「――そうか・・・ごくろうさま・・・・・・。」
ヴァルトからの報告に加えて、さらにコラプサー達や諜報員達からの報告も受けて、セシリアは沈痛な面持ちでそう応える。
埼玉の国での戦いのあと、起こった事件のあらましを、セシリアは表から裏までひととおり聞いていた。
だから、夕闇の脅威は取り除かれても、その表情には浮かないものがある。
「葛葉鷹也・・・か・・・・・・」
純粋な願い故に歪み、歪み故に堕ちた鷹。
鷹をめざし、鷹になれなかった男。
求めていたのは、ただの当たり前な家族の愛。
でも・・・
「それは、ずっとキミの傍にあったんだよ・・・・・・」
セント・アゴラの広大な情報網。分けても、コラプサーの情報網は、時に夢の世界を通し、人の想いすら鮮明に伝える。
それを知ってしまうから、つい重ねてしまう想いもある・・・。
「ずっと傍にあって、でも、不器用だから伝えられなくて・・・、幼いから気づけなくて・・・、だからこそ願わずにはいられなかった・・・・・・」
「歪むほど、純粋に、強く・・・・・・」
それが伝わる運命も、本当は存在した。
伝わって、闇から放たれて、そして罪に苦しむ道も確かにあった。
それを知るからこそ、セシリアは悲しまずにはいられない。
「改心する余地の無かったダスクフレアじゃない・・・。改心する余地を失ってしまったダスクフレアだった・・・」
「それを失っても、ずっと、ずっと、求めていて・・・、誰かが届けてあげられれば、違った未来もあったのに・・・・・・」
取り返しのつかぬ過ちを犯しても、再び繋がりあう未来は確かに存在し得たのだから・・・。
「ううん・・・。嘆くのはまだ早いよね・・・・・・」
悲しみの表情を決意に変えて、配下によびかける。
「誰か・・・“伯爵”に連絡を・・・・・・」
窓の外、夜空に輝く月を見上げて、セシリアは言う。
「埼の国の親子鷹に、せめて死に花を・・・・・・」
-end-