「正直困っちゃうんですよねー。
続編で何か知らない設定が追加されたり、既存のキャラを壊すような真似をされると、どっちのノリに合せればいいのか分からなくなっちゃうといいますか。
それに追加されたスキルとかも使っていいんでしょうか。流石にそれは自重した方がいいのかなー?
あ、でも私の宝具とかは効果変更に伴って使い勝手が増したのでそっちに合せちゃいましょうか。
ユーザーが選ぶ使えない宝具ナンバーワンの仕様のままで喜ぶ人なんて誰も居ませんし」
「さっきから何を言っているのだ。余には貴様の言っていることがよく分からん」
「いえいえ、何でもありません。
ただ新しいヒロインの追加とか御免ですという話をしているんです。
間違っても、モブキャラか精々スペシャルドラマの主役でしかなかった健康管理AIとの後付けフラグとかは要りません。
この場は私とご主人様の二人だけの舞台だっつうのに」
夜の街にかしましい声が響き渡る。
赤の男装(?)を纏う金髪の少女と、露出の多い妖艶な和装に身を包んだ妖狐は互いに睨み合い、時には罵り合っていた。
それを横目に女生徒となった自分は無言で進んでいる。少し遅れて
カイトが足を引きづるように歩いていた。
「何を言う。この聖杯、いやバトルロワイアルは余と奏者の約束された勝利の舞台なのだ。
貴様はそれを舞台袖から眺める端役に過ぎんぞ、ん?」
「これだから頭の中までSTR(筋肉)なサーヴァントはまわりが見えていないっていうかぁ。
筋力極振りステが最強なヒロインなんて今日日流行りませんし」
「む。貴様には言われたくはなかったな、キャスター。
そちらこそ言動不確か、足元疎か、な脳筋サーヴァントに見えるが」
「失礼ですね。私はいつも頭の中がは花園なだけです。
ご主人様とハッピーエンドを迎えること以外頭にないといいだけと言って下さいまし。
私のEDこそトゥルーエンドですから。黒幕との戦いなんて二の次以下です」
「花園だとー!?
ま、負けるものか、余だって同じだぞっ!
余のイメージは常に薔薇色だからなっ!」
……可能な限り魔力を節約したいのだが、彼女たちは霊体化をする気はないようだ。
戦闘をしない限り大した量を消費しないとはいえ、サーヴァント三重契約(間違っても三股ではない)という燃費の悪い身である。
少しでも魔力は温存しておきたいとは思うのだが、かといって彼女たちにそれを申し出る気にもなれない。
割って入るとどんな飛ばっちりを受けるか分からないのだから。
「ふふ、セイバーさんとキャスターさん。
仲が良いですね」
そう口にするのはユイだ。
制服のポケットからちょこんと顔を出す彼女は無邪気な表情で、サーヴァントたちの浅ましい喧嘩を見ている。
……仲が良いのとは違う気もするが。
これはあれではないか。男女関係の拗れというか、修羅場というか、その類の……
「それにしてもアーチャーさんは大丈夫でしょうか?
もう少しで合流ポイントですよね。」
行動を開始してから既に一時間ほど経っている。
とりあえず月海原学園に向かうべくアメリカエリアからの脱出を目指しているのだが、
その間にアーチャーは単独行動スキルを活かして偵察を兼ねたエリアの調査をやっている。
時間制限がある以上、エリアすべてを回る訳には行かない。かといってこのエリアの施設を無視する訳には行かない。
そういうことでユイが得たマップデータを下に「怪しそうな場所」をアーチャーに探索して貰っているのだ。
当然単独行動中のアーチャーはマスターの援護なしで戦うことになり、そのことをユイは危惧したのかもしれない。
しかし、恐らく大丈夫だろうとも思う。
自分はアーチャーの実力を知っている。共に聖杯戦争を勝ち抜いた身であるのだから。
歴戦の戦士である彼のことだ。自分なんかよりずっと危機管理能力にも優れている。
……後頭部にアイアスを張るくらいには。
何にせよ、彼は上手くやってくれるだろう。そう簡単に倒れるとも思えない。
「信じているですね、自分のサーヴァントを」
>頷く。
色々と分からないことの多い身だが、その問いには躊躇なく肯定することができた。
「全く、あなたは私がどれだけご主人様を慕っているのか知りませんね。
凛々しい顔立ち、でもちょっと弱々しい表情。
手足は長く、立ち姿とか超好み!
