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「くらえっ!」
ミニッツの一閃。男はかわし、空気だけが切れる。そして
「お、惜しいね。んじゃ次は俺か」
男は余裕に言い、『裏手』で一閃。ミニッツはそれをすれすれでかわした。だが男は間髪入れずに回し蹴り、それに当たってミニッツは吹き飛び、壁に叩きつけられた。
ミニッツはすぐに起き上がり、構える。
「くっそ~。これならどうだぁ!」
ちょっと足に勢いをつけた。さっきの攻撃よりかなり速い。
弾丸ほどの速さ。
ミニッツは男をかく乱する為に、跳ねるボウルのように壁を蹴り、そのままスピードを上げる。
そして、男を切りつける。
「惜しいなぁ~。甘い甘い」
鼻で笑い、サッとかわしてジャブの連打。そしてハイキックでミニッツを飛ばした。剣では切り付けない。
「それか、お前の能力」
ふと、ミニッツが呟いた。そして
「さっきのは絶対、人の反射神経じゃ見切れない動きだよ。だから、なんかの能力使ってるってバレバレ」
と続けた。
「ばれたかぁ~。最後まで教えないようにしとこうかと思っていたんだけどなぁ」
男は頭をボリボリかきながら言い、そして続ける。
「もう一つヒントだ。俺はお前の肉弾攻撃だけ見切れる能力だからな。一言で『見切りの目』だ。って言っちゃあだめか」
ミニッツは男の目を見た。
「あ、本当だ。目に刻印かぁ――珍しい」
ふむふむとミニッツが納得して、
「でも、それだけじゃあ俺には勝てない」
服をパンパンとはらって、構えた。何かが違う。
「かっこつけんな。ガキ風情が、八つ裂きにしてやるよ」
と言うと、男は走り込み、ミニッツにスライディング。
ふわっとミニッツは飛んでかわした。そして片手を地にかざした。
「掌底か!?」
男は寝ながら転がる。ミニッツは構えたまま。
「空想だよバーカ。『張雷(ちょうらい)』」
そう言い手のひらが、バリッと一瞬光る。次の瞬間、地面には雷撃が広がった。
男は意外な攻撃に、防御の構えもしていない。
抵抗もなく男は黒く焦げた。持っていた剣が転がる。そして着地するミニッツ。
「一万ボルト。結構効いたでしょ?」
男は何も言わなかった。それはただ黒い物体のようにしか見えなかった。

