探索者について

この章では探索者の創造を詳しく述べる。またゲームの中のどのキャラクターにとっても重要な要素を考察し、
探索者のバックグラウンドに関する問題点も考察する。


プレイヤーはゲーム中"探索者"の役を引き受ける。
探索者という呼び方は、プレイヤーがゲーム中で主に行なうことが、探索することからつけられたものである。
彼らは手がかりや証拠を探し求め、それを吟味し、さまざまなことを知っていく。
技能のリスト(74ページ)の最初に来るのが<言いくるめ>であるのは五十音順になっているための偶然である。
しかし偶然とはいえ、「合気道」や「攻撃」などではないというのがこのゲームらしいところだ。
攻撃的な技能は<キック>になるまで出てこない。
探索者は戦う機会ではない。ほとんどの探索者に関して普通と違う点は1つしかない。
 探索者たちは、この世の見せかけの表面の下には恐ろしい真実が隠されていることを知るようになる。
世界も宇宙も狂気に満ち、実に恐ろしいものであるという事実を知る。
物理法則は一定ではなく、宇宙にはさまざまな法則が存在しているのである。
人間の進化は宇宙の片隅で起こったことであり、そこで自然法則は真実の一部でしかない。
クトゥルフ神話のクリーチャーは自然法則を超えた存在なのだ。
クトゥルフ神話のの世界はすべての時空にまたがっており、その世界はゆがんで傾き、
不可解な力が生贄を求めてさまよっているのである。
人間の進化は宇宙の片隅で起こったことであり、そこでの自然法則は真実の一部でしかない。
クトゥルフ神話のクリーチャーは自然法則を超えた存在なのだ。
クトゥルフ神話の世界はすべての時空にまたがっており、その世界はゆがんで傾き、不可解な力が生贄を求めてさまよっているのである。
 そのような異界と、そこに住む存在たちは、われわれの世界のものとはまるで違っている。
異常な力を持つ異世界の存在の中には、地球に棲みついているものもいる。
それらについては、後出の"クトゥルフ神話"の章でもっと詳しく述べる。
 クトゥルフ神話の生き物を崇拝あるいは理解するようになった人間は、その生き物によって次第に変えられていく(ゲーム用語で言えば、<クトゥルフ神話>のポイントが増えていくということである)。
かつて信じていたことに代わり、新しい信念をもつようになる。
その変化の過程で次第に精神バランスを崩していき、
自分自身と社会を捨てるようになる。
やがては友人も敵も見境なくなってしまう(ゲームでは、<クトゥルフ神話>のポイントが上がるにつれ最大正気度が下がっていくことになる)。
 最終的には探索者は自分の限界を認識するようになる。
1人の力ではクトゥルフ神話の危険性と力にとうてい立ち向かえないことを知るのだ。
そのとき探索者は、戦場の兵士のように自ら犠牲になろうとするか、戦いの場から身を引こうとするかもしれない。
しかし彼らの努力は無駄にはなるわけではない。
世の中がいつもそうであったように、残った仕事を次の世代へ、もっと強くなっている世代へ託すのである。
 向上心という点では、"クトゥルフ神話TRPG"は人生と似ている。
プレイヤーキャラクターたちは超人ではなく、ゲームにおいても死は恐ろしい脅威である。
探索者は西部劇の決闘のように決着をつけなければならないときもあるが、
同時に、人間としての感情的な問題をかかえている。ゲームの中には、市民生活に役立ついろいろな技能(例えば<経理>など)もあり、
重要なものになっているが、そのような技能は乱闘したり略奪したりする能力を高めてはくれない。
そしてこのゲームは歴史上、現実にあった時代として設定されているのであって、ファンタジーのような架空の時代に設定されているわけではない。
社会は酒場、小屋、城などの要素だけ成り立っているのではないのだ。
社会はそれぞれ独自の価値基準を持っており、社会に害をもたらす人間、あまりにも目立つ人間、
明らかな危険を示す人間の扱いもそれぞれ違っている。
 ほかのことと同じように、TRPGはプレイヤーでもキーパーでも、やればやるほど簡単にやれるように感じるだろう。
ゲームを始める前から自分の探索者の個性や性格についてある程度の認識を持っているべきだが、しかし同時に、
探索者が生活の中で出会う出来事によって個性や性格が徐々に形づくられていくことも忘れては (42ページへ続く)

