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近況
「元來特別なる國民性を有する支那に對しては、述特別なる外交を以てせざるべからず。支那人は弱味を見すれば際限もなくつけ上る
國民にして、而も恩義を忘卻する事も亦他に類なきなり」
大正2年9月5日付『東京日日新聞』
現代の日本人が書いたと言われても信じるような内容である。ネット上でいくらでも見られる「中国(人)信じるな論」の一バリエー
ションだ。しかし国家と国家の付き合いとは互いの弱みにつけ込みあげつらい、押したり引いたりこびへつらったり取引したり妥協し
たり脅したりの丁々発止が当たり前ではないのか? 恩だの人情だのの浪花節で外交を行っている国家がどれだけあるのだろうか。
「フィリピンは憲法を改定して、国内に外国軍が駐留すること禁止し、米海軍の海外最大の基地だったスービック基地と空軍のクラー
ク基地を撤退させました。でも、一度は「出て行け」と言っておきながら、中国の攻勢で南シナ海が危機的になると、今度は米軍に
「戻ってこい」と言い出した。まことに身勝手な話ですけれども、「こういうこと」ができるのが主権国家なんです。自国益を最優先に
して、他国と交渉する。譲るところは譲り、取るべきものは取る。それが主権国間の外交なんです」
おれにはこちらの方がより現実味のある国家同士の関係に見えてほかならない。国家とはワガママなのだ。だけどもそれが当然だ。も
しかしたら日本人は「間抜けなフィリピン政府が米軍を追い出してしまい、そこに手を伸ばしてきた中国を見て恩知らずにも米国に助
けを求めた」と理解するかもしれない。だがフィリピン人はそうは思わないだろう。アメリカ・フィリピン間の安保条約である米比相
互防衛条約自体を破棄したのではなく、あくまで基地協定が更新されず期限切れになっただけだ。同盟は続ける。だが冷戦終結で基地
はいらなくなったのでお引き取り願う。それだけだ。
中国の脅威が高まってきたからまた駐留してくれと言われて、そりゃ米国だって内心ムカつきはするだろう。だが基地の使用を再開す
るのは願ってもないことである。加えてフィリピンに一つ貸しが出来る。だから過去のことは水に流して「米国は常にフィリピンとと
もにある。我々の求める未来を達成するために、米国は常に立ち上がって皆さんとともに戦う」なんて歯の浮くようなことをヒラリー
に
言わせる。
米軍が日本にいるのは日本に対するお慈悲でもお恵みでも施しでもない。それが米国の国益につながるからである。米国の国益になら
ないとひとたび確信すれば、彼らは明日にでも日本から出て行くだろう。全く同じく、日本が米国と安保条約という名の同盟を結んで
いるのはそれが日本の国益にかなうからであり、彼らが宗主国だからでもご主人様だからでもない。それを「日本と米国との間は特別
な関係がある」とか「駐留してくれるなんてありがたいことこの上ない」とか考えたり、「思いやり予算」「トモダチ作戦」などとい
った情緒的単語に酔い痴れているようでは、米国が日本人に対して「特別なる國民性」を発見するのにそう時間はかからないだろう。
ここでも引用したとおり、フィリピンの歴史家レナト・コンスタンティーノによればアメリカ統治時代のフィリピン人はフィリピンと
アメリカの間には「特別な関係」があるとの神話を持っていたという。そのフィリピンが米軍を追い出したり、必要とあらばまた受け
入れたりを自ら選択できたという事実は我々日本人にとって重い。
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最終更新:2025年06月06日 06:59