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「殺してやる!」と言う、純粋で真っ直ぐな殺意。

衝動的なそれで、私は親父を殺した。


「私も父親に殺されていれば、楽だったかな?」
 

夜な夜なそんな無意味な問いが浮かんでは消える。

 
あのダスクフレアと戦いで、親父を殺した事を私は思い出してしまった。

シュヴァルツが言葉と引き換えに、必死に守っていた記憶。
それを私は思い出してしまったのだ。
 

親父に傷つけられる…そんな、身動が取れなくなるほど強い恐怖。

「父さんは私たちを見捨てたのよ」と言う母親の悲しい言葉。

今宵も、そんな記憶の断片が浮かんで弾け、親父を殺す時の記憶が蘇る。
 


私は望まれて生まれた。
そして、期待外れと捨てられた。
消されようとしている事実を表すように私に剣を振り下ろそうとする父親が目の前にいた。

親父に…父さんに…殺されるくらいなら…!

愛されたかったと言う思いが、熱いなにかを胸の奥から沸き上がらせた。
それと共に、身体から炎のような赤い光が揺らめきだした。

有るものは、いずれ無へ帰ると言う。
結局は、何もなくなる。
それなのに、己の欲望に支配され、ついに欲望が具現化したような存在と成り果ててまで何を求めるのだろう?

親父と一瞬だけ目が合った気がした。

幼き日の優しかったお父さんの面影はなかった。


その目には自分の影が揺らいでいた。が、その姿が、親父が、全てが、次第にボヤけて見えなくなった。

大好きだったお父さんはもういない…きっと、私が知らぬ間に死んでしまったのだ。

この哀れな世界の神様を救ってあげよう。

私は降り下ろされる剣を避け、地面を蹴って飛び上がった。

「私は、要らない子じゃない!」

振り上げた鎌が、ヒュッと風を切り、振り下ろされた。

さようなら…お父さん。

間もなく、ドサッと鈍い音がした。

足元には親父の首。
吹き出す血で赤く染まってゆく地面。

私はただ、それを黙って見ていた。


親父なんか、死んで当然だと思う。
私を、母を捨てたのだから…。

望まれて生んだのに、私は父親の期待に応えられなかったから、父親は私を見捨てられた。
その時、私は過去の優しい父親と、現在の身勝手で絶対的な父親を別人として見た。
もう、愛されたいと願わないためだった。
そして、愛されたのは嘘ではないと思うためだった。
だから、私は今の父親を恨んだ。
死ねば良いと思った。

でも、殺してから気付いた。
結局、何も無いんだ…と。
感情に形はない、見えないそれを満たしても、いつの間にか枯渇してしまう。
そして、本来求めていたものは永遠に満たされることはなくなったのだから。



不意に強く抱き締められたような感じがして、我に返った。

目の前、少し見上げると、魂の状態のソレイユが私を抱きしめていた。
「…ソレイユ?」

ソレイユはしばらく、何も言わず私を抱きしめていた。

そして、ソレイユは真っ直ぐな眼差しで私に言った。

「大丈夫だよ、リュヌ。俺も桜花って子も、ルキフィス、レトリアってグレズも、シンジョウって人もリュヌが必要だから関わるんだよ。来るかもしれない失う未来を恐るより、今ここに在る幸せを感じなきゃダメだぜ?」

ソレイユの手が私の髪を優しく撫でた。
その手は仄かに温かくて安心感がわいてきた。

「本当に?本当に必要としてくれるの?」
でも、確信となるものがほしかったから、私はそこで納得せずに聞いた。

「ああ、俺はリュヌが必要だ。きっと、みんなもそう思ってくれてるはずさ」

そう言って笑ったソレイユの姿は、いつの間にか訪れた朝日を受けて、微かに金色に輝いているように見えた。

私は、その笑顔につられるように笑った。
 
「ありがとう、ソレイユ。そうだと良いな」
最終更新:2012年02月13日 16:44