ルールと技能

移動:ゲーム内の時間:アクション:肉体的な損傷:治療:戦闘:火器の使用:技能の定義。


◆ルールは遊びをゲームに変える。ルールによって、各プレイヤーを含むすべての登場人物は公平に取り扱われる
ことになり、勝利のチャンスが平等に与えられることになるのである。
"クトゥルフ神話TRPG"では、プレイヤーが探索者となり、キーパーがその他のすべてのキャラクターの役割を担当する。
しかし、このゲームはただ片方が勝ち、その分だけ片方が負けるというゼロ=サム・ゲームではない。
よいロールプレイが行われた場合には、両方サイドが勝利したことになるのである。
 ルールによって、ゲームで扱えることが定義される。すなわちゲームにとって重要な、キャラクターの能力やアクションの種類などが定義されるわけである。
 一つ一つのルールは、そのことだけに限定されたルールである。
起こりうるすべての状況を一つのルールの中に込めるというのは不可能だからだ。
 ルールとルールがぶつかり合う場合には、常識を働かせよう。
そして、最終的な裁定はキーパーが下す。

◆移動
 移動率は、生き物などの種類によって違う。
それぞれの移動率は、"クトゥルフ神話のクリーチャー"、"モンスターと動物"、"クトゥルフ神話の神格"の章に示されている。
人間の移動率は、1戦闘ラウンドにつき10単位までである。
つまり継続して移動を行なうことのできる最大値が15単位ということだ。
 移動率を表す数字は、平均的な移動能力を表しているのであって、1mを全力で走る場合の能力や、クロスカントリー、マラソンをするような場合の能力を表しているのではない。
すべての人間はゲーム上同じ移動率で移動するので、探索者シートには「移動率」の項目は設けていない。
ゲームでは正確な距離とか正確な移動率が問題になることはめったにないが、
キーパーが望むであれば、1単位で1mから数m(状況によって違う)進むことにしてもかまわない。
ゲームの中で距離や移動率が重要なことになった場合には、キーパーは適当と思われる特別な計り方を示してもいいが、
「君は1戦闘ラウンドでそこに着けるよ」というようにゲーム用語を使って説明するのがいちばん良いかもしれない。
 移動率は互いに比例関係にある。動物、超自然のクリーチャー、車両などの移動率は、人間よりも速かったり、遅かったりするだろう。
移動率が比例していることで、二者間の強壮の決着がわかりやすく、また結果もかなり正確なものになる。
誰が水をあけたのか、誰がうしろから迫ってきたかなどを決めるために、移動率の低い方から高い方を差し引く。
例えばトラ(移動率10)が人間の獲物を追うと、1戦闘ラウンドにつき少なくとも2単位ずつ近づいていくことになるし、
逆に人間のハンターがトラを徒歩で追っている場合には、1ラウンドに少なくとも2単位ずつ離されていくことになる。
 移動はテーブルの上にコマやフィギュアを置いて表す必要はない。
キーパーが場面を設定し、どうするつもりかを口で説明するだけというのが一般的である。
物理的な位置が一定でない場合には、キーパーは<幸運>を使うか、あるいはそのほかのランダムに近い方法を使って、
どの探索者が近いか遠いか、どの探索者が到着したかしないかなど決めればいい。

◆移動の取り扱い方
 生き物の種類によって移動率が違う場合、追うものと追われるものの間の感覚は、
ラウンドごとに単位の数によって広がったり狭まったりする。
そして最後には捕まるか、あるいは逃げおおせるという結果になる。
 長い競争では、キーパーは誰が最初に疲労するかを決めるためにCONで能力値ロールをさせてもよい。
 追うものと追われるものが同じ種類の生き物同士である場合、
抵抗表によってCON対CON、あるいはDEX対POW、あるいは<水泳>対<水泳>のロールなど、キーパーが適当と思うロールで競わせるようにする。
 負傷したり手足を失った探索者は、移動率が遅くなってしまうかもしれない。どのくらい遅くなるかはキーパーが決める。


ゲーム内の時間
 ゲーム内の時間はノンフィクションであり、実際の時間とは関係ない。
また、ゲーム内の時間は可変的なもので、キーパーが言ったとおりの速さで経過する。
キーパーは話を生き生きとしたものに保つために、空間だけでなく時間も自由に伸ばしたり、収縮させたりするのである。
それはストーリーテラーとしてキーパーの本分だろう。何事も起こらない場合には、キーパーは単に「何週間か経過しました」と言えばよいのだ。
同じ語数を使って、1年が経過したことにすることもできるわけである。
 プレイヤーはある程度の時間内に1回しか技能を行うことはできない。
その「ある程度の時間」がどれくらいかということは、技能の種類あるいは状況によってキーパーが決定する。
例えば、馬に乗っていて、馬が暴れて手に負えなくなって<乗馬>ロールを試みる場合には、1分か2分の間に何度もロールしなければならないかもしれないが、
退屈で膨大なラテン語の古写本を理解しようと四苦八苦しているような場合には、<ラテン語>のロールを1週間に1回程度しかさせてもらえないだろう。
 ルールによっては長い時間が必要になる場合がある。
例えば、図書館で情報を探すのには、ゲーム上で丸1日かかってしまうかもしれない。
自然治癒はいつも何週間という単位だし、マジック・ポイントの再生には24時間かかる。
 戦闘および遭遇(戦闘になる可能性が高い)は戦闘ラウンドでプレイされる。
戦闘ラウンドについては、後出の"戦闘"の項(63ページ)で説明する。

◆技能の時間
 技能を使うということは、それだけ時間が経過するということでもある。
戦闘関係の技能は次のラウンド、またその次のラウンドという具合に繰り返して行使することができるが、
プロセスを必要とする技能の場合は、行使することはゲーム内の時間あるいは日数を使うことを意味する。
 ある技能ロールを使った後で再びその技能を試みることができるまでの時間は、
キーパーがその技能の行使のために必要と見なした時間ということである。
例えば<図書館>の技能は、一度行使するのに4時間以上かかることになっているが、
開かないドアを開けるために、<機械修理>技能を行使するような、単純な技能の場合には15分しかかからないかもしれない。
特別に面倒な事情でもないかぎり(例えばモンスターがあなたの首筋に鼻息を吹きかけているとか)、<機械修理>の技能は1日に何回も試みることができる。


アクション
 アクションは普通の状況であれば自動的に成功する。
しかし攻撃を受けたような場合には、ダイスロールによってそれに対処しなければならない。
このようなロールは、たいていD100で行なわれる。
D100すなわちパーセント・ロールは、ゲームの基本的なロールである。
そのほかのロールは能力値を決めるとか、攻撃によって受けるダメージを決めるときに使われる。

