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激突、保健室! ~設楽かが美、再び~ (その1) - (2005/12/10 (土) 00:43:47) の編集履歴(バックアップ)


 こんにちは。設楽かが美です。再びお会いしましたね。私はただ今、御影先生に用事があって職員室へ向かっているところです。今回は別に皆さまへのレポートをしようというわけじゃございません。普通に用事があるだけです。

あら? だれかが向こうで手を振っている気がするけど。

「あ、設楽さん。こんにちは……どうしたんですか? 不思議そうな顔して」

 ささなです。でも、今日はいつもと違って、隣にさらながいない。

「え、いえ。ささなが一人でいるなんて珍しいなって思ったの」

「いやですねぇ、私だって一人でいる事くらいありますよ? どこ行くんです?」

「私? 私は、これからちょっと届けるものがあって御影先生のところへ」

「あ、私もちょっと紗月お姉さまに用事があるんですけど。一緒に行きません?」

 紗月、お姉さま……か。

「……たしかに、うらやましい」

「はい?」

「いえ、こっちの話よ。さ、行きましょう」

私が職員室の方向へ歩き出そうとすると、ささなが慌てて袖を引っ張りました。

「どうしたのよ、ささな?」

「設楽さん、そっちじゃないですって。今、お姉さまは保健室にいるみたいですよ」

「ほ、保健室ですか……」

「どうしました?」

 どうしたもこうしたも。先日、保健室のご紹介はしませんでしたね。実は意識的に避けたのです。あそこは生徒会室に並ぶ魔窟です。なぜなら、本当にどうしようもない不良保健教師、凰蘭に占拠されているのですから。なぜあんなぐうたらで卑猥な人間が、この学校で教師をしているのか? そのうえ、なぜうちの学校のOGで、我がかぐら女子寮のOGで、しかも……あの御影先生と大親友なのか? 理解が出来ません!

「私、凰先生って苦手で……」

「そうなんですか? まぁ、わからなくもないですけど。でも大丈夫ですよ。今日はお姉さまと、それに鳳先生もいますから、いざとなったら力ずくでも止めてくれます」

 鈴置鳳先生。私は彼女もどちらかというと苦手です。悪い先生ではないのですが、どうにも思考が単純な気がして。授業も自分の興味のある範囲とそうでない範囲の内容に差があるし、社会科担当のくせに体育の方が得意だし。基本的に体育会系の人って、合わない。

「そ、そう? ま、でも、行かないと御影先生には会えませんしね。行きましょう」


 ささなと二人、保健室の前まで来てしまいました。前もってはっきり言っておきましょう。わが校の保健室は腐界なのです。凰先生は一時期話題になった「片付けられない女性」の典型で、保健室も常に散らかっていて汚いのです。仮にも薬品や刃物を管理する人があんなで良いのでしょうか? 私には許せません。とりあえず、気を落ち着かせて、深呼吸してからノック。

「すみません。失礼します」

 私はある程度の覚悟を持って扉を開けました。

「え……? うそ、片付いてる!」

 思わず声に出して驚いてしまいました。いつもなら用具や書類が散乱している保健室が、床や窓に至るまできれいになっていたのです。

「うそ、ってあんた、失礼しちゃうわね。まるで普段が全然ダメみたいじゃない」

 凰先生は冗談めかして言っていますが、いつもは腐界そのものじゃないですか。私は思わず睨んでしまう。

「そんな眼しないでよ。かが美ちゃんはひょっとして先生の事嫌い? 蘭ちゃん悲しい~」

 凰先生のふざけた態度に、私の眉毛の角度はさらに鋭角に上がってしまいます。ええ嫌いですとも。口にはけっして出しませんが。

「く、泣き落としは効かないか」

「バカ。ま、優等生の設楽に嫌われても仕方ないね。普段の行いが悪すぎるんだ、お前は」

 鈴置先生も呆れています。彼女は椅子の上で器用にあぐらをかき、肘をついて顎を手のひらに乗せた形で座っています。もう少し女性としての自覚を持って行儀良くした方が良いと思うのですが。まだ寒いと言うのに、いつものようにTシャツに短パンという格好もどうなのだか。心なしか汚れているように見えますが。

