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「ところで、この転送装置は何処に飛ぶんですか?」
暗記をしつつ、エリウスが聞く。
「これはね、『放浪』って言ううちの極秘機関が、各国に行って行き先をセット、でIDと座標をここに送る――って手順」
ミニッツはパソコンに向かっている。どうやら海の“罠”のメンテナンスをしているようだ。
「あと、『放浪』はこの刻印の原料……『クリスタル』も発掘してるんだ。昔だけどね――そろそろ来る」
ミニッツはエリウスを見た。エリウスは
「そうでしたか――どうりで情報が皆に伝わってない」
「一般兵には言わないでね」
「はい。じゃあ、行ってきますんで」
作戦室の扉が開いた。

※

ここは“フィンク”のある街。レンガ造りで通りが広い。建物が多い。
だが、基本的に軍人しかいなく、今や軍のキャンプになっている。
「――でどうなったと思う?」
「もったいぶるなよ……。頼むって教えて」
「しょうがないな――」
兵士の会話。ディルキーの兵士では無い。
「あの話は――」
と言いかけた瞬間、彼の首がなくなった。
隣の兵士は呆気に取られ、現状が理解できない。そして、その兵士の体が半分になる。真っ二つの体から面白いように血の噴水。
「あと、十四人」
マルクルはボルトを引いて構え直す。足元には空薬莢。
日が通らない建物を狙撃所として狙う。撃ったときに音は無い。
『消音機』と呼ばれるものを付けている為、バレルがやけに長い。
「敵襲だぁ!!」
という声。ブリッジが『刻印』を使ったためだろう。
街の境界線が四方八方炎で包まれる。そうなると逃げ場が兵士達にはない。
敵が混乱している中、二人マルクルの視野に入って来た。
「あと、十二人」
ボルトを素早く引いて、立て続けに撃つ。一人目は足がなくなり、二人目は腹部――肺が吹き飛んだ。
「いたぞぉぉ~!!」
大声。どうやら他に兵士が見ていたようだ。マルクルはライフルを背中にかけ、空薬莢を拾いその場からはなれた。走りながら大口径のハンドガンをホルスターから取り出した。マルクルはそれを『銀の雹(ぎんのひょう)』と呼ぶ。

「あの小僧……」
死体を見ている大柄な兵士。
「あいつは俺たちが殺る。増援は呼ぶな」
マシンガンとライフルを持った兵士が、他の兵士に言う。
「ああ、分かった。奴は、噴水広場の方面に行った」
「挟み撃ちにするぞ」
部隊は二人に別れた。

マルクルは狭い通路にいた。何かを仕掛けている。爆弾だろう。
仕掛け終わり、離れようとすると、兵士の足音がする。
マルクルはすぐに反応、轟音と共に単独で通路を横切ろうとした兵士の肩が飛んだ。血を吹き、そのまま兵士は倒れる。そんなこと気にせず、その場から離れた。
「あと、十一人」

「おい!ここにはいないぞ!」
兵士の見当は外れている。
「銃声が鳴った!奴は裏路地だ!行くぞ!」
しかし、ある一部は別行動をとると言い出した。
「待った、俺とこいつは上から行く」
二人はライフルを持ち、その場から離れる。
「じゃあ俺たちも――ん?どうした?」
肩に手を当て、
「みんな、グレネードを渡してくれ」
大柄の兵士が、皆に言った。

