110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[>>95の続きもどき] 投稿日:2011/03/30(水) 12:58:33.70 ID:JHnuEPag0
一日目、スカートをちょっとだけ短くしてみた。
二日目には、三つ編みをといてみた。
三日目はコンタクトを買って、眼鏡を外してみた。

「へえ…まあ、なんだ。結構可愛いな。びっくりした」

君はそんな言葉しか言わなかったけれど、その驚いた顔がなんだか嬉しくて。
だからその日以来、私は学校生活をずっとそのままで過ごした。

一ヶ月後、私は告白された。
別に残念、という訳ではないのだけれど、君以外の男子から。

一応、まだ異性と付き合う事は考えられないとか、そんな理由をつけて告白はお断りした。
しかし…どうやらイメージチェンジひとつで、男子内での私の人気が急騰してしまっていたらしい。

それからというものの、私の高校生活はどうにもやり辛いものになってしまった。

いつ、どこに居ても誰かの視線を感じるような感覚。
人が私に抱くイメージを壊さないようにと、不必要に身の回りに気を張ってしまう。
君に私の姿を見せびらかしてやりたいというのに、あの図書室にもあまり足を運ぶ事が出来なくなった。

友達は増えた。人と話す回数も増えた。メールアドレスの登録件数も増えた。
昔の私になかったものをたくさん得た。けれど、昔の私が持っていたものがなくなっていった。

イメージチェンジから三ヶ月、私は全てをリセットする。
私はスカート丈を戻し、三つ編みにし、眼鏡を掛けた。

美少女クラスメイト(少し誇張しすぎか)の突然の変化に周囲から多少の反応が上がったが、それも数日立つとすっかり凪ぐ。
今の私は元の通り、ただの無口な文学少女。強いて言うなら本当に気の合った数人の友人と、一部のマニアな男子が交遊録に残った。

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[2/2] 投稿日:2011/03/30(水) 12:59:46.49 ID:JHnuEPag0
図書委員くらいしか人の居ない、放課後の図書館に足を踏み入れる。

「…おや。久しぶり」
「………ん」

君は相変わらずボーッとした顔でカウンターに座っている。
…随分と淡白なものだ。かなり長い間顔を出さなかったというのに、久しぶりの一言で終わりか。

私は本棚の裏に隠れ、カバンからコンタクトを取り出す。
スカートを織り込み、三つ編みを解き、手鏡で少し自分の姿を整えた。

そう、最初からこうすればよかったのだ。
君の驚いた顔が見たいだけのイメージチェンジなのだから、君以外のやつに見せてやる事なんてない。

「……え?…ん、あれ?」
「………何」

仏頂面でシラを切る。
どこか不思議そうな、でも照れたような顔が、やっぱり嬉しい。

読みかけの小説を片手に席に座る。
たったひとりの視線を感じて、本を読みながらも、私の頬の緩みは収まらなかった。
最終更新:2011年04月03日 20:20