何より魂の所作が清らかというか、儚いのです!」
「ふ……貴様こそ余と奏者の絆を知らぬようだな。
余の奏者への想いはまさに天へ上る火竜のごとく留まるところを知らん。
対する奏者からの想いもまた格別だ。これこそ至高のミューズ!
つまるところだな! 余と奏者はイケイケなのだ!」
「愛されているんですね。自分のサーヴァントから」
>…………。
そこを突くとどんな蛇が出てくるか分からないので、敢えて沈黙を選んだ。
拝啓オフクロ様、などというよく分からない現実逃避ワードが脳裏を過った。
「アァァア……」
しばらく歩いていると、不意にカイトが短く唸り声を上げた。
「着いた、だそうです。
確かにこの辺りが合流ポイントではあるのですが……」
きょろきょろと辺りを見渡す。
正確な座標は【E-8】に当たり、アメリカエリアの丁度切れ目になる場所だ。
見ればなるほど、ビルとビルの向こうに広大な平原が見える。あれがファンタジーエリアなのだろう。
「居ませんね、アーチャーさん」
…………。
メニューウィンドウを呼び出し時刻を確認する。
時間的にはまだ指定時刻には達していない。予定より早めに着いたようだ。
だからアーチャーも別に何かあったわけではないと思いたいが……
「とにかく少し待ちましょう。
私もここ付近のマップデータを解析してみます」
ユイの言葉に頷き、少しの間そこで待っていることにした。
カイトもまたそれに倣いビルの影の仲、静かに佇んでいる。
一見して凶悪な外見をしている彼だが、こうしてしばらく共に行動していると、その性質はとても穏やかなものだということが分かっていた。
「だから、あなたは謎のヒロインXさんの二番煎じでしかないと言いますか。
それに対し、私はこの通り混じりっ気なしのオリジナル、オンリーワン。きゃっ、私ってばヒロイン」
「むむむ、貴様こそやはりあくどいIN-RAN狐ではないか!
隙あらば奏者の貞操を狙っておるなど……む、これは余もか」
サーヴァントたちはサーヴァントたちで楽しそうにしていた。
何だかんだで本気の敵意が迸っていないあたり、彼女たちも互いのことをそれほど嫌ってはいないのかもしれない。
セイバーもキャスターも、共にムーンセルから自分に割り当てられたサーヴァントだ。
自分と上手くやれるとされた者通しもまた相性が良い、と言うのはいささか楽観的推測だろうか。
……結託されて二人で自分を責められる図が浮かび、思わず背筋が凍ったのは内緒だ。
それからしばしの時が経過する。
深夜の闇に包まれていた空模様も僅かに明るくなり始め、時の経過を感じさせた。
その時の流れが、どこかゆっくりと感じられるのは人を待っている間だからだろうか。
「ん、あれは……」
不意にユイが言葉を漏らした。
視線を追うと、そこにはビルの上を行くアーチャーの姿が見えた。
だが、様子が変だった。常に周りを警戒し、あれではまるで戦闘中――
「すまない、マスター!
どうやらまたよからぬ輩を連れてきてしまったようだ」
自分たちの存在に気付いたアーチャーがそう叫ぶのが聞こえた。
と、同時に彼に向かい何かが放たれた。
あれは……矢だ!