◆自動的なアクション
 日常的における肉体的および知的アクションは、自動的に成功する。
ただ歩くため、走るため、話すため、見るため、聞くためだけならダイスをロールする必要はないし、
ごく当たり前の技能を使うためにダイスをロールする必要もない。
しかし、日常的な状況というものは、一瞬にして異常な状況に変わるかもしれないものなのだ。

◆異常な状況
 行なうアクションがごく普通のアクションであったり、
使う技能がごくありきたりの技能だったとしても、それが危険な条件下であったり、
厳しい批判の目を受けながらであったり、非常な集中力をもって行わなければならないような場合では、
上手く行えたかどうかをダイスのロールで決めなければならない。
 <航空機の操縦>、<ショットガン>、<登攀>、などのような、本質的にドラマチックで危険な技能は、
必ずダイスのロールで結果を見なければならない。
 いつどんなロールが必要であるか決めるのはキーパーである。
技能ロールか、能力値ロールか(たぶん特殊な条件に合わせて修正された能力値ロールになるかもしれない)、
あるいは抵抗表にしたがった、能力値と能力値を競わせるロールかを決める。

◆D100ロール
 探索者の技能や能力値ロールの成功・失敗を見るとき、プレイヤーは普通D100をロールする。
NPCの場合はキーパーがロールする。
D100の結果が探索者のパーセント値以下だった場合、そのアクションは成功したことになる。
それ以外だった場合、もう一度同じ試みをするにはある程度の時間が経過してからでなければならないのが普通だ。
どのくらいの間隔が必要であるかはキーパーが決める。また、結果が「
」だった場合は、常に失敗と見なされる。
 ロールによっては特別な結果が生じることもある。
"貫通"(66ページ)、"戦闘時の"決定的成功と"ファンブル"(149ページ)、"スペシャル"(151ページ)の項を参照する。

例;葉―米はロッキー山脈の上を飛行機で飛んでいるときに、乱気流の中に入ってしまった。
彼は墜落しないように、必死になって操縦した。ハーベイの<航空機の操縦>は60%なので、
彼が墜落しないで何とか切り抜けるためには、彼のプレイヤーはD100ロールで60かの値を出さなければならない。

◆抵抗表のロール
 能力値と能力値とを競わせん場合には、"抵抗表"を使う。
まず抵抗表のいちばん上の行から、能動的な能力値、すなわち攻撃する方の能力値と同じ数字を探す。
それから表のいちばん左側の列の中から、受動的な能力値が成功するためには、
行と列の交わるところに示されている数字以下をD100で出さなければならない。
 抵抗表を使って競うのは、同種の能力値同士でも違う能力値同士でもかまわない。
例えば、探索者が友人の体を持ち上げて安全なところへ運びたい場合には、
その探索者のSTRと、持ち上げられる友人のSIZを競わせるのが適切だろう。

例:容疑者の尾行を続けるために、ハーベイ・ウォルターズは硬く閉じられたドアを開けなければならなくなった。
ドアはSTR6の力で立ちはだかっている。
ハーベイのSTRはたった4しかない。抵抗表の縦横2つのドアを開ける成功率が40%であることがわかる。
彼のプレイヤーはD100で40以下を出さなければならない。

◆経験から得るもの
 ロールプレイングの醍醐味は、スタート時はほんのお粗末な存在だった探索者が成長発展していく過程に付き合うことができる点にある。
成長発展の中でも特に目につくのは、技能のパーセント値が上昇することだ。
探索者が技能を使えば使うほど、その技能が上達していくのである。
探索者が謎を解決したり、チャレンジに成功したり、技能を向上させるたびに、
プレイヤーはその変化の状況を覚えていき、それを味わい楽しむといい。

◆経験のチェックマーク
 探索者シートに技能(経験)のチェックマークを記録する場所がある。
プレイ中に探索者が技能を使って成功した場合、
キーパーはプレイヤーに探索者シートの中のその技能名の左にある四角にチェックマーク(?)をつけるように言う。
これで探索者は経験から学ぶ機会を得たということである。
 冒険中に、1つの技能に何度も成功した場合であっても、キーパーが経験ロールをしてもいいというまでは、
チェックマークは1つ技能に対して1つしかつけることができない。
そしてチェックマーク1つにつき、1回しか経験ロールをすることはできない。
経験ロールはその技能が上達したかどうかを見るためのロールである。
経験ロールは、普通、シナリオが終了するとき、あるいはいくつかの場面が終わった時点で行われる。
 キーパーが経験ロールをしてもよいと言ったら、
プレイヤーは探索者シートを見て、どの技能にチェックマークがついているかを確かめる。
そしてマークのついている技能に対して、D100ロールをする。

□D100の結果が現在の技能値よりも高かった場合には、
 探索者はその技能が上達したことになる。
 1D10をロールして、その結果を現在の技能値に加算するのである。

□D100の結果が現在の技能値と同じか、それよりも低い場合は、探索者は経験から何も学ばなかったことになる。
 技能値は前と変わらない。
 チェックマークのついている技能全てに対して上記の作業をしたあと、チェックマークを消しゴムで全部消す。
技能が上達しなかった場合、ほかに何も変わったことは起こらない。
<クトゥルフ神話>の技能にはチェックマークがつけられることはないので、
この技能の左にはチェックマークのための資格がついていない。
 あまりよく知らない技能を使って成功するというのは、難しいことだ。
しかし成功すれば、そこから学ぶことは多いはずである。
反対に、すでに熟練している技能であれば、その成功率は高いだろうが、成功したからといってそれ以上に新しいことを学ぶことは少ないだろう。
技能値が高くなるにつれて、技能値を上昇させることが次第に難しくなっていく。

例:ハーベイはエニグマ誌の仕事で、オカルト教団「銀の黄昏」に関する記事を書くために同教団が主催する仮想パーティに来ている。
彼はダンス相手の女性に自分を印象づけようとし、お得意の<考古学>の知識をひけらかすことにした。
技能ロールは成功した。しかしキーパーはチェックマークをつけることを許さなかった。
技能に成功したと言っても、そこから新しく学んだことは何もないからだ。
これがもし、彼が古い焼き物の破片を見てどの時代のどんな焼き物なのか正確に言い当てたとでも言うなら話は違う。
そんな場合にはチェックマークが許されるかもしれない。
そのあとで、ハーベイはタキシードを着けた3人の男が勝手口からそっと外へ出ていくのを見た。
彼は<忍び歩き>でロールをし、「07」
という結果を出した。成功である。キーパーは彼女(ハーベイのプレイヤー)にその技能にチェックマークをつけるように告げた。
なぜなら、キーパーはハーベイがこの技能に失敗していたとすれば、結果はたいへんなことになったことを知っているからである。