「こんにちは、蘭先生、鳳先生」

 私の後ろから遅れてささなが顔を出しました。

「お、ささなもか。設楽とささなって、珍しい組み合わせだね。今日はどうした?」

「はい。御影先生に用事があるのですが、ささなからこちらに来ていると伺ったものですので」

「それで、ここまで一緒に来たんですよ。それで、鳳先生やお姉さまはなんで保健室に?」

「ちょっと、保健室のお掃除を手伝ってあげてたのよ」

 その時後ろから、お菓子と湯のみを乗せたお盆とポットを手に持った御影先生が入って来ました。

「み、御影先生! こんにちは」

「こんにちは、設楽さん」

 御影先生も巫女服ではありませんでした。地味な縞模様の和服にたすきがけ、裾を帯に織り込んで、頭を布で覆っています。なんとなく、田舎のおばさんの掃除スタイルみたい。

でも、そんな機能的な姿もステキです。掃除をしていたのなら、鈴置先生の格好も頷けます。逆に凰先生がいつもの服装なのがおかしく思えますが。

「ささなもいるのね。一段落ついたからお茶にしようと思ったんだけど、湯のみが足りないわね、蘭、湯飲みくらいあるでしょう?」

「い、いえ、お構いなく!」

 狼狽する私の袖を小さくささなが引っ張りました。

「設楽さん、お言葉に甘えちゃいましょうよ」

「ささな、でも。学校の中でお菓子をいただくのは、ちょっと」

「いーじゃないの。育ち盛りなんだから、ちょっとお菓子食べたくらい関係ない……なんで、いちいち睨むのよぉ? くすん」

 凰先生の声を聞くとつい睨んでしまう。もう条件反射のようです。

「そういうことじゃありません。私が問題にしているのは校則の問題で……」

 鈴置先生が苦笑しました。

「設楽、それはちょっと固すぎるってもんだぞ。先生方がお誘いしてるんだから、こういう時はだいじょうぶなのさ。一服して行きなよ」

 鈴置先生のこの大雑把さと、体育会系独特の、先輩が言ってるんだからお前も、っていう考え方になじめないものを感じます。でも、御影先生のお誘いなら仕方ありません。

「そ、そうですね。それではご馳走になります」

 ささなと並んで座った私の前に御影先生がお茶を出してくれました。机の真ん中にはおせんべいやらチョコレートやらが無造作につまれています。

「ごめんなさいね。これ、全部、蘭が持ち込んでいたおかしなの。賞味期限ぎりぎりのばかりでごめんなさい。無理して食べなくてもいいから」

「ったく、一人じゃ片付けも出来ないくせに、いらんものばっかりもちこみやがって。次に泣きついても、今度こそうちらは知らないからな」

「そんな薄情なこと言わないでよォ。本当に頼りにしてるんだからぁ」

 この三人は本当に仲がいいです。かつて三人でかぐら寮の執行部をしていたとのことですが、羨ましいくらいです。たしか、凰先生と鈴置先生は、本当は御影先生より一つ下の学年のハズです。それなのに、常に御影先生の事を紗月、紗月って呼び捨てにして。この二人には先輩を敬うと言う心がないのでしょうか?

「凰先生、御影先生や鈴置先生だってお忙しいんじゃないですか? それを自分の都合で呼び出して部屋の掃除をさせるなんて。自分勝手過ぎます!」

「そうですよ、蘭先生、あんまりお姉さまや鳳先生のこと困らせちゃダメですよ?」

 ささな、もっとこの不良保健教師に言っておやりなさい。

「えー? 蘭ちゃん、お片付けとか好きくないんだもーん。お姉ちゃんたちが手伝ってくれないと、上手にできなーい」

 これだけ言われて反省なしですか? この辺の開き直り具合、相月に似てる気がしなくもありませんね。(おーみ談「そりゃ勘弁よ」)

「冗談は置いといて、本当、二人には感謝してるのよ。いっつも迷惑かけてばっかりで、あたしって本当にダメな女。ヨヨヨ」

 わざとらしい。

「というわけで、一服したらゴミ捨てもお願いね!」

「「自分でやりなさい!」」

「はい。面倒臭くならないうちに捨ててきます……」

 コロッと表情を変えた凰先生でしたが、さすがに御影先生と鈴置先生から怒られました。

彼女は暗い表情で席を立つと、大量のゴミが乗った台車を一人で押しながら、トボトボと保健室を出て行きました。そう思っちゃいけないけど、ちょっといい気味。

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