メテオールの夜

ひとつ、ふたつ。
今日はよく星の降る日だ。
みっつ、よっつ。
俺こと、梶取 十郎(かんどり とおろう)はこの寒い中
何をトチ狂ったのか夜空を見上げて、ぼうっと煙草を咥えていた。
ゆらゆらと紫煙が揺れる。
煙草の銘柄はよく知らない。そもそも俺は煙草を吸わないし。
これはさっき居間に下りたときに頂戴したものだ。じいちゃんが忘れていったらしい。
それをただ、多分、雰囲気作りのためだけにこうして持っている。
青春してる自分に酔ってる馬鹿な若者丸出しで、自嘲に口元が緩んだ。
そしてうっかり煙を肺に入れてしまって、咳き込む。
まったく、恰好のつかないことである。

ちらり、と隣を見た。

ベランダの端から手を伸ばせば届きそうな距離に、その家はあった。
実際、その家には歩いて一歩。思い切り足を伸ばせば同じ作りをしたベランダに届いてしまう。
ガキの頃はそれでよくお互いの家を行き来したものだった。
もっともガキの身体ではコンパスが短いので、思い切りジャンプしなければならなかったが。

それに失敗して、俺がここから転落したのはいつの話だっけ。
なまじ家同士が近すぎるせいで俺は飛び移った勢いのまま壁に激突し、
一応あった塀に腹を打ち、面白い体勢で背中と頭を強打した。
この額にある傷はそれの面影だ。生え際にあるので将来が不安である。じいちゃん禿げてるし。

………なんだかヤな方向に思考が進んだので、小さくかぶりを振りながらまた空を見上げた。

まったく、アホのような星の数である。
夜中になるとコンビニも閉まるような田舎なので、夜を照らすものがあれくらいしかないってことだろう。
それが証拠に、明るい都市の夜空には星がないのだとか。

また、ひとつ。
星が、流れる。

結局、俺はここに残ることになった。
進学はせず、来年からはじいちゃんのとこで修行するのである。
もっとも今までの生活も充分修行じみていたので学校に行かなくなるだけの話かも知れない。
そう言ったらじいちゃんに怒られた。
でも、ばあちゃんはその通りだとも言っていた。
母さんは大学に行って欲しかったようだが、あいにく俺にはそんな頭はない。
あいつみたいに。


ここから、いなくなる。
それが、よく、わからなかった。


「何やってんの」

不意に声が掛けられた。
俺は驚くでもなく、極めて自然に―――自然を装ってそっちに顔を向ける。思いのほかうまくできた。

「せーしゅん」
「ばか?」

俺渾身のギャグをバッサりと切り捨てる。
可愛くない女だ。
寝巻きに半纏のくせに。

すぐ隣のベランダから半目で呆れた視線を送ってくるその女は土井 七香(どい ななか)。
俺の、―――まあ、幼馴染みである。

「何だよ、お前こそ」
「星、見んの」
「は?」
「知らないの?今日、アレよ。流星群、見れるの」

知らなかった。道理でさっきからやたら星が流れると思った。
というかこいつもよく知らないんじゃあるまいか。
ここんところずっと部屋に篭って勉強ばっかりしてたし。
追い込み時期なので仕方ないが。
こんな寒空の下星なんぞ眺めていていいものか。
そう言ったら、

「たまには生き抜きした方がかえって効率がいいってものよ」

だそうだ。
秀才様は言うことが違う。

「………って、十郎、何吸ってんの」
「これは吸ってるんじゃねぇよ。ただ持ってるだけだ」
「何で?」

そう言われると辛い。
まさかなんとなくカッコいいからとは死んでも言えず、ちょっと困った。
その一瞬の逡巡を、この女が見逃すはずもなく。

「……まさかカッコいいとか思って、でも吸えないから持ってるだけ、とか?」

これですぐさま否定できないのが俺のさが。
七香は思い切り吹き出して、人を笑いものにしてくれた。

「やっぱ十郎、ばかだわ」
「るせぇ。さっさと引っ込んでベンキョーしてろ」

七香はしばらくケラケラ笑っていた。
笑っている間流れた星でも数えてやろうかとも思ったが、やめた。情けないからだ。
七香は笑いつかれたのか目尻の涙をぬぐうと、俺の手にある煙草をじっと見つめてきた。
その目はいつか見たような好奇心の眼差し。
まさか、こいつ。

