閑話(暁空・その壱)
うまいブイヨンの作り方
「暁空さん、頼まれたもの…調達してきてやったぜ。」
彼が玄関先でそういうと…奥の方から、ややチグハグな響きの足音が聞こえてきた。
その音…実際のところは余りにも微かな音なので、普通の人間はまず気がつかない…を注意深く聞きながら、赤毛の鍛冶屋はふ、と微笑んだ。
彼が玄関先でそういうと…奥の方から、ややチグハグな響きの足音が聞こえてきた。
その音…実際のところは余りにも微かな音なので、普通の人間はまず気がつかない…を注意深く聞きながら、赤毛の鍛冶屋はふ、と微笑んだ。
…ああ、まだ変調はきたしていないな。
「ありがとね。楓。見つけるの大変だっただろ。」
「ああ、大変だった。つっか見つかんなかった。だからめんどくさくなって…作った。」
「はぁ!?」
「なんだよ、ほら。安心しろ。ちゃんと使えるから。」
「ああ、大変だった。つっか見つかんなかった。だからめんどくさくなって…作った。」
「はぁ!?」
「なんだよ、ほら。安心しろ。ちゃんと使えるから。」
そういいながら、楓が暁空に何かを押し付ける。
それは…深さが60cmはゆうにある、馬鹿でかい寸胴鍋だった。
それは…深さが60cmはゆうにある、馬鹿でかい寸胴鍋だった。
鍋に湯を張り…鍋自体のあく抜きをしながら、暁空は大量の野菜を刻んでいた。
いや、野菜だけではない。積みあがった野菜の隣には山のような鶏がらや、数種類の香草。にんにくなどが転がっている。
ただ…いくら食べる量が多いと考えられる男所帯だとしても、この分量は余りにも多すぎだ。
「おまけに、野菜って言っても…ほとんど捨てちゃうようなクズのとこばかりじゃん。こんなんで何しようって言うんだよ。」
すると…振り向きざまに暁空がにかッ、と笑った。
「ブイヨン作るんだよ。」
「え?」
「今、世話になっているギルドの連中に、とりあえずカレーでもご馳走しようとか思ってね。」
いや、野菜だけではない。積みあがった野菜の隣には山のような鶏がらや、数種類の香草。にんにくなどが転がっている。
ただ…いくら食べる量が多いと考えられる男所帯だとしても、この分量は余りにも多すぎだ。
「おまけに、野菜って言っても…ほとんど捨てちゃうようなクズのとこばかりじゃん。こんなんで何しようって言うんだよ。」
すると…振り向きざまに暁空がにかッ、と笑った。
「ブイヨン作るんだよ。」
「え?」
「今、世話になっているギルドの連中に、とりあえずカレーでもご馳走しようとか思ってね。」
ちょっと悪い。そろそろ鍋のあく抜けたと思うから…そう呟いた暁空が顔を上げると、楓は既に鍋を火から下ろし、中の湯を捨てていた。
「続けて。鍋は直ぐつかえるよう洗っとくから。」
「アリガト。気が利くね。」
どういたしまして…勝手口から出て行く赤毛がそんなことを呟いていた。
「続けて。鍋は直ぐつかえるよう洗っとくから。」
「アリガト。気が利くね。」
どういたしまして…勝手口から出て行く赤毛がそんなことを呟いていた。
鍋に鶏がらが入り、煮て…あくを掬い取って…それが終ったら、先ほど楓に『クズの部分』と言わしめた大量の野菜を投入。それが煮えてくると…またもや大量のあくが湧き出してきた。
「なぁ、楓、すんごいあくだろ。これ。」
そういう暁空の口調は、とても楽しそうだ。
「つっか、ブイヨンってめんどくさいのな。煮て…あくとって、また煮てあく取っての繰り返しじゃん。」
「うん、確かにすんげぇめんどくさいよ。ましてや素材全部が、本来なら食べれられないからって捨てちゃうところだから、でてくる分量も半端無い。」
おたまであくをかき集め、器用にあくの部分を掬い上げる。そして再びあくを集め…