らない。探索者はだんだん成長していくものなのである。
違う探索者に受け持つことになったなら、違う人物の役をやらなければならない。
あなたの探索者の中から、その冒険にいちばんふさわしい探索者を選ぼう。
それからその探索者の行動によって性格を決めていく。
常に自分が一生懸命ロールプレイする気になるような探索者を創造していくがよい。
 探索者を成長させることには、その探索者が持つ能力値や技能によるところも大きい。
能力値や技能についてはこのあとの項で詳しく述べられている。
ただし、ゲーム中の本当のプレイの魅力は、能力や技能を表している数字を想像力の衣で包むというところにあるのである。
 これから述べる説明は、本書のうしろの方とカバーの裏にある"探索者シート"を見ながら読めばわかりやすいだろう。
 あなたが初めて"クトゥルフ神話TRPG"に触れたのであれば、十分な時間を用意して、54ページからの"ハーベイ・ウォルターズの創造"を読んでみることを勧める。

能力値
 探索者を創造するときには、まず能力値は探索者のおおよその姿を表すためのもので、9つの数字で表される。
ほかの要素が同じであれば、高い能力を持つ方が低い能力値を持つよりも良いのはもちろんだ。
これらの数字はそのキャラクターの骨格や筋力にたとえるということができるだろう。
われわれの体の一部はみんなそれぞれ違ったサイズや容姿をしているが、頭や心臓などは誰でも必ず持っている。
ゲームでは、それぞれの能力値は探索者の一般的な要素、すなわちそのキャラクターの知性、敏捷性などを数値化している。
そのキャラクターの知性、敏捷性などを数値化している。
能力の程度によって、探索者の相対的な価値や能力が決まっている。
探索者たちがロールプレイ中にとる行動や反応も、能力値によって違ってくるはずである。
 能力値はいったん決まると、そこから上昇することはめったにない。
探索者は成人として創造されたのであり、もう成長しきっているからである。
能力値はときには、魔術的あるいは物理的な損傷などによって下がることもある。
能力値が減少したりゼロになったらどうなるかは、それぞれの能力値の説明の中にいちおうのガイドラインが示されているが、
それはキーパーが自分の考えにしたがって描写するべきことである。
描写はそのときの状況に合ったものでなければならず、その場の雰囲気によって、すなわち恐怖の雰囲気か、
悲痛な雰囲気か、それともこっけいで面白い雰囲気かなどを合わせるべきである。
いずれにせよ能力値を失うことは、探索者にとって常に大きな打撃となる。
そうやって、存在するだけのキャラクターに個性が生まれるにつれ、プレイヤーたちはお互いに楽しみを分かち合うようになる。
そうしてさまざまな探索者のからみ合いがリアルなものになり、ドラマが生まれる。

◆STR(Strength、筋力)
 STR探索者の筋力を表すものである。
探索者がどのくらい重いものを持ち上げたり、押したり、引っ張たりできるか、
どのくらいしっかりとものにしがみついていられるかなどを表している。
この能力は探索者が近接戦で相手にどのくらいのダメージを与えることができるか決める場合に重要になってくる。
STRがゼロになった探索者は、ベッドから起き上がれない状態である。

◆CON(Constiution、体力)
 この能力は健康状態、活気、バイタリティを表している。
また、探索者が溺れたり首を絞められたりしたときに、どのくらい抵抗できるかを示す。
毒や探索者のCONが抵抗の基準となる。
CON値の高い探索者は普通は耐久力も高いので、負傷や攻撃に対する抵抗が強いことになる。
 肉体的な損傷あるいは魔術的な攻撃によって、CONがゼロになった探索者は、死亡する。

◆SIZ(Size、体格)
 SIZという能力値は、キャラクターの背の高さと体格を一緒にして1つの数字で表したものである。
何が探索者の向こうにある物を見るとか、小さい穴を通り抜けるとか、茂った草の上から誰かの頭が飛び出しているかを判断するのにも、SIZが使われる。
SIZによって耐久力ダメージ・ボーナスが決まる。
手足をひどく失ったようになるが、そのような場合にはDEX値を下げる方が普通である。
探索者のSIZがゼロになったとしたら、そのような場所にはDEX値を下げる方が普通である。
探索者のSIZがゼロになったら、それは姿が消えたということになるだろう。
どこへ消えたかって? 神のみぞ知るだ。