「ね、ちょっとあたしに吸わせてよ」

やっぱり。

「いいじゃない。どーせ吸わないんでしょ?」
「でも、火点けてから結構経ってるからもう短くなってるぞ」
「いいから」

七香は大きく足をあげてベランダを乗り越えた。
寝巻きでよかった。これでスカートだったらパンチラどころかお尻丸出しである。
……良かったのか残念なのか。

「そういえば十郎、ここから落ちて入院したことあったよねぇ」
「一泊だけだったけどな。俺、全然泣かなかったけどお前がすっごい勢いで泣いてたよな。
 死んじゃヤダ、とか言ってさ。死ぬかっての」
「えー、それ嘘だぁ」
「覚えてないのかよ。あーあ、あの頃は可愛かったのになぁ」
「親戚のオッさんかお前は」

などと軽口を叩きあいながら手を引いてやる。
しかしその必要もなかったのか、七香はひょいひょいと柵を乗り越えてきた。
身軽なヤツである。がり勉のくせに。

もう短くなってきていた煙草を手渡すと、七香はそれを思い切り吸い込んだ。
そして、案の定げほげほと咳き込む。
馬鹿か。あんなに思いっきり吸い込むヤツがあるか。

「うぇ~何だよこれ」
「煙草」
「じいちゃんよくそんなの吸えるね」

さっきのとは真逆の意味で涙目になり、煙草を返してくる七香。
俺はそれを受け取り、すぐに落として踏みつけた。

「あ」
「さ、もういいだろ。早く帰らないと風邪ひくぞ」
「んー、もうちょっといる」
「お前な」

一応半纏を羽織っているとはいえ、この季節その恰好で外にいるのは無茶な話だ。

「じゃあさ」

七香はこつ、と俺の部屋をノックして、

「毛布、持ってきてよ」

そう言った。



―――現在の七香の装備。

毛布。
半纏。
俺。

「あー、また流れたぁ」

俺の足の間にすっぽりと収まってい七香が空を指差して楽しそうにはしゃぐ。
俺も空を眺めて、やっぱりちょっと煙草の臭いがついたな、とか思っていた。
でも鼻腔をくすぐる大半は七香のシャンプーと石鹸の香りだ。
ぴったりと密着した状態で、色々くっついて柔らかかったりくすぐったかったり大変である。
俺が男の子だってことを七香は知らないのか?
男はオオカミさんなのよって教わらなかったのか?
馬鹿なのか?

「星、綺麗だねぇ」

どうも馬鹿なのは間違いないらしい。
七香は暢気に俺に体重をあずけてくる。
俺はといえば、この手を腕をどうしたものか、ベルトみたいに回してもいいのかどうか彷徨っている最中だ。
いくらガキの頃からの知り合いとはいえ、親しき中にも礼儀ありっていうし、
そういう意味でもこいつは完全に間違っている。もっと遠慮しろ。俺に。

「―――ねぇ、十郎」

そもそもこんな無防備で大丈夫なのかこいつは。
女一人の身で、これからやっていけるのだろうか。
こいつが毎日どれほど勉強しているのか、隣の家、いや隣の部屋にいる俺にはわかる。
こいつはきっと、数ヶ月もしたらここから出て行くだろう。
それで、それで―――大丈夫なのか。
こんな飛べない鳥みたいな女、ぽけっとしてたら速攻で食われるんじゃないのか。
明るい夜を行く肉食獣に。

「あたしさ」

しかし俺がなんと言えるだろう。
俺は隣の家に住んでるってだけだ。遊んでいたのだってガキの頃の話で、
お互い下に毛が生える頃には単なるお隣さん扱いだ。
俺はこいつにとって、きっと何者でもない。
そんな俺が七香に何か言う権利を有しているのかどうか―――それは、きっと明らかなはず。
七香がどうしようが、俺には関係のない話なのだ。なってしまっているのだ。
少し………気が沈む。

「こないだの模試で0点、とったんだ」
「は!?」

くっだらない思考回路がブチ切られ、俺は夜中にもかかわらず大声を出してしまう。
だが、それほどのことをこいつは言った。
なんだって?0点?こいつが?

