――私は、なぜこんなものを見つけたのか……
――運命?偶然?だろうか
――これは、自分の居場所を守れるもの
――これは、相手と戦える手段
――これは……、世界を滅ぼせる脅威
――そして、これは……神が創ったもの……。
――神がこれを創る意味は……?
見る限りの廃墟。
そして、その奥の山、緑、海……。
平坦な土地の廃墟の山に囲まれた、中央部に軍の基地があり、周りに村と言えるものは特に少なく、殺風景。故にこの土地は小さい。
ここは“デリス・ディルキー”
その中央廃墟の基地の個室で、二十代ぐらいの青年――マルクルがベットから起きた。
今は早朝。今の時間は、ここの人達が起きる時間より、十五分は早い。
欠伸をこきながら、マルクルは制服着替えた。ぼさぼさの銀髪が少し整う。
そしてピッと制服のしわを伸ばした。その制服の胸の部分にはリーダーの証――第六星のバッジがある。
起きたついでに一旦部屋を見回す。
日が少し入った部屋。汚いとは言えないが、綺麗でもない。最近は部屋の掃除をしていなかったからだ。机と、ベットと、スタンドだけの部屋――殺風景である。
また少しあくびをして、机の上のハンドガンに手を伸ばした。ホルスターにしまい、そのままベルトに止める。
マルクルは一息ついて、扉に手をかけた。
両方に等間隔に扉がある、長い廊下をツカツカと歩く。しばらくすると、扉が疎らに設置されている大きな空間に出た。マルクルは中央の“作戦室”に向かう。
「ん?」
ふとマルクルの表情が変わった。少し楽しそうで、難しい顔。そして扉に手をかける。
勢いよく「ガァァ」と扉が開いた。すると
――ヒュッ
「おっとぉ」
音も無くハイキックが飛んで来た。これには気づいていたが、思わず声が出てしまった。蹴りが当たる前にマルクルはとっさに伏せてかわす。目の前には、ローブで身を包んだ男。
マルクルは、立ち上がると同時にアッパーカット。男は浮いてない軸足で、拳を踏むようにして蹴る。その反動を利用し、バックステップで距離をとった。
「不意打ちとは卑怯だね」
マルクルはにこにこしている。両人に元々殺気はない。
「ばれてたか…」
悔しそうな声。バッとローブを脱ぎ捨てた。青髪で、マルクルと同じくらいの男。服には第五星のバッジが輝いていて、男は“総幹部長”の地位を持つ。
「おはよう、ブリッジ」
男はブリッジと言う。そして
「おう、おはよう」
と挨拶を返した。
「今日は惜しかったね」
にやにやとマルクル。
「くそ、殺気を消すのは苦手なんだよな、全く持って」
ブリッジがため息をつく。相当悔しそうだ。
その時音を立て、扉が開いた。小柄で制服を着ている少年がポツンと立っている。胸には第四星のバッジ。しかし着ている服はぶかぶかで、お世辞にも似合っているとは言えない。
「お、ブリッジとボスか。おはよ」
少年の第一声。
「よお、ガキ」
そしてブリッジの一言。これに少年は
「だ~か~ら~、ガキじゃないって言ってんだろ!」
全てをぶつけるようにして怒る。いつものことだ、ここに来た一日目から「ガキ」とブリッジに言われているので怒るのも無理はない。
他の兵隊は、この少年が幹部長なので逆らえないし、悪口も言えなかった。
「ミニッツだよミニッツ。分かってんのか?いつも思うけどお前馬鹿でしょ?」
少年――いや、ミニッツはそう言ってブリッジを睨む。迫力はいまいち。
「うるせぇなぁ。ガキはガキだろが!元々な――」
ブリッジもそう反撃。
両人悪口を言い合い、うるさくいがみ合う。やはり、いつもの風景だ。
そこにマルクルは困った表情で
「喧嘩は程々に……ね。ところでミニッツ、何か任務があるんでしょ?」
ミニッツに問う。
「あ、そうだった――ちょっと待ってね……」
ミニッツは一瞬キョトンとして、ブリッジから離れた。
そして焦って準備を始めた。
基地の入り口付近で女が歩く。目の前の兵士にようがあるようだ。
「すいません」
「ん?」
兵士が振り向く。目の前には白いローブを身に包み、フードをかぶった女の姿。顔は見える。
「ここのボスは何処でしょうか?」
「ボスは作戦室だよ。……ちょっと待って」
女が止まった。兵士が続ける。
「用件は?」
その言葉で、女が兵士に紙を見せた。
「ん……。これは『戦闘申請書』だね」
兵士は関心して
「君のような子がね……命知らずだね…大丈夫かい?」
兵士は聞いたが、女は答えずに紙をしまう。「ありがとう」と笑顔で言い、スタスタ歩いていった。そして見えなくなった。
「あれ……?」
しばらくして女が戻ってきた、様子がおかしい。
「どうしたんだい?」
女は
「すいません。“作戦室”って何処ですか?」
顔を少し伏せながら聞く。男は呆れた。
「準備完了!じゃあ始めるよ」
ミニッツがパソコンを取り出す。
他の二人は、真ん中に置いてあるボードの周りにいた。二人とも壁に寄りかかっている。
素早くミニッツはパソコンを打ち込んだ。ボードが光り、ホログラムがでる。