◆90%の能力
 プレイをしていくうちに、探索者が1つの技能に90%以上の能力と獲得した場合には、
その探索者は現在の正気度ポイントに2D6ポイントを加算することができる。
この報酬は、技能をそこまで習得するための厳しい自己抑制や自尊心を表す。
<クトゥルフ神話>の技能だけには、この報酬はない。


肉体的な損傷(負傷)
 耐久力は探索者の相対的な健康度を示すものであり、
探索者がどれくらいのダメージを受けとめることができるかを示すものである。
耐久力を失うということは「攻撃」あるいは事故などによって肉体的な損傷を受けたことを相対的に表す。
この場合の「攻撃」というのは、戦闘ラウンドの中のまとまった1つのシークエンスにおいて、1人相手から受けるダメージの総計を言う。
攻撃やそのほかの原因で耐久力を失うことを負傷と呼ぶ。
 例外もあるが、物理的な損傷は物理的な原因で起こる。
例えば高いところから落ちたとか、銃で撃たれたなどである。
探索者が攻撃を行なって成功した場合には「ダメージを与えた」という言い方をし、
探索者が攻撃を受けてその攻撃が成功した場合には「ダメージを受けた」と言ったり、あるいはもっと正確な言い方として「耐久力を失った」とも言う。
 探索者がダメージを受けた場合には、探索者シートに示されている現在の耐久ポイントから、
失った分を差し引かねばならない。
 耐久力が2ポイント以下になるまでは、探索者はダメージを受けても普通と同じようにしていいることができる。
ただし、1つの攻撃によって現在の耐久力の半分以上の耐久力を一度に失ったり、キーパーが特にそう判断した場合はそのかぎりではない。
 耐久力が2ポイント以下になれば、探索者は意識不明に陥るか、あるいは失い方によっては死んでしまう。
この2ポイントという数字には抽象的な意味しかないが、
ここで区切ることによって探索者をプレイからはずさないで済むし、記録をつけるのを楽にできる。
 負傷の描写は、受けたダメージのタイプにしたがった適切なものでなければならない。
探索者は単に「撃たれた」のではなく、「右の腕を撃たれた」とか「左の腕を撃たれた」となるし、
倒れた場合にも、単に「耐久力を失った」という描写ではなく、「足首をねんざした」とか「後頭部にコブができた」という描写をしよう。
キーパーは探索者が傷を負ったことによって、例えばハシゴを登るというようなアクションが難しくなったとか、不可能になった宣告をしてもかまわない。

◆スタン
 ノックアウト攻撃、電気ショック、落下、そのほかの原因によって、探索者は1D6戦闘ラウンドの間、衝撃を受けてわれを失う場合がある。
この状態をスタンと呼ぶ。スタンした探索者はその間"受け流し"や<回避>を行うことはできるが、それ以外のアクションはできない。
探索者がスタンしたかどうかはキーパーが決めてよい。
これが起こるのは、攻撃が"決定的成功"(149ページ)や"スペシャル"(151ページ)の結果を出した場合だろう。
スタンと共に耐久力を失う場合もあり、失わない場合もある。

◆ショック
 探索者がただ1つの負傷から、現在の耐久力の半分以上を失った場合には、
プレイヤーはD100をロールして[CON×5]以上を出さなければならない。
失敗すれば探索者は意識不明に陥ってしまう。

◆意識不明
 探索者の耐久力が残り5ポイント以下になった場合、
その探索者は自動的に意識不明に陥り、ゲームに積極的に参加することができなくなってしまう。
生きてはいるのたが、意識はない。その状態は耐久力が3ポイント以上に回復するまで続く。
意識不明に陥っている期間がどれくらいかということは、キーパーが自由に決めてかまわない。
 時間がたてば負傷が治ってきて、よろめきながらもその場を離れることができるようになるかもしれない。
あるいは仲間が<応急手当>や<医学>のロールに成功することによって、回復するかもしれない。

◆死
 探索者の耐久力がゼロ(0)あるいはマイナス(0未満)にまで低下した場合には、
その探索者は次の戦闘ラウンドの終わりに死ぬ。
それまでの数秒の間に、仲間がそれを阻止してくれるかもしれない。
このことについては"治癒"の項を見てほしい。 (64ページに続く)
 仲の良かった友人の死は悲しいことだ。悲しみに暮れる探索者には、プレイ中で慰めが必要である。
そして友野氏を受け入れてはっきりと認識するのは、プレイが終わったときになる。


治癒
 すべての生き物には自然治癒の力がある。
ゲーム上では探索者が一週間ごとに1D3ポイントずつの耐久力が回復していくことで、それを表している。
回復は耐久力が元に戻るまで続く。したがって、耐久力7ポイントを自然に取り戻すためには、3週間から7週間の時間がかかることになる。
<医学>あるいは<応急手当>の技能を施すことによって、回復の時間は早まる。
 耐久力が3ポイント以上さえあれば、探索者は何のハンデもなしに動いたり活動したりすることができる。
ただし耐久力がそんなに低くては、新たにちょっとした負傷を受けるようなことでもあれば、すぐに死に結びついてしまうことだろう。

◆<医学>、<応急手当>
 この2つの技能のうちどちらかに成功すれば、1つの負傷からくる耐久力の喪失を、ただちに1D3回復させることができる。
1回の負傷に対して手当ては1回しかできない。1人の探索者がいくつかの別々の攻撃あるいは事故から受けた負傷に対しては、
そのつど<医学>あるいは<応急手当>の手当てを受けることもありえる。
 <応急手当>を受けた探索者は、そのあとは自然の回復率で回復してゆき、1週間だったら、さらに1D3ポイント加算する。
 <医学>の手当てを受けた探索者は1週間につき2D3ポイントの割合で耐久力を回復していく。
また、<医学>による回復率は自然回復にとって代わる。
すなわち<医学>の技能が施された場合には、すべての傷は<医学>の回復率で回復していくということになる。
したがって、<医学>の手当てを受ける最初の週の回復ポイントは(初期の緊急処置も含めて)、全部で3D3ポイントになる。
 <医学>の技能は毎週施さなければならない。
<医学>技能をほどこさなければ、その週から自然の回復率に戻る。
 耐久力はどんなに回復しても、[(SIZ+CON)/2]よりも大きくなることはない。

◆死からの生還
 探索者が死んだラウンドの次の戦闘ラウンドが終わる前に<応急手当>あるいは<医学>を施されて、
死んだ探索者の耐久力が少なくとも+1まで上昇した場合には、
その探索者は「ほとんど死んだけれど本当は死んでいなかった」ということで、息を吹き返す。

