22 名前:1/6[] 投稿日:2012/05/27(日) 12:12:24.92 ID:qa9h/lI/0 [2/7]
お題作成機:後輩・おねんね・えっちな本 その3
「こっちは……JKマガジンとか、妹の秘密……とか、何でこんなエロ本ばっかりが……」
先輩が本のタイトルを読み上げるのを、私は無言で聞いていた。恥ずかしさと悲しさで
いっぱいいっぱいで、もう何にも考えられなくなっていた。
「あのさ――」
先輩がついに、私に声を掛けて来た。ビクッと大きく体を震わせ、私は顔を上げた。先
輩の顔は、まだ状況を理解していないようで、困惑した表情を浮かべている。しかし、私
は先輩の顔を見続けることが出来ず。すぐに顔を逸らしてしまった。
『なっ……何……ですか……?』
一言、声を出すたびに体の熱が高くなっているのを自覚する。胸もキリキリと痛い。も
うどうやってもごまかしようの無い状況で、私はただ、先輩の言葉を恐々と待つしかなかった。
「これって……一体、どういう状況? 何で起きたら、エロ本が散らばってるんだ?」
ストレートに疑問をぶつけられて、私の心臓がギュッと縮こまる。一瞬、答えに迷った
が、私と先輩の二人しかいないこの家で、答えなんて一つしかないに決まってる。私はも
う、やけっぱちな気分で答えた。
『何でって……わ、私が散らかしたからです。他に誰がいるって言うんですかっ!!』
怒ったように叫ぶ私に、先輩がびっくりした顔をする。確かに先輩からしてみれば、何
で怒られるのかさっぱり分からないだろう。
「待て待て待て、落ち着けって。いや、ちょっとまだ事情がよく飲み込めないけどさ。大
体、何で椎水がこんな本を散らかしたりするんだよ?」
寝起きのせいか、本当に先輩は事情が分かっていないらしい。きっと、私とえっちな本
が結び付かないんだと思う。かと言って、言い逃れしたり出来る状況でないという現実に
変わりはなかったが。
『……片付けようとしたからです。さっき地震で落ちて来たから…… そうしたら、机の
角に足ぶつけて、その拍子に落っことしてバラまいたんです。これで納得出来ますか?』
開き直って、私は聞かれたことに対する答えを全部答える。黙ってたってどうせ辛いの
は一緒だ。どのみちバレるのだったら、自分から言ってしまった方がまだスッキリする。
「そっか。片付けようとして……って、お前……ぶつけた足は大丈夫か?」
23 名前:2/6[] 投稿日:2012/05/27(日) 12:12:48.38 ID:qa9h/lI/0 [3/7]
『そっちですかっ!!』
予想外に心配されて、私は思わずツッコミを入れてしまう。こういうところで、先輩っ
て何かズレてるのだ。
「い、いや。机の角っこに小指ぶつけるのって、超痛いじゃん。俺もたまに柱の角とかぶ
つけた事あるけど、骨折れたんじゃねってくらい痛かったからさ。だから、大丈夫なのか
なって……」
『平気ですってば!! その……まだちょっと、痛いですけど……でも、指とかちゃんと
動きますから!!』
むしろ今まで足の痛みなんてさっぱり忘れていたのに、今の一言で思い出してしまう。
答えつつ、自分でぶつけた箇所に触れて確かめてみるが、強く押すと痛む程度まで治まっ
ていた。
「そっか。それなら良かったけど」
何の気なしに呟いて、先輩は手にした本を見つめる。それは何だか、自分の裸を見られ
ているくらいに恥ずかしくて、私は正視出来なかった。
『……私は、全然良くないです……』
ただ、それだけ答えて、私は唇を噛む。やや脱線したが、次は絶対に聞かれるだろう。
その時を覚悟して、私はギュッと体を硬くした。しかし、先輩は、予想外の言葉を発した。
「ほれ」
『え?』
顔を上げて先輩を見ると、私に向かって先輩が本を差し出していた。
「……片付けるんだろ? これ」
真面目な顔で、まっすぐに私を見る先輩の差し出す本を、私は無意識に受け取ってしま
う。それを床に置き、私は先輩を見た。先輩は、自分の周りの本を拾って積み上げている。
その感情を消した様子に、私は先輩が、敢えて聞いて来ないんだと察した。
『何で……聞かないんですか?』
「は?」
先輩が手を止め、顔を上げて私を見た。挑むように先輩を見つめる私に、先輩はしばら
く無言でいたが、私が何も言わないのを確認して、視線を落とし、エロ本を見つめて答える。
「……聞かれるの、嫌なんじゃないのか?」
24 名前:3/6[] 投稿日:2012/05/27(日) 12:13:15.05 ID:qa9h/lI/0 [4/7]