◆INT(Intellidence、知性)
 INTは探索者がいかによく物を学べるか、ちゃんと覚えているか、
物事をちゃんと分析できるかなどを表している。
また身の回りをいかによく認識しているかということもINTが表している。
キーパーは異常な状況を説明するときに、探索者のINTを何倍かして、D100でその数字以下の結果が出せるかどうか探索者にロールさせる。
[INT×5]のロールは<アイディア>ロールと呼ばれ、非常に一般的なロールである。
このロールについてはあとでさらに詳しく説明する。
 難しい概念や困難な計画、霊的な推測などが生まれるのは、単純なアイデアが生まれる場合よりはチャンスが少ないはずである。
したがってそれらを生み出すためのロールは、INTに掛ける数字が低くなる。
低いときは[INT×2]や[INT×1]になることもある。
このようなロールによって、探索者に推理ができるが、情報と情報を結び付けることができるかなどが決まる。
このようなロールがあることによって、例えばプレイヤーが火山を見て世界の中心が溶けている証拠だと思うなどという問題は起こらなくなる。
 新しく探索者を創造する際に個人的興味の技能を配分される技能ポイント数は、INT値によって決まる。
また探索者がクトゥルフ神話の呪文をどのくらい素早く学べるかということも、INT値によって決まる。
 探索者のINT値があとでロールするEDU値と矛盾するような場合、それはそれでまたロールプレイのチャンスとなる。
例えばEDUがが高いのにINTが低い探索者がいたとすれば、それはたぶん物知りぶった説教人間、あるいは技能のことばかりにこだわる雑学人間だということになる。
事実はたくさん知っているが、その意味を知らないのだ。それと反対にINTが高くてEDUが低い場合は、無知な人間――例えば都会へ出てきたばかりの農家の息子とか、
貧しい移民など――かもしれないが、世間を生き抜いていく知恵を十分に持った気の利いた人間に違いない。
 そしてINT値がゼロの探索者は、ヨダレをたらしながら意味のない言葉をつぶやいているということになる。

◆POW(Power、パワー、精神力)
 POWは意志の力を表している。POWが高いほど魔術を使う能力は高くなる。
POWが高くてとてもリーダーシップに優れているとは言えない。
リーダーシップはロールプレイの問題であって、POWの高低の問題ではないのだ。
POWの値、あるいはマジック・ポイントの値<マジック・ポイントの値はPOWの値から決められる>によって、
魔術的な攻撃とか催眠術的な攻撃に対して抵抗する力が決まる。
POW値から決められる)によって、魔術的な攻撃とか催眠術的な攻撃に対して抵抗する力が決まる。
POWを失った場合、決して回復することはない。
そうでない場合は、その旨、特に記述されている。
 [POW×5]のロールを<幸運>ロールという。<幸運>ロールについては、あとに詳しい説明がある。[POW×5]のロールを<幸運>ロールという。
<幸運>ロールについては、あとに詳しい説明がある。[POW×5]の数字は、そのキャラクターのPOWはめったに変化することはない。
 しかしクトゥルフ神話の魔術に長けた者なら、自分のPOW値を上昇させることができるかもしれない。
キーパーは"魔術"の章にあるコラム"魔術師"はどうやってそんなことができたか"(113ページ)"をよく読んでおかなければならない。
 POW値がゼロ探索者は、ゾンビのような人間であり、魔術を使うことはできない。

◆DEX(Dexteriy、敏捷性)
 DEXの値が高い者ほど動作が素早く機敏で、自分の肉体を自在に使いこなす能力が優れている。
キーパーが<DEX>ロールを要求するのは、例えば高いところから落ちかかったときに反射的に何かにつかまることができるか、
強風の中や氷の上でちゃんと立っていられるかどうか、強風の中や氷の上でちゃんと立っていられるかどうか、
繊細な仕事ができるかどうか、人に知られず何かを取ることができるかどうかなど見るときである。
ほかの能力値の場合と同じように、<DEX>ロールの難しさの度合いもDEX値に掛ける数字によって決まる。
能力値にどんな数字を掛けるかは、キーパーが決める。
 戦闘の場においては、DEX値の最も高い者がまず最初に攻撃あるいは射撃を行なう。
したがって、敵が攻撃する前に相手の武器を取り上げたり無抵抗状態にすることもできるわけである。
 [DEX×2]の値は、探索者の初期の<回避>技能の値となる。
 DEX値がゼロの探索者がいるとすれば、それは体のコントロールがうまく働かず、
<幸運>ロールに成功でもしないかぎり肉体的な仕事は全然できない人間ということになる。

APP(Appearance、外見)
 APP値はその人物の容貌や好感度を表す値である。
APPの何倍かの値のロールに成功することによって、有力者との出会いを成功させるのに役立つかもしれない。
また異性によい第一印象を与えたい場合などには、<言いくるめ>あるいは<値切り>ロールと組み合わせて使えば大いに有効だろう。
ただし、APPは表面的な能力にすぎない。第一印象が良くても、それがその後ずっと続くとはかぎらないのだ。
APPが表すのは鏡に映る姿と同じものであって、それだけではリーダーシップやカリスマ性につながるものではない。
APPがゼロの探索者は、目を覆いたくなるような醜い人物で、どこへ行ってもそのことで何か言われるだろうし、周りにショックを与えることだろう。

