『
鉄道』は
平井喜久松さんの著書で,
岩波書店から1936年(昭和11年)に第1刷が,1949年(昭和24年)に第7刷が発行されました。
このページには「第一編 鉄道線路 第二章 軌道 §1. 軌条 〜 §4. 道床」を収録。
目次
第一編 鉄道線路 (p. 4)
第二章 軌道 (p. 21)
§1. 軌条 (p. 21)
軌条とは車輛を支持し,その運転抵抗を減ずるために用いられるもので,昔は石とか木に鉄板を張ったものを等を用いたが,現在は総て鋼鉄で作られる。
1. 軌条の形 (p. 21)
次の如きものがある。
- 牛頭軌条(bull head rail)
- 平底軌条(T-rail,flat-bottomed rail)
- 溝付軌条(grooved rail)
- 櫛形軌条
(1) は英国において用い,他の世界各国ではほとんど (2)の平底軌条を用うる。(3)は市街鉄道に用い,(4)は鋼索鉄道に使用されている。
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平底軌条における各部の名構は第31図の如く3部に分ち,各部の断面積の割合は大体頭部42%,腹部21%,底部37%である。
而(しこう)して軌条の大きさは単位長の重量をもって言い表している。
例:30kg軌条(長さ1mの重量約30kg),60封度(ポンド)軌条(長さ1碼(ヤード)の重量約60)
我国において普通用いる軌条の断面積および慣性モーメントは次の如くである。
第6表 |
軌条種別 |
断面積 (mm2) |
慣性モーメント (mm4) (X軸について) |
30kg |
3,826 |
606.0 |
37kg |
4,728 |
951.5 |
50kg |
6,433 |
1,744.0 |
2. 軌条の材質 (p. 22)
各国区々であるが,我国では鉄道省規定の鋼軌条の鉄以外の化学的成分(百分率)は次の様である。
- 炭素 0.45〜0.60%
- 珪素 0.20%以下
- 硫黄 0.05%以下
- マンガン 0.60〜0.90%
- 燐 0.055%以下
軌条の材質には蒸気鋼軌条(これを炭素鋼軌条 "carbon steel rail" と言う)の外に次の如きものがあるが,これ等は何れも軌条の摩耗を少なくする目的で特殊の成分を加へ,または特殊の加工を為したものである。
- 珪素鋼軌条(silicon steel rail)
- 中マンガン鋼軌条(medium manganese rail)
- ニッケル鋼軌条(nickel steel rail)
- ソルバイト軌条(sorbitic rail)
(1)〜(3)は特殊鋼軌条。
(4)は軌条圧延の際に頭部に熱処理を加えて,一部分ソルバイト組織としたものである。
3. 軌条の耐荷重力 (p. 23)
枕木の間隔,道床の状態により異なり,一定の計算式により算出する事は困難であるが(精細は§6 軌道力学(51頁)を参照),大体の目安としては機関車動輪1軸の重量を2.5〜3倍した数をもって軌条1mの重量とする。
例:14ton/axle の場合,軌条は 14x2.5〜14x3=35(kg)〜42(kg)/m のものを用うればよろしい。
軌条の実際耐荷力を表示すれば次の如くである。
第7表 軌条実際耐荷力 (道床の状態優良なる場合) |
|
耐 荷 力 (ton) |
枕木数
軌条種別 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
25kg |
10.98 |
11.81 |
12.05 |
12.30 |
13.49 |
30kg |
14.08 |
14.38 |
14.61 |
14.91 |
15.12 |
35kg |
16.41 |
16.43 |
16.72 |
17.06 |
17.39 |
37kg |
17.33 |
17.66 |
17.99 |
18.42 |
18.79 |
40kg |
19.16 |
19.55 |
19.95 |
20.42 |
20.91 |
備考:枕木数は 9m 軌条に対するものである。 |
4. 軌条の長さ及び遊間 (p. 23)
軌条の標準長は各国異なるが英米では9m以上,ドイツでは10m以上とし,我国有鉄道においては第8表のようになっている。
第8表 |
軌条種別 |
標 準 長 |
従 来 |
昭和9年より |
30kg |
10m |
20m |
37kg |
10m |
25m |
