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マルクルがしゃがんで、山の崖から双眼鏡で見下ろす。
レンズに映ったもの、それは大きな建物だった。
モクモクと煙が舞って、薬品の臭いが微かにする。
そして、巡回兵だろう、銃器やら刃物やらを持って監視をしていた。
一目で予測すればここは化学工場。
兵士の人数から、だいぶ重要な物資があると見れる。
「で……ここで何を阻止するんだっけ?」
双眼鏡を手から離し、工場を肉眼で見て思う。しばらくぼうぼうと生えている草むらに隠れ、マルクルは少し考えて、思い出した。
「隠密工作妨害だよな――とりあえずこれの観察」
マルクルは再び双眼鏡を目の前に運んだ。

※

「『守りの光(プロテクション)』!」
エリウスの目の前にバリアが発生する。それにツェルのミドルキックが直撃して、ドゴっと良い音が鳴る。それと共にバリアがもの凄い振動をして、蹴りの強さを表した。
「くっ!こんな威力って……」
エリウスは思い切り足で踏ん張る。危うく反動で飛ばされそうになった。
「おお、これがエリウスの能力か、結構いいね」
ツェルはかなりの余裕。強さは絶対ツェルの方が上。
するとそこに
「俺を忘れんなよ!」
ツェルの死角からブリッジが、一気に距離を詰めてそのまま横に一閃。
しかしツェルは飛んでかわす。
そして一瞬のうちに、ハンドガンを撃った。
それにブリッジは反応して、刀で弾く。凄い反射神経だ。
「凄いね。この体勢で、俺の『スプレッド』をかわせる奴はそうそういないね」
ツェルはにやりと笑い、空中で縦に一回転して、右足でブリッジにかかと落とし。
ブリッジは左手でガードした。凄い衝撃で落ち葉が舞い、ブリッジの左手が震える。
「くそ……本当に人間か?」
すると、ツェルは空いている左足で、腕と胸の間を抜けて、あごを蹴った。
一瞬ブリッジのガードが落ちる。
そしてツェンはもう一度低空で一回転してかかと落とし。
「間に合って――『守りの光』!」
エリウスの声がした。ブリッジの頭ぎりぎりでバリアが発生する。
そしてやはりかかと落としがバリアに直撃。
ツェルは体勢を立て直して後ろに飛んだ。同時にバリアが弾ける。
「すまないな……」
「これが私の役目ですから」
そう言い合い、二人は後ろに飛んだ。そしてツェルの様子を見る。
「どうした?刻印は使わないのか?」
ツェルが『スプレッド』を構えて聞いた。両人反応はない。
「そうか、ブリッジの方は使わない――いや使えないのか……?地形と環境かな?それとも一撃必殺とか」
再び口を開いて話す。笑い気味だ。そして続ける。
「じゃあ俺が使うか……」
ツェルは構えた。


「先手必勝」
そう言い、ツェルは腕を縦に振った。
そして、振った手の軌跡通り、手の方に白い何かがついていきて、それに合わせて、地の落ち葉が舞う。
「布?」
エリウスは呆然とそれを見て一言。
しかし、ツェル、ブリッジ共に何も言わない。情報を流すこと、そんな余裕はないから。
「考えてるうちに殺られるぞ」
ブリッジが構えながらボソッとエリウスに言った。慌ててエリウスも構える。
そして、ツェルが
「おら!余所見すんなよ!」
そう言い、腕を翻した。
すると、“布と呼ばれるもの”は二人の方向へ、地を這う蛇のように急接近した。とてつもない速さである。
二人は飛んで回避した。
“布と呼ばれるもの”はエリウス影を通って進んでいくが、後のブリッジの方は違かった。なんと波状に縦にくねり出したのだ。慌ててブリッジは『月読刃』でガードしたが、何か感触が違う。
「なに!」
刀で受けたのは物体ではない、“物質”だ。ブリッジはそれに気づいたが遅い。“物質”は、フィンクで戦った女の能力見たく、消滅せずにブリッジを引き裂いて、そのまま身を吹飛ばす。
「くそ!」
両肩に痛みが走ったが、上手く受身を取って着地。痛みの発信源からは鮮血が出ている。
「どう?俺の能力分かった?」
にこにこしながらツェルは聞いた。
「……ああ、お前の刻印は――『風』を操る能力」
ブリッジが『月読刃』をツェルに向けて言う。
「大正解」とツェルは拍手して言って、
「でもね、お前が死ぬのは必然になる」
また腕を大きく振った。起こった風は、周りの木々が倒れるほど大規模なもの。
「『天昇風・辰風(てんしょうふう・たつかぜ)』」
そのまま、風――いや竜巻は、そのまま立ち尽くす両人に向かって飛んで行った。
「……無理です」
規模の大きさに、エリウスが呆気に取られて力ない一言を呟いた。
そして二人は成す術が無く、巻き込まれて風に弄ばれた。真空破が体を切り刻み、八つ裂きより悲惨な光景。半径数百メートルの木々を吹飛ばして、空を裂いた。
そこで、ツェルはパチンと指で音を立てる。その合図と共に竜巻は止んでボトボト色々落ちてくる。もちろんブリッジとエリウスも。
「削除っと」
ツェルはブリッジを見てそう言った。そしてエリウスに近づく。
そして、ボロボロな倒れているエリウスを担ごうとした瞬間。