◆EDU(Education、教育)
 EDU値はそのキャラクターが学校教育で得たはずの知識および実際の知識を表し、それらを学ぶためにかかった年数を表している。
EDUは情報をもっているかどうかを計るものであって、その情報を知的に使いこなせるかどうかを計るものではない。
またEDU値によって、探索者が技能ポイントをどれくらい持っているかも違ってくる([EDU×20]ポイントを職業技能に加算できるからである)。
[EDU×5]のロールは<知識>ロールと呼ばれている<知識>ロールについては、あとで詳しく説明する。
また同じく[EDU×5]のロールは探索者の<母国語>の技能の初期値も表している。

◆SAN(Sanity、正気度)
 SAN[POW×5]の値である。このようにSANはほかの能力値<POW>から作りだされたものであるが、
探索者にとって非常に重要なものであり、このゲームのアイデアの中心となるものだ。
まるまるSANのために割いた章があるくらいである。
その章では能力値であるSANと、正気度ポイントと、最大正気度との違いを説明している。
正気度ポイントは上下するが、能力値SANは不変である。
 探索者の最大正気度ポイントは99ポイントを超えることはない。
正気度ポイントが99であるということは、意志の力が最大限に強い人物だということを表している。
非常に大きな感傷的ショックにも耐えられ、ショックを弱めたりよそへそらせたりすることができる人物である。
意志の力が弱く、一時的狂気や永久的狂気に陥るかもしれない人物ということになる。
クトゥルフ神話のモンスターに遭遇すると、ほとんどの場合、正気度ポイントを失うことになる。
自然の出来事であっても、遭遇したことによって正気度ポイントを失わされることもある。
またクトゥルフ神話の呪文は、学ぶためにもかけるためにも正気度ポイントは、[99-「その人物の現在の<クトゥルフ神話>のパーセント」]よりも大きいといった正気度ポイントを取り戻したり、
あるいは初期の正気度ポイントよりも高いポイントになることもある。
ただしそれには時間がかかる。
 SANがゼロの探索者は、長期入院が必要になり、おそらくプレイにもどってくることはないだろう。

能力値ロール
 キーパーは技能の使用に適さないような探索者に対しては、能力値ロールを使うようにする。
また、探索者全員がロールできるべき事例の場合にも、能力値ロールを行うようにする。

◆能力値が変化した場合
 もとになる能力値が変化した場合には、その能力値から導き出された各ロール、
例えば<アイデア>、<幸運>、<知識>などのロールはそれに従ってただちに変わる。
同様に、耐久力とダメージ・ボーナスも、それぞれの元になっている能力値とともに変わる。
 マジック・ポイントはすぐには変わらないだろう。
しかし、超過したポイントがある場合、その超過のポイントは使うとなくなってしまう。
最大マジック・ポイントは新しいPOW(低くなったPOW)までしか再生できないからだ。


 探索者の創造の違うやり方
 "探索者の創造"の見開きページで、新しい探索者を創るための手順の概略を示した。
また、この章のすぐあとで紹介する"ハーベイ・ウォルターズの創造"のどちらかを参照するとよい。

◆自分の探索者が気に入らない
 探索者の能力値をロールして決めるのにかかる時間は、ほんの1,2分である。
しかしそれからさらに肉付けを行うに少なくとも30分以上はかかるだろう。
能力値をロールしたら、それに満足できるかどうか考えてみることだ。満足できないのであれば、
ただちにその能力値は捨て去り、最初からロールし直すのがいい。

◆ロールの結果がいつも低すぎる
 キーパーの同意が得られた場合には、3D6の代わりに[2D6+6]のロールを使うことにしてもかまわない。
その場合でも、EDUのロールだけは[3D6+3]のままで行なう。

◆最初に職業を決めたい?
 "探索者の創造"の見開きページでは、まず能力値をロールして、その結果に合うような職業を引き出すよう指示している。
しかし、あなたはある特定の職業からスタートしたいと思うかもしれない(「僕は医師を創造したいんだ」)。
その場合には、能力値に方向付けをしなければならないだろう。
そのやり方はいくつかあるが、キーパーは次の方法の中から、1つの方法を許可してくれるに違いない。
あるいは、別のやり方をしたいのであれば、それを提案してみるのもいいだろう。

1)8つの能力値ロールを入れ替える。例えば
あなたの探索者がAPP11でEDU17だとする。映画スターにEDUが17もポイントもあって意味ないんじゃないか?
 そこで値を入れ替える。あなたの探索者はAPP17、EDU11の探索者となった。

2)ロールで出した能力値から3ポイントをほかの能力値へ移す。これは3回までできる。

3)正気度だけは除いて、そのほかの能力値ポイントを合計する。
それを好きなように配分し直すのである。ただしEDUは21ポイント以上にはできないし、
STR、CON、SIZ、INT、POW、DEX、APPはそれぞれ18ポイント以上にはできない。
また、どの能力値も3ポイント以下にはできず、SANは[POW×5]のままでなければならない。

