地頭方駅

地頭方駅(じうとうがたえき)は,静岡県相良町(さがらちょう)地頭方にあった静岡鉄道駿遠線(すんえんせん)の駅で*1*2*3,1926年(大正15年)に藤相鉄道(とうそうてつどう)の駅として開業し*4,1943年(昭和18年)に藤相鉄道を含む交通事業者5社が合併して静岡鉄道が設立されて静岡鉄道藤相線の駅となり*5,1948年(昭和23年)に地頭方—中遠線(ちゅうえんせん)池新田間の開業に伴い路線名が変更され*6,駿遠線(すんえんせん)の拠点駅の一つとして営業していましたが*7,1968年(昭和43年)の大井川堀野新田間の廃線に伴い廃駅になりました*8(→駅本屋写真)。

目次


駅構造

  • 基面:約12m*9
  • ホーム:1面2線*10
  • 駅構内配線図:*11


沿革

  • 1926年(大正15年)4月27日:藤相鉄道地頭方駅として開業*12
  • 1943年(昭和18年)5月15日:陸上交通事業調整法*13により他の交通事業者4社と合併し、静岡鉄道藤相線地頭方駅となる*14
  • 1948年(昭和23年)9月6日:藤相線地頭方—中遠線池新田*15間が開通し,路線名が変更され,駿遠線地頭方駅となる*16
  • 1968年(昭和43年)8月21日:大井川—堀野新田間の廃止に伴い,地頭方駅廃業*17

駅名の平仮名表記「じとうがた」「ぢとうがた」

サイクリングロード脇の
落居駅 駅名標
写真Yones(2006年)
許可パブリックドメイン
説明:隣駅の地頭方駅の平仮名表記は「とうがた」(拡大表示は写真をマウスの左ボタンでクリック)
地頭方駅の平仮名表記は,藤枝市郷土博物館が所蔵する昭和30年代から40年代の写真では二種類あります。地頭方駅の写真に写っている駅名標には「とうがた」と表記されており,地頭方駅の隣駅である堀野新田駅の写真に写っている駅名標には「とうがた」と表記されています。

最初に「とうがた」という平仮名表記についてですが,『三省堂 全訳読解古語辞典 小型版』(2004年)の【地頭】(766ページ)では「とう」*18に,『福武漢和辞典』(1990年)の【地頭】(229ページ)では歴史的仮名遣いとして「トウ」*19となっています。『大辞泉』(1995年)の【歴史的仮名遣い】(2812ページ)によると,明治時代以降は,1946年(昭和21年)の内閣告示*20が公布されるまでは歴史的仮名遣いが公式な仮名遣いだったので,堀野新田駅の駅名標では歴史的仮名遣いで「とうがた」と表記されていたことになります。

次に「とうがた」という平仮名表記についてですが,1946年(昭和21年)11月16日に国語審議会*21の答申により「現代かなづかい」が内閣告示*22となり,内閣訓令*23として公式の場でのかなづかいは「現代かなづかい」を規範とするように指示され*24,基本的には「ぢ」を「じ」と表記することになりました *25。ただし例外はあり,二語の連合によって生じる読み〔ジ〕は「ぢ」と表記されることになりました。例えば,鼻血(はなぢ),入れ知恵(いれぢえ),近々(ちかぢか),湯飲み茶碗(ゆのみぢゃわん)などです*26。「地頭」はこの例外には当たらないので「地頭」の読み〔ジトウ〕は「じとう」と表記されることになります。

昭和30年代から40年代の時期に駅名標の表記に「とうがた」と「とうがた」の二つが表記が存在した理由は,この時期に駅名標の作り替えや塗装の塗り替え時に歴史的仮名遣いのままだった「とうがた」を現代仮名遣いの「とうがた」に書き換えたためではないかと思います。

現在,駿遠線の線路跡地の一部はサイクリングロードになっていたり*27,駅跡地に駅名標が新に立てられています。2002年(平成14年)2月に地頭方駅跡地に立てられた駅名標には歴史的仮名遣いで「とうがた」と表記されています*28。地頭方駅の開業は1926年(大正15年)で*29,当時は歴史的仮名遣いで表記することが公式だったため*30,新しく立てた駅名標の平仮名表記はそれを再現したのでしょう。