「でも、きっちりあくを取ることによって…さっきお前さんが『クズのとこ』っていったところが、いいダシを作り出してくれるんだよ。」
「なぁ、楓、すんごいあくだろ。これ。」
そういう暁空の口調は、とても楽しそうだ。
「つっか、ブイヨンってめんどくさいのな。煮て…あくとって、また煮てあく取っての繰り返しじゃん。」
「うん、確かにすんげぇめんどくさいよ。ましてや素材全部が、本来なら食べれられないからって捨てちゃうところだから、でてくる分量も半端無い。」
おたまであくをかき集め、器用にあくの部分を掬い上げる。そして再びあくを集め…
「でも、きっちりあくを取ることによって…さっきお前さんが『クズのとこ』っていったところが、いいダシを作り出してくれるんだよ。」
暁空はそう答えながら…ふと、昔のことを思い出していた。
かつて旅芸人として世界各地を回っていた自分。
その道中で、芸人仲間のひとりが同じように鍋に向かいながら、暁空にこういっていた。
その道中で、芸人仲間のひとりが同じように鍋に向かいながら、暁空にこういっていた。
『オレたちは個性が強い。いわば今煮てる野菜やガラみたいなもんだ。』
あくをひとつ掬い、更に言葉をつむぐ。
『このあくは…個性がぶつかり合って生まれる、オレたちの仲間たちに対する不平不満。自分への不平不満。』
更にひと掬い。
『でもさ…こうやってひとつの鍋でひざ突き合わせて、不平不満を取り除いていくと…それぞれが影響しあっていい味になるんだ。』
そして、一通りあくを取り去ると…鍋に蓋をして、暁空のほうを振り返る。
『オレたちにしても、この鍋の中のスープにしても…肝心なのはあくを出し合うこと。そしてそのあくを取り去る努力。そうじゃねぇか?次期座長さんよ。』
あくをひとつ掬い、更に言葉をつむぐ。
『このあくは…個性がぶつかり合って生まれる、オレたちの仲間たちに対する不平不満。自分への不平不満。』
更にひと掬い。
『でもさ…こうやってひとつの鍋でひざ突き合わせて、不平不満を取り除いていくと…それぞれが影響しあっていい味になるんだ。』
そして、一通りあくを取り去ると…鍋に蓋をして、暁空のほうを振り返る。
『オレたちにしても、この鍋の中のスープにしても…肝心なのはあくを出し合うこと。そしてそのあくを取り去る努力。そうじゃねぇか?次期座長さんよ。』
「さぁて、これで全部取れた。あとは二時間しっかり煮込んで、スープを漉しておしまいだ。」
くるり。
おたまを器用に回すと、暁空は鍋に蓋をする。
おたまを器用に回すと、暁空は鍋に蓋をする。
「まだそんなにかかるのかよ。」
「旨いものを作るのに時間を惜しんじゃいけない。だからこそ、逆に飯に対しての感謝が湧くってもんだ。」
「…あんたが飯を残したがらない理由、よーくわかった。」
「つか、残したら…例え皇帝陛下だろうとはったおすけど?オレ。」
「旨いものを作るのに時間を惜しんじゃいけない。だからこそ、逆に飯に対しての感謝が湧くってもんだ。」
「…あんたが飯を残したがらない理由、よーくわかった。」
「つか、残したら…例え皇帝陛下だろうとはったおすけど?オレ。」
冗談なのか違うのか。なんとも区別のつかない笑顔で暁空は笑う。
「それににても、あと二時間…ずーッと鍋に張り付きっぱなしなの?あんた。」
「まさか。火加減とか様子は気をつけるけど…ここまでくればもう張り付く必要はないよ。」
「まさか。火加減とか様子は気をつけるけど…ここまでくればもう張り付く必要はないよ。」
そう。もうその必要は無い。
後は鍋の中のこと。
あくを取り去った鶏がらや、野菜たちがひざをつき合わせ…互いの精一杯の力でうまいスープを作る。
後は鍋の中のこと。
あくを取り去った鶏がらや、野菜たちがひざをつき合わせ…互いの精一杯の力でうまいスープを作る。
それだけの話だ。