◆重要なダイス・ロール
STR、CON、POW、DEX、APP:3D6をロール
SIZ、INT:[2D6+6]をロール、EDU:[3D6+3]をロール
SAN:[POW×5] 幸運:[POW×5]
アイデア:[INT×5] 知識:[EDU×5]


◆<アイデア>ロール [INT×5]
 <アイデア>ロールは直感力、あるいは物を見てそれを解釈する能力に表す。
技能ロールの中に適当なものがないときには、この<アイデア>ロールが何かの概念を理解したり差し迫った知的な問題点を解決するのに役に立つだろう。
<アイデア>ロールが何かの概念を理解したり差し迫った知的な問題点を解決するのに役に立つだろう。
<アイデア>ロールが何かを知っているかどうかを見る場合にたいへん便利なロールである。
例えば、探索者が目に入ったものをちゃんと見ていて理解したかどうか、
ある集会や場所に特殊な雰囲気があることに普通の人が気がついているかどうか、あの丘の上に場違いなものがないかどうか、などである。
 <目星>技能は特定の手がかりやすぐにはわかりにくい品物などの場合に使うべきである。
人間の個人に関することの場合には<心理学>ロールを使う。

◆<幸運>ロール [POW×5]
 探索者はあの装備品をたまたま持って来ているだろうか? 空鬼に狙いをつけられたのはどの探索者か?
探索者はよりによって壊れている床板やギーッと音のする床板に足をのっけてしまったか?
 これらのことにすぐに答えを出してくれるのが<幸運>ロールである。
 幸運というのは、適切なときに適切な場にいるという能力である。このロールは緊急事態にキーパーが探索者により高いチャンスを与えたいと思うときにさせることが多い。
例えば<跳躍>ロールとか<回避>ロールなどで得られる結果よりも、高い確率の結果を得たいような場合である。

◆<知識>ロール [EDU×5]
 すべての人々はいろいろな事柄に関して、断片的な情報をたくさん知っているものだ。
<知識>ロールは頭脳の中にどんな情報が入っているかを表す。
どのくらいの情報が頭の中にあるかということを、探索者の受けた教育程度に応じて確率としてパーセントで表したものである。
 ある探索者は水の中に硫酸を入れたら(あるいは硫酸の中に本を入れたら)どうなるか、<化学>を勉強したことがなくても知っているかもしれない。
また<ナビゲート>ロールに成功しなくても、たまたまチベットの地形を知っているかもしれない。
 現在の地球上で使われている言語を選別することなどは、<知識>ロールはどんなことがあっても99ポイントを超えることはない。
たとえ探索者のEDUが21以上であっても<知識>ロールは90どまりとなる。

◆ダメージ・ボーナス [STR+SIZ]
 物理的な生き物はすべてダメージ・ボーナスを持っている。
ダメージ・ボーナスという言葉はちょっと誤解されやすいかもしれない。
ボーナスという名前なのに、マイナスの数字の場合もあるからだ。
しかし考え方は単純である。大きくて強いクリーチャーは、
小さくて弱いクリーチャーよりも相手に大きなダメージを与えることができるということなのである。
 ダメージ・ボーナスを決めるためには、まずSTRとSIZを足してはめる。合計が該当する範囲のところを見て、
その欄の場合には、このロールがのすべて攻撃に加算される。
こぶしのような素手の攻撃の場合でも、棍棒やナイフのような人工武器を使った場合でも同じで、
また敵に打撃を与えた場合でも、対象が何かの物(例えばドアなど)の場合でも同じである。

■武器を投擲した場合には、それが与えたダメージに、
投げた人のダメージ・ボーナスの半分を加える。
■火器による攻撃、あるいは火器以外であってもSTRやSIZと関係ない攻撃には、ダメージ・ボーナスは加えない。
■キーパーは<噛みつき>攻撃に対して、ダメージ・ボーナスを機械的に加えるようなことはしてはならない。
■手間を省くためにはダメージ・ボーナスを加えないようにしてもかまわない。
クリーチャーのダメージ・ボーナスは、その個体のものであれ、その種族の平均値であれ必ずルールの中に示されている。


 ダメージ・ボーナス表
[STR+SIZ] ダメージ・ボーナス [STR+SIZ] ダメージボーナス
2~12 -1d6 73~88 +4D6
13~16 -1D4 89~104 +5D6
17~24 +0 105~120 +6D6
25~32 +1D4 121~136 +7D6
33~40 +1D6 137~152 +8D6
41~56 +2D6 153~168 +9D6
57~72 +3D6 169~184 +10D6


