友情物語

さて本日は3月20日。俺、柏木和也は彼岸に渡っちゃいそうなくらいにピンチです。
ちなみに、今回の原因としてはしばらく前に俺に取り付いた酒井茂雄飛行兵曹長…。
彼の願いは『腹いっぱい、ぼた餅を食べること』であって、それを実行したところ、恋人のマーガレット・ロビンソン(愛称マギー)と恋人兼従姉の由美からフルボッコです。
後で聞いた話ですが、彼女らも佐々木喜久子さんの供養のために苦労して作ってたみたいなんで、それを喰った俺の自業自得…なのかな?
ともかく、何発か良いパンチが入ったところで目の前の光景が真っ白になって…、気がついたらとある川原に突っ立ってました。
ぼた餅には『皆殺し』という物騒な別名があったりする訳ですが、別の世界に旅立ちかけてる現状は笑えない状況だったりします…。

…ただ、今財布持ってきてないんだよな。まぁ料金払って向こう岸にいったら確実に帰ってこれないだろうけど…。
仕方ないから、取りあえず川原に腰を下してぼんやり水面を見つめてみる。

と、向かい側から何か飛んできた訳ですよ。

「ぅぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」

声を上げてるから多分人なのかな…などと暢気に考えていたら、こっちにまっすぐ飛んできてるわけで…………。

「う、ぅぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

とりあえず紙一重で回避。ソレは俺から3mほど離れた所に着弾したわけですが、しばらくして再び動き出しました。
で、その飛翔体の正体ですが、しばらく前に今生の別れを告げたばかりの知り合いだったりします。

「久し振りだな。和也。」
「…敬一。」

しばらく前まで俺に取り付いていた柳川敬一大尉殿。
本来なら、俺も『久し振りだ』と返すところだろうが、それ以上に気になったことを口にしとく。

「なぁ?なんであんなに景気よく吹っ飛んできたんだ?飛行機に乗らないのはともかく、爆弾も持たない特攻って初耳だぞ。」
「…………俺も人間が生身でカタパルトから打ち出されたのは、多分、初めてだと思うぞ。」

…えーと?空母から艦載機を飛ばすアレだよな?

「……………何やったんだ?お前…。」
「…………………こっちに来てた後輩が所持していた猥褻本を譲ってもらった事が、喜久子君にバレた。で、軍法会議で有罪判決。」

…ああ。自業自得だ。ってか、由美があれだけ佐々木さんを泣かせるなってクギをさしてたのに…。

「…それはそうと、お前はなんでこっちに来てるんだ?」
「…かくかくしかじか」
「…酒井か。彼は大の甘党だったからなぁ。南方が落ちて砂糖が全く手に入らなくなってから全然元気がなかったしな。
 しかし、こっちにきてからは凄くご機嫌だったぞ。そんなに良い物食わせたのか?」
「…一日10本、チョコバーを食べてたな。」
「米兵たちが糧食に使ってたアレか?…甘すぎるだろ、アレは。」
「それが甘党にとって良いんだろ?」
当時は童貞捨てる以上に、糖分を摂取するほうがハードル高かったのだろうしな。
ただ、それで成仏できなかったのは、ぼた餅によっぽど強い思い入れがあったのだろうか…。

そうこう話をしている内に、ふと意識が遠のく感覚。
なんとなく理解できた。…もう、現世に戻る時間のようだ。

「最後に一つ、聞いて良いか?」
「何だ?言ってみろ。」
「佐々木さん相手に『勃つ』ようになったのか?」
「!!?」
「まぁいいや。今聞けなくても、お盆にはコッチにくるんだろ?」
「…多分な。では、また会おう。」
「ああ。じゃあな。」
「……ああ、そうだ。今度、俺の墓参りでも来てくれることがあれば、新たな猥褻本でも持ってきてくれ。南米の巨乳美人など特にありがたいな。」
「ちょ!おまっ!!?」

文句を言ってやろうと口を開く間もなく、来た時と同じように意識が飛んでいく感覚…。
目を開いたときには、心配気な表情が並んでいた。
「カズヤ!大丈夫ですか!?」
「痛いところはない!?気持ち悪いとかない!?」
マギーに由美か…。
「…死にかけたお陰で貴重な経験ができたさ。敬一にもう一度会ってきた。」
息を飲む二人。
「まぁなんだ…。アイツらも向こうで元気にしてるみたいだ。…お彼岸だし、墓参りでも行ってみるか?」
…敬一。土産のエロ本は彼女たちが居ない時に、改めて持って行く。今回はぼた餅だけで勘弁してくれ。

ちなみに、後日改めて大尉の墓前にエロ本を持って行った翌日、再び由美とマギーに折檻される羽目になった。
何でも由美の枕元に佐々木さんが出てきてすすり泣いており、この事実を知ったとか…。
敬一、今度は魚雷発射管から300kgの爆薬と共に射出されてなければ良いが…。

新ジャンル「【妖怪】人間以外の男の子とのお話 りべんじ【幽霊】 友情物語」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年04月27日 16:35
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。