※
「きゃっ!」
倒れているブリッジを担いで運んでいる途中、急な突風。
それにエリウスは一瞬ひるんだ。
そして、この風は何かが違う、普通の風ではない、人工的でもない、と言うより、“風ではない”……
エリウスは、振り返ってそう思った。
※
「な……なんなのよ!」
女が恐る恐る聞く。目の前にはマルクルの変わり果てた姿がそこにはあった。
服はボロボロで、さっきより髪が伸びている、しかも肩から翼――いやボロボロな“骨の翼”だ。酷い形相、目が紫色。
さっきの熱からは考えられないほどの、状態。
そして、部屋全体の殺気。
――“悪魔”
「……皆…殺しだ」
悪魔はそう呟いた。そして目が赤くギラリと光る。
その瞬間、血のような赤い光が広がった。光った目が青く変色する。
「人数……四十人……しけるな…」
その時だ、悪魔が急に凍りづけになった、動かない。
それは女が『刻印』を使って、やったもの。
「一対一(タイマン)なら負けない!」
女が必死に言った一言だった。息が荒い、悪魔の威圧感が凄いから。
その時
――「誰がタイマンだって?」
と言う声が頭の中に響いた。
「――!!」
女はビクッとして、辺り一帯を全て凍らせた。こんな恐怖は初めてかと言うように、辺りが凍る。まるで狂想曲のように。
部屋には冷気しかなくなっていた。女も顔が青い。
――バリィィィン!!
突然、大きい氷が大破した。
そして、一瞬にして全ての氷が紫の炎で焼き尽くされる。
「…小賢しいんだよ……お前も焼かれたいか?」
言葉が…でない。
女は、持っていた袋から、藍色の石を取り出した。それを持ったまま、後ろに、震えた足で走る。
「雑魚が……逃げるか……?いい判断……ではないな」
そう言うと、ホルスターにおさめてある『銀の雹』を一瞬にして取り出し、立て続けに撃った。
「甘い!」
そう言うと、女は体を捻って銃弾をうまくかわした。
「…お前がな!漆黒の残像(ブラックカーテン)」
黒い影を操って、銃弾を反射。軌道を直角に曲げる。
だが、女の方が、一歩一秒速かった。
銃弾が当たる前に、女はこの空間から消えた。
それを見て、
「くそがぁぁ!!」
悪魔は悔しくなり、怒号の叫び声を出して、全ての力を放出した。
青の爆風、それが広がっていく
全てを破壊しつつ
全てを犠牲にして
そして、悪魔の怒りによって――
その日、この土地は消えた。
※
『ミニッツさん!回収地点(リカバリーポイント)は何処ですか!?』
『“さん”付け……まあ良いか。今いる地点から、百五十、切り株の上』
『至急用意をして下さい!総幹部長が重体です!』
『ブリッジが…?了解』
そして、エリウスは通信機を切った。
「急いで…戻らないと…」
そう呟いて、走る――
※
作戦室には汗だくのエリウスと、血塗れで担架に乗ったブリッジ、応急処置を施しているミニッツがいる。
異様な空気だ、しかしこんなに強い敵が出てくるなんて……。
しかも本気ではなかった、最後まで余裕な発言をしていた。
『雇われ』と言えども強さは、やばい。
そう実感できるほどのものだった。
「……これでよしっと、後は救護班に任せて」
ホッと一息入れてミニッツがエリウスに言う。
「そうですか…」
エリウスも一息つく。
しかし、何か不安な気持ちのエリウス。
――このままで良かったの?いや、後悔するぐらいならここにはいないわ…
すると
「…ボスは?」
低い声でミニッツが聞いてくる。
「私達が謎の男と戦っている最中に、もう作戦を始めていて…どうしてですか?分かるはずですよね」
「いや…ね、連絡が取れないんだ。無線、壊されたみたい」
エリウスが答えて、ミニッツが不安そうに足元を見てこぼす。エリウスは何も言えない。
沈黙が続いた。
「もしかして、“危険なこと”になっているかもしれないんだ…」
そこで、ふとミニッツが呟いた。
最終更新:2006年07月06日 15:49