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処罰、彼はそれを受けることになる。彼の覚悟は決まっていた。
多分死刑、方法としては焼き殺されるか首をスパンとやられるか――できれば火葬で葬って欲しい。
と、とんでもない想像と、とんでもない要求を思い、こぢんまりとした椅子に腰掛けていた。
そこは暗くて先が良く見えないところで、七人の人がいる。彼らもまた、緊張気味なのかピリピリしていた。
「奴の任務失敗……処分的にはどうなる?」
低い声だ。知らない人の声。
「お偉いさんたちは?」
青年の声だ。この声も知らない。というより、ここには焔魔とあと数人しか知っている人はいない。
「知らん。でもこの中で一番偉いのは――焔魔、お前だよな?」
「……俺が決めるのか…しかし説得力ない」
すると、さっきの青年が高笑いしだした。
「はは……!確かにさっき放置しとけば“処罰”だったよな、“不老不死”に殺されてよぉ!」
焔魔は隣で硬い表情をつくる。
「……言うことはない。帝釈天(カルラ)、お前が決めろ」
「え……私?ん~正体がばれた時点で“除去”と決まっているんですけど……一応子供ですからねぇ――って俗称で呼ばないで下さいよ」
何だか雑談のようになってきている。と彼は思ったが、いつものことなのか、違うのか定かではない。しかしここでそれを聞くと、処罰が重くなるかもしれないので彼は何も言わなかった。すると
「……悪いが、俺のところで保護させてもらえないか?」
みんながバッと顔の向きを変える気配があった。先ほどの青年が口を開く。
「新入り、あんまり調子に乗らないほうが良いと思うぜ?」
「……後のことも考えてる」
青年は「ほぉ」と言って、
「じゃあ言ってみ?“水泊(すいはく)”」
水泊と呼ばれた男は、青年を少し見て、灰色の髪の青年を見た。
「……処分はそいつの記憶、戦闘での制約、感情を取り除く」
この言葉に少しざわついた。青年は苦笑している。
「水泊さん。じゃあ彼の力はどうなるのですか?」
帝釈天の一言。水泊は黙り込んだ。それを見て「ほら見ろよできねーだと」と青年が罵る。
「封印する」
次は静まり返る場。何言っているのか分かっているのか?と、全員思っていただろう。
「…代わりがいなくなるだろう?」
焔魔が口を開いた。
「宿すものは用意している」
と、その言葉に反応したのか即対応。その反応から、焔魔は納得してそれを承諾した。

「……水泊さん…俺どうなるの?」
水泊はどこからか刀を取り出した。灰色の髪が揺れ、青年はそれを見て少し怯える。
「しばらく自分を閉じるんだ。“火天(アグニ)”。――時が経てばお前は自由だ」
そう言うと、水泊は一閃。無防備な青年に向かって斬りつけた。血は、流れない。
倒れる火天と呼ばれる青年。そして、何か、魂のようなものが吸い込まれるようにして塵になり、刀に取り込まれていった。
「……これで良いのだろう?」
水泊は皆の方を見た。静かな空間、誰もいないように静かだ。
火天は横たわり動く気配すらない。それより『抜け殻』のようだった。水泊はそれを見ると、帝釈天を見て、こう言った。
「器はある、中身をつくってくれ」

※

「戦え……?」
マルクルはいつもと違うブリッジに驚く。何か訳ありのようだ。
「……お二人さん、喧嘩は外でやってね」
何も分かっていないのか、ミニッツがすんなりと二人を外へと追い出した。苛ついているのだろう、笑顔の裏に“ムカついているマーク”が見える。押されながらどんどん外へと追い出されるマルクルはとても情けなかった。