「な―――なんで?」
「問題は、わかったよ。ううん、きっと、今までで一番調子良かったと思う。
 パズルがピタピタ嵌っていくみたいにシャーペンが進んでさ。
 ああ、これは行けるな―――って思ったとき、怖くなったんだ」

何が?

「……ここから、いなくなるのが」

七香の顔は、後ろ姿のために、俺からは見えない。

「実感がさ、湧いたんだと思うんだよね。
 学校に受かって、ここを出て、知らないところで暮らすの。
 おかしいよね、ずっとこんな田舎、いつか抜け出してやるって勉強してきたのに。
 あたし、怖くなってさ。それから、全然動けなかった」

それで、残りのテストもその調子だったそうだ。
解答は自動的といってもいいほどに頭に浮かんでくる。
しかし、それを答案に書き写すことが、どうしても、できない―――。

「馬鹿、だよね。今になってこんなことに気付いて。
 先生とか、お父さんとかお母さんとか心配させて。
 でも、怖いんだ。
 もし受かったら、あたし」

そうして、七香は身体を返して、俺に抱きついた。
いや、しがみついた。

「十郎の傍から、離れなくちゃいけなくなるんだよ……!」

俺は、

「おかしいよね。自分で決めたことなのに。やりたいこと勉強しに行くのにさ。
 それが嫌だって、あたしどれだけ我が侭なんだって話だよね……!」

馬鹿だ。

隣に住んでいたくせに、こんなにも―――七香が好きなくせに。
関係ない、だって?
落ち込んでいる場合か。
お前がそんなだから、七香は今、俺の腕の中でさえ震えているんだろうが……!!

「七香」

自然と、名を呼んだ。

「うぅ……」

どうすればいいのか、わからない。
七香は、ここからいなくなる。
俺は、ここに残る。
それは―――きっと、変わらない。
どんなに不安がろうと、どんなに拒絶しようと。
朝が来ればこの星が消えるように、その時はきっと、来る。

でも。

ならば―――その時、せめて今を思い返して安心できるように。
七香の、この涙を、止めてやろう。
それができるのは、俺しかいないのだから。
自惚れでも慢心でもなく、自然に、そう感じた。

「七香」

振るえる背中を、抱きしめる。

考えろ。
そうやったら七香が安心できる?
七香の不安が晴れるように、俺は―――。

「……セックスしよう」


「 そ れ は な い わ 」

「 俺 も そ う 思 う 」


……でも、まあいいか。
七香が、笑ってくれたから。


「だいたい、もっとムードってものを考えなさいよね」
「馬鹿お前、アレ以上どうしようって言うんだよ。俺頑張ったよ?」
「あはは。まあねー」

下着姿の七香が布団の上でけらけら笑う。

七香は渋ったがシャワーは無し。
これから浴びていてはお互い家族に気付かれてしまう。
隠すようなことでもないような気がするけど、でも隠さなきゃならないような気もする。
それになんとかこの勢いに任せてしまいたい。

「え、と」
「ちょい待ち」

七香の細い肩に手を置き、押すと、鼻っ面に手のひらを向けられた。

「何をいきなり押し倒そうとしてんの。ムードを考えろって言ったところでしょ?」
「………?」

よくわからない。
目を瞬かせていると、業を煮やしたか七香は顎をツンとあげ、目を閉じた。
あ、そうか。
緊張してるな、俺。
これを忘れるところだった。

「ん」

その薄い唇に、自分のそれを重ねる。
でも触れ合うだけで精一杯だ。あまりの柔らかさに意識が飛びそう。
これ、舌を入れるなんて本当に可能なのか?
などと、これからもっととんでもないことをするくせに湯だった頭で考える。

「うわぁ」

唇を離すと、七香が変な声を出した。
顔が星明りでもわかるほど真っ赤だ。どうやら心境は同じらしい。

「照れるな」
「照れるね」

そして今度こそ、七香を布団の上に押し倒した。

「よろしく……お願いします」
「こ、こちらこそ」

なんて緊張をほぐす……のは無理だろうからせめて和らげるように挨拶して。
フロントホックというヤツだろうか、前部分で止めてあるブラを外す。
七香の形のいい胸が、ぷるんと揺れた気がした。
まあ、実際揺れるほどないけど。

