199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/06/09(木) 04:22:42.34 ID:7wrIqmZR0
最近見てるだけだったし……
忘れたころに妹ちなみと相合傘してどうたらこうたらの続きをうp
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun2102.txt



間が空いたせいで続くごとにだんだんよく分からない感じに(ry




 これまた次の日。
 ちなみと自分は、まるまる一日の休息とかなみの看病(という表現には多分な語弊があ
る)の甲斐があって(これもダウト)一日だけで回復できた。
 一応高校入試を控えた受験生の(どこの高校でもあっさり受かりそうだが)ちなみは、
昨日やりそびれた宿題その他を終わらせると言って家で勉強中。
 もう一方の自分はといえば、今日はかなみの家にお邪魔している。

 なぜかというと……



「けほっ、けほっ……ぅー……」
 この通り、現在咳き込んでやがるコイツの見舞いだ。
「まさか本当に風邪貰っちまうとは……なんか……ごめんな?」
「全くね。誰のせいでこんなになっちゃったんだか」
「いや、ホントすまん」
「冗談。……別にいいわよ。元々は私が……アンタの部屋で……寝ちゃったからだし」
 布団をかぶったまま気まずそうにしているかなみの頬が赤いのは、照れて赤くなってい
るのではなく、今度こそ確実に風邪だ。
 おばさんから「症状は軽いけど、もし時間があったらかなみもヒマそうにしてるだろう
から様子を見てあげて」と電話を貰ったので来たわけだが……原因が原因だけに『風邪を
引いた』なんてかなみが自分から言うはずも無く、知らせてもらって正解だった。
「……悪かったわね、見舞いなんか来させて。……おかげさまで部屋の片付けが大変だっ
たわよ」
「いや、どうせヒマだし構わな…………ん? その口ぶりだと来ないほうがよかったりし
たのか?」
「べ、別にそんなこと無いわよ? ……ただ部屋を片すのが大変だっただけで」
 かなみに嘘をついている素振りはない。
 つまり、別に来ないでほしかったというわけではないらしいが……
「なら片付けくらい言ってくれれば俺がやったのに。風邪引いてるんだからムリに動かな
くていいんだぞ?」 
「アンタに見られちゃ困るのよ。……察しなさいよね」
 そっぽを向いてぶつくさと呟く仕草を見るに、今度は照れているらしい。
 見つかってはいけないエロ本を頑張って隠していたりすると、自分もこんな表情になる
かもしれない。一度ちなみがブチ切れて勝手に処分して以来その手の物を持つのはやめた
んだけど。
 話が逸れたが……とにかく、かなみは追求はしないでほしいということらしい。
「ああ、何かマズイものが置いてあったんなら……まあ……そういうこともあるよな」
「ち、違うわよ!? ヘンな物なんて置いてないわよ?」
「はいはい分かったわかった。……安心しろ、エロ本一冊で差別したりしない――あごぉ
っ!?」
「そんなもの置いておくわけないでしょうがっ、この変態っ!!」
 チョップをくれたかなみは、とても病人とは思えないほどの元気のよさだった。
「いててて……そんなに見つかっちゃマズい物でも置いてあったのか?」
「ふ、ふぇっ!? そ、そそそそれは、その、あの……えーっと……ノーコメントっ!」
「やっぱりエロほ――ぐふっ!?」
「だから違うって言ってるでしょうがぁっ!!」
 犬歯をむき出しにして抗議するかなみには、ずいぶんな迫力があった。よほど見られた
くない物らしい。
「あてて……わかったわかった、散策するのはやめるからそう拗ねるなって」
「ふんっ、どうだか」
「まあまあ、病人のかなみさんに代わって何でも手伝うからさ」
「……やることなんて何もないわよ?」
 そりゃあそうだよな。実家暮らしなわけだし。
「そっか。メシとかは?」
「もう食べた。飲み物もさっき飲んだし大丈夫」
「だよなー」
 ちょっとくらい手伝いが要るかと思ったが、何もかも終わっていた。小学生のガキじゃ
あるまいし、世話と言ったところでそんなものの必要性なんてないのだった。
「んじゃ、元気そうだし、長々と居座るのもアレだから帰るか……また明日な。治ってた
らちゃんと学校来いよ?」
 ひらひらと手を振って、かなみの部屋のドアを開いて、
「ま、待ちなさいよ!」
 ――開き終わる前に呼び止められた。
「んぁ? 待てって……何かあんのか?」
「ないけど……」
「様子見に来たら平気そうだし……あとはほら、寝てればいいじゃん?」
「それでなんでアンタが帰ろうとするのよ!」
「かなみが寝てたんじゃやる事ないし」
「う……わ、分かったわよ……じゃあ起きてるから看病しなさい」
「あのな、『看病しろ』ったって、メシ終わってるし飲み物も平気だし……どうすんだっ
ての」
「あぅ……それは……」
 かなみは、勢いだけで言ってしまった手前、見るからに言葉に詰まっていたが、ふと呟
いた。

