草むら、森、落ち葉、倒木――
アルティスタはとても自然が多い。きれいな景色も多数あって山岳地帯も多いところだ。森には歴史が古い木々がたくさんあるが、植物に詳しい人は、軍にはほとんど居ないため、樹齢なんてものは分からない。今日は風が強い。
日の出前、マルクル達はそこにいた。
「ったく……ガキの野郎こんなところに飛ばすなよ」
「まあいいじゃん。――ここが中腹の基地に一番近くて安全な場所なんだってさ」
マルクルがしゃがんで周りを視る。嫌な気配は多数あった。
「エリウス、罠」
そう言い、エリウスにワイヤーなど渡す。
「ここでいいんですよね?」
罠を仕掛けようとするエリウスが聞いた。今マルクルたちがいる位置よりだいぶ後。
「そこでいい。合図したらこれを引っ張って」
エリウスが持っているワイヤーの淵を見て言った。
「じゃあとりあえず俺が囮になるから、ブリッジが迎撃、エリウスは配置からなるべく離れないで応戦でお願い」
「リーダーは?」
「俺はそのまま邪魔な奴以外殺さないで潜入」
「了解」
そう言って、マルクルは前に進んだ。
『一人来る』
狙撃主が狙う。
『尖兵は数人攻めろ。俺が殺す』
『はっ』
通信を切り、狙撃主はすぐ狙って一発撃った。
木の合間を抜けて銃弾が空を切り、マルクル目掛けて飛んでいく――
「漆黒の残像(ブラックカーテン)」
マルクルは気付き、そう呟いた。そして黒い刃みたいなのがマルクルを守った。弾丸が落ちる。
『刻印使い!?尖兵いけ!』
慌てる狙撃主。合図と共に尖兵が飛び掛る。
マルクルは“銀の雹”を抜いて、一瞬のうちに目の前の二人を撃った。二人の首が飛び、体が枯葉の音と共に体が落ちる。
後ろからの三人の斬撃。前転でかわして、片手を使ってUターン。
そして足に力を入れて、低空飛行で一番左の奴に一気に近づく。そして左手で首を押さえつけて“銀の雹”で脳天を打ち抜いた。
首が無い体が倒れる。そして鮮血、それにかからないように、マルクルは死体を足場に低空飛行。そして
「『久死の鎌(ブラッディスライサー)』」
手を横に振った。黒い刃が、呆然としている尖兵二人を引き裂いた。
落ち葉が血で染まる。二つの体がドサッと音を立てて落ちた。
『尖兵が複数死亡した。ん?』
その時狙撃主の首が飛んだ。
『狙撃主は死んだ。尖兵、奴の背後に敵が二人いる。殺せ、雑魚は要らない』
『はっ!』
男は通信を切る。その手には血を吹いている狙撃主の首があった。
男は左手に持っている首を思いっきりぶん投げて、尖兵が向かった方角へ。強い気配があるからだ。木々を飛び交って敵を殺しに行く。
「ん?」
走っているマルクルが少し減速。上を見る。人影。
「おーい。あんたがここの幹部さーん?」
そして大声で聞いた。声は森中に響く。
男は気づいて急直下、音を立てながら着地。
同時にマルクルも止まる。
「幹部じゃねぇよ。『雇われ』だ」
「あ、用心棒さんね」
ほっとマルクルは肩の力を抜いて
「じゃあ無視。そっちも殺気をなくして、うちの奴らの巻き添えになるよ――じゃね」
再び走り出す。男は追いかけなかった。
もっと奥にいる奴を狙って――。
「お、来た」「来ました」
ブリッジとエリウスが感づく。木と木の間から、結構距離はあるが、前には武装群集が見える。
『ボス、来ましたよ』
『じゃあさっき傷をつけた木に、一人入った瞬間にワイヤー切って』
エリウスは通信機を切って一息。
「じゃあ出動らしいです」
「ああ」
エリウスの言葉に反応して、ブリッジは前の敵に向かった。
エリウスはその場に待つ。
ブリッジは『月読刃』を抜いて敵に向かう。
「来たぞぉ!」
尖兵の一人が大声を上げる。片手にはクロー。
声が鳴り終わった瞬間、尖兵が飛び掛ってきた。