◆傷と治癒:1つの例
 ハーベイは恐ろしいカルティストから逃れるために開いていた窓から外へ<跳躍>して飛び出し、窓から4.5m
下にある地面に落ちた。
落ちたことで2D6ポイントの耐久力を失うところだが、("落下"62ページ)、<跳躍>、ロールに成功したことにより、
失う耐久力はそこから1D6ポイント差し引いた値で済んだ。
失ったのは結局6ポイントだった。ハーベイの耐久力は15だったから、6ポイントならショック状態には至らずに済んだ。
彼はよろめきながら、道路の向こう側の安全な場所へ向かって行った。
ハーベイの耐久力は現在9ポイントである。
 そのとき1台の車がブレーキをきしらせながら角を曲がってやって来た。車はハーベイに接触した。
ハーベイは接触によって耐久力を5ポイント失い、残るのは4ポイントの半分以上であるため、キーパーは[CON×5]より高い値だった。
ハーベイは道路に倒れ、気を失った。車を運転した人はその場でハーベイに<応急手当>を施した。
これで2ポイントの耐久力が回復して、ハーベイの耐久力6ポイントに上がった。
キーパーはハーベイがその前からすでに傷を負っていたという理由で彼の意識はまだ戻らないと告げた。
運転者はハーベイをロードスターの座席に乗せて、アーカムの聖メアリー病院へと急いだ。
 病院ではインターンが適切な<医学>の技能で、ハーベイのショック、打撲傷、軽い脳しんとう、くじいた足首、2本の肋骨の骨折に手当てをしてくれた。
ハーベイは自動車事故に関してはすでに<応急手当>を受けていた。しかし窓から飛び出したとき失ったポイントに関しては、
そのインターンの<医学>による手当で2ポイント回復した。
これでハーベイの耐久力は8ポイントになった、
キーパーはハーベイが意識を取り戻したことにした。
 ハーベイは入院した。<医学>による手当を受けていれば自然の回復率より速く回復するので、入院していた最初の週の終わりには2D3ポイントの耐久力が回復し、
耐久力は12になった。退院したあとも、ハーベイの耐久力は回復しつづける。
そのスピードは今度は自然の回復率になるので、1週間に1D3ポイントずつである。
ただし通院や往診などによって病院の医者が直接にハーベイの手当を続けた場合には、
退院後であっても回復率は2D3ポイントのままである。
 このようにして、次の週の終わりにはハーベイはもうあと2ポイントの耐久力を回復させ、
第3週目の終わりには以前と同じ15ポイントまで戻った。
 ゲーム上ではハーベイ・ウォルターズは完全に治ったわけだが、ハーベイをプレイする上で、
彼のプレイヤーはハーベイの一方の手に小さな三日月型の傷跡が残ったことにした。
窓から落下したときに受けた軽い傷の後が残ったのである。


戦闘
 攻撃には、近接戦による攻撃と、火器を使って行なう攻撃の2種類がある
近接戦の攻撃には、<フェンシング・フォイル>、<こぶし/パンチ>、<ファイティング・ナイフ>、<棍棒>などがあり、
火器の攻撃には<拳銃>、<ショットガン、<ライフル>などがある。
 攻撃が成功すれば、犠牲者は耐久力を失う。どのくらい失うかは場合によっては異なる。
武器が与えるダメージは武器ごとに違っており、
また武器が引き起こすダメージの値はたいてい一定の範囲内でランダムに決まるからである。
さらに不確実なことに、生き物の中には防護になるような手段(ゲームでは装甲と言う)を身に着けているものもあり、
攻撃を受けて失う耐久力がそれで変わってくる。また装甲以外のルールでも、攻撃結果を修正させるようなものがある。
 70~71ページの表にさまざまな武器が示されている。
このゲームでは、手に入れられるのであれば、どんな武器でも使うことができる。
この"武器の表"の中に入っている武器は、一般的あるいは典型的なもので、
似たような武器での攻撃の場合もこれを参考にできるということが選ばれたものだ。
ここにある武器は、探索者が所有できるかどうかについてキーパーが制限を加える場合もある。
 あとの項で近接戦武器と火器に特有な問題点について説明する。

◆戦闘ラウンド
 戦いが起こるのは"戦闘ラウンド"においてである。
各ラウンドは数秒あるいは12秒くらいの時間である。
戦闘ラウンドは長さを厳密に定義しない時間単位になっている。
アクションをしたい者、そしてアクションができる状態のものには、
全員に少なくとも1回のアクションを行うチャンスがあるという時間単位が戦闘ラウンドなのである。
探索者に平等のチャンスがあるという方が、現実世界の時間に正確に合致しているということよりも重要なことである。
もし不平等がはっきりしていたら、キーパーは満足のいく妥協案を提示して、プレイを続けるべきである。

◆DEX(敏捷性)と攻撃の順番
 最初に攻撃を行なう機会があるのは誰か?
このことは、戦いにおいて攻撃が成功するかどうかということと同じくらいに重要なことである。
アクションを行なう順番は、戦闘を行なう者のDEXが最も高い者から低い者へとランクづけをして決める。
DEXの値が同じ探索者が2人以上いた場合には、D100をロールして最後も小さい目を出した者から先に行う。

■同一の一般的な遭遇において、近接武器と火器の両方が使われた場合、最初に火器が射撃される。
すでに照準を合わせていて射撃準備のできている火器が、DEXの順番に従って1回ずつ射撃されるのである。
近接戦のどんなアクションが行われるよりも前に、まず射撃準備のできている火器が射撃されるのだ
(引き金を引く時間は、棍棒や刀を振り回して相手に命中させ、再び元の状態に戻るまでの時間よりも短いからである)。

■最初の射撃が終わったら、参加者のDEXを新しくランクづけし直す。
その中には自動的なアクションをする者、何らかの形で能力値を使う者、技能を行使する者、呪文をかけるものなどのDEXも含まれる。
■この第のDEXサイクルの中には、(a)近接戦の攻撃をしようとする者、
(b)ピストルを抜いたり、ライフルやショットガンを構えてから射撃しなければならない者、
(c)そのラウンドで2度目の射撃をしようとする者も含まれる。
これらのアクションがすべてEDXの順番に従って行われなるのである。
■1つのラウンドで3発射撃できると指定されている銃は、あと1回射撃できる。
この射撃は射手のEDX半分にした順番で、ラウンドのあとの方に行う。


◆近接戦
 "クトゥルフ神話TRPG"では、どんな近接戦の武器も使うことができる。
近接戦で武器として使うことができるものはあまりにも数が多いし妙なものも多いので、
それらを全部技能として書き出してはいない。素手の技能である<こぶし/パンチ>、<キック>、<頭突き>、<組みつき>は誰でも行なうことができる、
この4つの技能については、"技能"の項で説明する。
 ほとんどの近接戦武器は、1戦闘ラウンドの間に攻撃を1回を受け流しを1回行うことができる。
素手による技能で受け流しを行なうには制限がある。
またクロスガード(刃を直交するつば)のついていないナイフでは受け流しはできない。
受け流しについては次のページの"戦闘のスポット・ルール"で説明する。
 近接戦の武器は、攻撃をしているときに武器がその武器自身にダメージを与えることはない。
投擲した場合以外には、近接武器による攻撃に全ダメージボーナスを加える。
武器を投擲した場合には、ダメージ・ボーナスの半分を加える。