◆耐久力 [CONとSIZの平均値]
 物質的な生き物はすべて耐久力を持っている。
耐久力はCONとSIZを合計して、それを2で計った値である。
端数がある場合は切り上げる。
 探索者が傷を負ったら、探索者シートの耐久力の欄の数字を、失った耐久力の分鉛筆で印をつける。
失った耐久力はゲーム上の一週間につき1D3ポイントの割合で耐久力はゲーム上の1週間につき、1D3ポイントの割合で自然に回復する。
<応急手当>あるいは<医学>の技能によって緊急手当てをした場合には、1D3ポイントの耐久力が即刻に回復する。

■耐久力が2以下になった探索者は意識不明になる。
そうなったらもうゲームに何も手出しできない。
■耐久力が0以下になった探索者は死ぬ。
ただし耐久力が0以下になった次のラウンドが終わる前に少なくとも+1ポイントまで回復することができた場合は別だ。
<医学>および<応急手当>の技能の項参照(74ページおよび73ページ)。


◆精神科
 医師が精神医である場合もある。
心理学療法を行う際には<医学>の1/2と<精神分析>の1/2を合計して行う。
精神分析者とは違い、精神医は薬の処方をし、病院で働いている。
 精神科は精神障害の診断をし、治療をほどこす。
また、精神障害を装っている者の精神状態を見分けることもできる。
さらに詳しい情報が88~95ページに示されている。


◆マジック・ポイント[最大値=POW値]
 探索者のマジック・ポイントは探索者のPOWと同じ値である。
マジック・ポイントは呪文をかけたりの悪影響を切り抜けたりするのに使うことができる。
使ったマジック・ポイントは時間の経過に伴って、自然に再生させることができる。
24時間ですべてが元通りになるのである。一部分だけ失った場合には、再生時間を比例計算によって割り出す。
 探索者のマジック・ポイントがゼロに達すると、気力が萎え切って気を失ってしまう。
意識を取り戻すのは、マジック・ポイントが1ポイントに回復したときである。
 POWの値が下がっても、それと一緒にマジック・ポイントが下がるわけではない。
マジック・ポイントが減るのは、何かのために使った場合である。
しかし、使ったマジック・ポイントを説明できる最大値は、新しい値に(下がったPOWと同じ)までになる。
POW値が上がった場合には、マジック・ポイントはただちに比例的に上昇する。

バックグラウンド
 能力値の数字(および能力値を元にして導き出される数字)が探索者の土台を作る。
しかし探索者を興味ある存在にし、プレイするのが面白いような人物に仕上げるアイデアや能力は、
ダイス・ロールの結果名によるものでなく、あなたの選択によって得られるのだ。
 探索者シートを見て、どんな有用なバックグラウンドでありえるかを考えてみよう。
その人物の経歴のどんなことでもアイデアとして取り入れてかまわないのである。

◆探索者の性別
 探索者は男性でも女性でもかまわない。
ルールの中には、男性と女性を差別するようなものは何もない。
男性だから有利だとか、女性だから有利だとかいうルールはないのだ。
市販のシナリオの中には、特定の社会の中で、性別による影響ということを考慮しているものもあるかもしれないが、
キーパーがそういう点を無視してもかまわない。

◆名前と年齢
 探索者の名前は、プレイヤーがつけたいと思い呼びやすいと思った名前をつければいい。
年齢の選択は、探索者のEDUによって影響を受ける場合があるかもしれない。
41ページ"探索者の創造"のセクションを参照すること。

◆学校、学位
 プレイヤーの好きな学位や学校を書き込んでかまわない。
学位や学校は探索者のEDUと合ったものでなければならない。
しかしながら、探索者が愚か者であることを表すため、あるいは学歴訴訟していることを表すために、
わさとEDUと合わせない場合もありうる。
そういう探索者をロールプレイするのも面白いだろう。

◆出身地
 探索者が生まれた国を選ぶ。ゲームのルールの中には、ある国籍がほかの国籍より有利だというものはないし、
探索者の国籍や文化によってルール上の差をつけられるようなこともない。
しかし、国籍によって当然違ってくることはあるだろう。
すなわち、アメリカで生まれた探索者は、<母国語>の技能として英語の能力が高いということが当然考えられる。
ケベック生まれの探索者は、子供のときからフランス語を話していたかもしれないし、
ニューメキシコ生まれであればスペイン語かナバホ語が上手だろう。
サンフランシスコ生まれの探索者なら、生まれたときから広東語で生活をしていたということも考えられるわけである。