轟音が数回。それによって、マルクルは塀に隠れて様子を見る。どうやら狙われているようだ。
「距離は……百十だ」
ライフルを持った二人。一人がグレネードランチャーに持ち変える。リヴォルバー見たいな形をしていて、アサルトライフルに付けなくても、トリガーを引けば簡単に撃てるもの。
「わかってる、できる」
と言って、一秒コンマもしない内にグレネードを放った。ズボンと被った音がして、それに気づいたマルクルは身を翻して逃げる。グレネードは塀に当たって、爆発した。爆風で銀色の髪がなびく。
「おい!奴は五番街道だ!」
スナイパーは叫んで、他の兵士が向かう。半分は路上を、そして半分は高台から移動。
走り始めた兵士の足に何かが触れた。プツンと音がして、その瞬間、大爆発が起きた。大規模だが高台には影響はない。その騒ぎを盾に、急いでマルクルは隠れようと走り続ける。
「あと、六人」
爆発の後、その通りは肉片やら血でグショグショになっていた。
「畜生!あいつ絶対に殺してやる!」
それを見て一人の兵士が叫んだ。声が市街に広がる。
「いたぞ!」
逃げようとするマルクルが見えた。と、高台にいる大柄の兵士が
「デッド・バッグ!!」
そう叫んで、かばんを放り投げた。
何かが飛んでくる。マルクルには何か分からなかったが、離れる兵士達を見て、一つ分かった。
マルクルは、家を二つ横切るようにして、全速力で逃げた。
危なかった。角を曲がった瞬間に地震が起きそうなぐらいの大爆発。
家が一軒崩れる。
「倒したか……?」
爆発が止み、一人の兵士が前に出た。
「まだ、倒していない!出るなぁ!!」
倒していないと分かっていて、大柄の男も飛び出した。案の定、爆発はくらっていなく、マルクルは構えていた。二人とも出た瞬間に顔が飛び、体が落ちる。残ったのは銃声だけ。そのまま、さっきの塀に走り出す。
「あと、四人」
凄い速さで、マルクルはさっきグレネードが飛んで来たところへ行った。
壊れた塀を盾にして、ライフルを構える。見当はつくのですぐ見つかり、そして引き金を引く。被った音が微かにして
「あと、二人」
と、警戒している狙撃兵二人を貫通して、打ち抜いた。空薬莢が落ちる。遠いが、肉眼でも見えるぐらいの血の量。それを確認をして、空薬莢を拾い、向こう側の死体を見た。首はまだある。

「あとは俺たちだけか」
マシンガンを両手に兵士が言う。
「全力で殺るぞ」
もう一人は何も言わなかった。足が震える。
「奴は多分、さっきのところだ」
二人は立ち上がる。
「いない――ん?奴は怪我を負ってるぞ」
「本当だ……。休んでるな、どこかで」
血の跡。マシンガンを手に、二人はそれを追っていく。

「ニワトリ作戦」
そう言い、マルクルはテーブルにゴトッと何かを置く。そして
「文句はないよね。攻めてきたのはそっちだし」
と笑顔で言ってその場を去る。マルクルの手は真っ赤に染まっていた。

「この家か」
「ああ」
一軒の大きな豪邸。広いため隠れるのは安易かと思う。
そこには血痕が疎らに見える。
一つ一つ部屋を見ていくがいない。血痕は四階まで続いていた。
「そこかぁ!」
見当が付いて、四階の目の前の扉をバッと開ける。血痕は確かにそこで止まっていた。
目の前に見えたのはテーブルに乗っている、体がない首。半分あるかないか、よく分からないぐらい部位が飛んでいる。
コツンと、そこに、小さく黒い物体が入ってきた。
「伏せろぉ!」
カランカランと、その音に、いち早く気づいて物陰に伏せる。そして爆発。
言った本人は無事だが、もう一人は顔が血まみれで、下半身がグチャグチャになって壁に張り付いていた。部屋には煙が舞う。
「こんな罠を、畜生!死人をこんな事に使いやがって、冒涜しやがって!」
すると、兵士に銃が突きつけられた。
「俺たちを弱いとか言って、調子乗ってるから悪いんだよ。後悔しな」
「は、殺せよ。もうすぐで、うちの幹部殿がくる。そうしたら終わりだよ」
「どうせ、雑魚だろ?――まあいい。じきにお前死ぬしな」
マルクルは兵士の両腕を撃った。腕は吹き飛び、兵士は倒れる。
「“仲間思い”か……」
ふと思いつき、それをマルクルは呟いた。

※

「さて、海軍が来ましたか……」
ミニッツがレーダーを見る。右のモニターには船が五隻ほど。
そして、その五秒後に轟音と地震に似た揺れ。モニターでその揺れは敵の船が爆発したことを示す。
と、通信が入ってきた。
『こちら牽制。約五人の兵士と、幹部みたいな人影が基地に侵入しました』
『りょ-かい。陸の敵は殲滅した?』
『はい』
『ご苦労ね』
通信を切り
「作戦通り。侵入者は中で排除すると言う方針で」
と喜び、独り言のように呟いた。

※

「敵は奥の五人だけ……」
狭い敵本領の通路。
ブリッジが目を細める。服には返り血の後。刀にも。
布で刀を拭いた。ブリッジ自信はこの刀を『月読刃(つくよみのやいば)』と読んでいる。
右手に刀を持ち、奥の扉に手をかける。
開いた扉の置くには兵士は二人銃を構えていた。自動式のハンドガンだ。
乾いた音。
兵士達は立て続けに撃ったが、ブリッジは全て弾き、一人を袈裟切り、勢いに乗りもう一人を縦に一閃。一人はそのまま倒れ、もう一人は体が真っ二つになる。両人鮮血が勢いよく噴出す。