◆棍棒、鈍器
 棍棒には警官の警棒、犯罪者が使うブラックジャック、手ごろな枝、医師、暖炉の火かき棒などが含まれる。
これらの武器はそれぞれサイズも異なるし、重さも材質も違うので、これらを一緒にして1つの技能として技能値を上昇させていくわけにはいかない。
そこで<大きい棍棒>、<小さい棍棒>、<ブラックジャック>というふうに武器ごとに別々の技能になっている。
それらの技能値は"武器の表"に示されている。
 ブラックジャックや石などは、受け流しに使うことはできない。1D10ものダ (72ページへ続く)
メージを引き起こすこともあり得るが、その場合は振り回す者のSTRが少なくとも13はなければならない。
棍棒は貫通することはない、("戦闘のスポット・ルール"の貫通の項参照)。<小さい棍棒>あるいは<大きい棍棒>の基本命中率は、
キーパーがそうしたいのであれば、バーのいす、広間にある帽子掛けスタンド、そのほかの小さな家具にも応用してかまわない。
棍棒そのほかの鈍器は、ノックアウト攻撃をするのに使うことができる。

◆刀剣、サーベル
 刀剣には非常に多くの種類がある。片手で使うものもあれば、両手で使わなければならないものもある。
1種類の刀剣の技能が上昇するということはない。
貫通のできる種類のものもあるが、中には騎兵が馬上から振り下ろすようにデザインされているものがある。
また、受け流しように作られていて貫通できないものもある。
そういう形のものは切っ先があまり尖っていないのである。

◆フォイル・レイピア
 フォイルとレイピアはお互いに似たような技能であり、
どちらかの技能値が上がれば、もう一方の技能値も上がる。
仕込み杖はフォイルと同じように取り扱う。フォイルもレイピアも貫通ができる。

◆ナイフ
 ボウイナイフ、肉切り包丁、ハンティングナイフ、ダーク、ダガー、飛び出しナイフ、キッチン用ナイフなどは、
十分に武器となりうるような大きな刃を持っている。
1つの種類のナイフの技能が向上すれば、ほかのほとんどのナイフの技能も向上する。
ナイフは貫通ができる。

◆素手の攻撃
 <こぶし/パンチ>、<キック>、<頭突き>、<組みつき>の4つは、何の武器も持っていない人間が行うことのできる攻撃である。
すべての者がこれらの攻撃を知っていることになっている。
素手の攻撃は、それぞれ独立して別々に行なわれ、経験によって技術が向上するのも別々である。
技能の項で、4つの攻撃それぞれについて説明する。
特に<組みつき>は複雑な技能なので、よく説明を読むこと。

■素手の攻撃とともに<マーシャルアーツ>のロールに成功すれば、
 素手の攻撃が与えるダメージは2倍になる
■ノックアウト攻撃を行なった場合、対象に与えるダメージは普通の場合よりも少なくなる。
"戦闘のスポット・ルール"を参照すること。
■一般的に、素手の攻撃はどんな近接武器あるいは素手の攻撃によっても、受け流しをされる可能性がある。
<組みつき>のみが別の<組みつき>を受け流すことができる。
■キーパーによるオプションとして、人間による<噛みつき>の攻撃を認めてもよい。
人間による<噛みつき>は耐久力としてのダメージを与えることはないが、
人間による<組みつき>を振りほどくことはできるかもしれない。
その場合にはPOWとPOWで抵抗表ににしたがってロールし、
噛んだ者が<組みつき>しているものに勝てば、振りほどけたことになるのである。

◆火器の使用
 火器の技能には、<拳銃>、<マシンガン>、<ライフル>、<ショットガン>、<サブマシンガン>の5つがある。
すべての探索者はこの5つの技能をそれぞれについて、スタート時からすでにある程度の能力を持っていることになっている。
ただし、サブマシンガンだけは1890年代には存在していなかった。
火器の技能は次のページから始まる"技能"の項で説明する。
 火器の使用についてさらに詳しいことは、68~69ページのコラム"火器のスポット・ルール"を参照されたい。
探索者は小さなものであればどんな火器でも、ある程度の命中の可能性をもって射撃することができる。
骨董的な火器(例えば火打ち式のピストルなど)の場合には正しく装填して射撃するためには、キーパーによっては、
<歴史>ロールに成功しなければなならないとする場合もあるだろう。
 ある特定の火器の技能が向上すれば、その種類の一般的な技能が向上する。
例えば拳銃の場合、45口径リボルバーの技能が向上すれば、22口径リボルバーを使う場合でも命中率は上昇する。両方とも拳銃だからだ。
探索者シートの下の方にあるチェックボックスの中にこの2つの技能の数値を修正するだけでなく、
"探索者の技能"の欄の命中率も修正しなければならない。

■同じ技能が適応される火器でも、すべて同じ基本命中率を持っているとは限らない。
例えば44口径マグナム・リボルバーなどは重くて扱いにくいものなので、基本命中率が多少低くなっている。
■基本射程は"武器の表"に示されている。
■探索者はライフルあるはショットガンあるいは大型のサブマシンガンを使って、近接戦武器の攻撃を受け流すことができる。
しかしこれらの火器は、もともとそんな使い方をされるために作られたものではない。
銃の耐久力よりも受け流した攻撃の1回の方が強かった場合には、その火器は2度と射撃できなくなってしまう。


 数秒の間に、火器は近接戦武器の2倍か3倍の回数の攻撃を行なうことが可能であり、
自動火器の場合には、30倍までの攻撃が可能だ。
しかし大がかりな銃撃戦を行なわせるようなシナリオはめったにない。
銃撃戦には気をつけなければならない。
銃撃戦になったということは、探索者がまずい選択をしたということなのだ。