◆傷跡、精神障害
 探索者が過去の経歴の何か大きな出来事によって、身体的に変わってしまったり、
体に欠如したところがあったり、精神的に影響が出ているとかいうことがあった場合に書き込む項目である。
そのような特徴によってゲーム上の差をつけられることはほとんどないが、大きくかけたところがある場合、
例えば腕、足、目などを失っているような場合にはハンデになる場合もある。
そのような場合はキーパーと相談する必要がある。

◆似顔絵
 自分で探索者の顔を描いたり、友人に描いてもらったり、
あるいは本や雑誌からこれというような顔をコピーして貼りつけたりしてもかまわない。
似顔絵はほかのプレイヤーに自分の探索者を紹介する良い方法なのである。
ほんの小さなカットでも、多くのものを伝える力がある。
1920年代あるいは30年代の映画スターの顔は、どんな時代の探索者にも使えるものが多いだろう。
 このスペースに似顔絵を入れたくない場合には、メモを書くスペースとして利用してもよい。


技能と職業
 探索者シートの左側の3分の2は、技能のために割かれている。
地濃をしゆおすることと技能が上昇することは、密接に関係し合っている。
 "クトゥルフ神話TRPG"の技能には、能力の範囲や内容があまりはっきりしていない点もある。
しかし、あいまいであるからこそいろいろな状況で使えるということにもなる。
例えば<生物学>の博士号を持っている者は生物学に関しての知識が深いということだが、
そこから発展して、その探索者は分野の著名な理論家や実験家の名前を知っているし、
彼らがどんな雑誌に研究発表をしているか、どこで講義をしたり働いたりしているかなども知っていることになる。
プレイヤーが「僕の探索者のサムは、ミスカトニック大学に誰か知ってる生物学者がいるだろうか?」と聞けば、
キーパーはちょっと思案したあと<幸運>ロールをするように言うだろう。
ロールは成功した。「うん、君はミラーを知っているよ。寄生生物学者のミラー先生。彼なら君が見つけた生き物が何かわかるだろう。」
 必要に迫られて技能を使う場合に、上の例以上の拡大解釈も行ってかまわない。
一言で言えば、技能は人間の行うことの大部分をカバーできるということである。
少なくともロールプレイにとって有用な行為はすべてカバーしているのである。

◆職業
 探索者の職業は、彼らが過去の年月をどうやって過ごしてきたかを表している。
過去というものは、現在持っている技能に反映される。職業を選ぶとき「その職業になれば使える技能が、自分の好きな技能だから」という理由で選んでかまわないのである。
職業そのものにあまりこだわる必要はない。"クトゥルフ神話TRPG"にはいわゆるキャラクター・クラスは存在しない。
 ラヴクラフトの小説によく登場する職業がある。
医師、教授、刑事、古物研究家、作家、ジャーナリスト、ディレッタントなどがそれである。
これらの職業には"職業のサンプル"の表において星印がつけてある。
そのほかの職業は、ラヴクラフトの小説の主人公の職業ではなくても、プレイヤーにとって興味がありそうな職業として挙げてある。
 職業はいくつかの技能と密接に関連している。例えば"職業サンプル"で示してあるように、
"古物研究家"は<美術>、<値切り>、<歴史>、<法律>、<図書館>、<ほかの言語>、<目星>の技能を持っており、
そのほかにあと1つプレイヤーが選ぶ技能(そのキャラクターの過去を反映するような技能)を持っている。
自由に選べる技能が1つもない職業もあり、自由に選べる技能が2つある職業もある。

◆技能ポイント
 職業を選んだら、探索者の[EDU×20]の値を出して、それをその職業に属する技能へのパーセント値として割り振っていく。
全部の技能にすべてポイントを割り振らなくてもかまわないが、使わなかったポイントは失われる。
すべての技能の定義は"ルールと技能"の章の73~84ページに示されている。
 割り降るポイントを探索者シートの技能のところにすでに印刷してあるポイント数に加える。
例えば<投擲>の技能に25パーセントを配分することにした場合、そして探索者シートの<投擲>の所に25%と書かれているので、
プレイヤーはこの2つの数字を加えて、現在の<投擲>の技能ポイントは50%であると書き込むのである。
 どんな技能も99%を超えることはない。技能値は数字が大きいほどよいのだが、<クトゥルフ神話>技能だけは例外である。

◆個人的な興味
 探索者は金を稼ぐため以外にもいろいろなことをするし、趣味も持っていることだろう。
[INT×10]の値を出して、そのポイントをどれでも好きな技能(1つの技能でも複数の技能でもかまわない)に配分することができる。
ただし<クトゥルフ神話>技能に配分することはできない。

