52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/05/26(木) 02:29:50.57 ID:6LlKKaqj0 [1/2]
最近ツン期続き……
てわけで、いつだかのスレで書いた生徒会の話
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun2059.txt
↑の続きを↓に書いた。
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun2060.txt

まとめてうpったほうが良かったんだろうかなぁと思いつつUP
あと、やっぱ人数多いのってすごい書きづらいよねっていうw




――――――――――2

 その日(山田事件)から時計が一回り。
 一日経って、またいつものグダグダした活動が始まった。
 相変わらずやることは変わらない。仕事があればちょこっと仕事をして、終わればその
後はお茶汲み会長モードだ。
「先輩方、お茶です……」 
「頂こう。……ふむ……熱いな。せっかくの甘味が飛んでいるぞ?」
「うむ……湯を沸騰させすぎじゃ。せっかく儂が奮発していい茶葉を持ってきてやったと
いうに……」
 雑務が終われば、こうしていつものように窓際でくつろいでいる尊先輩と纏先輩にお茶
を出す――いつも通り手厳しい。

「リナ……お茶だ」
「あら……わたくしは紅茶が良いのですけど?」
「どうせ一人だけ安い茶葉使って紅茶出しても文句言うんだろ?」
「当然ですわ」
 先輩二人より手前の机に座っている副会長のリナは――いつも通りのわがまま宣言。

「はい二人とも、お疲れ様」
「ありがとうございます」
「……頂きます」
「――どうだ?」
「別に……普通のお茶です。葉はいい物のようですが」
「……お茶『は』良いと思います」
 リナの机の次は、入り口側の二人掛けの長机の前へとお茶を持っていく。
 ちなみとかなみの後輩二人――いつも通り小生意気。

 そして作業が終わった友子に。
「はい友子。お茶」
「……ありがと、会長」
 いつも通り唯一まともな反応をしてくれ――――あれ?
「え、えーっと友子……それだけ?」
「え、何?」
「いや、なんていうか……いつもより冷たいというか反応が薄いというか素っ気無いとい
うか……元気がないっていうか……?」
 いつもなら『ありがと~!』くらいのノリの良い声が返ってくるはずなのだが、今日は
機嫌が悪いのか、間延びしたような口調が一切無く、。
「気のせいだと思うよ」
「いやいや、目が笑ってないですからね? 声もオクターブ単位で低いからね!?」
「会長」
「はいっ、何でしょう?」
「とりあえず……静かにして下さい」
「は、はい……」
 つい昨日までの友子とはまるで違うオーラに、思わず畏まる。何があったかは分からな
いものの、やっぱり虫の居所が悪いのだろう。
 ……とはいえ、一緒に仕事する仲間だ。ここはひとつ、皆にも協力してもらって友子を
元気付けてあげようと思う。


 それから10分後、部活動中の友達に呼び出されて(役員が生徒会室に常駐しているか
ら、便利屋的な側面もある)友子が席をはずしている間に、手近なところ……隣の机でヒ
マそうにお茶を啜っているリナに相談を持ちかけた。
「リナ」
「何ですの?」
「なんか……今日の友子、おかしくないか?」
「まあ……当然といえば当然ですわね」
 当然……? 含むところがありそうな反応だ。
「何か知ってるのか?」
「胸に手を当てて考えてご覧なさい」
 そう言う自身は額に手を当てながら、心底呆れたように返されてしまった。
 うーむ、心当たり心当たり。昨日まで普通だったのに今日は突然――――

 ――――ああそうだ、一つあるじゃないか。

「もしかして昨日山田が書いたラブレター渡したことか!」
 昨日のうちに山田を追い回して報復を終え、いつのまにやら満足して記憶の隅に追いや
っていた。
「おお、そういえば溜まってた宿題と報復で忘れてた!」
「ニブっっすぎですわっ――!」
「いだっ!? ――合ってんなら叩くなっての!」
「気付くのが遅すぎるからですわ!」
 引っ叩かれたが、これでちゃんと原因は分かった。
「どおりでなぁ……ってあれ、でもそれなら山田が怒られるべきだろ?」
「ほんっとにお馬鹿……」
 二個目の疑問に答えることなく、リナはため息を一つつくと、それっきり黙り込んでし
まった。