「奴め、相変らず面倒なやり口だ」
アーチャーは放たれた矢を難なく剣で弾き落とし、そしてバックステップでそのままビルから降りてくる。
すと、という音がして彼は自分の目の前に降り立った。守るように、その背を見せながら。
それに対し敵意の滲む声が響いた。
「やれやれ、マスターと合流されちまったか。
その少ね……、ん? ありゃ女だったか?」
ビルから見下ろし、そう飄々と呟く彼には見覚えがある。
――緑衣のアーチャー。
聖杯戦争二回戦の相手、シャーウッドの森に潜み圧政者との孤独な戦いを続けたサーヴァント。
「む、奴か。余はどうにもあやつと相容れないのだが。出自的にも性格的にも」
「あの中途半端なイケメンさんですかー、あの人も性懲りもなく再生怪人となった訳ですね」
後ろでセイバーとキャスターも武器を構えるのが見えた。
言葉こそどこか緊張感に欠けるものの、そこに一切の油断はない。
一度倒した相手でも、いや一度倒したことのある相手だからこそ、その脅威は身に染みて分かっている。
「あん? しかも何だ何だその大所帯は。
サーヴァントが、えーと、一、二、三騎?
まさか過ぎるだろ……反則じゃねえのか? おたく」
……その言葉には同意するが、しかし実際『こう』なのだから仕方がない。
反則級ではあるかもしれないが、これでも決して楽な身ではないのだ。
魔力管理は勿論、戦闘指揮においてもマスターに掛かる負担は三倍になってしまうのだから。
しかし、ありすに続き彼までこの場に居るとは……。
消去寸前だった自分がこうして呼ばれているのだから驚くことではないのかもしれないが、
それでもこの人選には何か意味があるのか考えてしまうところだ。
と、その時、幾つかの影が見えてきた。
ビルの間から現れた三つの影がこちらへと駆けてくる。
三人だ。少女が二人に、初老の男性が一人。
――ブラックモア卿……
その中に見知った顔を見つけた時、思わず声を漏らしていた。
ダン・ブラックモア。
アーチャーのマスターにして女王より遣わされた騎士。
そして、自分に戦う意味を問いかけてくれた男性。
彼とまた、こうして会い見えることになるとは。
彼と目が合い、思わず身に緊張が走る。
高潔な人物であった彼が、このようなバトルロワイアルに乗るとも思えない。
では、これは何かの間違い。行き違いだろうか、と考えた。
「…………」
が、しかし自分を見つめるその瞳に友好的な感情は感じられない。
明確な敵意がある訳ではない。ないが、こちらを値踏みするかのような、そんな表情だ。
……前言を翻す。
彼はこのバトルロワイアルに乗っているのかもしれない。
少なくとも彼には『理由』があった。命を賭して戦うだけの『理由』が。それをこの場で求めていても何らおかしくはない。
それに自分は知らないだけで、彼にも冷酷な軍人であった時があるのだ。
「さて、こっちの陣営も揃ったことだし、ダンナ。
二回戦の続きと行きましょう!」
「どうする。マスター」
アーチャーが問いかける。
ここは……
先手必勝!
>ここは逃げる。
話しかける。
もし仮に戦闘の意志がないならば、自分を見た時のあの反応はおかしい。
彼が既に戦うことを決めていたのなら、交渉はそれこそ無意味だろう。彼の意志の強さは知っている。
……それに少なくとも緑衣のアーチャーはこちらに対し明確な戦意がある。このまま行けば戦闘は避けられない。
加えて向こうにはアーチャーの他にも二人の見知らぬ少女が居る。
大剣を構えた褐色の少女剣士と、黒い蝶の羽を背負うお姫様のような少女だ
どれほどの戦力かは未知数だが、アーチャーに加え、彼女らとも戦うことになれば苦戦は必至だろう。
こちらもサーヴァント三騎という『反則』級の戦力を従えてはいるが、それにしたって継戦能力を無視した場合のことだ。
月海原学園までの道中は長い。可能な限り戦闘による消耗は避けたかった。
「分かった。君がそういうのならば従おう」
アーチャーが了解の旨を告げる。
見ると、セイバーとキャスター、それにカイトも頷き返していた。
「撤退ですね。
私が誘導しますので付いてきてください」
胸元がユイの声がした。
それに従い、ダンを警戒しつつもその場を離れる。逃げるならば早い方が良い。まだ結構な距離がある今ならば逃走することも難しくない筈だ。
ユイの誘導に従い、ビルとビルの間の横道に入り、駆けていく。殿はアーチャーが務めてくれた。
幸いにしてダンたちが追ってくる気配はなさそうだが……
「あれ? カイトさんが着いてきていません」
――え?