※

研究室に二人はいた。
そして死体が一つ。
エリウスはかぶっていたフードを取った。
黒く、綺麗な長い髪がふわっと出る。
「行くわよ」
そう言うと地を蹴り、飛んで腕をそのまま振り下ろす。キンッと鈍い音と共に、大男はその攻撃を腕で受け流した。とっさにエリウスは距離をとる。
「仕込み刀……だな?」
「ええ、一応こっちはサブの武器。あなたこそ“サイボーグ”でしょ?」
エリウスの推測に大男はニヤッと笑い、
「よく分かったな……俺は三分の一は機械だ」
大男はそう言うと、距離を詰めてエリウスの向かって一発ストレート。
エリウスは半身で避ける。そして腕をつかみ腕と共に男を投げた。
「なめないで!一応軍人です」
「くく……それで勝ったと思ったか?」
大男は倒れている姿勢で足払いをかました。それにうまい感じでエリウスは引っかかり宙を浮く。大男はそのまま立ち上がり、同時にアッパーをかました。
「くっ……『守りの光(プロテクション)』!」
そう叫んだ瞬間、エリウスの前に、青いレンズ状のもの――バリアが出現した。
大男の拳はそれの当たり、うまくエリウスを守った。
エリウスは受身を取って距離をとる。大男は
「『守りの光』?くく……守護の能力か……俺とは逆だな」
「どう言う事?」
大男はそう言ったが、いまいちエリウスには理解できない。
「つまり、俺は『肉体強化』の能力だ」
大男は思いっきり地に拳を叩きつけた。鉄板が裂け、地が揺れる。
「だからあの兵士は血を流していなかった――って事?」
「頭骸骨粉砕だ」
エリウスの質問を答え、大男は今にも笑いそうな顔をしていた。
エリウスが武器を構える。
「人の命を……粗末に扱わないで!」
と言い斬りつける。大男はまた受け流したが、足が地に付いた瞬間エリウスは思い切りハイキックをかました。
顎にクリーンヒットして大男の顎が上に思いっきり上がるが、大男は平気な顔をして腹にブロー。浮くかと思いきや、エリウスが吹き飛んで、思いっきり壁にぶつかった。そして落ちる。
「はぁ…はぁ……。強い…」
「降参するか?」
息が上がるエリウスと大男の余裕。
「一ついいこといってやろう……人殺しってのはな、感情を持ってちゃいけないんだ。人を思えば、自分への思いが弱くなる――つまり自分を守るって意志が弱くなる。分かったか?」
「うるさいわね……。人がどう思おうが勝手でしょうが……」
エリウスは立ち上がって構える。さっきの攻撃でのダメージか足がフラフラだ。
「まだ来るか。じゃあ今度は……俺のほうから」
大男の『刻印』が光る。多分次の一撃が本気であろう。
そしてそのままエリウスにストレート。
「『守りの光』っ!」
そう言ってバリアが出るが、大男の猛烈なパンチでバリアが弾け飛んだ。そのまま拳がエリウスに飛んでいく――
「今だ!『反射の輝(リヴァイフェクション)!』」
青いバリアがもう一度、精製される。
「何!?」
大男は少し驚いたが、拳が芯で当たった。しかし何かが違う。
「力を帰還せよ」
エリウスがそう言った瞬間、バリアが光り、その青白い光が真ん中に集中する――そしてその光は高速で大男の腹に向かって飛んでいった。
「ぐおぉぉぉぉぉ!!」
叫びながら大男はその光に当たり、飛んでいった。
壁に張り付き、もの凄い轟音と共に大男は落ちて、死んだ。座り込み、ボロボロなエリウスが呟く。
「内臓破裂および、骨数十本の粉砕、死亡は確定です」

※

「エリウス、無事?」
研究室の扉が開く。そこにひょっこりミニッツが顔を出した。
「はい。無事ですよ……。そこの大男以外……」
エリウスが壁に寄りかかって右を指差す。大男が倒れている。
「死んでるね」
「はい」
ミニッツは無線で兵士を数人呼んだ。しばらくして兵士達が来る。
「じゃあ、任せたよ」
「わかりました」
ミニッツは、そこの大男と、死んでいる兵士に指を差した。
「いつも通りの処理でね」
兵士達は処理を行う。
ミニッツはエリウスを呼んで、作戦室に戻った。
「一件落着だねぇ」
「そうですね」
作戦室に戻ってミニッツが言う。それにエリウスはニコッと微笑んだ。

「さて……」
しばらくして作戦室には、兵士が九人来ていた。
「じゃあこれで転送するから乗って」
何も言わず兵士達は、転送装置――ではなく、それの五倍ぐらいありそうなこれもまた、転送装置に乗った。そして消える。
『もしもーし、リーダ?』
『ミニッツか』
『うん。でさ、兵士送っといたから“指定地”へ』
『わかった』
『後、“指定地”にブリッジも呼んどいて』
『何で?自分で呼べばいいじゃん』
『……ガキ扱いされるから』
『あ、そうだったな』
『……分かってるくせに……』
ミニッツは通信機を切り、苦い顔をして後にある椅子に座った。
「ところでさぁ」
ミニッツが口を開く。
「エリウスはさ、何処出身?」
「え……?」
エリウスは一瞬驚いたが、その後すぐに悲しい顔になった。
「聞いちゃダメだった?」
「いやそんなわけじゃないんです。ただ……」
「ただ?」
ミニッツはエリウスを見た。エリウスは黙った。
数十秒の沈黙の中、
「そこには悪い思い出しかありません。そこは――」
エリウスは続ける。
「――『神の村』です」
「……神の村」
少し考えてエリウスは
「では、幹部長の出身地は?」
「幹部長じゃなくていいからね。ミニッツで。――俺とブリッジは貿易国『リンデス』出身。で……ボスはね」
少し口が止まった。少しの沈黙。
「……神の村」
ためらいながら、呟くように言った。
最終更新:2006年08月27日 23:18