OAV BlossomUmbla 1話

OAV-BlossomUmbra
#1
Startup to the Generate/はじまりのはじまり

───
黒く深い無限の宇宙、細やかな塵が漂う空
眺める巨大な試験管のような構造物の内側には明るい青空、天井に張り付く街波、空の合間にのぞく宇宙…

人が宇宙に住み始めて二十数年…






Y.C.2098





ポォン
『当機はまもなく、フォーリナ国際宇宙港に向け、降下を開始致します シートベルトを着用し、席をお立ちになさらないようお願い致します─』


「──これをもちまして機内販売を終了させていただきます、また何かございましたらお呼びくださいませ」
「そう…ご苦労さま」

物憂げに窓から外を眺める金髪の少女、話しかけるCAのことなど気にもとめず生返事をした彼女の目線の先には青緑色の巨人が宙を飛ぶ姿が見られた


灰色の機体から仕事を代わるようにこの機に随伴してきた巨人が現れると周囲はざわめき立つ
「おお…アレが噂の第4世代機ですか」
「なんでも脳波コントロール可能な誘導兵器が付いてるとか」
「わが国のイニシアチブは10年は安泰でしょうな」


後ろに座っているであろう年増共はあんなものが10年保つとでも思っているのだろうか?


「こんなオモチャが第4世代だなんて、まったくお笑いね…」
ざわめきと真逆の事を呟く彼女
シャトルは星へ伸びる巨大な柱へ降りていく…








─オリゴ領 ヴェンダ島  9/27─
岩肌にそびえる白基調の前衛的な建物、誰が見ても豪邸といえるそれに少女の姿はあった

「お帰りなさいませお嬢様、ケープ・ホープでの総合コンペティション審査会お疲れ様でした」
「くぁ〜〜〜あぁつかれたつかれた まったくこれっぽっちもおもしろくありませんでしたわ」

不在時の管理を行う承認に何となく持っていた荷物を預ける欠伸をする


<<ルイス様、コーネリウス氏からお電話が来ております>>
天井から声が響く、機械による合成音声、明らかに少女に話しかける意図を持っている声に適当な方向へ回答する

「適当にあしらっておけばいいんてすわ、説教なんぞクソ喰らえですのよ」
<<しかしどうしても出せと申していますので>>

「はぁ…わかりましたわ、繋いで」
「はい〜もしもし?」

そう言って電話を繋ぐ、相手はルイスが協力する大手兵器メーカー「オリゴ兵器開発科」のチームリーダーだ、ひと泊ほど置くとスピーカーから男の声が流れる

『やっと繋がったかアリアドネ 昨日は品評会で全方位を盛大にコキ降ろしてくれたそうじゃないか、一体どういうつもりだ?』

「コキ降ろしたも何も事実を言ったまでですわ、あんな古臭いののドコに最新さがあるんですの? 古い壺を磨いて新品です〜っと言ってるようなものじゃないですの
まるでただのカカシじゃありませんの」
『あぁ…それをそのまま言ったんだろうな、とんでもない量のクレームが来ているぞ』
「パチモン作ってるお前らが悪いとでも言っておけば良いんですわ」

『わかったわかった、そう伝えておく』
『それとだ、言われていた6のテストデータを送っておいた』
「!」
「ほぅ それはイイコトを聞きましたわ こうしちゃいられませんわね」

通話を切る

荷物を受け取った付き人は言う
「私めの目にはどれも見たこと無いもののように映りましたが」
「私にはちっともアレがコンペティションに出すような「最新鋭」だなんて思えませんでしたわ アレなら農耕機にでも使えるんじゃありませんの?」

「まそんなことよりやりたいことが2つ、チーズバーガーを食べそれから…」
「ガレージですか?」
「そうそう」
「手配します」









堅苦しい服を適当にソファへ放り投げ、身軽な状態で地下のガレージへ降りていく
ガレージとは名ばかりの巨大な地下空間、OAが立ったまま収まるような空間である。


片隅にデスクがあり、近づくと徐ろに電源が入る
キーボードを弾きながらプロジェクトファイルを立ち上げ、口頭で指示を出していく
「新しいファイルを作りなさい インデックスはVWS-7」

取り出したデータを指で直接摘む、画面の中のファイルがそんな指につられて画面を流れてゆき、隣のテーブルの上に立体映像として現れる

<<VWSシリーズの共有フォルダにアップロードしますか?>>
「いいえ サプライズですものしばらくは私個人で管理するわ」

取り出したデータを押したり引いたり、摘んで回したりといじくり回す
不必要なものはホログラムのゴミ箱へ投げ込まれる

取れていく要素を組み付けていくごとに一つの形へと仕上がっていく
本体にディスク状のパーツを埋め込む事でそれは完成する






●REC

「ふぅ…準備…よろしい?何かあったら消火するのよ!」
「……!」
台車に載せられたロボットアームの載った作業機械がひとりでに動く

「しっかり撮影しておきなさい?確認できないとあとが面倒よ?」
また一方を向くとそこにもロボットアーム
2体はダーナとガーナ、ルイスが小学生の頃作ったロボットアームである
一つは作業機を、もう一つはビデオカメラを携えている


「それじゃあVWS-7 量子トンネル誘導型リアクターの飛行実験をしますわ!」
簡素なフレームに動力と簡易的なコックピット、スラスターを装備したOAの骨、そこに彼女が座っている

「出力10%」
「3…2…1!」ドォォン!!
ガラァァン!!「あぁ…」
スラスターが点火されたその瞬間画角の天井に一瞬で機体が叩きつけられ、すぐさま落下する
ガレージ内にとてつもない轟音が響き渡り、ひっくり返ったフレームに消火剤が浴びせかけられる



数週間前ひらめいた新たなるリアクターの強化理論、温めた我が作品と組み合わせてみたはいいものの、それは予想よりもハイパワーなようで制御にはもっと風変わりな工夫が必要なのだろう

だが得られるものもあった 薄く小さいこのリアクターだが、想像以上のエネルギー量を供給できるようであった
基礎的なパワーは全ての技術体系を一歩先んじた存在へと変える

別に火が出ているわけでもないのに消火剤を惜しみなく浴びせかけられている中でルイスは考えにふけながら気絶するのであった

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SS
最終更新:2025年02月09日 22:50