クロエは夢を見ていた…。それは、夕闇に苛まれる弟の心の声の夢……。
「何故だ・・・!?なぜ姉さんが、僕から“約束”を奪う・・・・・・!?」
少年の声は狂える調子で闇に響く。
「いつかハイゼンシュタットの当主と成る。父から与えられたその“約束”だけを励みに、どんな厳しい試練にも耐えてきたのに・・・・・・」
「それだけが僕に許された唯一の道であり、僕の“願い”のための唯一の希望だと分かっているはずなのに・・・・・・」
「なのにどうして、それを奪う・・・・・・!?」
「姉さんは、僕の“願い”を応援してくれていると・・・そう信じていたのに・・・・・・」
狂える声を静かに沈ませ、うつむいた声で言う。
「強かで野心的だけど、誰よりも穢れない姉さん…」
「強く、美しく、遠い存在……」
「だからこそ奪い得た・・・、それでも許され得ない・・・・・・!」
声が大きな野心を抱く。
「だから僕はもっと・・・、強く、美しくなる・・・・・・!!!」
「僕の“願い”を裏切り、僕の“約束”を奪った姉さんを・・・僕は越えて贖わせる・・・・・・!」
狂気の声はクロエの夢より遠ざかる。
それは、憎んでいるような声でもあった。
それは、拗ねているような声でもあった。
それは、愛しているような声でもあった。
裏切りを糾弾する声は遠く、小さな救難信号を発して届く。
その声が6つの炎を揺らすのは、まだ先のこと……。