50kg |
12m |
25m |
軌条の長さは漸次長尺のものを使用する傾向であるが,その長所および短所は次の如くである。
第9表
長尺軌条の長所および短所
- 長所
- 接目少し
- 事故発生の機会を減少す
- 接目の費用および保線費用を減ず
- 接目通過の衝撃少し
- 短所
- 製作困難
- 取扱不便
- 1本の軌条で一部毀損の場合,長い軌条を取替えねばならぬ
- 運搬費大
遊間とは温度変化による軌条の伸縮に備うるために設くる軌条接目における間隔を言うのである。我国有鉄道では軌条敷設当時の気温応じ,遊間を第10表のように定めている。第10表の値は12m軌条に対して計算したものであるが,長尺軌条の場合は第32図の標準による。
第10表 |
気温(℃) |
0未満 |
0〜10 |
10〜20 |
20〜30 |
30〜40 |
40以上 |
トンネル内 |
遊間(mm) |
8 |
7 |
6 |
4 |
3 |
2 |
2 |
5. 軌条の毀損(rail failure)(p. 25)
軌条の毀損の主な原因は次のようなものである。
- 製作の不完全
- 軌条取扱域あるいは敷設の不良
- 車輪の不良
- 列車重量に比し軌条断面積の不足
- 事故の起因するもの
- 鋼の疲労(fatigue of steel)に起因するもの
軌条毀損の状態は大体次の5種である。
- 挫潰域は流潰(軌条頭部の金属が軌間の内側に流れたるが如き状態を呈するもの)
- 破端(軌条腹部に裂傷を生じるもの)
- 縦裂(軌条頭部に裂傷を生じるもの)
- 釘孔,打痕(軌条折損するもの)
- 破底(軌条底部欠損するもの)
これらの毀損軌条は軌条として役立たぬこととなり,列車の運転に危険であるから発見次第直ちに交換を要するのは勿論である。
この外摩耗がある程度に達した時も交換せねばならない。軌条摩耗交換限度は鉄道省においては軌道整備心得で定めているが,第6編 鉄道保線作業(277頁)で詳述することとする。
6. 軌条の耐久年限 (p. 26)
これは次の事項に関係する。
- 軌条の材質
- 線路の状態
- 線路中心線の曲線なるか直線なるか
- 機関車およびその他の車輛重量
- 通過車輛数
- 列車の速度
- 運転の巧拙(こうせつ)
- 軌道および車輛の修繕の適否
これ等の状態により耐久年限は場所によりかなりの変化はあるが,平均して見ると直線部で次のようである。
- 普通路線 - 20年前後
- 海岸地方 - 12〜16年
- 隧道内 - 7〜10年
曲線部では以上の耐久年限の39〜83%位である。
特例としては山手線の曲線箇所で50kg軌条が僅か30日で交換を要している場所もあるが,これは運転回数が著しく多く,その上曲線の急な所であって,特例中の特例である。
§2. 軌条接目 (p. 27)
1. 軌条接目(rail joint)(p. 27)
軌条と軌条の接合には接目鈑を用いて両軌条を締結するが,接目は軌道における弱点であって,負担力は著しく減少し,列車通過の際,著しい衝撃を受ける。
2. 軌条接目の種類 (p. 27)
軌条接目と枕木との位置につき,次の5つの種類がある
- 懸接接目(suspended joint)- 枕木の中間において作りたる接目
- 支接接目(supported joint)- 枕木上にて作りたる接目
- 2挺接目(tow tie joint)- 支接接目の一種にして接目部の下に2挺の枕木を密着配置せる接目
- 3挺接目(three tie joint)- 支接接目の一種で,枕木3本により支持させる接目
- 架接接目(bridge joint)- 懸接接目の一種で,接目部に鉄板を下敷とせるもの
今日では懸接接目が最も多く,他は特殊の場合のみに用いられる。
また左右軌条の接目の配置により次の2種の接目がある。
- 相対接目(even joint)- 一方の軌条接目が他方軌条の接目と略同位置にあるもの
- 相互接目(broken joint)- 一方の軌条接目が他方軌条の略中央にあるもの
この両者には各得失があって,何れを是と定め難いが,相互式は主として米国において採用せられており,その他の国では多く相対式を採用している。我国では相対式を原則とする。
軌条接目を市街鉄道等では溶接することがあり,断面異なる異種軌条の接合には
異形接目鈑を用うるか,あるいは
中継軌条と称し,長さ3mの両端の断面異なる特殊の軌条を用うる事がある。