「なんだよ」

睨まれた。
でも安心しろ。俺はお前の貧相な胸でもヤバイくらい興奮してるから。

「………ホント?」

あ、なんか不安そうな顔をしている。しまった、気にしていたのか。
一応、七香の不安を解消してやるのが建前だっていうのに逆に不安がらせてどうする、俺。

俺は七香の胸の、小さな突起に舌を這わせた。
甘い。気がする。実際は少ししょっぱい、か?

「あ、ひぁ」

もう片方は手のひらで弄ぶことにした。
ボリュームはそれほどないけど、そこは驚くほどに柔らかい。
くにくにと色々形を変えるようにこね回すと、七香が鳴いた。

「ひゃふ」

押し殺したような。
でも、いつもとトーンの違う声。
この野郎、いっちょ前に感じているのか。

「気持ちいい?」
「そんなこと訊くな!」

図星らしい。
この女、存外えろいかも知れん。
俺は少し体勢を変え―――でも舌と手で弄くるのはやめずに―――身体を支えていた
もう片方の手を七香のショーツに、その中心に這わせた。

「ひゃ!」

七香は小さく、高い声をあげる。
そこは、しっかりと湿っていた。
この薄い布一枚向こうに女の子がある。
それが、俺の行為によって濡れている。
はしたなく求めている。
この、俺を。

それは、自然と口元が歪むくらいに興奮する事実だった。

「あ、こ、こら!」

聞く耳など持たなかった。
ショーツの中に手を突っ込んで、その部分をなぞり擦る。
何度も、何度も。

無論胸への愛撫も続行中だ。
母乳よ出ろというくらいに吸い付いて、
元の形を忘れさせてしまうくらいにこねあげた。
七香の肢体が熱くなっているのがわかる。
苦しそうな、切ない声が鼓膜を震わせる。

感じているのか、七香。

ちゅくちゅくという淫音は嘘をつかない。
擦り、擦り、擦り、そして、片隅に残っていた理性が焼ききれると同時にある知識を思い返させる。
女の子が最も快感を得る場所のひとつが、そこにあると。

淫核。
すなわち、クリトリスである。

「は、―――ひゃぁぁぁあああっ!!?」

おそらくそこだろうというしこりをきゅ、と抓ってやると、どうやらビンゴだったらしい。
七香は大きく痙攣し、脚をぴんと伸ばして……かくん、と力を抜いた。

「はぁ―――は、あぁ……はふ」

虚ろに宙を彷徨う七香の眼を見て、俺ははっと気が付いた。
しまった。やりすぎたか。
ああ、でも俺のアレももう限界ですと言わんばかりだし、
ここまで来てしないのはちょっと勘弁して欲しいというか。

「おい、七香ー。七香―」
「ふぁ、は―――ぁ、はぁ」

目の前で(ぐちょぐちょな)手を振ってやると、一応こっちは向いてくれた。

「このままして、いい?」
「ぁ、う……?」

七香はまだ意識が朦朧としているようだけど、確かに頷いてくれた。嘘だけど。

とりあえず七香汁を吸って重さの変わってしまったショーツを引き剥がし、
七香のその部分を観察する。

………。

えろい。
えろい。
えろいぞ、これは。
いいのか、こんなえろいものがこの世にあっていいのか!?
何考えてるんだ造形の神様!こんなもん作っていいと思っているのかGJ!!

俺は感激しながら、でもやっぱり我慢できないので自分の一部分を、っていうかちんこを七香のそこに当てた。
そして、ゆっくりを腰を推し進め―――。

「―――いぅう」

七香、復活。
七香は顔をしかめてやたら近くにある俺の顔を見たあと、
自分の下半身に俺のモノが突き刺さっているのを見て、
また俺の顔に視線を戻した。

「な、何やってんの?」
「そうにゅう」
「ばか!!」

罵倒された。

「だってお前寝てるし」
「そうしたのはどこのどいつよ!ぅう、なんでそうムードを大事にしないかなぁ?」
「すまん」
「せっかく初めてなのにさぁ……いろいろ考えてたのにさぁ」

