愛という名の聖戦に

柳川敬一大尉が死後、別の意味で改めて散華(ハートブレイク)されてから数日…。随分話が進んだので報告しておく。

マーガレット・ロビンソン。愛称マギー。俺の所属する研究室の修士1年生。英国に生を受けた彼女は高校卒業と同時に来日、今に至る。
なんでも英国陸軍士官だった彼女の祖父はGHQの一員として終戦直後に来日したらしく、その際に相当な親日家になってしまったそうだ。
特に日本の仏像に心奪われた彼は、自分の息子に『ミョウオウ』、娘に『ボサツ』、挙句にはマーガレットには『キッショウテン』と名づけようとしたとか。
彼の妻ビクトリアさんによってその企みは阻止されたが、ともかくマーガレットもそんな祖父に毒されまくった『日本通』となってしまった。
平日こそ研究室で勉学に勤しむ彼女だが、休日には寺社仏閣を巡り、深夜はアニメ鑑賞やゲームを満喫するなど、尋常じゃないくらいに日本文化に浸っている。
そのおかげで、先日のレポートの詫びに『ニンテ○ドーDS』とソフト何本かを貸したらすっかり機嫌を直してもらえた。

で、その彼女は今、俺の部屋に遊びに来ている。何でも俺の部屋にあるマンガ、『伊賀の○丸』に興味があったそうだ。
マギーの容姿としてはプラチナブロンドの背中まで伸ばした髪。今は白磁のような指がページをめくっており、メガネの奥の碧い瞳が絵と文字を捉えている。
大尉殿ご指摘のようにスタイルも良い。何度かじゃれつかれて抱きつかれた事もあるが、胸の感触が素晴らしかった…。
コレだけ美人で気さくな性格だから好意を寄せる男も多い。…俺もその一人だが。しかし、彼女が特定の誰かと交際している話は聞いた事がない。
ともかく、彼女のハートをゲットして俺が童貞を捨てる事で任務完了できそうだ。

ちなみに、柳川大尉殿は姿を消している。…が、近くにいるらしく耳元で助言をくれたりしている。
{何をしている?茶くらい出してやれ。} ラジャー
{頁をめくる速度が遅くなっている。話しかけるなら今だ。最終的には恋愛関係の話題を振れ。} ラジャー
{会話が途切れたが気まずい雰囲気ではない。彼女の手を握って、そのまま接吻して押し倒せ。} ネガティブ。早計すぎないか?
{なら告白だ。思ったことをぶちまけろ。} 
そして………。

「マギー…。俺、お前の事好きだったんだ…。」
あれ?なんかあっさり告白できた…。今まで思い悩んでたのが嘘みたいだ…。…しかし大尉殿の作戦立案能力、意外と高いんだな。
「カズヤ…。ありがとう、嬉しい。…でも、ごめんなさい。」
一瞬凄く眩しい笑顔を見せ、一転して悲しげな表情を浮かべるマギー。
「…マギー?」
「ごめんなさい。私、自分より弱い人とお付き合いできないの…。お祖母様の決めた家訓で…。」

なるほど、難しいだろうな。なんせ彼女は剣道3段、空手4段、柔道5段、さらにプロキックボクサーのライセンスも持っててレイピアの使い手。
武道に授業で柔道をかじった程度の俺とは格が違いすぎる。

…後で聞いた話だが例の彼女の祖父は日本での任務が終了した後も、彼女の祖母を口説き落とす為に数年残って武者修行していたらしい。
フェンシングの名手だったビクトリアさんに十文字槍を持って挑み、最終的には懐に飛び込んできた相手を柔道の寝技で圧倒し、そのまま彼女の母が産まれたそうだ。
時の用には鼻を欠け…彼女の祖父の座右の銘だったそうである。…もっとも、婿養子という形で結婚したそうなので普段は尻に敷かれっぱなしだったとか。

ともかく玉砕覚悟で告白してみて、文字通り玉砕したっぽいのだが、参謀・柳川大尉殿が新たな策を告げてくれる。
{なぁ。彼女はゲームに自信はあるのか?} 
あるだろうな。彼女は重度のゲーマーだ。
{なら、昨日やってた…なんだっけ?戦闘機で戦うゲーム…。}
『エース○ンバット』?
{それだ。アレなら俺が貴様に指南できる。それで勝負に挑め。}
了解。…彼女だって、俺の告白に対しては「嬉しい」って言ってくれたんだ。諦めるよりは、手段を選ばす足掻いてみるか。

「なぁマーガレット…。武道での勝負じゃ、お前に勝てない。…しかし、フライトシミュレーションで勝負というのはどうかな?」
「ゲームで勝負?使うのは『エー○コンバット』?良いでしょう、受けて立ちます。では決闘日時はいつにします?」
「今週金曜の夜10時でどうだ?」
…そして上手くいけば恋人ゲット。加えて最高の戦果を挙げられたら童貞・アディオスな訳だ。
「…構いませんわ。それでは決闘の日を楽しみにしてます。」
優雅に一礼して去っていくマギー。そして俺の前に姿をあらわす敬一。真剣な眼差しで俺を見ている。

「和也。俺の教えが必要か?」
「頼む、敬一。いや、柳川大尉。」
「了解。しかしこれだけは言っておく。口でクソたれる前と後ろに”サー”と言え!!」
「サー・イエッサー!!」
「ふざけるな!聞こえんぞ!」
「サー・イエッサー!!!!」
…どうでもいいが、お前、海兵隊じゃなくって航空隊だろ。しかも大日本帝国海軍の…。

それから特訓は連日連夜続いた。元飛行機乗りが教官についた甲斐あって、俺の腕はみるみる鍛え上げられていった。
俺の脱童貞と大尉の昇天を賭けた聖戦の刻は近づきつつある。

新ジャンル「【妖怪】人間以外の男の子とのお話3【幽霊】 愛という名の聖戦に…」

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最終更新:2008年04月27日 16:34
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