次のリストは駿遠線の駅跡地に立てられた駅名標の写真へのリンクです。

関連ウェブサイト


参考文献

(著者・編者の五十音順)

出版物

辞典
  • 石川忠久,遠藤哲夫,小和田顕 編『福武漢和辞典』福武書店,1990年11月1日 発行,初版,ISBN 978-4828804064。
  • 三省堂編集所 編『コンサイス地名辞典 日本編』三省堂,1975年1月30日 第1刷発行,1985年1月20日 第7刷発行,初版,ISBN 4-385-15331-0。
  • 小学館『大辞泉』編集部『大辞泉』小学館,1995年12月1日 第1刷発行,第1版,ISBN 978-4095012117。
  • 鈴木一雄,外山映次,伊藤博,小池清治 編『三省堂 全訳読解古語辞典 小型版』三省堂,2001年1月1日 発行,2004年3月10日 第10刷発行,第2版,ISBN 978-4385133447。
  • 武部良明『日本語の表記』〈角川小辞典 29〉,角川書店,1979年12月20日 発行,初版,ISBN 978-4040629001。

(書名の五十音順)


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更新日:2010年11月10日

最終更新:2010年11月10日 16:00
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*1 ) 阿形昭『軽便の思い出』2005年,p. 128

*2 ) 三省堂編集所 編『コンサイス地名辞典 日本編』1985年,p. 577

*3 ) 2005年10月11日の合併により現在は牧之原市地頭方 -- 日本郵便「榛原郡相良町(はいばらぐんさがらちょう)」『郵便番号検索 > 静岡県』2010年 -- 2010年3月22日(月) 閲覧

*4 ) 阿形昭『軽便の思い出』2005年,p. 125

*5 ) 阿形昭『軽便の思い出』2005年,p. 127

*6 ) 阿形昭『軽便の思い出』2005年,p. 122

*7 ) 青木栄一,三宅俊彦『軽便鉄道』2004年,p. 128

*8 ) 阿形昭『軽便の思い出』2005年,p. 122

*9 ) 阿形昭『軽便の思い出』2005年,p. 144

*10 ) 阿形昭『軽便の思い出』2005年,pp. 143,144

*11 ) 阿形昭『軽便の思い出』2005年,pp. 143,144

*12 ) 阿形昭『軽便の思い出』2005年,p. 125

*13 ) 陸上交通事業調整法施行令(昭和十三年七月二十三日勅令第五百十七号),最終改正:平成一二年六月七日政令第三一二号 -- 2010年3月22日(月) 閲覧

*14 ) 阿形昭『軽便の思い出』2005年,p. 127

*15 ) 1955年(昭和30年)4月1日に駅名が変更され,「池新田駅」から「浜岡町駅」(はまおかちょうえき)になる -- 阿形昭『軽便の思い出』2005年,p. 127

*16 ) 阿形昭『軽便の思い出』2005年,p. 127

*17 ) 阿形昭『軽便の思い出』2005年,p. 128

*18 ) 読み方は〔ジトウ〕

*19 ) 読み方は〔ジトウ〕

*20 ) 文化庁国語審議会 -- 2010年3月23日(火) 閲覧

*21 ) 文化庁国語審議会 -- 2010年3月23日(火) 閲覧

*22 ) 文部科学省「現代仮名遣い」に関する内閣告示及び内閣訓令にてついて(庁文国第八八号,昭和六一年七月一日)-- 2010年3月23日(火) 閲覧

*23 ) 文部科学省「現代仮名遣い」に関する内閣告示及び内閣訓令にてついて(庁文国第八八号,昭和六一年七月一日)-- 2010年3月23日(火) 閲覧

*24 ) 武部良明『日本語の表記』1979年,p. 7

*25 ) 武部良明『日本語の表記』1979年,p. 135

*26 ) 武部良明『日本語の表記』1979年,p. 140

*27 ) 阿形昭『軽便の思い出』2005年,p. 97

*28 ) 阿形昭『軽便の思い出』2005年,p. 109,および,口絵写真の4ページ目右上

*29 ) 阿形昭『軽便の思い出』2005年,p. 122

*30 ) 小学館『大辞泉』1995年,p. 2812

*31 ) 阿形昭『軽便の思い出』2005年,p. 81