また自信号区間で軌条を電気回路とする場合には,ある区間を限り軌条を電気的に絶縁する必要がある。このためにはウェバー・ジョイント(Weber joint)を用うる(第37図)。
3. 接目板(fish plate, splice plate, joint bar)(p. 29)
2つの軌条を連接するため,その接目部に使用する添接鈑を接目鈑と称する。接目鈑はその形状により2種に分つ(第38図)。
- 短冊形接目鈑(flat bar)
- アングル形接目鈑(angle bar)
ボルト穴は第39図の如く楕円形のものと円形のものとある。これはボルトの首が楕円形の穴の丁度一致するようにして,ナットを回すときにボルトも共に回転しないためである。
§3. 枕木 (p. 29)
枕木(tie, sleeper)は軌条と道床との間にあって,軌間を正確に保ち,かつ軌条の上を通過する列車の荷重を道床あるいは橋桁に,さらに広い面積に等布的に分布せしむるために配置された材料である。従って枕木は次の如き条件を具備せねばならない。
- 堅固でなるべく腐朽し難く,充分の強度を有すること
- 弾性に富むこと
- 軌条釘その他で軌条と緊結するに相当の支持力あること
- 軌条の取付,取外し簡単なこと
- 取扱便にして,補修簡単なこと
- 供給潤沢にして,価格低廉なこと
1. 枕木の分類 (p. 30)
枕木はその敷設方法,使用目的,材料等により次の如く分類できる。
- 敷設方法による分類
- 箇別枕木(pot sleeper)- これは昔用いられたもので,今はあまり用いられない。
- 横枕木(cross sleeper)- これは今日一般に使用せるもので,単に枕木と言へばこの横枕木を指すのである。
- 縦枕木(longitudial sleeper)- これは特殊の場合,即ち検査ピット,灰抗等に用いられる。
- 使用目的による分類
- 並枕木(sleeper)
- 橋枕木(bridge tie)- 橋桁の上に用いるもので,通常断面積が大きい。
- 分岐様枕木(switch sleeper)- 分岐の所に用うるもので,長さ断面ともに特殊である。
- 材料による分類
- 木枕木(wooden sleepler)
- 鉄枕木(steel sleeper)
- ''鉄筋コンクリート枕木(reinforced concrete sleeper)
- 集成枕木(composite tie)
2. 木枕木(wooden sleeper)(p. 31)
木枕木は最も広く用いられるもので,材種は檜(ヒノキ),ヒバ,栗,槇,金松(コウヤマキ),榧(カヤ),胡桃(クルミ),塩地(シオジ),落葉松(カラマツ),ネズ,刺桐(ハリキリ),楢(ナラ),槲(カシワ),黄蘗(キハダ),楡(ニレ),槐(エンジュ),一位(イチイ),桂,などである。
材木の形状および寸法
断面形状は第41図の如く種々の形のものがあるが,一般に用いられるものは(a)(b)(c)(d)(e)の如きもので,(f)は今日使用せられない。
我国有鉄道で規定せるものは (a) の矩形であって,これに幾分の円味を許すのみである。地方鉄道では (d) (e) 等も使用される。
枕木は弾性支持を受ける一種の桁であるから,その大きさは軌間の大小,車輛の軸重等によりて異なる。長さも長きに失すれば第42図(a)の如き変形をなし,短すぎれば(b)の如き変形をする傾向があるから抵当の長さに定めねばならない。
国有鉄道で使用する枕木の寸法は次の如く定めている。
第11表 枕木の寸法 |
|
長さ(cm) |
幅(cm) |
厚(cm) |
並枕木 |
213 |
20 |
14 |
橋枕木 |
213〜274 |
20 |
18〜23 |
分岐様枕木 |
220〜400 |
23 |
14 |
枕木配置員数
枕木配置員数は一般に軌条1本当挺数で言い表す。枕木が荷重を支える力は枕木の寸法に密接なる関係を有するけれども,軌道負担力を大にするには枕木を大にするより配置員数を増加する方が遥に有利である。鉄道省では配置員数および枕木間隔を第12表の如く定めている。
第12表 枕木配置員数および枕木間隔 (第43図参照) |
1) 道床を有する場合 |
軌条長 (m) |
枕木配置員数 |
枕木配置間隔 (mm) |
A |
B |
C |
20,000 |
25 |
380 |
683 |
830 |
27 |
〃 |
573 |
770 |
29 |
〃 |
583 |
710 |
31 |
〃 |
573 |
660 |
33 |
〃 |
513 |
620 |
35 |
〃 |
