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「なあ、聞いたか?」
「ああ、聞いたよ。今回の騒動の話だろ。何でも、劉黒龍の都が中心だったとかよ」
「ああ、本当だよ」
「あの病気、自分も周りも罹って苦しいってのに誰も助けられなかったからな……まさに地獄だったな」
「あぁ……本当だよ」
「そのうえ死者の黄泉帰りも重なって、だろ? あれだけの被害でよく生きてこれたもんだよ。俺もお前もな」
「あぁ。本当だよ」
「……仮にも一都の領主様ともあろうものが、いったい何を目的にこんなことを企んだろうな」
「本当だよ、まったく」
「まあ、何が起きたとしても今を真っすぐ生きるしかないからな、帝のお膝元の俺達にはな」
「ああ、本当だな」
「上様がどのような方であれ、人間一人だけじゃあ何もできない。民からも信頼される者でないとならないし、民が信奉出来るような者でないといけないからなぁ」
「本当だよな」
「さて、俺らも復興支援に行かないとな。あれだけの被害だ、俺らみたいに元気な男たちが動いて、率先しないとな」
「あぁ、本当だな!」


「……お前、そういえば『本当だな』しか言ってないんじゃないか?」
「……!! 本当だな!」


「まずはあの瓦礫を除けて、生存者と通路を確保しろー。つっても、そこまで大きくないからなー。」
「傷ついた者が見つかったら治療スペースへ輸送! 応急処置は覚えているな!」
 えっほ、えっほと様々な物が運ばれる。瓦礫、ケガ人、瓦礫、瓦礫、死体、瓦礫。
 傷ついた者が多く、まともに動くことのできない都の人間達に変わって、ネフィリム領域からの人間たちが作業を進めている。
 一応、年長者の一人が名目上の指揮者として立っているが、そのあたりの経験豊富なネフィリムのグループリーダーが指示を飛ばしており、実質的なリーダーとなっていた。
「B班はそのまま作業を続けろ、C班はA班の作業の手伝いに廻れ。呉、そちらの作業は順調か?」
「へぇ、へぇ。まあ順調ですぜ。」
 ただひたすら頭を下げつつ、作業を続ける年長者。指示を飛ばす若い指揮者。
 立場は違えど、街の復興に傾ける気持ちは変わらない。

 ぴー。
「休憩の時間だ。一旦作業を中断して各自身体を休めろ。治療班は人員を入れ替えてそれぞれ休憩にまわること」
「え、いやいやおらたちはまだまだいけまずだ。今休んでいる場合じゃあ……」
 あまりに時間通りに動くネフィリム人たちに、驚き、まだ作業を進めようとする暁人。
「いいや。適度に身体を休めることも効率上昇に繋がる。気持ちはわかるがここは休め」
「へぇ、ですが……」
「それと粗方捜索も終わっている。おそらく見つかってないケガ人などは少ないだろう。休憩が終われば、町民の確認のほうに回ってもらいたい。いいな?」
「へぇ、わかりやした……」
 提案がいつの間にか命令に変わっていることに何か納得いかない表情を浮かべつつ、また町民たちの元に戻ろうとする。
「しかし、この手助けも助かりますがぁ、この高い料金は何とかならんですかねぇ……これじゃあ、わしら干上がっちまいますよ」
 少し青い表情を浮かべた年長者の顔を見て、指揮者はふっ、と笑う。
「大丈夫だ、この状態で即金を積めとは誰も言えない。ある程度立ち直るまで支援するのが私たちの契約内容だ。それに、立ち直るまでの期間を計算して、その後の君たちの収入を考えた場合、15~20年ほど経てば払いきれる量さ。もちろん、キミたちの生活に支障をきたさないレベルでな。キミたちがそれを望むなら、もっと早く払いきれるぞ」
「……はぁ~~」
 にこやかに話を続ける指揮者。ただため息をつくだけの年長者。
「……んぬ~、助けられたような騙されたような……」
「騙してなどいないさ。どのような状況でも信頼できるものが、そういうものだということだ。書類に書かれていることはそれ以上だ。それ以上は要求もできないしな」

「んぬ~~」

 多量に並ぶ墓。ただ土に埋葬し棒を墓標としただけの簡素な物。
 数を数えることはできないだろう。それほどまでに、一面に広がっている。
 数多の星々が輝く夜空。美しき天の裏は目を背けたくなる地の表。
「…………」
 その中でも墓標の集まった中で、一人悼む少女。
 擦り切れた服を纏い、手と足、身体全体が泥に汚れている。
「…………」


「お父さん、お母さん、お爺ちゃん、お婆ちゃん、ケン、シン。あたしは元気に頑張ってるよ。」

「何が起きたかわからないけどさ。セント・アゴラの神様、その娘の神子様が、その仲間たちが悪い人たちを倒して、助けてくれたんだって。」

「その中の一人が、あのお兄さんだったの。あたしをね、助けてくれたの……」

「かなしいけどさ、うれしいことだよね。あたし、がんばれるよね」

「お願いだよ、神様」
最終更新:2011年07月20日 22:30