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「私が…動く……。異論は聞かないよ……」

 セシリアは、有無を言わさぬ口調でそう言った。

 

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 その日、蒼天城では、樹木の世界(ウッドワールド)を襲っている未曾有の混乱に対処するための評定が行われていた。
 珍しく九界士のすべてが議場に揃う中、セシリアはドレスの上に儀礼用の革鎧を重ねた姿で現れると、九人の同志に向かって柔らかな微笑(え)みを投げ掛ける。

 「よく集まってくれたね…みんな。こうして、久しぶりにみんなの顔が揃うのを見られたこと、まずは嬉しく思うよ……」

 社交慣れした彼女のいつも通りの言葉と微笑(えがお)。だが、それも挨拶とともに直ぐに引き締まったものに変わる。

「樹木の世界を襲う混乱は、相変わらず治まるところを知らない。人々はダスクフレアの脅威に恐怖と絶望を抱き、夜も眠れぬ不安の中にいる…」

 強い眼差しの中にわずかに混ざる悲痛の色。それを決して声色に表さぬまま、セシリアは揺るぎなき意志を言葉にする。

「私は、それを拭いたく思う…。人々の涙と嘆きを止めるため、今こそ私達は危険を顧みず立ち上がる時なんだ……!」

 放たれた意志にわずかに広がる動揺。ある者は期待を込めて、ある者は心配を込めて、続く彼女の言葉を待つ。皆、彼女の意志するところの意味を、よく解っているのだ…。

 「そして先日、この混乱の原因がついに判明した。不知火凱斗…彼の喫したひとつの敗北が、この混乱の全ての原因だった……」

 英雄であるカオスフレアの…それも界渡り(フォーリナー)の勇者の敗北。その衝撃こそ、樹木の世界を包む未曾有の混乱の原因であった。彼女はそれを、つい先日、彼自身の口から耳にしたのだ。

「この混乱は、その敗北が生む衝撃をプロミネンスの力によって増幅させたものだ…。だが……、カオスフレアがダスクフレアに敗れることによって生じた混乱ならば、カオスフレアがダスクフレアに勝利し、再び希望を示すことによって、それを打ち払うこともできるはずだ……!」

 彼女はその推論に、ここ数日の情報収集で確証を得ていた。……同時に、そこにひとつの制限があることにも……。

「本来、それは、全ての原因となった不知火凱斗が、件のダスクフレアを打ち倒すことによってのみ、完全な効果を発揮する。だが…、今の彼にそれはとても期待できない。そして…、彼が立ち上がるのを、この世界は待っていられない……」

 それは何より彼女自身の気持ちだ。彼女はこの世界のこの混乱を、これ以上黙って見てはいられない…。

「だが、彼自身にそれを期待できなくとも、世界全体に影響を与えられるくらい名のあるカオスフレアがそれに代われば、彼自身が成したときほどでなくとも、この混乱を緩和する効果はあるはずだ…」

 だから…と言って一瞬言葉を切るセシリア。
 そして、冒頭の一言が発せられた。

 

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 予想通りの言葉にざわめく議場内。

 真っ先に口を開く『アムルタート界士』ディラン。

「その言葉を待ってたぜ…!さすがはセシリア先生だ…!!」

 まってましたとばかりに、喝采の声を挙げる。龍の目には、ただ黙って待つしかないこの現状が、ひたすらに歯がゆく映っていたのだ。

 続いて口を開くは『パンデモニウム界士』ドモン=ムラナカ。

「私は慎重論を唱えますね。リスクが大きすぎる…。主上は、世界に潜伏する未知のダスクフレアに備え、その戦力を空けておくべきだ」

  だが、その彼も一言も「反対だ」とは口にしない。異を唱えてたところで一度決意を固めたセシリアが容易に意志を覆さないことは彼も良く知っているし、何より彼自身もまた作戦の効果の大きさを理解しているからだ。

「異論は聞かないと言っているだろう…?今、この状況を覆す一番大きな力となるのは、私自身の持つ名なんだ…。そして何より、私はこの世界を産み出した者として、これ以上この世界の混乱を黙って見ていることができない……!」

 樹木の世界のために最善の一手を尽くす。彼女の行うところは、常にひとつだ。

「このセント・アゴラにカオスフレアの中でも選りすぐりの精鋭を集め、可能な限り多くのダスクフレアを誘い込む…。そして…、持てる力の全てを結集して、ダスクフレア達を一挙に殲滅する…!!」

 告げられるのは、伸るか反るかの衝撃の作戦。彼女は確信をもってそれを口にする。

「みんなは、各領域(リージョン)とのコネクションを最大限に活かし、それぞれの領域に待機戦力を配備してくれ。誘い漏らしたダスクフレアが各地で動き出した際には、配備した現地のカオスフレアとキミ達とで連携を取って、これに対処するんだ…!」

 主戦場となるセント・アゴラには、強大な敵戦力に対抗するために、少数精鋭のカオスフレアを…。その舞台裏と成る各領域には、広大な防衛範囲を補うために、力で劣っても数多くのカオスフレアを…。それが、彼女の戦略だ。

「それから…、クロエ達に連絡を取ってくれ…。彼女達パーティと、私自身とを、セント・アゴラに配備するこの作戦の決戦戦力とする……!!」

 クロエ達は最早、セシリアを除けば最強と呼べる部類のカオスフレア達だ。その力がこの作戦の肝と成ることを、セシリアは知っている。

「この作戦の鍵は三つ…。クロエ達パーティと、十二聖石。そして……伯爵だ…。私はこれから、その三つ目の鍵を取りに行ってくる……」

 

-end-

最終更新:2011年12月19日 01:16