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狼と狐の二人旅【1】」を以下のとおり復元します。
幾つもある世界のどこか。
此処とは違うどこかの世界。
そんな世界のどこかに浮かぶ星。
蒼い星の上、そこは此処と同じように、人々が暮らしていた。
だけれど、此処とは大きく違うのは…──
竜を始めとする怪物たちが地上を闊歩し、
それらの怪物達と、ある者は剣や鎧を振るい、ある者は弓を引き、
またある者は不思議な力──"魔法"を持って戦う。
人々たちが知恵を持ってその怪物たちから自らの生存領域を勝ち取り幾分かの繁栄を始めた時代。
そんな時代の片隅の、物語。

切り立った崖下の、森の中、だろうか。
少しだけ開けた場所に、幾つ物足音…足音、というには、少し荒すぎる"争いの音"が響き渡っていた。

「でやあァッ!」

肉と骨の断たれる音と、緑色の血飛沫を上げて地へと異形の怪物が地へと倒れ伏す。
人の背丈ほどをした、醜悪なそれ。
所謂、ゴブリンという奴を葬ったのはその高すぎずも、かといって完全に声変わりをしきっていない声色からして未だ13、4歳と言った所だろう。
黒い鎧と兜の様なモノを身に着け、剣を持った…正確には、手から剣を生やした少年は、
振りぬきざまに再びの咆哮の様な唸り声を上げてその後ろに居たゴブリンを切り捨てる。
更にその兜の奥から見える金色の眼を鋭く光らせると直ぐ傍に居た、3匹目のその首を彼の刃が飛ばそうと振り下ろす。
歪な悲鳴を立てて、ゴブリンの首が宙に舞う、その頃。
唐突に、黒鎧の少年のの前方から聞こえる声。

「後ろだリュオ!」
矢張りその鎧の同年代ぐらいの声だった。
見える姿や背も鎧に身を包んだ少年の方と同じぐらい。
腕を出したノースリーブの紅い服装と、妙に長い布のついたリストバンドを見ると破戒僧、
と言えなくも無いがその手に杖が握られて居るのを見ると魔術師、の様だ。

後ろにいたのは、今少年の頭をその株とごと叩き割らんと手に持った棍棒を振り上げるゴブリンの姿。
彼によって発せられた声の所為か、ゴブリンのほうは一瞬の戸惑いを見せる。
リュオ、と呼ばれた黒い鎧の少年も一瞬驚いた様な表情になり振り向きかけるが様子を察したのか、横へ転がる様にして飛ぶ。
「──"紅き炎よ、我は望む。彼の者に裁きの炎を与えん事を"!」
その間に聞こえるのは、呪い(まじない)の言葉。
瞬時に紡がれた其れは、彼の持っていた杖の先端に紅い光を集める。
リュオが横へ回避したのと同時か、魔術師の少年の持った杖の先から赤い炎の玉が上がり、一直線にゴブリンへと向かって行く。
炎は大きな音と、赤い光を撒き散らし、ゴブリンのその醜悪な顔の直前で爆ぜたかと思うと、耳障りな悲鳴とともに炎がその顔を一瞬にして消し炭と化させる。
──それが最後の怪物だった様で、辺りには彼ら以外は刻まれたり焼け焦げたりしたゴブリンの死体が転がるのみだった。

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