595.5-646の続き

71 名前:妹老成和風味付けその二 1/4[sage] 投稿日:2011/05/20(金) 00:57:43.72 ID:XtcG4SKlO [3/7]
休日に久しぶりの晴れ間が見えたので、貯まった洗濯物を一気に
片付けることにした。
乾燥機も便利だが、やはり天日に干した服には勝てないと思う。
全て干し終える頃には額にうっすらと汗が浮かんでいた。
縁側に腰を降ろし、手ぬぐいで汗を拭った。
時折吹く風が心地良い。
これなら昼過ぎには乾いてくれるだろう。
今日は予定も無いし、良い機会だ。
普段気になっていた家の掃除をするのも良いかもしれない。
ぼうっと庭を眺めていると風に揺れる布に目が泊まった。
物干し竿を一本独占しているそれは、サラシだった。
妹の纏が肌着として使用している物だ。
時代錯誤な物だが、普段着が着物なので違和感はそれほど無い。
というか、スカートを穿いてる姿の方が違和感がある。纏自身、
いまだに制服姿を嫌がってるからな、あいつ。
着物型の制服だったら喜んで着るだろうに。
まぁ、スカート姿だからこそ制服文化も普及したんだろうけど。
ははは、日本人ってエロいなぁ。
「兄上、そんな所で何を笑っておるのじゃ?」
噂をすれば影。
胴着姿の纏がいた。
「別になんでもないよ、気にするな。これから風呂か?」
手拭いで汗を拭いながら纏が隣に、少し間隔を開けて正座する。
「うむ、先程まで道場に居たからのう、汗を流したいのじゃ」
「じゃあ、その胴着も折角だから洗っとくか」
洗濯は終えたが、元々手洗いで洗う衣類だ。問題は無いだろう。
「調度良いや、今から風呂なら服脱いでけ。洗うから」
「は!?」
纏が素っ頓狂な声を上げて目を見開いた。
「僕、水貯めてくるから。下着も脱いで、そこ置いといて」

72 名前:妹老成和風味付けその二つ 2/4[sage] 投稿日:2011/05/20(金) 00:59:44.07 ID:XtcG4SKlO [4/7]
「し、下着も脱いだら裸ではないか!」
「ん? 風呂入るんだから裸でも良いだろ?」
「そうではなく! それに兄上に洗濯を押し付ける訳にはいかぬ!」
両手を突き出して左右に頭を振る。その動きに合わせて髪が波の
ようにうねった。
「別に、今更だろ。何年僕が家事をやってると思ってるんだよ」
「それでも、じゃ! これは儂が風呂の後に洗っておく!」
「それじゃまた汗かいて二度手間だろ? ほら、寄越せって」
「うぅ・・・・・・」
なんだか泣きそうな顔になりながら俯く纏。
中々レアな表情だ。
「なんだよ煮え切らないな。自分で洗いたい理由でもあるのか?」
聞くと纏は俯き気味に上目遣いで僕を見て、囁くように言った。
「・・・・・・・・・・・・くさいから」
「ん?」
「汗くさいと思うから、自分で洗いたいのじゃ・・・・・・!」
言って、顔に朱を増やしながらそっぽを向いた。
・・・・・・あぁ、なるほど。
女子高生だもんな、自分の匂いを気にしてた訳だ。
「そうか、まぁ良いから服を脱げよ」
「・・・・・・話を聞いておったのか? あとその台詞は犯罪じゃな」
「うんうん、バッチリ聞いてたぜ。ところで纏、ちょっと来い」
手招き。
怪訝そうな顔をしながらも、探るように近づいてくる。
十分手の届く距離になったとき、僕は纏を抱きしめた。
華奢な躯だ。
その黒髪を指で梳くと、ふわりと鼻腔をくすぐる纏の匂い。
ミルクのように甘い匂いだ。
「あ、兄上!?」
腕の中で纏が狼狽するのが伝わってくる。

73 名前:妹老成和風味付けその二つ 3/4[sage] 投稿日:2011/05/20(金) 01:01:19.60 ID:XtcG4SKlO [5/7]
落ち着かせるように何度も髪を梳いてやる。
「うん、僕はお前の兄さんなんだぜ? あんま見くびるなよ?」
だから、
「臭いはずが無いだろ? 安心しろ、ちゃんと良い匂いだぜ?」
「・・・・・・そ、そうかの?」
「そうそう、これは全部纏が毎朝頑張ってる証だもんなー」
「・・・・・・・・・・・・兄上は時々、こういうことをするからずるいのじゃ」
「ん? 何だって?」
「何も言っておらん・・・・・・そろそろ離してくれぬかの?」
「あぁ、風呂入るんだったな」
纏を解放すると、その真っ赤に染まった顔が現れた。
何かいいたげに口を動かし、しかし何も言わずにバネのように立
ち上がった。
「・・・・・・服を脱ぐから、向こうを向いておれ」
「別に気にすることもないでしょ」
「良いから向け」
「はい」
ははは、体を鍛えてる奴の本気の恫喝って超怖ぇ。
毎日、父さんに鍛えられてるだけの事はあるな。
しばらく後方で服の擦れる音が続き、やがて止んだ。
「袴と胴着を置いておくからの」
「ん? 下着もついでに洗うけど?」
「じゃから、それだと裸ではないか」
「別に家の中なら良いんじゃないか? 一人暮らしの男子大学生と
かなら普通の事だぜ」
「いや、儂、女子高生じゃから」
大和撫子じゃから、とため息を吐くのが分かった。
合わせるように風が吹いた。
干されているサラシが揺れる。
それを見て、さっきまで気になっていたことを思い出した。

74 名前:妹老成和風味付けその二つ 4/4[sage] 投稿日:2011/05/20(金) 01:03:27.93 ID:XtcG4SKlO [6/7]
「あっ、そうだ」
振り向く。
「なっ!?」
下着姿の纏が硬直した。
そのサラシが巻かれた薄い胸に注目する。
近付いて触れてみるとなだらかな丘では有るものの、同学年の女
子とでは格差社会が一目瞭然だ。
個人差と言われればそれまでだが、しかし。
「・・・・・・やっぱサラシで締め付けてると、育つ物も育たないんじゃ
ないかなぁ。なあ纏、最近は和装用のブラとか有るらしいし、一度
母さんに相談してみればどうだ?」
「・・・・・・のう、兄上」
纏が言う。
とても晴れやかな笑顔で。
「ん?」
「ちょっと歯を食いしばってくれるかの? こう、いーって」
「いー・・・・・・こうか?」
「うんうん、そうじゃよ。それじゃあ・・・・・・」

「死ぃねぇぇぇぇぇ!」

纏が拳を握った。
僕が覚えているのはここまでだ。
そして、三途の川はこの世に在るのだと知った。

~続(かない)~
最終更新:2011年05月21日 01:02