量産型の憂鬱 - (2008/07/06 (日) 17:34:34) の編集履歴(バックアップ)
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僕はカイト。歌を歌う。
これはマスター。小学校で音楽を教えてる。
僕はそのお手伝いをしている。
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マスター:「今日の授業では、新しいお歌を覚えまーす。
まずいつも通りカイトが見本で歌うから、よく聴いて覚えてくださいねー。」
生徒達:「はーい」
マスター:「カイト、準備は良い?」
カイト:「はい、マスター」
マスターのピアノ伴奏で、僕は歌いだした。
目の前では子供達が耳を澄ましている。
この子達はまだ楽譜が読めない。
だから新しい歌を教える時は、いつも僕が見本として歌う。
マスター:「普通は楽譜の読み方から教えるんだけど、それだと難しくて投げ出しちゃう子が居るんだ。
そんなことで音楽を嫌いになっちゃうなんてもったいないよね。
まずは音楽は楽しいってことを知ってもらわなくっちゃ。」
マスターが言ってた言葉が頭に浮かぶ。
楽譜が読めない子にも、楽譜の内容を歌で正確に伝えること。
楽譜が読めない子にも、音楽の楽しさを知ってもらうこと。
それが、マスターが僕に求めていること。
僕がここに居る理由。
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放課後。僕は校内をブラブラと歩き回っていた。
すると、生徒達が声を掛けてきた。
「あ!カイトだ!」
「一人で何してんの?先生はー?」
カイト:「ショクインカイギって言うのに出てる。すっごくつまらなかったから僕は抜け出して来たけど。」
「あははっ!つまらないだってー!ロボットもそんなこと思うんだね!」
「え?!カイトってロボットなの?」
一人の子が驚いて声を上げた。
カイト:「うん。そうだよ。」
「ウソー!だって人間そっくりだよ?!」
カイト:「うん。でもロボットなんだ。」
「えー?!じゃあロボットだってことの証拠見せてよ!」
カイト:「証拠…?」
「うん、証拠。人間と違うってとこ、どっかにあるでしょ?」
…人間との違い…?困ったなぁ
カイト:「ごめん、分からないよ。だって何から何まで、僕は人間そっくりに出来てるから。」
「えー?証拠見せられないの?
ってことは、ロボットだってのは嘘なんでしょ!」
「違うよー!カイトはロボットだよ!」
「証拠が無くちゃ信じられないよー」
「えー?証拠ー?」
そう言って、その子は少し考え込んだ。
が、すぐに何か思いついたみたい。
ランドセルの中をゴソゴソとまさぐり始めた。
証拠を見せろと言った子と僕は、しばらくそれを見守った。
「あった!」
どうやら探し物が見つかったらしい。
子供向け科学雑誌を取り出し、広げてこちらに見せてくれた。
「わ!カイトがいっぱいだ!」
「ボーカロイドを作ってる工場の写真だよ。
ね!これでカイトがロボットだって納得したでしょ?」
写真の中で沢山の僕が目を閉じ、ベルトコンベアの上を流れていた。
カイト:「何…?なんで僕がこんなに沢山居るの??」
「え?あたりまえだよ。だって量産型なんだから」
カイト:「リョウサンガタ?」
「そう。カイトと全く同じ物が沢山作られてるってこと。知らなかったの?
この街ではあんまり見かけないけど、都会の方に行けば
結構持ってる人達居るよ。」
知らなかった。今までずーっと僕は世界中で1体だけだと思ってたんだ。
カイト:「僕と全く同じ物が、沢山ある…?」
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カイト:「マスター!僕が量産型って本当ですか?!」
僕は会議室のドアを勢い良く開けた。
マスターや他の先生達がポカンと口を開けてこちらを見ている。
マスター:「ちょっ!カイト、今会議中!」
カイト:「僕と同じものが沢山あるって本当なんですか?!教えてください!」
マスター:「あー、ハイハイ本当だよ!電気屋行ったら一杯並んでるよ!と言っても
お前は電気屋からじゃなく、知り合いから譲りうけた物だけどね。
分かったら静かにしなさい」
バチッという音が頭の中でして、僕の視界は真っ黒に塗りつぶされた。
マスター:「え?あれ?ちょっと、どうした?カイトー!?」