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この日よりだいぶ前、ディルキーの軍が無い時代。
この世界には、「神のみを信じる」と言う村があった。
病、災害、戦争……。これらは皆、神が定めた運命として扱う。
人々はそれを「神の村」と呼んだ。
神の村は広く、地域とも言いがたかったが、やはり村。人口の問題である。
神の村は独立しているところ。領土なんて関係なかった。

その時代では、やはり三国が大戦を行っていた。
しかし攻め込まれようが、殺されようが、村には関係はなかった。
攻め込まれると知った日のこと。
「おい!逃げるぞ」
深夜。一人の男がそう言い小さい男の子の手を引く。
「なんで?神様は人を助けてくれるんじゃないの?」
「……」
男は黙って走る――男の子はそれに引かれるしかない。
「ねえ、なんで?」
男はピタリと止まった。そして
「神様なんて滅多に信用するものじゃあない。人もそうだ、人に頼りすぎると、いざと言う時に自分を守れなくなる」
そう言い、手を引いて走り出す。
男は海を目指して西に走っていた。海に出れば、貿易国に逃げられる――。

しばらくして洞窟を見つけた。そこで休もうと言う。
二人は黙って座っていた。空が徐々に赤くなる。
「日の出か……。早く行こう」
男はそう言い、男の子を連れて進んだ。
ここからは森に入る。足場に気をつけないといけない。崖もあるためだ。
とりあえず男の子を引いて走った。大きな木がある。
その木を男が横切った瞬間。黒い人影が横切り、男が膝を着いた。
「……血?軍兵…まさか……早すぎる……」
斬られた後だ。男は驚いて、必死で立ち上がろうとする。胸から血がボトボト落ちていく。
「おい……さっきの洞窟に…隠れろよ。お前が死んだら…お…」
そう言いかけて倒れた。動かない。

男の子は走った。男――自分の兄が死んだ――いや殺されたからである。神は兄を守ってくれなかった。
男の子は全力で走った。死と言う恐怖、神など守ってくれないと言う真実――。
とにかく色々な感情が膨れすぎている。
神にしか頼れないものが、こう言う風な目に会うとこんなことになるのか。
男の子は洞窟に着き、隠れた。上がる息をこらえて必死に隠れた。

村では人々の除去が行われていた。
殺される人を見ても、ここの人は動じない。
ただただ殺されるのを待つだけ。
村が滅ぼされようとも――。
結果、村は完全に占拠された。跡形もなく。
人々はみんな死んだ。いるのは兵士だけ。

三国はその占拠を見ていた。
余りにひどい殺戮――。三国のリーダー達は同意した。

――この土地の占拠の“放棄”を、

放棄が決まって数日が経過した。
村には男の子が一人突っ立っていた。男の子は天に向かって涙ながらに言う。
「神様は……僕らを助けてくれんじゃないの?……何で助けないの?……返してよ……返してよ兄さんを……。返してよ……みんなを。……僕の日常を…」
全力を使い、男の子はこぼれる涙と共にその場に崩れる。天には雲が張り詰めていた。

その数日後、子供は

※

「神の村……ですか」
エリウスが言う。重い空気。
「……あそこで大虐殺があったでしょ?そこの生き残り。その後誰かに保護されたんだって」
「そう……ですか、私はその時、リンデスにいました」
暗い話だ。ミニッツが口を開く。
「だから生き残ってるんだね……。あの虐殺の後、リーダーは神様を信じなくなった……と言うより敵視するようになったんだ」
「辛い……話ですね」
エリウスがそう言った。沈黙が続く。
「あとね、リーダーの『刻印』は特殊でね……」
まもなくミニッツが言った時、通信機が鳴った。同時にミニッツが取る。
『おいガキ、着いたぞさっさと送れ』
『うるさいな~分かったよ』
と言うと、ミニッツは転送装置のボタンを押した。数秒後に音と共に、マルクルとブリッジが現れた。ブリッジは服が血まみれである。
「お、戻った」
「おかえりぃ」
ミニッツが手を振って言う。
マルクルが「ただいま」と言った。

「風呂借りていいか?」
ブリッジが言う。服が血生臭い。
「別にいいよ」
マルクルが言った。マルクルも泥まみれだ。
ブリッジは作戦室から出いく。
「じゃあ私も休みます」
そう言うとエリウスは、私室へ向かった。
残った二人、ミニッツが口を開いた。
「あの力は……起きなかったよね?」
「ん?ああ、刻印使ってないし。てかさぁ、大した技使わなきゃ大丈夫。あの時から一回も起きていないし」
マルクルは『銀の雹』の手入れをしながら言う。
「じゃあ俺も私室に戻るから」
そう言い、ホルスターに『銀の雹』をしまった。
そして作戦室を出て行く。

ディルキーの基地の広場では、パーティが開催されていた。勝利のパーティーだ。ギュウギュウ詰めの兵士達はワイワイがやがや。
「よっしゃ!俺のおかげで勝ったんだ!牽制兵ばんざい!」
「何言ってんだ!俺たち、突撃兵のおかげだ!」
なんて言い争ったり。乱闘があったりして。
とりあえず酒乾杯して、約二百五十人の兵士が飲んだくれていた。
宴は夜を全て使っても続きそうだ。

もちろんマルクル達は――参加はしない。
彼らは次の対策を練らなければならない。
「ったく飲みてぇな、酒」
ブリッジがぼやく。
「これが済んだら飲もうな――そういえばこの戦いで異変があったんだって?」
「そうです。何か謎の『魔獣』らしきものらしいです」
マルクルの問いにエリウスが言った。

「『魔獣』……ねえ」
資料を見ながらマルクルはそう呟く。
「どうやら、粘液で出来ている、泥状の怪物です。牽制兵が殺しました」
「ふーん。でそれがどうかしたの?」
お菓子をポリポリ食べながら、ミニッツが言う。エリウスは続けた。
「それがどうやら世界各地で出現しているんです。人々は『神の創生物』と呼んでいます。」
その一言に、ミニッツは一つ聞く。
「そういえば、放浪はまだ死んでいなかったんだよね?最近通信が全く来なかったしさ、その情報は手紙で来たんだね?」
「はい、何故か私宛でして……放浪かどうかも分からないんですよ、元が書いていません」
エリウスが手紙を取り出した。真っ白な封筒。
「女、貸しな」
ブリッジがそう言うと、「はい」とエリウスが手渡した。ブリッジが中身を確認して、返して、
「知らない奴だ」
と言って返した。
「……結局放浪じゃないとすると、ここの情報が読まれている……ってことかな」
不安げにマルクルが言う。情報の漏れは、基地最大のピンチであった。
「得体の知れない奴はいじれないしなぁ……って言っても居場所が分からん」
ミニッツが呟く。対処法も無い。
「仕方ない。しばらく様子を見ますか」
マルクルがため息混じりに言った。

沈黙の中一人が口を開く。
「とにかく……あれだ、次はどうすんの?」
マルクルだ。重い空気を弾こうとする発言。
「そうだった、休みは無しだよ。今回は……」
言いかけて止まった。エリウスと、マルクルを見る。
「三人で、アルティスタに行って奴らの隠密工作を妨害」
「それだけ?」
「うん」
あっという間の報告。そして
「謎の手紙は任せて、兵士の要求はいつでも」
ふざけているのか、紳士っぽくふりまいた。
「じゃあ、午前四時出発ね」
ミニッツが言うと、三人は部屋を出て、私室で仮眠を取った。
最終更新:2006年08月27日 22:40