「……いね」

 かなみの言葉が聞き取れなかったので聞き返す。
「え、何だ?」

「――そいねっ!」

「……添い寝だぁ?」
「――――そう、添い寝っ! 一緒に寝るヤツよっ!!」
「やることないんなら……そ、添い寝しなさいっ!! そうよ、すればいいじゃないっ!」
 びしっとこちらを指しながら命令するかなみ。今までに無い新鮮な添い寝の要求方法で
ある。
 血迷った血液も全部顔に集まったらしく、ようやく落ち着いてきていた頬がまた真っ赤
になっていた。
「き、聞いてるの!? そ、添い寝しなさいよ!! どうなの!?」
 コイツは何を言っているんだろうか?
 だが、あえて退かない。
「おう、分かった」
「――ぅえぇっ!? そんなにあっさり!?」
 動揺したかなみが素っ頓狂な声をあげながら、吹き飛ばすように布団を捲り上げて『嘘
でしょ!?』とでも言いたげな視線を向ける。
 さっきから、およそ病人には不釣合いなリアクションのオンパレードだ。
「もちろん冗談だ。……ま、どうせやることも無いんだし、かなみが寝付くまでは適当に
ボーっとしてるさ」
「……そ、そうよね。それで勘弁してあげるわ」
 勘弁してやると言いつつ、ほっ、と一息吐くかなみ。
 過剰なアクションが減ったら減ったで相変わらず偉そうな口ぶりだが、寝るまで一緒に
居てやるだけだと分かって安心したらしい。
 と、ここまで言っておきながら今さらになって気が付いたらしい。

「あ、もし寝てる間に……へ、ヘンなことしたら……許さないんだからね……?」

 かなみは、枕を胸に抱きながら不安げにこちらを見上げていた。
 昔から馴染みな上に普段から蔑ろにされているからお構いなしかと思ったが……一応、
かなみ的には『異性』の集合には入っていたらしい。丸投げで信用されてもそれはそれで
傷つくのは、男としての悩みどころだった。
「病人に手出すわけないだろうが」
「そ、そうよね。この根性無しが……手なんか出すはずないわよね……」
 深く息をついたかなみは、さり気なく他人の悪口を言った後で、再び布団を深めにかぶ
って目を閉じた。



 それからしばらくの間があった後。
「……ねぇ」
 目を閉じたままに、かなみが突然口を開く。
「何だ?」
「ちなみちゃん……どこの高校受けるの?」
「さぁな。まあ、どこでも受かりそうだし……公立の上位校か私立の付属じゃないか?」
 一つ下のちなみからテスト前に勉強を教えてもらっている程度には、兄妹間で勉学にお
いての立場が逆転している。
 そんな状態だから、当日の体調以外に心配する要素がまるで見当たらないため、それほ
ど関心も高くない。
「……そうね。あの子頭いいもんね……」
 時々ではあるものの割とライバルのように張り合っているかなみだが、勉強だけは勝て
た例しがない。それを意識したのか、少し悔しそうに呟いた。
「…………あ」
 しかし、何に気が付いたのだろうか、次の瞬間浮かれたような声に変わる。
「ねぇ……このあたりで頭いい高校って言ったら?」
「そうだなぁ、ここから近いとこだと隣町の進学校だから……電車で四駅くらいじゃなか
ったか?」
「そうよね! 超遠いわよね!」
「いや、超遠くはないだろ、自宅から通えるし」
 熱にやられたのか、些細なことでテンションの高くなっているかなみに冷静にツッコむ。
 確かに徒歩で三十分もしないうちに着く俺とかなみが通う高校よりは遠いが、進学校が
そんなに騒ぐほど遠いわけでもない。
 一方のかなみはそんな事はお構いなしなようで、
「いいえ遠いわ。そう、学年の壁の次は……ふふ……後で電話して謝らなきゃ」
 などと謎なことを呟きつつ、ニヤニヤと妙な笑みを浮かべていたのだった。
「お、おお、遠い……のか? てか、電話?」
 いい感じにラリったかなみに少々たじろいでしまい、上手く言葉が出ない。
「アンタは気にしなくていいわ。……ふふ。今回は勝ちね」
 またもこちらに構う様子はなく、かなみは意味不明な言葉を残して布団に潜り込んでし
まった。
 ――進学校が遠くにあると嬉しいって……どういう状況なんだろうか?

 それから五分も経たないうちに、『……すぅ……にゅぅ……』とかぶった布団の中から
寝息が聞こえてきた。
 少し揺すってみても全く反応がなかったので、どうやら寝てしまったらしい。の●太も
ビックリの寝つきの良さだった。
「……帰るか」
 とりあえず『かなみが寝るまで相手する』という約束は果たしたため、よく分からない
空気の中、そのまま自宅へと帰ったのだった。





 そして家に帰ってすぐに、心配していたらしく今日のかなみの様子を訊ねてきたちなみ
に向かって話をした。
「今日改めて思ったんだが……かなみって、結構変なヤツだよな」
「…………兄さんがそれを言いますか」
「おい、なんかそれだと俺も変みたいじゃないか」
「……残念な国語の成績の割には……ある程度の理解力は望めるようです」
 今日はちょっと機嫌が悪いようだ。
 いや、訂正。だいたいいつもこんなもんだろう。
「国語の成績のことはいいんだ。とにかく、今日はかなみがだいぶキてたんだが、風邪は
別にして……それ以外に何かあったか知らないか?」
「……知りません。……ですが、恐らくは……」
「おお」
 知らないと言う割には、予想は付いているらしい。
 答えを促がすと、ちなみは仕方ないといったように口を開いた。
「…………それは……たぶん、かなみさんが空回っていただけです」
 ずいぶんとタメたくせに回答は呆気ないものだったが。
「え、それだけ? てか、空回る?」
 いまいち要領を得ないちなみに聞き返すが、
「……やっぱり国語の成績同様ダメだったようですね。……理解力不足……不合格です」
 謎の不合格宣言とともに呆れられたっきりで打ち切られ、この会話はあっさり終わった
のだった。
最終更新:2011年06月18日 02:28