ワークス・ペトロフカ
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近況
HONDAのASIMOが世界最先端の人型ロボットだった頃、日本国内には「日本が人型ロボット開発で世界トッ
プなのは他の先進国と違いキリスト教でないからだ。なぜならキリスト教では人間が神のごとく人の形を
したものを作るのは禁忌だからだ」という、今考えると度し難いほど雑でバカバカしい理屈が大手を振っ
ていた。宗教も文化も何も分かっていないこのおマヌケな言説は、「日本のロボットはドラえもんのよう
な友達として表現されるが欧米のロボットはターミネーターのような怖い殺戮兵器として表現される」
(C-3POにも同じこと言えんの?)とか「日本は八百万の神なので宗教的タブーはないが一神教の国はフ
ランケンシュタイン・コンプレックスがあるんだ」(そんなの言ってるのはアシモフと森政弘だけと違う
か?)などと無知の極みのようなことを客観的事実であるかのようにほざいていた。
あれから30年。日本の人型ロボット開発は見る影もない。NASAが国費をつぎ込んで作った最新鋭ロボット
に負けた、というのではない。宗教的禁忌のため人型ロボは作れないはずのアメリカ企業ボストンダイナ
ミクスや、かつて先行者がどうこうと散々馬鹿にしていた中国の企業にさえ手も足も出ない状況になった。
今年、
中国の人型ロボットがハーフマラソンで人間の世界記録を上回ったとのニュースが流れた。これは
日本の人型ロボットがかつて目指していた姿では無かったか。
純人型のロボットだけではない。日常空間で出会うロボットの分野でも負けている。ペッパー君がどうな
ったか誰も覚えていないが、その分目にするようになったのはレストランのネコ型配膳ロボットだ。子供
からお年寄りまで、案外あのロボを日本製だと思ってはいないか。おれは「自動車製造ロボットから人型
ロボットまで日本のロボット技術は世界一」と学校で習った世代だ。そして実際、その頃は本当に世界一
だった。しかしまさにその時、上記のようなトンチキな言論がまかり通り今の惨状に繋がる種がまかれて
いたのではないか。
科学技術の優劣を競って結果負けたのならまだ納得もいく。いつか逆転することだってあるだろう。しか
し適当な文化論や優越心によって敗北し、しかも今現在も同じような精神構造をしているのならば、我々
の行く末は暗い。そう遠くない将来、中国製配達ロボがAmazonの荷物を運び、中国製配膳ロボが食事をテ
ーブルまで持ってきてくれ、中国製介護ロボが高齢者施設で活躍する日が来るかも知れない。そうなった
とき我々は真摯に彼らから学ぶことができるだろうか。そんな状況になってさえ「先行者ってのがあって
さ~」とか言ってやしないかと、おれは少々心配なのである。
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最終更新:2026年07月04日 12:24