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「訳が分からないな?不利なのはそっちだぜ?」
ツェルは首を傾げる。
「不利なのは……お前だよ…。分からせてやる…」
ボロボロなブリッジは、ツェルに手を向けて『刻印』を構えた。『刻印』が刻まれた腕が赤く光る。
「馬鹿だな、俺はエリウスの『刻印』で守られてるんだぜ?無意味だね」
ツェルが罵声を言ったその時。ツェルの足元で緑色の草が、紅蓮に染まる。足元が燃えている、ツェルはそれに気づいて驚いた。
「何!お前…“熱を加える”能力だったのか!」
モクモクと煙がバリア内に立ち込める中、ツェルはブリッジに問う。
「ここは森だからだな……使えないが…エリウスの能力で、“一部だけ燃やせる”ことが出来る……これでお前は…終わりだ…」
膝をついてツェルに言った。そして
「……だがなこれで火は消える」
ツェルは腕を振って風を起こす。火はあっという間に消えた。
しかし、ブリッジはまた火をおこす。
「無駄だ」
「……馬鹿がいくらでも消してやるよ」
そしてまた風で火を消した。そしてブリッジが火をつける。
これが数十回ぐらい繰り返されたとき、ツェルが膝をついた。同時にゴホゴホと堰を繰り返す。
「くっ!何だこれは……?」
「……ようやく気づいたか…。お前の今の状態は“一酸化酸素中毒”だ……。このバリアは密閉されているが、呼吸用に空気の穴はある……だけどな…この煙が抜けるまではかなりの時間を要する……つまり…どっちにしろ…お前は死ぬ」
「だったらこのバリアを……」
そう言って、ツェルは思い切りバリアにハイキック。しかし、轟音しかしない。
「無駄です。このバリアは、私の意志か、外部からの攻撃以外では解除できません」
エリウスが座り込みながら言う。この戦法なら、休んででも勝てる。
そして、ブリッジが一言。
「ってことで…じゃあな……」
指を不器用に鳴らして、炎をおこした。空間内のもの全てが燃える、燃え盛る――
「くっそぉぉぉぉ!!!」
天に向かってツェルが大きく叫んだ。そしてツェルが炎に包まれて消えた。

※

謎の薬品の臭いが煙の臭いと混じって、妙に質の悪い臭いに変わる。そんな工場にマルクルは単独潜入していた。
「ったく、ブリッジたちはまだかよ……。まあ一人でも行けるけどさぁ、三人での任務なんてそうそう無いんだからしっかりして欲しいな」
臭いを我慢して小さくぼやく。マルクルは今工場の裏、倉庫の外壁に待機していた。腰のホルスターを見ると『銀の雹』を抜く用意を常にしている。また、足首には刃の大きいナイフを鞘に詰めてある。
これは『銀の雹』に『消音機』が付けられないため、暗殺用にとミニッツがマルクルに持たせたもの。まあ見つかったら使い物にならないだろうが。
「まあそんなに待ってられない。そろそろ行きますかね……」
痺れを切らしすぎたのか、マルクルは歩き出した。

倉庫が並ぶ通路の先に、その工場が建っていた。その通路は、約八百メートルほどで、マルクルが本気で走れば二分以下で工場の前に到着可能である。
しかし、それではダメだ。見つかってはダメだ。
見つかれば、工場は一ヶ月の厳重な閉鎖、そして、ここ周辺の倉庫全ての爆弾が暴発してマルクルは死ぬであろう。ミニッツがそうマルクルに知らせていた。
守ると言っても『漆黒の残像(ブラックカーテン)』では全身を守ることは出来ない。前が守れても後ろは守れないし、同様に、後ろが守れても前が守れない。
しかし、暴発でここの兵士全員も死ぬことは確定である。
死ぬ覚悟は出来ている?それともここで、幹部以上の奴がエリウスと同じく、個々でバリアを張れるほどの力を持っていて、効果範囲以内に所在しているとか……?
全く持ってこの防衛は、理解不能である。


そしてこの工場で造っている物も……“謎”。


“第一倉庫”と書かれた倉庫の影。
その影からマルクルは見つからない程度に出て、倉庫の数を確認した。
「ん~……両側合わせて――八件ですな」
そう呟いてマルクルはポケットから袋を取り出した。そして、袋を逆様にして、中身を全部出す。白くて、四角いサイコロの様な形の物が約十個。その“サイコロの様なもの”の一面には、少し深いくぼみがあって、鉄の棒が折りたたんで収納されている。
マルクルはそれらを確認すると、手に一個残して袋にしまって、袋の口を閉じた。
そして、その手に残した一個を地面に置いて、バックパックから刃が太く、とても鋭いフックを取り出した。それの刃には“ミニッツ作”と彫ってある。そして倉庫の壁の出来るだけ高い位置に、フックを刺した。そして置いといた、“サイコロの様なもの”の鉄の棒――アンテナを伸ばす。アンテナの先端はリング状になっており、真ん中が筒抜け状態。
アンテナの筒抜け部分をフックに通して、“サイコロの様なもの”を吊り下げた状態にした。
そして、次の向かい側の倉庫に目を付けると、それらを放置して兵士に見つからないように背を低くして走っていった。
「あと七ヶ所」

※

「ツェルは?」
謎の灰色の空間。“虚無”とは言えずに、ゴミ?いや“ただの物体”が転がっている。まさにここは、“無意味な世界”
そこで、刃のとても細いレイピアを片手に髪が青い女が、マントの男に聞く。男の全身は黒い布で包まれていて特徴が分からない。
「知るかよ、もうこんな時間か……、死んだんじゃねーの?」
冗談半分に女に一言。
「え……!?」
「あっはっは、本気にすんなよ。あいつが死ぬわけないじゃん」
マントの男はにやにや笑って女を見た。女は顔が赤い。
そこに、白い影が現れた。
「ツェルのことをネタにしない」
そう声がして、真っ白な影の中からハンサムな男が現れる。そして二人は、目がそっちに行く。
「まあ、本当にツェルが死んだら敵討ちすっから」
「当たり前だ」
マントの男は立ち上がって真剣に言う。その声からは“威厳”が感じられた。
「……で、何で私たちは呼ばれたの?」
「創生者殿が呼んでいる……らしい」
女の質問に、ハンサムな男が繋がり悪く答える。
「創生者がねぇ……」
マントの男が座り込んで呟いた。


『遅れてすまない』
突然三人に、声だけがした。何か、重なった声。
それに、三人は反応して跪く。
『後、二人は……何処だ?』
そして、質問が飛ぶ。ハンサムな男が顔を上げて
「ツェルたちは……抜かしますよね。他二人は連絡が取れません」
『そうか……二度目だ』
質問に答えた。
声――創生者はそう呟いて怒りを表す。
「で、今回は“例の件”ですよね」
そこで女が聞いた。創生者は
『ああ、その件だ。ツェルが“お迎え”に行ったんだが…』
そこで、声が止まる。
「やっぱ死んだんじゃねーの?」
マントの男がサッパリと言った。緊張感が無い。
「こら!創生者殿の前で無礼を――」
『別によろしい。我らは仲間だからな』
ハンサムな男は許さなかったが、創生者は許した。ハンサムな男は唇をかむ。
「まあ、ツェルは大丈夫よ…」
不安そうに女が呟いた。

その時だ、
「けほっけほ……っつ~熱いなぁ。おい、俺は遅刻かぁ?」
四段バレルの銃を持った――ツェル。服は焼け焦げて、顔半分と、両手、右足に大火傷を負っていた。
その時、皆は驚いた。
最終更新:2006年07月03日 14:50