ドイツ鉄道(DB AG)

ドイツ鉄道(DB AG:Deutsche Bahn AG/デーベー・アーゲー:ドイチェ バーン アクツィエンゲゼルシャフト) は1994年に発足した東西ドイツ国鉄の民営化鉄道会社。日本のJRに相当する。ドイツ最大の鉄道企業であり、ドイツ全土に路線網を持つ。またヨーロッパのみならず、世界有数の鉄道技術を持つ企業である。

概要

 民営化によって株式会社とはなったものの、全株式を政府が保有しており、実質的な民営化は今後の課題とされている。上下分離によって各業種はいくつかのグループ企業として分割されている。またオープンアクセス制度を導入し、民間業者が参入出来るようになったことで競争の原理によるサービス向上が期待されている。

民営化の経緯

 1989年のベルリンの壁崩壊によって冷戦の時代は終わりを告げる。壁崩壊の歓喜は再統一の原動力となり、わずか一年という驚異的なスピードでドイツの再統一が成し遂げられた。しかし鉄道運営に関しては、西ドイツのDBと東ドイツのDRがしばらくの間共存した。この間は一国に二つの国鉄が存在していたこととなる。これには旧西ドイツ国鉄の民営化が統一前から計画されており、東西両国鉄の統一に際して、枠組みを再検討する必要があったからだとされる。1994年にドイツ連邦鉄道(DB 西ドイツ国鉄)とドイツ国営鉄道(DR 東ドイツ国鉄)を統合した上で民営化し、ドイツ鉄道株式会社(DB AG)が発足した。

発足後の経営状態

 急速すぎるドイツ再統一は社会に大きな混乱を招いており、特に東西の経済格差は深刻な問題となっていた。東側諸国の優等生と呼ばれた東ドイツも、西側を代表する工業国に成長した西ドイツとは圧倒的な差があり、これは鉄道の水準にも大きな差となって表れた。旧東ドイツ領域の鉄道の水準を引き上げることは発足後の急務となった。また1991年に運転を開始した超高速列車ICEの導入を進め、ドイツ全土にネットワークを拡大している。
 民営化によって経営的には大幅な改善が見られた一方、技術的には混乱が発生し、車両トラブルが頻発するようになった。また西ドイツ時代には非常に正確なダイヤを特徴としていたにもかかわらず、近年では遅れが頻発するようになっている。民営化の弊害として経営合理化による地方の切り捨てなどもあり、一部では乗客の不満が爆発した。そんな中、1998年にはICEの脱線転覆事故(エシェデ事故)を起こし、世界中の鉄道事業者に衝撃を与えると同時に、強い批判にさらされた。事故以来、ドイツ鉄道は安全面の向上に主眼を向けていくこととなる。
 自動車や航空機との競争に晒され、依然として経営状態は厳しい状態にあるが、EUが推進する高速鉄道政策や環境政策を担う重要な役割を担うことも期待されている。
最終更新:2017年01月31日 02:29