そのまま奥へ。やはり兵士がいた。だが一人様子が違う。怯えているのか?
しかし、撃ってくることは変わりない。ブリッジは全てかわし、斬る、斬る――。
兵士二人は血まみれになって倒れた。残るは様子が違う兵士。
兵士はこわばった声で、
「た、頼む。殺さないでくれ、頼む……」
「知るか」
刀を持ち、言葉に無関心で、無表情なブリッジ。
「実家には子供が一人待っているんだ……頼む見逃してくれ…」
「そんなこと知らない。お前のリーダーが俺たちのことを弱い呼ばわりして、攻めたのが悪い。だから、恨むならそのリーダーにしろ」
「あ……」
言えない、いやブリッジが言わせなかった。膝で首を押さえつけ脳天を刀で刺し、ねじって抜いた。
通路が赤く染まる。ブリッジはそれを見ずに奥へ歩いていった。

「お前が幹部?」
マントを羽織った女にブリッジが刀を向ける。
「そう、私が幹部長。名前は――」
「言わなくていい」
女は「そう」と言い、
「あなたが炎を発生させたの?」
と聞く。
「ああ、俺の能力だ。だから?」
「いえなんでも……戦いましょうか」
「ああ、いいよ」
和やかな会話だが、殺気がある。
二人は対面した。
先制したブリッジの攻撃。距離を一気に詰めて、斬撃。
布は引き裂かれたが鈍い音がして、斬撃自体は弾かれる。ブリッジは感ずいて、女のフックと同時に後ろに飛んだ。
「フルメタルか?」
弾かれた右目を見る。
「そうね。私の左手から肩まで金属の鎧。斬撃は効かないわよ」
「じゃあこれならだどうだ?」
刀に熱が加わり、炎が発生。これも『刻印』の力。
そのままブリッジは走り、肩に向かって一閃。
しかし分が悪かった。ジュワァァと音がして、湯気が出る。そして、そのままブリッジは刀ごと投げられたが、うまく受身を取る。
「残念。私の『刻印』は“水を操る力”よ。ふふ……」
敵の能力は水。
女は薄気味悪く笑う。それと同時に水が何本かの刃物に精製される。
「じゃあ……お返しよ!」
刃物が飛んで来た。横に飛んで数個かわして、最後の二本は斬る。が斬った時、刃物は二本に分裂し、ブリッジを引き裂いた。
「くそっ!」
相殺不可能なことに驚いた。肩から血がダラダラ流れる。少しの痛みが傷に加わる。
「攻略は不可能」
と、女は不気味に呟いた。

※

「おやおや……大惨事の様子で」
「あんたが『幹部殿』?」
マルクルが男に聞く。男はにこやかに
「はい。これはあなたがやったんですね?」
と答え聞く。マルクルは少しばかり首を縦に振る。
「俺を殺すか?」
マルクルが聞いた。「当たり前でしょう」と力が入ると共に答え、
「じゃあ行きますよ」
男が走り、マルクルに飛び蹴り。マルクルはひらりとそれを半身でかわし、横切る頭をつかんで地面に叩きつけた。レンガの破片が飛び散る。
そして、倒れた男の襟をつかみ締め上げる。
「これが幹部?お前のところは雑魚ばっかだな」
圧倒的に強い。男は何も言わない。
「俺を殺すなら、俺もお前を殺す」
「いや、お前が死にますよ?」
男の一声。一瞬にして男はベルトから、サバイバルナイフを取った。それをマルクルの心臓に刺そうとする。
それに感ずいて、マルクルは手で喉仏を突き、襟をつかんでいる手を離して、腹にミドルキックをかました。一瞬の連続技である。
吹き飛んだ男は嘔吐したり悶絶したり。
「ゲホォッゲホォ……クッソォ……殺してやる」
怒りと共に男の体が光る。それは『刻印』の力だとわかる。すると
「させない」
マルクルの一言。『銀の雹』で数発打ち込んだ。体の部位が飛び散り、黒い塊と、空薬莢が音を立てる。
男は奇声を上げた。声にならないほどの大きさ。
「有言実行より不言実行の方がいいぞ。学んだな――意味はないけど」
と、マルクルは言い