◆短い戦闘の例
 ハーベイ・ウォルターズはあーカム近郊にある古い館、クラウニンシールド荘の内部を探索していて、
そのときたまたま館へ忍び込んでいた空き巣を狙いと遭遇してしまう。
泥棒はハーベイが近づいてくる足音を聞きつけ、リボルバーを抜いて構え、ハーベイが図書館に入るのを待ち受けていた。
ハーベイの方も怪しい物音を聞きつけたので、壊れたいすの脚を拾って持っていたのだが、打ち下ろすために振り上げることまではしていなかった。
 泥棒は持っていた32口径リボルバーを先に射撃することができる。
ハーベイが持っていたのは近接戦武器だからである。
泥棒の<拳銃>の技能は25%でゼロ射程から打つのでそれが2倍になるのだが、
月明かりの夜であるためにそれがまた半分になるので、結局25%のままということになる。
泥棒はキーパーが「72」を出したので、射撃ははずれた。
 そこでハーベイ(DEX×12)はいすの脚を振りかざしながら突進した。
命中させる可能性は、"武器の表"の<小さい棍棒>の欄を使って25%である。
ハーベイのプレイヤーはロールして「84」を出した。はずれだ。
 次はDEX10である泥棒が再度発砲する番である。キーパーの出した目は「85」で、またまたはずれだった。
32口径は1ラウンドに3回も射撃できるので、泥棒はDEX×5(本来のDEXの半分)でもう1度発砲することができる。
今度はキーパーはの出したロールの目は「00」、故障である。
キーパーはリボルバーの場合の故障は不発弾によるものであることを知っていたが、
「撃鉄は大きな音を立てて落ちたが、弾は出なかった」と、ただ起こったことだけを述べた。
 ハーベイのプレイヤーは、泥棒の銃にはもう弾がなくなったはずだと主張した。
ちょっと性急すぎる仮定だが、キーパーはそれを否定する理由もない。
キーパーはただ泥棒は自分の銃が不発だったことをあまりにも驚いて、次のラウンドでの第1弾を射撃する権利を失ったと述べた。
 ハーベイはこれで有利になったと思い、張り切っていすの脚を振り下ろした。
ハーベイのプレイヤーが出した目は「01」――命中だ!、いすの脚は<小さな棍棒>のクラスに入るので、
与えるダメージは1D6ポイントである。ハーベイのプレイヤーはダメージのロールを行ない、結果は「4」だった。
与えたダメージは4ポイントだったということになる(ハーベイにはダメージ・ボーナスがない)。
 キーパーは泥棒が痛さから悲鳴を上げたと言い、D100の目がたいへん小さかったということで、
ハーベイの一撃が男のリボルバーの握りにあたり、銃を払い落としたことにした。
銃は床にすべって、真っ暗な部屋の隅に入ってしまった。
 第3ラウンドが始まると、今度はハーベイの方が先に攻撃を行なう。
近接戦武器同士の戦いになるので、DEXの高いハーベイが先に攻撃できるのである。
ハーベイはいすの脚を振り下したが、結果は「22」で失敗だった。
薄暗がりのため、技能値が半分になったせいもある。
キーパーは泥棒がこの正体のわからないやり手の闘士とこれ以上戦うより、むしろ逃げ出したいと考えていることにした。
男はくるりと向きを変えて、夜の闇の中へ逃げ去って行った。
 得意満面のハーベイだったが、床に転がっていた泥棒の32口径にまだ弾が4発も残っているのを知ったときには、
その顔色もちょっと変わってしまった。
しかしキーパーはハーベイの勇敢さをほめ、技能の経験チェックマークをつけてもいいと言った。
1,2週間してキーパーがすべてのプレイヤーにチェックマークのついた技能の経験ロールをするように言ったとき、
ハーベイの<小さな棍棒>の技能は32%に上昇した。


*技能の定義
 技能の定義は、その技能の意図と範囲を全般的に要約したものでなければならない。
技能は予期できない状況によって新しい使われ方をしたり、新しい解釈をされたりするものなのである。
特別な使い方については、キーパーと相談しなければならない。
 技能の名前のうしろに示されているカッコに入った数字は、その技能の基本成功率である。
 技能はその時代に知られていたものを表している。
技能値は知識として持ちえることを比例的に示したものではない。
60%の<物理学>の技能を持っている現代の物理学者の方が、
90%の技能を持っている1902年の物理学者よりもずっと多くのことを知っている。
 一般的に言って、ある技術のレベルが50%だということは、そのキャラクターはその技能でかろうじて生計を立てることができるということである。
探索者の技能値が上昇した場合、プレイヤーとキーパーはその探索者のためにもっと収入の多い新しい職業のことを話合ってみてもいい。

◆言いくるめ(5%)
 この技能を使うと、対象がこちらの望んだとおりに一時的に賛成させることができる。
対象はあまり深く考えずに書類にサインしたり、敷地内を通してくれたり、自動車を貸してくれたり、
そのほか理屈に合うことであれば何でも頼まれたことを許してしまう。
ただし、対象にちょっと考える時間があって、しかも<アイデア>ロールに成功した場合には、
対象はわれに返る。<言いくるめ>の項かが消えてしまうわけである。

例:フォン・ザムメ伯爵はハーベイを<言いくるめ>るのに成功した。
ハーベイは伯爵が詐欺的な契約書にサインするためにペンを取りに2階へ上がっていった。
散らかっている部屋をかき回してペンを探しているうちに、十分時間が経ち自分で考えられるようになってきた。
キーパーは<アイデア>ロールをするように言い、ロールは成功した。
ハーベイは気を取り直し、契約書にサインなんかしないと決めて降りてきた。
伯爵がもう一度<言いくるめ>を試みるのは、また別のときまでまつしかない。
あるいは戦術を変えて、ハーベイを<説得>しようとするしかない。
 <言いくるめ>を使えば、時間のほんの1分か2分で、疑わしい品物を価値のあるものだと思わせたり、
ちゃんとした物をつまらない物だと思わせることもできる。
それに比べると<説得>や<値切り>は、結論を出すまでに何時間もあるいは何日もかかる場合がある。
<言いくるめ>はすでに心を決めてしまっている対象には通じない。
その場合には代わりに<説得>を使えばいい。

◆医学(5%)
 この技能を使うものは、事故、傷、病気、中毒などを診断し、治療することができるし、
公衆衛生に関する助言を行なうこともできる。
時代によってはある病気に対する適切な治療法がない場合もあり、この技能による努力にも限度があったり、
不確実であったり、決定的でないような場合もある。
この技能ロールに失敗した場合には、もう一度試みる前にある程度の時間が経過することが必要だが、
別の探索者が試みるのであれば、すぐ次のラウンドで行なうことができる。

■緊急の場合に、<医学>に成功した者は、1つの負傷につき1回、1D3ポイントの耐久力をただちに回復させることができる。
■<医学>によって手当てを受けている探索者は、最初の週も含め1週間につき2D3ポイントの割合で耐久力を回復していく。
■緊急の手当てを含めると、<医学>の技能を適用された場合に第1週目で回復できるのは、合計で3D3のポイントである。
■ノックアウト攻撃の犠牲者となっていた者、あるいはそのほかの理由で意識不明に陥っていた場合
■今死んだばかりの探索者が、同じ戦闘ラウンドあるいは次の戦闘ラウンドで耐久力が少なくとも+1ポイントまで上昇した場合には、息を吹き返すことができる。
■キーパーはある病気や症状には治療法がないということにしてもかまわない。<応急手当>の項も参照のこと。