下半身に俺が突き刺さっているままの七香がさめざめと涙している。
この状況でぼやけるとはそれはそれで大した女だ。
というか、さっき気になる発言を聞いたような。

「いろいろ考えてた?」
「う」

七香が顔を強張らせる。
さらに追求すると、七香はしぶしぶと白状し始めた。俺を下半身に突き刺したまま。

それによると、どうやら今日ベランダに出てきたのは俺を襲う算段を立てるためだったらしい。
一応は俺が落ちた場所であるため、夜中にベランダからベランダへ乗り移るのは可能か。
また部屋は開いているのか、どんな寝姿か、散らかっていないか、カーテンは開いているのか等。
本番は近日。
その時は月の綺麗な夜に、とっておきのネグリジェで、素敵だなと思えるような行為にしたかったのだとか。

「………お前」
「し、仕方ないじゃない!十郎との思い出が欲しかったんだもん!」

まあ、その計画も十郎が外にいた時点でおじゃん。しかもなりゆきでこんなことになっちゃったけど、なんて。
七香はもじもじと身体をくねらせた。俺を下半身に突き刺したまま。

―――どく、どく、どくん。

はい、射精しました。

「 何 や っ て ん の ! ! 」

怒られた。

「仕方ないだろ!お前の膣内スッゲー気持ちいいんだぞ!!」
「う―――、そ、そりゃどうもだけど。だけど!もっとムードを考えろって何度も言ったでしょうが!!」
「ちんこに脳みそは無ェんだよ!!」
「大声でちんこ言うな!!」

最早ムードなんて言葉はしあさっての方向に飛び去っていた。
俺と七香は繋がったまま大声で―――と、七香がん?と眉根をひそめる。
そうして上体を起こし、その、接合部を見やると、

「……男の子って一回出したら小さくなるもんじゃないの?」

と、どこから仕入れた情報か小首を傾げた。
だが確かに俺のは一回射精をしたにも関わらず全くしぼんでしまう気配も見せず、
固く七香を貫いている。

「そういうお前も、痛くないの?」

ずるる、と少しだけ腰を引くと、純潔の証を突き破った跡がそこにこびりついていた。
さっき七香も自分で言っていた。確かに今夜がこいつにとっても初体験なのだ。
そして、処女というものは激しい痛みを感じるというのが俺の知識ではある。

「……あんまり。入ってるっていうのは、わかるけど」
「ほう。俺の方はまだ全然収まらないみたい」
「………」
「………」

顔を見合わせる。

「ムード、作る?」
「……もう、いい」

そうして、俺たちはどちらからともなく唇を重ねた。



目が覚めたときには、もう昼になっていた。

「20点」

眉を吊り上げた七香の辛口採点である。
無論昨日の―――いや今日の行為のことだ。
俺の怒張は静まることを知らず、また七香のえろさもとどまることを知らず。
俺の白濁は七香の膣内を白く染め上げ、七香は初夜にして挿入で絶頂を迎えるという偉業を達成した。
ある意味思い出ができたと慰めたら殴られた。
コークスクリューで。

でも、実際七香は以前より確実にさっぱりとした顔をするようになった。
俺たちの凸凹な初夜はお世辞にも素敵とは言えなかったが、あれはあれで七香の迷いを振り切らせたらしい。

―――夏、帰ってきたときは絶対100点だからね。

そう言って、部屋に帰っていったから。
見送ったあとはなんだか今まで夢を見ていたようで、しかし足元の煙草の焦げ目が現実だと教えてくれる。
俺は大きく伸びをして、高い空を見上げた。

七香と見上げた星はそこにはない。
けど、見えないだけだ。
あの青の向こうには、変わらず星が広がっている。
それさえ知っていれば、きっと。
俺も、七香も、大丈夫。
同じ空の下で、頑張れると思う。

そうやって自然と微笑みながら、一階に降りた。



余談だが。

あれだけ大声出して、気付かれないほうがどうかしている。
はい、モロバレでした。
ぎゃふん。


                 メテオールの夜~新ジャンル「田舎娘」妖艶伝~ 完

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最終更新:2008年02月10日 23:14
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