「――――ってわけなんですが……どうしてだと思います?」
「知るか」
「戯けめ」
 いつのまにやら将棋を打ち始めていた先代会長副会長コンビに聞いてみても、冷たい反
応が返ってくるだけだった。ていうかなぜこの人たちも怒ってるんだろうか?
「あ、あと尊先輩、そこからなら五3歩で、その次に桂打ちこむ感じじゃないですかね」
「む……おお、そうか! 助か――って、勝負中に余計な真似をするなっ!」
「ぬ……!? これタカシっ、入れ知恵なぞするでないわっ!」
 結局成果が全く無かったので、ちょっとした腹いせがてら場を荒らして、窓際のプチ将
棋部から去ることにした。


「――ってわけなんだが二人とも「知りません」――あ、あの、どう思「……自分で考え
てください」――あ、はい何でもないですすいません」
 双子に至っては何も言わせてくれなかった。怒っているというよりは拗ねているという
表現がしっくりくるかもしれないが……どっちにしろ、まともに質問すらさせてもらえな
かった。
 後輩からもこの扱い……正直、泣いて良いのかなと思った。





 ――――だぁっ、一切解決しねぇっ!!
 いい加減まどろっこしいのには嫌気がさしたため、本人に聞くことにした。
「友子っ!」
 ちょうど呼び出された用事が終わったらしく生徒会室前の廊下を歩いていた友子をひっ
捕まえて開口一番、
「すまん!」
 謝ることにした。
「……何? なんで会長がいきなり謝ってるの?」
 相変わらずの冷めた口調だが、いきなり謝ってくるのは想像していなかったのか、友子
の表情には戸惑いの色が強い。
「分からん」
「はぁ……?」
「分からんが、昨日の山田の一件で怒らせたらしい。だから……すまん!」
「あ、うーん、えっと、わ、分かった……うん、許してあげる!」
「え、マジ? もっと色々言われると思ってたんだが……」
 逡巡した後、何かを吹っ切ったような表情で、友子は突然いつもの明るい声に戻った。
 だが、自分の中でもやもやとした感情が残る。
 なんだろう、あれだけ皆に原因聞いて回って(結局罵倒されただけだけど)たのに、こ
こまであっさりと許されてしまうと、こちらも戸惑ってしまう。
 原因が分かってないのに謝る→許してくれたからまあいっか――さすがにこんな図式で
終わらせてしまっては、自分も納得できない。
 この際だからと開き直って、全て正直にぶちまけてもらおうと思い友子に聞く。
「なぁ友子、言いづらいんだが……結局なんで怒ってたんだ? 山田の一件だってことだ
けは分かっているんだが……」
「うーん、そうだなぁ…………」
 友子は一瞬だけ悪戯っぽい視線を向けると、
「――――うん、宿題っ!」
 とだけ言った。
「し、宿題ぃ……?」
「そう、宿題。どうして山田くんからのラブレターなのに、私がタカシに怒ったのか……
分かったら……その時に答え合わせね!」
「え、ああ……?」
「はい、この件は終了~っ! ほらほら、皆待ってるから生徒会室戻るよっ!」
 結局何も解決していない上によく分からない宿題まで出されたが、友子の機嫌が直った
から……まあいいか。
 色々と気になっていたが清々しい表情で言い切られてしまってはこれ以上の追求もでき
そうにない。いつもの友子らしくなったので、これで善しとしてしまおう。友子の真意を
聞くのは、『宿題』の意味が分かったその時になってからでもいいだろう。



――――――――

 タカシが『トイレに行ってくる』と言い残している間に、女子による内緒の会話が行わ
れていた。

「はぁ……ほんと鈍すぎて……」
「ご愁傷様です、友子さん」
 しみじみと言う友子を気遣って、代表して声をかけたのはかなみだった。
「かなみちゃん……ま、いいのよ。宿題は出したことだしね」
「宿題?」
「そ、皆にも……宣戦布告っ! 種は蒔いたからね、詰まれる前に芽がでたら……私の勝
ちだよ。たぶんね」
 説明など無くても、どこぞのバカと違って察しのいい五人は、 
「「「「「……!」」」」」
 絶句していた。

 どうやら、今までは水面下で牽制を繰り返していた局面も、変わりつつあるのかもしれ
ない。


――――――――

「まずい……先を越される」
「うーむ……いかんのう……」
「このままでは……いけませんわ」
「どうしよう……」
「……困りました……」


 トイレから戻ると、壁に向かって話しかけている何か宗教じみた集団が居た。
「友子……あの五人、なに壁際でブツブツ呟いてるんだ?」
「蹴られたくないなら近づかないほうがいいよ」
「……よく分からないが、肝に銘じておこう」
 触らぬ神に祟りなし。触ってなくても祟りはあるが、近づかなければ確率は減らせる。
最近、悲しい処世術が身に付きつつあるのかもしれない……。


最終更新:2011年06月20日 22:25