そして、窺うように私をやや上目遣いに見つめる。しかし、私にとってはこの状況で気
遣われても、却って痛いだけだ。だから、私は先輩を睨み付け、キッパリとした口調で言った。
『……気になるんだったら、聞いて下さい。むしろ、先輩に変にあれこれ考えられる方が、
よっぽど嫌ですから』
「いや。椎水が忘れてくれって言うなら、俺は――」
『無理です!!』
先輩の言葉を遮り、私は叫んだ。
『先輩に出来るのはせいぜい、知らなかったフリをする事だけです。一人になれば……絶
対に、思い出すに決まってます。私は、それも嫌なんです。だけど……聞いてくれないと、
答えられないから……だから……』
泣き出しそうになるのを懸命に堪えて、震える声でもう一度お願いする。せっかく先輩
が気を遣ってくれているのに、それを自分からブチ壊すのもどうかと思うが、結局のとこ
ろ、真実は一つしかなくて、あとはごまかしでしかないのだから。
「分かった。椎水がそこまで言うなら聞くけど……」
先輩が了承して頷く。そして、途中で言葉を切り、私が止めないのを確かめてから、た
めらいがちに質問してきた。
「その……何で、椎水の部屋にこんなのが仕舞ってあったのかなって、それが不思議でさ。
片付けるのに、わざわざ部屋に持ってくるはずもないしと思って。だから……」
私は、両手を拳にしてギュッと握った。心臓がバクバクして、体が震える。しかし、も
う逃げ道はないのだ。自分で塞いだんだから。私は、必死で口を動かして、答えた。
『……私の……だから……です……』
「椎水の?」
鸚鵡返しにそう問い返され、私はうつむいたまま、チラリと先輩の顔を見上げる。しか
し、何の表情も浮かべず、ただ真っ直ぐと真面目な顔で私を見つめているだけだった。私
は、コクンと縦に首を振る。
『そうです。私の……です。これ……全部……』
それだけ言うと、もう限界になってしまい、口をギュッと真一文字に結ぶ。先輩の顔は
もう見れなかった。先輩がどう思っているか、考えるだけでも胸がはちきれそうだった。
なのに、先輩は何も言って来ない。動いたような気配も感じられない。感情が次から次へ
と沸いて出て止まらなくなり、とうとう漏れ出してしまう。
25 名前:4/6[] 投稿日:2012/05/27(日) 12:13:37.09 ID:qa9h/lI/0 [5/7]
『……軽蔑……しましたか?』
「は……?」
私の言葉に、先輩が意外そうな声を上げて返す。それがきっかけで、僅かであった感情
の漏れが、とうとう奔流となって溢れ出てしまった。
『軽蔑……してますよね? だって女の子がこんな本持ってるなんて、普通有り得ないで
すもん!! 私の事……スケベだって思ってますよね? エッチな本ばかり読んで淫らな
妄想してる、下半身の緩い、ビッチだって、そう思ってますよね?』
「ちょっと待て。俺は誰もそんな事――」
『言ってなくたって、思ってるんでしょ!!』
顔を上げて、先輩を睨み付けた。ボロリとその瞬間、目から涙が零れ落ちる。泣くまい
と腕で目を拭ったが、一度決壊した涙腺は、もはや止まる事はなかった。
『ごまかさなくたっていいです!! 嘘なんて……気を遣わなくたっていいです……だっ
てだって……持ってたのはホントなんですからぁ……』
「お……おいおい。ちょっ……泣くなって!!」
慌てて先輩が傍ににじり寄り、近くにあったティッシュで私の目から零れ落ちる涙を拭
う。私は、先輩のされるがままに顔中を拭われながら、嗚咽交じりに言う。
『だってだって……先輩……絶対軽蔑してるからぁ……ヒック……ヒック……』
それに先輩が、即座に反論して来た。
「誰が軽蔑してるなんて言ったよ。別に椎水がエッチな本持ってたからって、軽蔑なんて
してないし」
『嘘……うそです!! じゃあ……どう思ったか、言って下さい……』
両手で目を擦り、霞む目で先輩を見つめる。先輩が答えに困ったら、すぐに追求するつ
もりだったけど、先輩の答えは早かった。
「……いや。椎水がこういうの好きだったってのは意外だったけど……別にいいんじゃね
ーの? 女の子がえっちなマンガや雑誌見たって、俺は構わないと思うんだけど」
充血した目を瞬き、私は先輩を見る。ちょっと困ったようなその横顔に、私はさらに追
及を重ねた。
『それは、えっちな本を見る女の子一般に対しての事ですよね? 私……私の事は……ど
う、思ったんですか?』
先輩はチラリと私を見て、また視線をずらす。