453 |
585 |
25,000 |
32 |
〃 |
713 |
800 |
34 |
〃 |
688 |
750 |
36 |
〃 |
598 |
710 |
38 |
〃 |
588 |
670 |
40 |
〃 |
547 |
636 |
42 |
〃 |
496 |
606 |
第12表 枕木配置員数および枕木間隔 (第43図参照) |
2) 道床を有せざる場合 |
軌条長 (m) |
枕木配置員数 |
枕木配置間隔 |
A |
B |
C |
20,000 |
31 |
300 |
473 |
670 |
33 |
〃 |
403 |
630 |
35 |
〃 |
493 |
585 |
37 |
〃 |
503 |
550 |
39 |
〃 |
493 |
520 |
43 |
〃 |
453 |
470 |
45 |
〃 |
403 |
450 |
48 |
〃 |
403 |
420 |
56 |
〃 |
313 |
360 |
25,000 |
44 |
〃 |
463 |
580 |
47 |
〃 |
473 |
540 |
49 |
〃 |
393 |
520 |
51 |
〃 |
353 |
500 |
54 |
〃 |
368 |
470 |
56 |
〃 |
428 |
450 |
60 |
〃 |
383 |
420 |
63 |
〃 |
353 |
400 |
69 |
〃 |
341 |
364 |
枕木の耐久年限
枕木が使用に耐えなくなる原因は次の2つに大別することができる。
- 自然腐朽もしくは虫害
- 機械的の損傷(軌条の切込,犬釘孔拡大,折損,割裂等)
(1)による枕木耐久年限は材種,伐木時期,樹齢,乾燥方法および湿度,成育地,敷設地の気候,道床の状態および運輸量等によりて異なるが,近来は耐久年数を延長するため防腐剤注入法が盛んに用いられている。この方法は枕木にクレオソートあるいは塩化亜鉛,タンニン亜鉛等を注入するのであるが,クレオソートの注入が最も多く行われている。この方法によれば耐久年限は30〜50%延長することができるが重量は10〜40%増加する。以上の如く防腐剤を注入せる枕木を
施薬枕木(treated sleeper)と言い,然らざるものを
素材枕木(untreated sleeper)と言うている。
(2)に対してはタイ・プレート(後述),螺釘(ネジクギ),割裂止鉄線巻の使用等によって損傷の防止につとめている。
大体枕木耐久年限は素材の場合次のようである。
その他の材種では年限短かく僅か2〜3年のものもある。
3. 鉄枕木(steel sleeper)(p. 34)
鋼製の枕木であってドイツを中心として中欧において最も多く使用せられる。我国では特別の場合,即ち碓氷峠のアプト式区間に使用しているが,これは歯軌条を軌道の中心に取付けているので,軌条および歯軌条の相互位置を正確に保持せしむる必要上,鉄枕木を用いているのである。
鉄枕木の利点は次の如くである。
- 耐久年限長し
- 保線費少し
- 線路の狂少し
- 軌間を正確に保つ
- 接目鈑との結合良好
- 使用後も相当の価あり
欠点は,
- 価格の不廉
- 湿地,特に海岸地では腐食激しい
- 軌条との取付が複雑である
鉄枕木の必須条件は次の如くである。
- 形状簡単にして構成部分少き事
- 曲線,接目等においても同一形たる事
- 曲線および分岐用には軌間を幾分加減し得る装置を有する事
- 横圧力に充分耐える事
- 荷重に対し充分の強度と剛性を有する事
- 音響の発生少き事
- 重量あまり大ならざる事
4. 鉄筋コンクリート枕木(reinforced concrete sleeper)(p. 36)
これは1900年頃イタリアにおいて初めて作られ,各国とも研究を進めているが今日なおその構造の信頼し得るものにして,経済有利なるものは少ない。我国でも最近試用しつつあるが,実験の日なお浅く,その結果判然としない。
鉄筋コンクリート枕木の欠点は次の如くである。
- 重量大なる事
- 脆弱なる事
- 軌条取付に困難なる事
- 弾性的でない事
- 表面に亀裂を生じ,内部まで破壊する事
- 搗固(うちかた)めの際,下面が破損しやすい事
5. 集成枕木(composite sleeper)(p. 37)
この種の枕木は欧州において発達せるもので,その成績は研究中に属するので詳(つまび)らかでない。我国および米国では使用しておらない。その構造は鋼とコンクリートと,あるいは鋼と木材との如く2種の材料を組合せたもので,形状は横枕木で矩形断面のものが多い。第46図はその一例である。