◆武器
 あなたの探索者が何も武器を持っていない場合でも、
探索者はいろいろな武器に対してかなりの基本成功率を持っている。
探索者の性格や過去を考慮すべきだろう。どの時代であっても、武器のエキスパートだという人間はめったにいないものだが、
武器のエキスパートだという人間はめったにいないものだが、武器のエキスパートを知っているということはよくあることかもしれない。
ある種の職業(例えば兵士)などを除けば、武器に追加ポイントを加えるのは、個人的な興味のポイントの中からにするべきである。

探索者シートの右側
 技能値と能力値を所定の個所に書き入れた探索者は、それですでにプレイできる状態である。
しかし、彼のことで、まだわからないことはたくさんある。
そんな部分についてはまだ聞かされてもいないだろうし、まだ答える必要もないが、聞かれた場合のことを頭の中に入れておく必要がある。
そして面白いと思ったり、必要だと思うことがあったら、探索者シートの右側に記録しておくようにする。

◆探索者の収入
 プレイによっては、収入が重要な場合もあるし、そうでもない場合もあるだろう。
金のことはあまり深刻に考えすぎない方がいい。金や財産についてうるさくないキーパーは多いし、
市販のシナリオでもそれを問題しているのはまれだ。
ただしキャンペーンの場合だけは、収入とか支出が問題になったり何かの意味を持っていたりする。
 "探索者の創造"の見開きページに、探索者の収入を (52ページへ続く)
決める方法が示されている。キーパーによっては、
この数字を個々のプレイのスタイルに合わせて変えてしまう場合もあるだろう。
 収入の額は、その探索者が選んだ職業をどのくらいよくやりこなしているか、あるいはその職業にいかに満足していないかなどを表す。
現実の生活でもそうではないだろうか。

◆基本的なバックグラウンド
 探索者のバックグラウンドのアイデアは、目を見張るような特別なものである必要はない。
異常な事態は普通のバックグラウンドの中から起こるものであり、その過程で意味や内容や深味が加わってくるのだ。
まずは普通のバックグラウンドからスタートしよう。超自然的な出来事はそのうちその中から出てくるだろう。
 例えば、探索者は恋をしているか? 婚約しているか? 結婚しているか? 子供はいるか?
 失恋しているか? 悲劇をかかえているか? どんな学校へいったか?どんな親友がいるか?
 探索者に軍隊の経験はあるか? あるとしたらいつ? どこで? どんなことがあったか? 
軍隊での友達は誰だったか? 勲章をもらうとか、殊勲名簿に名前が載るとかしたか?
 探索者の家族は誰か? 家族の出所は? 父親、母親、兄弟、叔父、叔母、従兄弟などについても(生きているにしろ死んでいるにしろ)次第にわかるようになるだろう。
 探索者はどんなタイプの人間だろうか? ほんのわずか時間をかけて探索者シートを見てみれば、その姿が浮かび上がってくるだろう。
能力値と技能値を一通り見比べてみて、何かヒントはないか、矛盾はないか調べる。
彼らを形容するとしたらどんな言葉になるだろうか。物静かか、粗暴、元気盛ん、堅苦しい、尊敬できる、頭が切れる、
移り気、直感的、慈悲深い、守銭奴、背が低い、色が浅黒い、長身、顔色が悪い、美貌、醜い、十人並、やぼったい、エレガント、きちょうめん、
狂暴、騎士道的、神経質、知的、筋骨隆々、弾力性のない筋肉、強壮、おどおどした、礼儀正しい、衝動的、興奮しやすい、愚か、
ハゲ、ヒゲづら、痩身、体にハンデを持つ、毛深い、お洒落、あるいはそういうのとは全然違うととんでもない形容だろうか。
自分の探索者を表すぴったりの形容詞があったら、探索者シートの右側に書き留めておこう。

◆最後の運命
 あなたの探索者はゲームの中でリーダーの役目を果たすかもしれない。
有名な作家とか、名の通ったオカルト研究家かもしれない。
または、まあまあの私立探偵だったというにすぎないかもしれない。
あるいは何かについての重要な専門家で、そういう専門家が必要な事態になれば、人々から引っ張りだこになるような人間かもしれない。
 ゲームや探索者の活動の多くは、グレート・オールド・ワンや外なる神の邪悪な目的を妨害することに関係している。
探索者が寿命の長い裕福な人生を送るか、あるいはに短いながらもまるで流れ星のようなドラマチックな人生を送るかは、
運命によるところもあるだろうが、プレイヤーが自分の探索者をどのような心掛けで扱ったにもよるのである。
 いい加減に探索者をぷれいすれば、そのうち必ず死ぬか狂気に陥ることになるだろう。
その点では現実の世界と大きな違いはない。
ただし、現実とちょっと違うかもしれないことは、ゲームの世界では邪悪に抵抗するためにベストを尽くした探索者は、
必ず尊敬を受けるということである。
最終更新:2016年07月06日 12:03