そのホログラムのは、ドーナッツが千切れた形と、バラバラの欠片のようなもの。
「分かると思うけど、これが『世界』ね――で、これが本拠地のディルキーね」
ホログラムの左上に×印が付く。
この世界は四つの勢力領国と、二つの貿易国で成り立っている。
ここ、“ディルキー”と、北に隣接している“アルティスタ”、南に“フィンク”、そして南西に“ライシエンス”があり、これらの国が土地をめぐって勢力争いをしている。
そして、マルクルたちの軍も“ディルキー”の勢力軍であり、マルクルはそのリーダーであった。
「で最近、弱い国として俺たちの軍に“フィンク”が攻め込む姿勢でいるんだ」
「調子乗りやがって……俺たちが弱いって!?」
ミニッツの一言で、怒りの余りブリッジが壁を殴る。ブリッジは弱いもの扱いが人一倍嫌いだからだ。殴った音は、この部屋全域に響いた。
「……まあ、落ち着いて――じゃあ続けて」
マルクルがなだめる様に言い、ミニッツが続ける。
「で、それを迎え撃つ作戦なんだけどね……」
パソコンを見て、ミニッツは打ちながら話した。
「まず、海側と陸側からせめて来るでしょ?」
「陸側は分かるけど、海側は?」
マルクルの顔をチラッと見て
「罠で倒すよ。で、ボスはいつも通り、敵の基地を潰して。あと今回はブリッジもね。二人でなら簡単でしょ?」
そう言ったが
「基地の守りが薄くないか?残るのは一人でしょ?リーダー格が来たらこの基地終わるよ?」
と意地悪にも聞き返される。ミニッツの顔はいつも通りの自信だ。
「問題は無いよ。ここのチームに一人メンバー増やしたんで」
マルクルは意外な答えに少し驚く。そんな話聞いてない。
「まあ、雑魚じゃなければいい」
ブリッジの厳しい一言。不機嫌そうだ。
「もう来てもいいんだけどなぁ」
不安そうに扉を見る。
と、カツカツと金属音がする――。
それが聞こえたほぼ直後、勢いよく扉が開いた。目の前にはローブを着ている女。
「すいません……遅れました」
と、女は息を切らしながら言った。
一つの空間にあ然とたたずむ三人。そこにいきなり入り、息を切らせて立っている女の姿――。
やがて、ミニッツが言葉を出した。
「えっと……。この子が、希望してここに来てくれた人……」
少し、退きめに言った。少し動揺を隠して「……自己紹介して」とマルクル。
「すいませんいきなり……。私は…エリウスと言います。よろしくお願いします」
と、息を切らしてエリウスはペコリとお辞儀をした。
「『刻印』はある?」
「はい」
エリウスは腕の袖をめくって見せた。白色のマークがある。
「ん?変わった『刻印』だねぇ」
「はい、『守りの刻印』です。今現在、ここの基地のバリアを張っています」
「そうだったんだ……かなり特殊だな。そもそも『刻印』は体内に特殊なクリスタルを埋め込んで、自分に見合った力をもらうんだけどなぁ?」
「はい、『守る力』です」
マルクルは苦い顔を作った。納得していない様子。
「ところで……いい?」
ミニッツがパソコンを見ながら言った。ブリッジは何か目を細める。
「敵が、攻撃圏に入ってるんだけど、戦闘配置してくれないかな?」
「そうだね……ブリッジ、武器の用意して」
ブリッジは「分かった」と言い、自室に戻る。マルクルは通信機に顔を近づけ、各自に指示。ミニッツはエリウスに、現状の説明と任務の発表。みんなバタバタしていた。
「ほれ、忘れ物」
鞘を腰につったブリッジが、マルクルにマガジンを手渡す。マルクルは「サンキュ」と言った。そして
「ミニッツ、指示通り配置したよ」
と、ミニッツに報告。
「じゃあ、出発の準備するから……」
そう言い、ミニッツは重そうな台を持って、大雑把に空いているスペースに置いた。人、三人は乗れる。
「乗って、すぐ転送するから」
「うるせぇなガキ」「分かった」と両人。ハッとマルクルを見て、ミニッツが何か気づく。
「そうだ、これ持ってって」
スナイパー・ライフルを渡す。全身黒くフレームがやや灰色、ボルトアクション式でバレルがやけに長いが、スコープは付いていない。
「弾装は十二発だから」
そう言い、ミニッツはついでに横長のマガジンを二個渡した。
「自動式のは無いのか?」
「牽制兵が四十七丁全部使ってる」
「じゃあ、納得」
と言い、ライフルを背中にかけた。光の反射でフレームが光る。
「おい早くしろガキ」
その時より前なのか、ブリッジが痺れを切らしていた。
「ったく……これだからな……」
ブリッジの方をチラッと見て、ミニッツは渋々、台のスイッチを押す。
「じゃあ、ミッションは『敵の街の制圧ぅ』だからね。通信して、そしたら兵士送るから」
ブリッツは無視したが、「分かった」とマルクル。ふと右を見ると、エリウスは基地の構造を暗記していた。
「じゃあ行って来る」
「健闘を祈るからねぇ」
そう言い、二人は台の上から音を立てて散るようにして消えた。
最終更新:2006年08月28日 22:27