◆運転(20%)
 この技能を持つ者は、ロールなしで乗用車あるいは軽トラックの運転ができる。
普通の操作ができ、通常の車両の問題(故障など)が起こった場合に解決することができる。
しかし、追ってをまこうとしたり、逆に誰かを追跡しようとする場合には、
追う方と追われる方が両方とも<運転>のロールを行なうことになる。
一方が成功して、もう一方が失敗するまで行なうのである。
もっと複雑なカーチェイスの場合は、選択ルールである"カーチェイスのルール"(328ページ)を見てほしい。
危険な運転をする場合には、いつでも<運転>のロールが必要になる。
 大型の自転車や、特殊な車両を運転する際は、<運転>や<重機械操作>をキーパーの裁量で使うにしてもよい。
 1890年代では、この技能は馬車の<運転>を表し、同じような効果と危険性を持っている。
この場合の馬車は、1頭立ての軽装四輪馬車が二輪馬車、2頭立てあるいは4頭立ての荷馬車が大型四輪馬車などである。
この時代のキャラクターであって、自動車の<運転>の技能が欲しい者は、1%からスタートする。
もっとあとの時代の探索者が馬車<運転>の技能が欲しい場合にも、やはり1%から始める。

◆応急手当(30%)
 意識不明やスタン状態に陥っている仲間の意識を取り戻してやったり、
骨折した手足を固定したり、火傷の手当てをしたり、溺れた人間の息を吹き返させたりするための技能である。
また、キーパーがロールすることを許したのでないかぎり、毒を盛られた場合にも使うことはできない。
<応急手当>に失敗すると、もう一度試みるのはある程度の時間が経過してからでなければならない
(しかも何か別のことをしなければならないだろう、前に試みたことはうまくいかなかったのだから)。
別の仲間が<応急手当>技能を使うのであれば、すぐ次のラウンドで行なうことができる。
 この技能に成功すると、1つの負傷で失った耐久力のうち1D3ポイントをただちに回復させることができる。
したがって、何発もの銃弾を受けた探索者は、それが同じ戦闘ラウンドで受けたのでないかぎり、
傷1つ1つに<応急手当>を受けることができる。

■ノックアウトの攻撃の犠牲者となっていた者、
あるいはそのほかの理由で意識不明に陥っていた者が<応急手当>の手当を受ければ、ただちに意識を取り戻す。
■今死んだばかりの探索者が、同じ戦闘ラウンドあるいは次の戦闘ラウンドで耐久力が少なくとも+1ポイントまで上昇した場合には、息を吹き返すことができる。
探索者がある傷に対して一度<応急手当>あるいは<医学>を施しても効果はない。
別の新しい傷に対してなら、また別に手当てを受けることができる。
この技能を施すためには、1戦闘ラウンドの時間が必要であるが、
キーパーが好きなように決めてもかまわない。<医学>の項も参照のこと。

◆オカルト(5%)
 この技能を使うものは、オカルト関係の小道具とか言葉とか概念に出会えば、それがどういうものであるかわかる。
また魔術の本やオカルトの暗号などを見れば、それの知識を持つ一族のことをよく知っているものだ。
そういう一族は、エジプトやシュメール、中世やルネッサンス時代の西欧、あるいはアジアやアフリカなどからも秘密の知識を代々伝えてきたのである。
 ある種のオカルト本を理解すれば、オカルトの技能値が上がるかもしれない。99ページの"魔術"の章に、オカルトの名前が示されている。
<オカルト>の技能はクトゥルフ神話の呪文、本、魔術などには適応されないが、グレート・オールド・ワンの崇拝者は普通のオカルトの概念も取り入れている場合が多いので、
この技能が役立つことがあるかもしれない。

◆回避([DEX×2]%)
 自分への一撃、飛び道具、待ち伏せなどを本格的に避ける技能である。
戦闘ラウンドで<回避>技能を行使するキャラクターは受け流しも行うことができるが、攻撃を行なうことはできない。
<回避>は他の技能と同じように、経験によって向上させることができる。
何かを<回避>しようとすることができるのは、その攻撃が目に見えた場合である。
銃弾に対しては、回避を試みることができるのは、1つのラウンドで自分に向かって射撃された第一発目だけである。

◆化学(1%)
 試料の成分、温度やエネルギー圧力が試料に与える影響、試料同士の化学反応など研究する学問である。
<化学>の技能によって、複雑な化合物を作り出したり、抽出することができるかもしれない。
例えば簡単な火薬、毒、ガス、酸などだが、そういうものを作り出したり抽出するためには、
時間が丸1日程度、そして適切な装置や化学薬品が必要だ。
この技能で、未知の物質を分析することもできるかもしれない。
その場合にも適切な装置や試薬が必要である。

◆鍵開け(1%)
この技能の使用者は、鍵を修理したり、鍵を作ったり、合い鍵や先のとがった道具を使って鍵を開けることができる。
特別に難しい鍵の場合には、成功率が低くなるかもしれない。
〈鍵開け〉の技能によって、車のエンジンをかけたり、図書館の窓をこじ開けたり、寄木細工を開けたりすることもできるし、普通の市販の警報装置のようなものなら通り抜けることができる。
しかし、複雑な金庫や金庫室などの特別厳重な警備装置に対しては、この技能ではどうすることもできない。
不正なことをこっそりと行うような状況に対処するためには、キーパーは〈鍵開け〉のロールにDEXあるいはPOWのロールを組み合わせるようにするといいだろう。

◆隠す(15%)
〈隠れる〉と名前は似ているが、これは物を人に見つからないようにうまく隠す技能であり、〈隠れる〉とは違う。
単数あるいは複数の物を、がれき、布、そのほかの視界を隔てる材料で覆ったり、幻影を出すような材料でごまかしたり、秘密のパネルとかニセの小部屋を作ったり、あるいはその物の特徴を隠すためにペンキを塗って見かけをごまかすことも含まれる。
 この技能によって、人間も人にわからないようにできることはできるのだが、ちょっと気をつけて見ればすぐにわかるようなごまかししかできない。
物が大きければ大きいほど、〈隠す〉のが飛躍的に難しくなる。
象よりも大きい物は、1人の人間が〈隠す〉ことはできない。グループで協力して隠すことはできるかもしれないが…。
〈隠れる〉の項も見て、〈隠す〉と比較してみるといい。

