位数60の単純群は交替群A5に同型である。
一般に,有限集合の元の置換は対称群で表される。 群Gがd個の元の集合に作用していればGからSdへの準同型写像φがある。φの核はGの正規部分群になるから,Gが単純群であるためにはφが単射でなければならない。
Gを位数60の単純群とし,A5に同型ではないと仮定する。 Gが4個以下の元の集合に自明でなく作用すればGからGより小さい群への単射が存在することになる。 Gが5個の元の集合に作用すればGからS5への写像が存在し,その像がA5に一致する。 従い,Gの元や部分群は必ず6個以上の共役を持たなければならない。また,Gの部分群の指数は6以上,位数は12以下でなければならない。
Gは10個のシロー3部分群を持ち,6個のシロー5部分群を持つ。 20個の元が位数3であり,24個の元が位数5である。 シロー部分群は互いに共役であるから,Gが位数6の元を持てば20個の元が位数6になり,Gの元の総数を超える。位数10についても同様である。 A5に同型ではないという仮定により,Gは15個のシロー2部分群を持つ。 シロー2部分群が巡回群であれば位数4の元が30個になり,Gの元の総数を超える。従い,Gは位数4の元を持たず,残る15個の元は位数2である。
位数2の元が15個に限られるため,15個のシロー2群の内には自明でなく交わる対がある。その交わりの元aは少なくとも6個の元と可換であるから正規化群N=NG(a)の位数は6以上である。位数2の部分群を正規とする位数6の群は巡回群に限られるが,Gが位数6の元を持たないから|N|≠6である。同様にして|N|≠10である。従い,|N|=12であり,Nによる5個の剰余類の集合にGが自然に作用してS5への準同型写像を与える。
なお,現実はシロー2部分群が5個であり,位数2の部分群を正規とする位数12の部分群は存在しない。
Gを位数60の単純群とし,A5に同型ではないと仮定する。 証明1の前半に示したように,Gの元は位数5が24個,位数3が20個,位数2が15個である。 bを位数5の元とする。bが生成する巡回群Bの正規化群NG(B)の位数は10であるが,位数10の元は存在しないから,NG(B)は二面体群D10に同型である。15個の位数2の元の内の5個はNG(B)に含まれる。Aを残る10個の位数2の元の集合とし,abの位数3となるa∈Aが存在することを示す。
x,y∈Aとする。 (xb)2=1はbx=xbx=b2となり,xがNG(B)に含まれないかぎり無理である。 (xb)2=ybはbx=xbx=yとなるが,bとyの位数が異なるから無理である。 (xb)3=ybはxb=(yb)2となり,これも無理である。 (xb)4=ybであればxbx=b−1x−1yx−1b−1=b2xyxb2であるから,z=yxb=b2xyxbとして(zb)3=1である。 従い,abが位数3となるa∈Aが存在しなければ40個の位数5の元が存在することになる。
aとbは位数12の群Hを生成する。実際,以下12個の元が群を成す。
GがHによる5個の剰余類の集合に作用してS5への準同型写像を与える。
なお,Gのシロー2部分群が15個であるという件はGがA5に同型ではないという誤った仮定に基づく誤った結果であるが,Gの位数2の元が15個であるというのは事実であり,Gは実際にHを含む。HはA4に同型であり,b2abとbab2がHの位数4の正規部分群を生成する。