26 名前:5/6[] 投稿日:2012/05/27(日) 12:13:58.42 ID:qa9h/lI/0 [6/7]
「どう思ったかなんて……まあ、椎水もエッチな事に興味あるんだなってくらいしか……
潔癖でそういうの嫌いだとばかり思ってたから、意外だとは思ったけど、でもまあ、女の
子だってそういう妄想したり本読んだり、実際にマンガとか描いちゃう子だってたくさん
いるんだから、別にそんな特別って訳でもないだろうし……」
先輩の答えを聞いていると、どうにも一般論に逃げたがっているようにしか聞こえなかっ
た。しかも、何か答えにくそうで、何かまだ隠している事がありそうに思えて仕方が無い。
だから私は、もっと突っ込んだ質問をした。
『……それじゃあ、知る前と後で、私の印象って何か変わりました? 変わったとしたら
どう変わったかも教えて下さい』
こう聞けば、もっと率直な思いが聞けるだろう。そう思って私は先輩ににじり寄る。先
輩は戸惑ったように体を後ろに逸らし、エラの辺りを指で掻く。
「変わったかって言われても……ただ、椎水の趣味の一つを知ったってだけで、それほど
何かが変わるって訳でもないし……」
『しゅ……趣味って!!』
ボフッと擬音が付くくらい顔を真っ赤にして私は思わず叫んだ。やっぱり、実はエッチ
な事が好きな女の子だという印象は付けられてしまったらしい。いや、それ自体は否定し
ようも無かったが、こうもさり気なく言われると、むしろ酷く恥ずかしい。
「ご、ゴメン。上手い言い方が見つからなかっただけで、気に触ったなら謝るよ」
私が怒ったと思ったのか、先輩の方が慌てて謝罪する。私は小さく首を横に振ると、不
貞腐れたような顔で横を向いた。
『いえ……もういいんです。ただその……趣味って言われるとちょっと…… もともとは、
そっちに興味があって集め始めたわけじゃないので……』
納得の行かない気持ちを口にした時、つい余計な事まで言ってしまう。すると案の定、
その言葉に先輩が食い付いて来た。
「そっちって……エッチな事? エロ本買うのに、エッチな興味以外で、何があったの?」
私は僅かに顔をしかめた。これを答えるのも自分の恥を晒すような物だったが、しかし
どうせもう、晒すだけの恥は晒したのだ。今更多少上塗りしたところで、どうって事は無い。
27 名前:6/6[] 投稿日:2012/05/27(日) 12:14:27.33 ID:qa9h/lI/0 [7/7]
『……それは、その……男の人に色っぽく見られようと思ったら、どうすればいいんだろ
うって…… 私、胸もお尻も小さいし、友達にも子供っぽいって言われるから…… だか
ら、男の人に……少しでも興味を持って貰えるのには、男の人が読んで興奮するような本
を読めば少しは勉強になるのかなって思って……』
「それで、エッチな本で勉強しようと思ったって?」
言葉を途切れさせた私の後を、先輩が受け継ぐ。それに私は、頷いて答えた。
『だってだって、女の子目線じゃなくて、男の子目線で知りたかったから…… それで、
買い続けてるうちに、いつの間にか量は多くなるし、捨てられないし……』
溜まった理由までぶちまけると、初めて先輩が笑った。
「あはっ。それって、男にとっていつも悩みの種なんだよな。溜まったエロ本どうしよう
かってのは」
『まさか、先輩も悩んでるとか言わないで下さいよ?』
思わず、いつもの調子で詰問する態度になった私に、先輩がおどけてワザとらしく両手
を広げて肩をすくめる。
「おいおい。もしそうだと言ったとして、まさか俺を責めるつもりじゃないだろうな?」
その言葉は、ザクッと鋭い槍のように私の心臓を突き刺す。弁解の余地無く、私は頭を
下げざるを得なかった。
『……すみません……ドスケベな女の子で……』
ガクッと頭を垂れると、上に何かがそっと乗っかるのを感じた。顔を上げると、それが
先輩の手だと分かる。先輩は優しく私の頭を撫でながら、頷いて苦笑する。
「全く、椎水って本当に真面目なんだな。こんな事まで勉強する為にエッチな本買うなんて」
『茶化さないで下さい!! 私は、その……私なりに、真剣だったんですからっ!!』
バカにされたような気がして思わず手を払いのけると、それでも先輩は頷いてみせた。
「分かってるよ。だから真面目だって言ったんだよ」
『うう……』
言い返せなくて、私はまたも頭を垂れてしまう。そんな私の顔を覗きこむように見て、
先輩が聞いてきた。
「で、成果は出たのか?」
最終更新:2012年06月08日 00:55