外は少し寒く、殺風景。これらが変わる気配なし。
これらを含めてきっと“デリス・ディルキー”という領地なのだろうと、マルクルは思った。
そんなことを思いながらふと、ブリッジの方を振り向いた。ブリッジはすでに抜刀していた。
「おいおい…どういうことだよブリッジ?」
ブリッジは腕の力を少し抜く。風が流れ、土埃が舞う。
「俺は……この基地を出る」
マルクルは「え……」と口を開けなくなった。少し汗ばむ。
そして冷や汗が流れ、頭の中が真っ白になった。
「……何で?俺、何か悪いことした!?ブリッジ……何か気に食わないことでも…」
ブリッジは何も言わなかった。必死にマルクルは質問する中、何も――
そして、マルクルの口が閉じる時、口を開いた。
「俺達の決まりだろ?『決闘で意見の安否を決める』。だから俺はそのやり方でやらせてもらう」
ブリッジは『刻印』を煌かせた。いつもより大きい光。
きっと『覚醒(トランス)』だろうと、マルクルは構えた。ブリッジは案の定、人並み異常の速さで襲い掛かる。マルクルには分身して見える。
マルクルは、攻撃に合わせてステップをしながら『紋章』使う。風のごとく刃が空間を上下左右行きかう中で、これはブリッジと戦い慣れているからだという事に気づき、ますます「基地を出る」という言葉が辛く響く。
「甘いよ」
ブリッジの太刀筋の隙は完璧といって良いほどない、がマルクルには〇コンマ数秒の隙も割り込んで入れる。
紫色の腕が思い切りブリッジの顔を弾き飛ばした。ブリッジは体勢をすぐさま整える。
ブリッジは整えると同時に向かう――ということはしなかった。むしろダメージはほとんど無く、かすり傷だけ。
マルクルが肩を下げて様子を見る頃、ブリッジの様子が変わった。刀から、炎が満ち溢れる。
よく見ると、太刀筋も微妙に変わっている。

――『覚醒』を解除?無駄なこと……だよなぁ…?

マルクルはブリッジの不審な行動に不安を覚えた。足と刀に神経を尖がらす。
そしてブリッジは炎が出ている刀を見ると、先程の速さでいきなりマルクルに近づいた。
「な……!?」
遅かった。気づけば、マルクルが見えないほどの斬撃が、光の速さほどで繰り出されていた。
血が出て、焼け付くような痛み。そして自分が浮かぶほどの圧力――これは想像と違う…。
マルクルは、血を噴出しながら浮かんだ。
また、ブリッジはその数秒も見逃さなかった。
「ぐあぁぁ!」
『月読刃(つくよみのやいば)』をマルクルの足に思い切り突き刺した。傷口が見事に炎で焼かれる。血も蒸発して流れない。
そしてマルクルは動けなくなった。足が焼け、傷が焼け、使い物にならない。
ブリッジはそんな必死のもがくマルクルを見て、「動いている」としか認識していなかった。空いている左手に炎が渦を巻く。そして刃と化した。
「『紅蓮剣(プロミネンス)』」
ブリッジは、“気”をそれら二つに込めた。両方炎が燃え盛り、激しく大気を焼き尽くす。
そして思い切りクロスに空を斬った。軌跡は燃えて、熱を帯びた。
それは熱線。全てが滅びるような業火。灼熱の槍。
何も出来なかった。マルクルは無防備。

――なんで……?

そう思うしかないのだった。結局…。
マルクルは、力なく燃え盛る槍に串刺しにされ、そして、飲み込まれていった――

※

ドアを叩く音。喧しいぐらいの音だ。力強いその音。雨にも負けない音だ。
「何で逃げる!!お前は……俺の知らないことを知っているはずだろ!?」
台詞も力強かった。あまりの喧しさにドアが軽く開いた。
叩いたびしょ濡れの本人は目の前の人間を睨んだ。睨まれている側からすると何で睨みつけられているのか分からないし、理由は自分勝手としか思えない。
しばらくすると、睨む目が止み、大きい声が響いた。
「ロード爺、教えろ!!俺はなんなんだ!?」
オロードは喧しいブリッジを見て大きなため息を吐いた。そして目がきつくなる。
「聞くには……覚悟がいるぞ?」
赤い髪が雨水で煌く。ブリッジは首を縦に振った。
最終更新:2006年10月22日 12:19