銃声が響いた。

※

「そろそろ終わりかしら?」
女の余裕。防戦一方である。
床は水浸しで、ブリッジに逃げ場がない。女はこの水でいくらでも、攻撃できる。
「しぶとかったわ。でもね、遊んでる暇はないの」
床の水が集まり、高さは本領いっぱいの四方の壁を作った。女が飛ぶ。腕には水の剣。
「じゃあね」
笑いながら、水の壁のブリッツがいる空間に入ろうとする。
「水の性質を知ってるか?水は急な高い温度変化と共に――」
ブリッツが床に手を当てる。低温な熱でブリッツの足下は陸ができて、そこから半径五メートルぐらいの地が高温マグマに変わった。
「――超高温の水蒸気に変わる」
その瞬間、急な温度変化。シュァァァと水の壁が、熱で水蒸気に変わる。
驚いて女は勢いよく水蒸気に飛び込んで、何もかも無い状態で落ちた。叫ぶ暇も無く、音は無い。
「自分の攻撃でやられるなんて予想もしてなかっただろ?自惚れたから死んだんだぜ?弱点には油断をっと」
落ちている布切れにそういった。

※



『おいガキ、敵の本領を制圧したから、兵士よこせ』
『ガキって言うなぁ!……ったく分かった、兵士五人。後二十分後に送るから』
『何でそんなに時間がかかる?』
『幹部レベルが基地に侵入。殲滅に絶対十五分はかかる』
『そうか分かった。後――』
『ん?』
『基地内の奴は、なるべく殺させないように。ガキ、お前もその一人だからな』
『気分悪い心配のしかたすんなよ!ガキは余計だっつうの!』
ガチャッと通信機を切る。嬉しいのか、嫌気が差すのか――
「さて、俺も行かなきゃ。エリウスだけ死じゃうかも知んないし」
「ふふん」と鼻歌を歌いながら、ミニッツは武器を取った。

基地のバリアシステムを解除して、『刻印』の力を抜く。
エリウスは『刻印』の力で、バリアを張る能力の持ち主だ。
エリウスはちょっと靴のかかとを足で叩き、敵の殺気がある方へと歩いていく。
“バリア室”の扉が開いた。 すると目の前に人が立っている。
目の前にいる子供――ミニッツだ。
「敵が侵入したって知ってるよね?」
「はい、二人ぐらい死んでませんか?何か叫び声が……」
「ああ、エリウスのとこ行くときに殺しといた」
ミニッツが手に持っているかき爪――『雷尖(らいせん)』を振る。
と、赤い髪でグローブをつけている、敵の“幹部らしき人”が入ってきた。
「ここがバリアシステムねぇ……」
「誰!?」
エリウスが驚く。殺気を消して急に入ってきたから無理もない。
「ん?俺はフィンクの『幹部様』」
殺気がブワッと広がる。わかる、強い。
「エリウス、もう一人こういう奴がいるから、そっちやって」
「え……。分かりました」
エリウスは、チラッと男を見る。男が
「俺は別に、バリアシステム壊しに来ただけだから」
エリウスは悔しそうに走って行った。
「よし、これで心置きなく戦える」
「へぇ~ずいぶんな自信じゃん」
男は剣を構える。『裏手』と呼ばれる、とても切れ味があって、殺傷能力がある剣。
ミニッツは構えた。
「じゃあ行くぜ!」
男の腕に力が入った。


走る、走る、走る――
時々後を振り返っては、前を見る。

――ミニッツは大丈夫だろうか?

そんな事でいっぱいだった。
エリウスは自分より他人の心配をすることが多い。

ドゴッ!

轟音がした。すぐに敵はその部屋だと分かる。
“研究室”と書かれた扉を開けた。
目の前には、大型の機械と、大男と、死んでいるのだろうか?倒れている兵士。
エリウスはすぐにその兵士に駆け寄った。脈がない。死んでいる――
「あんたがやったの?」
「ああ、銃器を向けてきたからな。俺はただここを破壊しに来ただけだ。虫けらの割には頑張った」
怒りが湧く。兵士一人としても、命の価値は一緒だからだ。
「死んでもらうわ。この兵士の命を奪ったから」
エリウスは構える。
「ああ、どうせ殺すつもりだったから良い」
大男はにやけて言った。
最終更新:2006年08月27日 23:13