「人数は五人」
そう呟いて、二人の斬撃を受け止めて、残りを飛んでかわす。
落ち葉が空を舞った。ブリッジは押し返して、距離をとる。
そしてすぅっと息を入れて、構えを変えた。体から霧のようなものが湧く。
「霧生の舞(きりゅうのまい)」
ブリッジが一回転して『月読刃』を振り下ろした。
霧のようなもの――“気”と言うもの。
それが一気に渦を巻いて、放出された。
一直線。木や落ち葉、そして目の前の尖兵三人が何か叫びながら体ごと吹き飛んだ。叫び声は、空を切り裂く音で全く聞こえない。口が開いているから分かる。
今のは剣技と言う、ブリッジ独自の技。
二人の尖兵は呆然としていた。数秒で我に返る。
「ったく、俺の刻印はここでは使えないんだよなぁ。つまんねぇ」
頭をボリボリかいて愚痴って敵を見た。見られた側はビクッと足がすくむ。
「逃げろぉ!」
二人は逃げた。どんどん山を光の速さかと思うぐらいに降る。そして目の前には女が一人。
「なんだ?」
一人が首を傾げたが、逃げることが一大事である。
女はナイフを取り出して手に持っているワイヤーを切った。
上に有るネットが落ちて、カカカカカカと言う音と、崩れ落ちる音がして、目の前が暗くなる。そして体中に激痛があった。
「ふぅ。じゃあ私たちも行きましょう」
女はそういって歩く。
足元には、二人の尖兵が血まみれで倒れ、木の杭がたくさんそこに刺さっていた。
※
その時ブリッジの前には男がいた。
「お前、誰?」
男がブリッジと向かい合って言う。
「言う必要があるか?そっちの目的を言え」
「しょうがないな……俺はツェル=バード。神の村出身だ。そちらのお嬢様――エリウスを返してもらいたいんだが」
ブリッジは何を言っているのか分からないが、一つだけ分かる。
――こいつ……強いな…
警戒して、すこし後ろに下がり、身構えた。『月読刃』を再度に握りなおす。
「渡してくれれば、殺さないよ。どう?」
「奴次第だ」
ツェルはため息をついて、銃を構える。四角いバレルに銃口が四つ付いた、ハンドガン。
殺気だっていることが分かる。対峙しそうな二人。
「総幹部長、次はどう行くんですか?」
そこにエリウスが走ってきた。
「エリウスか」
珍しいものを見るように、ツェル。
「誰です?」
「お前を迎えに来たらしい。ツェルと言う奴」
いきなり言われても分からないとブリッジは思ったが、エリウスはピンときているようだった。
「エリウス。お前のお母さんが待っているぜ?俺と来ないか?」
「はぁ?私の母は、もうすでに消息不明ですが……」
ツェルは地を蹴って、
「ちっ、仕方ない。“ハリム”で分かるか?生きてんのお前のお母さんは」
「……なんで!?この名前は、私と父と一部のものしか知らないのに……」
ツェルの言葉。それに驚いて、何歩か後ろに下がって言葉を失う。そしてエリウスが口を開いた。
「……あなた――“黒の爪”?」
「これ以上言うことはない。ちなみに俺は旅の人」
会話を止め、スゥッと息をすって一言。
「で、行くの?行かないの?」
「……行きません。私は…ここの仲間です」
「じゃあ、力づくでも」
ツェルは銃を向けた。
※
「ん~。この手紙は……中心の島から来た可能性が高い……」
ミニッツが呟く。そして続ける。
「何かあるな――あ、メールだ」
画面をクリックしてウィンドウを開く。
メールの内容は
「今すぐに、そちらのお嬢様をこっちに渡してもらいたい。そちらの作戦の最中に一人の男に会うはず。そいつと接触した際に、お嬢様を渡してもらいたい」
あて先は、不明。逆探知は出来ない範囲からのメールである。
「意味不明。……エリウスのことかな?」
ミニッツは渋い顔をして考え出した。
最終更新:2006年08月27日 23:16