・何?」
タ「俺・・・椎水さんのことが・・・好きだ・・・」
か「・・・」
タ「き、急にこんなこと言って・・・ごめん。でも、前から好きだったんだ」
か「・・・」
タ「ごめん・・・迷惑・・・だよね・・・」
か「・・・」
か「ううん・・・嬉しい・・・」
タ「そうだよな、やっぱり迷惑だよな・・・」
タ「・・・って、え?」
か「私も・・・別府君のこと・・・好き(///)」
タ「し、椎水さん!?え?ほ、本当に!?」
か「今まで自分の気持ちよくわかってなかった・・・別府君のこと、友達って思ってたし・・・」
か「でも、今日よくわかった・・・私、別府君のことが・・・好きです(///)」
タ「椎水さん・・・」
か「別府君・・・」
ギュッ
つ『(・・・)』
つ『(タカシ・・・)』
つ『(おめでとう・・・ございます・・・)』
つ『(・・・)』
か「じゃあ、私、そろそろ帰るね(///)」
タ「うん・・・気をつけて。椎水さん」
か「もぅ・・・かなみって呼んでよ・・・"彼女"なんだから(///)』
タ「わ、わかったよ(///)・・・気をつけて、かなみ」
か「ありがと。じゃあまたね、タカシ」
タ「うん、また」
スタスタスタ
タ「・・・」
タ「うぉぉぉぉぉぉ!名前で呼んじゃったよ!!」
タ「くぅぅ・・・とうとう俺にも彼女が!」
つ『タカシ・・・』
タ「おぉ、つぼみ!聞いてくれ!!俺、椎水さん・・・じゃなかった。かなみと付き合うことになったんだ!!!」
つ『知ってますよ』
タ「これもつぼみのおかげだよ!ありがとう!!」
つ『これが私の仕事ですから』
タ「いやぁ、ほんとにかなみと付き合えることになるなんて・・・」
つ『正直、タカシみたいなヘタレをここまで持ってくるのは骨が折れましたよ』
つ『意中の女性がいながらまともに挨拶もできない体たらくで、交差点でぶつかるというような強引な展開を使わざるを得ませんでしたし』
つ『それからも進展に何ヶ月もかかる始末で・・・まったく』
タ「つぼみには感謝してるよ」
つ『当たり前です!私の力が無ければ、今でもまだ空気ですよ?』
タ「だろうな・・・」
つ『彼女ができた以上、私がタカシといられるのもこれまでです。今後はもう手助けできませんから、自力で仲を保って下さいよ』
タ「・・・そうか・・・そうだよな。俺の願いは叶ったんだもんな・・・」
タ「つぼみ・・・今まで、本当にありがとう」
つ『なにしんみりした顔してるんですか。私はやっとヘタレから開放されてせいせいしてますよ』
つ『あ~、次はもっと大物に会ってでっかい願い事叶えたいな~』
タ「そうだな。つぼみならできるだろうな」
タ「・・・で、どうするんだ?壷の中に戻るのか?」
つ『はい。その後はもう二度とタカシの前には現れません。一度願い事を叶えた人の前には出ないことになっていますので』
タ「そうか・・・壷はどうなるんだ?」
つ『壷の公的な所有者はタカシなので、好きにして下さい。ただの壷として所有してもいいですし、他の人の願い事のために手放してもいいですし・・・』
タ「・・・」
タ「・・・わかった。正直寂しいけど・・・壷は手放すよ。他の人の願い事を叶えてやってくれ」
つ『そうですか。まあ壷を飾るのが似合うほど豪勢な家でもありませんしね』
タ「そうだなw・・・もう行くのか?」
つ『はい。これ以上はいられませんので・・・壷に帰ります』
タ「そっか・・・これまでホントありがとう。元気でな」
つ『タカシの方こそお元気で・・・それでは』
タ「ああ、じゃあな』
つ『・・・』
タ「ん?どうした?」
つ『いえ・・・では、失礼します』
つ『・・・』
つ『タカシ・・・さようなら・・・』
キラッ
タ「・・・」
タ「さよなら、つぼみ」
フッ
タ「つぼみ・・・」
タ「あいつ・・・泣いてた?」
タ「・・・まさか、な」
つ『(タカシ・・・)』
つ『(・・・)』
つ『(・・・お幸せに・・・)』
男「あ、またいつものスレが落ちてる・・・この時間帯は厳しいなぁ」
男「しょうがない、また立てるか・・・」
男「それにしても・・・この壷どうしたもんかなぁ」
男「警察に届けても、3ヶ月経って落とし主が現れなかったから僕のものになっちゃったし」
男「とりあえず、お約束としてさすってみるか」
サスリサスリ
男「さあ、壷の精だか魔人だかよ、我の願いを叶えたまえ」
モクモク
男「へ?・・・け、煙!?」
男「なんで!?火なんかつけてないのに・・・ええっと、小火器・・・じゃなくて消火器・・・」
?『ちょっと待って下さい』
男「・・・え?」
?『なんなんですか。最近は消火器を言い間違えるのが流行ってるんですか?』
男「なんだ君は!?」
?『私は・・・』
つ『私はつぼみ、壷の精です。アナタの願い事を叶えてさし上げます♪』
fin.
最終更新:2011年10月25日 22:23