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一閃。
血が舞い、一人の男が倒れる。そこには刀を持った男が一人立つだけ。ここはライシエンス。
ライシエンスは、裕福な工業都市。ドンと立ちはだかった街では、パイプが何本も入り組んでおり、住人のライフラインとされていて、“ライシエンス自体”を支えている。
そして何より工業的な発展性から、北のアルティスタ、南のフィンクに支援している大きな勢力――というより国である。
基地はというと、基本倉庫の山。そして奥には大きい塔。
ブリッジの背後にはその大きな街が大きく建っていた。
ブリッジはそれを無視して、守衛の一人を殺した。すると、定期連絡か無線から声がした。
『おーい』
幾度か声をかけて、ついには消息を確かめる。しかし遅い。
こいつはもう死んだ。それを示すかのようにブリッジは無線を守衛の体ごと突き刺した。無線が火花を散らし、鮮血が吹き出て、守衛の出血個所が増える。見違えるように赤く染まる人間。
すると、刀が重い。それを感じて、ブリッジは少し焦る。

――時間が…無い……。

そしてブリッジは、走って奥へと進んでいった。

※

「お前……っ!!」
「待ってください!ボスっ!」
一発、入るところだった。しかしエリウスが横から入る。
「わしは真実を明かしただけじゃ。なぜ責められなければならない?これが事実じゃ」
それにも動揺せず、オロードは偉そうにパイプ椅子に座っていた。
殴ろうとするマルクルはエリウスがなだめた。拳が下がり、マルクルの息が少し落ち着く。
二人はオロードの家にいた。
ミニッツの提案で、ここにヒントがあると予測できたからである。ミニッツは当然来ない。すると
「…彼はどこに向かったんですか?」
単刀直入にエリウスが聞いた。それに合わせてオロードは深くため息をつく。
「ライシエンス。そこで全てが分かる」
そして、それだけを残した――

※

「侵入――」
兵士の口はもう動かなくなっていた。刀で串刺しにされ、一瞬にして焼き払われた肉体。口や体からの血は、蒸発して空気に混じる。
ブリッジの目に色は無く、無惨に死に行く兵士に目も向けない。“制約”。彼の掟である。戦いの時は感情がでないのだ。
また、ブリッジは兵士が事に乗じて次々に集まってくるのが分かった。気配である。
すると、案の定。兵士が銃器を持って倉庫の脇から次々に出てくる。さっきはいなかった倉庫の上には、ライフルを構えた狙撃主。
「やれ」
誰かが指示を出したようだ。一斉射撃。
銃声が大きく吼えて、建物を反射してこだまする。散乱する空薬莢。
「……『霧生の舞(きりゅうのまい)』」
それに反応して、ブリッジは真上に跳んだ。そして狙撃主を見つけては螺旋状の“気”を飛ばす。
龍に噛み千切られるがごとく、直撃して粉々になる者や、上手くかわせても、倉庫から落
下して死ぬ者――様々だ。なので、ライフルの細い弾は一発も飛んでは来ない。
着地すると、兵士たちがブリッジを囲む。前に戦ったフィンクの兵士の数よりは劣るが、数は千を越すであろう。
するとブリッジはそれを見て、刀を下げた。目の前には先程命令した上級階級と見られる男。
「焔魔(えんま)はどこだ?会わせろ」
「焔魔様だと……?お前のような――」
わかった。
小さい声と、冷たい刃が通り、男の首が吹き飛ぶ。
一瞬の出来事。鮮血を見ても、気にできない兵士たち。そして一人が叫んだ。
「こ……殺せぇぇぇ!!!」
ブリッジはその声を聞く前に、次の一撃を放っていた。数人の兵士たちが、吹き飛び、臓物を撒き散らして体が半分になる者や、首と胴が分けられてしまう者――
悲鳴と恐怖が渦を巻き、銃を乱射して味方を殺している者までいた。
唯一共通していることは、血の匂いと、悲鳴、苦痛、そして鮮血で汚れたアスファルト。
重なる死体もまたその一つ。
が、今回は少なかった。焼き尽くされる者もいる。そのためだ。
火葬、とでも言おうか。ブリッジは、『刻印』を使って兵士の一部を消滅させていた。
「邪魔だぁぁっ!!!」
大半の兵士は召されていっただろう。未だ、銃弾をブリッジに当てた者はいない。
声を荒げ、刀を振り、斬り――
ブリッジは焦った。いや、焦っていた。
今ので分かる、ついに“制約”に反してしまった。声を荒げて、焦りだす自分が良い証明だ。感情を剥き出しである。
そろそろ“変わる”運命なのか?恐怖心がブリッジの焦りを進ませた。
「――くっ……」
刀が重い。体の力も抜け気味。
焔魔と接触の前に、“変わる”かもしれない。“制約”も、だ。

――変わってはダメだ。俺にはまだ…っ!

『朽ち果てるモノ。使えなくなるまで、使い抜け』
そう、自分の中で響いた。

※

「飛ばして、ミニッツ!!」
基地内、マルクルが声を荒げた。ミニッツはキョトンとする。
「ライシエンスだよ!!基地付近っ!」
ミニッツはマルクルを見て、不機嫌そうに
「ブリッジを追うの?」
そう聞いた。案の定「当たり前」と返ってくる。
それを聞いて、ミニッツはしばらく悩んだ。エリウスも隣で何か悩んでいる。内容は同じだろうか?
沈黙が流れて、ミニッツの目が変わった。
「エリウス、残って。俺とボスで行くから――」
エリウスは、小さく頷くとパソコンの前に座った。マルクルたちは転送装置の前。
「じゃ……行ってくるから」
ミニッツだ。言葉が薄く広がる。
それを聞くと、エリウスが、機械に指示を送り、機械が認証した。
そして台の上にいた彼らは消えていった――

※

兵士は一人足りとも生きている者はいない。
皆、どこかしら斬られ、傷が浅かれ深かれ、スパッと入ってしまった者まで多種多様。
目を伏せたくなる死体のコレクション。重なるその下には血だまりができて、臓物もそこに溜まっていた。
それを見たブリッジ。血の光景、自分がしてきたこと――それを振り返ってしまう。
すると、ふと涙が頬を流れた。不思議な線を絵描き、一筋。ブリッジはとっさにそれを拭う。
慣れていたはずだった。いつもは目にもくれないはずだった。
これは“制約”は完璧に消えたことを示す。ブリッジはそれを自覚できた。同時に危機感を覚える。
命日は近い。
最終更新:2006年11月12日 13:07