ユイの言葉に周りを見渡すが確かに彼の姿はなかった。
まさか、あの場に残りアーチャーらを抑えているのか――
「あ。大丈夫です、見つかりました。
すぐ近くに居るみたいで、私たちを追いかけてきてます」
心配が杞憂に終わったことを知り、思わず胸を撫で下ろした。
そうしてしばらく走ると、ビルの乱立する街から抜け出た。
パッと視界が広がり、灰色のビル群に代わって風に揺れる大草原が現れる。
振り向けば今しがた居た街並みが見える辺り、どうやらここは丁度アメリカエリアとファンタジーエリアの境目のようだ。
「アァアァァア……」
「あ、カイトさん!」
しばらくすると、溜息のような唸り声と共にカイトが現れた。
見る限り特にダメージを受けた様子はなく、はぐれた間にも何もなかったようだ。
一体何があったのか、尋ねてみる。
「アァァァァ……」
「……何て言ってるんです? この方」
「そうですね、ちょっと待ってください」
ユイはカイトと幾度かの情報交換をした後、
「えーと、主が昔お世話になった人が居たので挨拶しておいた、ですか?」
「ウ#n」
【E-8/アメリカエリアとファンタジーエリアの境目/1日目・黎明】
【
岸波白野@Fate/EXTRA】
[ステータス]:健康、魔力消費(中)、令呪:三画、『腕輪の力』に対する本能的な恐怖/女性アバター
[装備]:五四式・黒星(8/8発)@ソードアート・オンライン、女子学生服@Fate/EXTRA
[アイテム]:男子学生服@Fate/EXTRA、基本支給品一式
[思考]
基本:バトルロワイアルを止める。
1:月海原学園に向かい、道中で遭遇した参加者から情報を得る。
2:ウイルスの発動を遅延させる“何か”を解明する。
3:榊の元へ辿り着く経路を捜索する。
4:ありす達に気を付ける。
5:カイトは信用するが、〈データドレイン〉は最大限警戒する。
6:ダンたちにも気を付ける。
[サーヴァント]:セイバー(ネロ・クラディウス)、アーチャー(無銘)、キャスター(玉藻の前)
[ステータス(Sa)]:健康、魔力消費(小)
[ステータス(Ar)]:健康、魔力消費(大)
[ステータス(Ca)]:ダメージ(小)、魔力消費(小)
[備考]
※参戦時期はゲームエンディング直後。
※岸波白野の性別は、装備している学生服によって決定されます。
学生服はどちらか一方しか装備できず、また両方外すこともできません(装備制限は免除)。
※岸波白野の最大魔力時でのサーヴァントの戦闘可能時間は、一人だと10分、三人だと三分程度です。
※アーチャーは単独行動[C]スキルの効果で、マスターの魔力供給がなくても(またはマスターを失っても)一時間の間、顕界可能です。
※アーチャーの能力は原作(Fate/stay night)基準です。
【ユイ@ソードアート・オンライン】
[ステータス]:ダメージ(小)、MP70/70、『痛み』に対する恐怖/ピクシー
[装備]:空気撃ち/三の太刀@Fate/EXTRA
[アイテム]:セグメント3@.hack//、基本支給品一式
[思考]
基本: パパとママ(キリトとアスナ)の元へ帰る。
1:ハクノさんに協力する。
2:『痛み』は怖いけど、逃げたくない。
3:また“握手”をしてみたい。
[備考]
※参戦時期は原作十巻以降。
※《ナビゲーション・ピクシー》のアバターになる場合、半径五メートル以内に他の参加者がいる必要があります。
【蒼炎のカイト@.hack//G.U.】
[ステータス]:ダメージ(中)
[装備]:{虚空ノ双牙、虚空ノ修羅鎧、虚空ノ凶眼}@.hack//G.U.
[アイテム]:基本支給品一式
[思考]
基本:女神AURAの騎士として、セグメントを護り、女神AURAの元へ帰還する。
1:岸波白野に協力し、その指示に従う。
2:ユイ(アウラのセグメント)を護る。
[備考]
※蒼炎のカイトは装備変更が出来ません。
最終更新:2013年11月04日 21:55