―ビュォ!!


突如、勢いがある斬撃が飛んだ。ツェルは後ろに飛んで、すれすれでかわす。
「誰が……削除だって……?」
よろよろと血塗れのブリッジが立ち上がる。同時に息が上がった。
「げほっ……げほっ…女、立て」
口から血を吐きながらエリウスに声をかけて、軽く足で小突いた。
「う……すいません…」
エリウスも立ち膝を突いて立ち上がる。軽傷ばかり。
「まだやるんだ……タフだね」
困った顔をしてツェルがそう言い、一通り周りを見渡した。
「じゃあそろそろ殺しますか」
そしてツェルが構えた。
その時ブリッジが
「女、作戦がある……やってみるか?」
「……作戦?……やって…見ましょう」
エリウスに小声で気づかれないように言った。エリウスもよくは分からないが同意した。
「その作戦は――」


「…わかりました。少し無理があるようですが……」
「…俺に任せとけ……じゃあ行くぞっ!」
ブリッジが勢いをつけて、一気にツェルに向かって飛ぶ。そして剣を振りかざした。
しかし、ツェルは軽く後に跳ねてかわす。そして
「芸が無いけど、これでさっさと終わらせるよ!」
腕を大きく振った。今度は本気らしい、『刻印』が袖の下から光るのが分かる。当然これは『天昇風・辰風』だ。
風の規模がそれを現す。
竜巻がブリッジたちを巻き込んで、引き裂こうとする――。
しかし、ブリッジは少しにやついた。顔からは自信が見られる。エリウスはブリッジを見守るだけ。そして
「“芸が無い”自分に……恨むんだな」
そう呟いて、ブリッジは、『月読刃』の刃を足と平行になるように自分の前に構えた。そして“気”を発する。
「はっ!手も足も出ない奴に何が言える!」
凶悪なツェルの声にブリッジは動じない。
そして静かに呟く。
「『真空・朧月(しんくう・おぼろづき)』」
竜巻に巻き込まれる本当にすれすれのところで、刀を上に、上げるようにして空を切った。そして切り刻もうとする“悪魔の風”が、一瞬にして止んだ。森に静けさが戻る。
「……しんどい技だから……あんまり使いたく無かった…」
ブリッジは『月読刃』を鞘にしまってため息をついた。肩からはやはり血が流れている。
ツェルはあ然としていた。エリウスも。
そしてエリウスの方にブリッジが歩き出したとき、ツェルは口を開いた。
「お前…どうやって消した!?こんなこと不可能に近い!手品じゃすまないぞ!」
それにブリッジは、「しょうがない」と説明し出した。
「竜巻すれすれの空間を…これで斬って『真空状態』にしただけだ。これ、『月読刃』は特殊な刀で……使い方次第じゃあ、本当ちっさい『宇宙』も作れるぜ……一瞬だけどな。」
「なるほどね…」とツェル。そして
「だけどそれじゃあ俺には勝てない」
そう言って、格闘戦を挑んできた。向かってくるツェルの速さは、見れば見るほど速い動きに見える。だが、今ははっきりと見える。見慣れた。
「エリウス!」
ブリッジがそう叫んだ。ツェルは気にせずに向かってくるだけ。
エリウスは手のひらを前方に向ける。袖が切れて見える腕の『刻印』光る。
「『多し守り手(エルエフェクト)!』」
対象はブリッジ――では無い、ツェルだ。
勢いを止めて、止まったツェルのを半円型のバリアが包んだ。
ツェルは呆れて
「おいおい、対象は間違えねーだろ普通……」
そう言ってしまう。
ブリッジの顔は変わらない。
そして、エリウスはこう言った。
「私達の勝ちよ」
最終更新:2006年07月03日 14:50