§4. 道床 (p. 37)
1. 道床の目的および種類 (p. 37)
道床(ballast)とは枕木の受くる輪荷重を路盤に分布し,かつ排水および軌道整正等に便ならしむるために用うる砂利,砕石,コンクリート等の層である。
道床を大別すれば次の3種となる。
- 普通道床(ballast)
- 補助道床(sub ballast)
- コンクリート道床(concrete bed)
2. 普通道床 (p. 37)
主として砂利,砕石等よりなる層であって,最も広く用いらるるものである。単に道床と言えば一般にこの普通道床の事を言うのである。
道床の効果は大体次の如くである。
- 枕木受として列車荷重を路盤に等布的に分布する
- 軌道の排水を完全にする
- 路盤の破壊を防ぐ
- 枕木の移動を防ぐ
- 軌道の屈曲,凹凸を容易に整正せしむる
- 列車の振動ならびに音響を滅殺する
- 軌道に弾性を与える
- 雑草の発生を防ぐ
(以上の効力を完全に発揮せしめる事は保線作業の最も重大なる点で,道床搗固(うちかた)めは保線作業の過半を占めているのである。)
道床の厚さは列車の重量,速度,回数等によって定まるのであるが,鉄道省では枕木下面より最小限度甲線200mm,乙線200mm,丙線150〜120mm,簡易線120〜100mmとしている。
道床の量は普通単線軌道1km当たり800〜12003である。
道床はそれ自身の沈下,搗固(うちかた)めによる破砕,列車より与える衝動,篩分等のために減少するから常に枕木の上面まであるように補充せねばならない。
道床材料は前述の効果を完全に発揮し,かつ次の条件を具備するものを最良とする。
- その質堅硬にして風化せず,かつ泥土塵埃の混入せざるもの
- 粗粒なるもの(15〜65mm)
- 吸水率少きもの
- 価格低廉なるもの
現今用いられる道床材料は次の如きものである。
- 砕石,鉱滓,砂利,砂,石炭殻(焼粘土,貝殻または土)
括弧内のものは米国で用いているが,我国では使用しない。
鉄道省では道床を材料により次の3等級に分けている。
- 1等品:砕石,鉱滓,篩(ふるい)砂利
- 2等品:並砂利,鉱滓
- 3等品:砂,石炭殻
3. 補助道床 (p. 39)
道床の排水のため,または厳寒地方において線路が凍上する事を防止するために普通道床の下に敷いた石炭殻または栗石等の層を補助道床(sub ballast)と言う。
補助道床の厚さはその場所によって一定ではないが,普通230〜450mmである。
4. コンクリート道床 (p. 39)
コンクリートに枕木を埋込むように作った道床である。
コンクリート道床が用いられる所は大体次の如き箇所であって,保線従事員の労務緩和,保線費の節約,軌道材料の耐久力増進等がその主なる目的である。
- 長大なるトンネルまたは勾配急なるトンネルにおいて機関車煤煙の脱出悪しき箇所
- 湧水多量なるため機関車の排出ガスの液化等により軌道材料の腐食を促す箇所
- 電車区間のトンネルの如く列車回数頻繁なるため殆ど保線作業困難なる箇所
- 交通頻繁なる踏切
- 車輛その他の洗浄装置を必要とする箇所
- その他特に必要と認めた箇所
コンクリート道床の構造は路盤上に15〜30cmの厚さのコンクリートまたは鉄筋コンクリートの層を築造し,その上に枕木を列べ,枕木と枕木の間にはコンクリートを填充する。普通排水のため中欧に排水溝を設ける故,枕木は中央を切り取った短尺横枕木を用うる。短尺枕木とコンクリート道床との固定法は,忠埋込むだけの場合と埋込ボルトを併用する場合とある。
コンクリート道床の欠点は次の如くである。
- 建設費大
- 軌道の修正困難
- 軌道に弾性乏し
- 音響大なり
- 枕木交換作業困難
- 煤煙のため,コンクリートが化学的分解をなす虞(おそれ)あり
以上のような欠点はあるが利する所大で結果も良好であるから漸次用いらるる傾向がある。
参考文献
(著者・編者の五十音順)
書籍
- 平井喜久松『鉄道』岩波書店,1936年5月15日 第1刷発行,1949年7月15日 第7刷発行
辞典
- 岩波書店『広辞苑』〈シャープ電子辞書 PW-9600 収録〉岩波書店,1998-2001年,第5版
(書名の五十音順)
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更新日:2010年12月07日
最終更新:2010年12月07日 17:00