◆隠れる(10%)
〈隠す〉とは反対に、〈隠れる〉は姿を見つけられても仕方がないような位置にいる者が、見つからないようにする能力である。
この技能を使うのは、追跡を逃れる場合、あるいは監視やパトロールの目から逃れる場合だけにすべきである。
この技能の使用者は、一時的にその背後に身を潜めるための物、灌木、濃い影などを選ぶ。
そういう物は実際に存在するものでなければならない。
この技能を使えば、監視されている範囲内であっても、隠れながら移動することができる。
移動に成功するには、〈隠れる〉の技能値を半分にしたロールに成功しなければならない。

◆機械修理(20%)
 この技能をもつ探索者は、壊れた機械を修理したり、新しい機械を作ることができるが、初歩的な大工道具や配管仕事を試みることもできる。
特別な道具あるいは部品が必要になるだろう。
この技能でその時代の家庭にあるような普通の錠なら開けることが可能だが、それ以上の複雑なものは無理だ。
それには〈鍵開け〉の技能を使う。
〈機械修理〉は〈電気修理〉と組み合わせになっている技能で、自動車や航空機など複雑なものを修理するには、その両方の技能が必要だろう。

◆聞き耳(25%)
探索者が音を聞いて、その音の意味を解釈し理解する能力を表す。
その中には立ち聞きした会話、閉めたドア越しの聞き取りにくい会話、喫茶店の中でささやかれた言葉なども含まれる。
キーパーはこれから起こる遭遇の前兆としてこの技能を使ってもかまわない。
あなたの探索者は小枝の折れるあの音で目を覚ましたか?
拡大解釈をすれば、〈聞き耳〉の値が高いことは全般的に鋭い知覚を持つということかもしれない。

◆キック(25%)
 股ぐらやあごを直接狙ったキックであれ、空手スタイルの優雅な跳び蹴りであれ、
床に寝た形からの両足によるキックであれ、当たれば必ずダメージを与える強力な技能である。
〈キック〉は受け流しに使うこともできる技能であり、〈マーシャルアーツ〉によって、効果を高めることも可能だ。
また、特殊な状況の場合以外には、〈キック〉にはノック多少持っているとアウトのルールは適用されない。

◆クトゥルフ神話(0%)
〈クトゥルフ神話〉はほかの技能とは違う。
職業上の技能ポイントとしても、個人的な趣味の技能ポイントとしても、〈クトゥルフ神話〉のポイントを得ることはできない。
探索者シートのこの技能の脇にはチェックマークをつけるための四角がない。
この技能を使ったからといって、技能値が向上することはないからである。
 〈クトゥルフ神話〉の技能を獲得するのは、遭遇すると狂気になってしまうようなクトゥルフ神話怪物に遭遇した場合や、
宇宙の恐ろしい真の力を目にした場合や、禁断の書物そのほかのクトゥルフ神話の文書を読んだ場合などである。
ときには、何かの儀式を目撃したとか、何かの出来事に参加した場合にも、
キーパーは探索者に〈クトゥルフ神話〉のポイントを与えることにするかもしれないが、その点はキーパーにまかされている。
 〈クトゥルフ神話〉のポイントを多少持っていると役に立つことがあるかもしれない。
しかし、探索者はそう多くは欲しがらない。
というのは、99から探索者の〈クトゥルフ神話〉ポイントを引いた値が、探索者の最大正気度になるからである。
〈クトゥルフ神話〉のポイントが多くなると、その分最大正気度ポイントを減少させてしまい、探索者は精神が傷つきやすくなってしまうのである。
これについての詳細は86ページからの"正気と狂気"を参照されたい。
 〈クトゥルフ神話〉の技能が役に立つのは、例えば次のような場合である。
クトゥルフ神話のモンスターの痕跡あるいはそのほかの証拠を見つけた探索者は、
D100でこの技能に成功すれば、その存在が何であるかがわかったり、
どんな行動をとるか推論できたり、あるいはその存在が持っているかもしれない特質を推論できる。
また、この技能成功することによって、クトゥルフ神話に関する何かの事実を思い出したり、
誰かが呪文をかけているのを見てその呪文が何であるかわかったり、
ある特定のクトゥルフ神話の本の中にある特定の呪文や情報が載っているはずだということを思い出したりする。
あるいは、そのほかの何か仕事を遂行することができる。
 クトゥルフ神話の完全な知識を持つ人間はいない。
たとえ〈クトゥルフ神話〉技能値が99%の者でも、完全な知識は持っていない。
グレート・オールド・ワン持っていないと言っていいだろう。
グレート・オールド・ワンの〈クトゥルフ神話〉の技能値が100%だということは、
単に人間に比べて少し高いというだけのことで、クトゥルフ神話の謎を全部知っているということではないのだ。
外なる神たちは全部知っているかもしれない。もっとも彼らがそんなことを考えることがあればの話だが・・・・・・。
無限というものに対処できるのは神だけなのである。
クトゥルフ神話の非情な暗黒は永遠のかなたへと広がっている。
クトゥルフ神話の謎をマスターしたと思ったとすれば、それは一時的なことであり、局部的なことであり、幻想にすぎないのである。

◆組みつき(25%)
 〈組み付き〉は特殊な素手の技能である。相手を傷つけることなしに相手の自由を奪いたい場合によく使われる。
〈組み付き〉の攻撃は、対象による〈組み付き〉あるいはそのほかの技能によって、受け流しされてしまうこともある。
ただし、受け流しができるのは攻撃の最初の〈組み付き〉だけである。
 最初のラウンドに〈組み付き〉の攻撃が成功して、しかも受け流しされなかった場合、攻撃者は対象をつかまえたことになり、そのあとの行動には次のようないくつかのオプションがある。

■抵抗表によるロールで攻撃者のSTRが対象のSTRに勝つことにより、相手をしっかりと押さえ込んで動けなくする。
 成功すれば、その状態は攻撃者が次に別のアクションを起こすまで、いつまでも続く。
■対象を倒す。このオプションを選んだ場合には、自動的に成功する。
■最初のラウンドあるいはあとのラウンドに、対象をノックアウトする。67ページの"ノックアウト"のルール参照。
■対象の武器を取り上げる。探索者が2ラウンド続けて〈組み付き〉に成功すれば、
 最初のラウンドで接近戦攻撃をされないために対象を〈組み付き〉しておいて、
 次のラウンドで武器を取り上げたり、武器となる腕を押さえつけることができる。
■対象を肉体的に傷つける。
 その場合、相手はすでに〈組み付き〉によって押えられている状態でなければならない。
 その上で、そのラウンド、あるいはあとのラウンドでさらに2回目の〈組み付き〉に成功しなければならない。
 成功すれば、相手は耐久力から[1D6+攻撃者のダメージ・ボーナス]を失う。
 その後の各ラウンドで相手に傷を与え続けるには、各ラウンドで再び〈組み付き〉に成功しなければならない。
 与えるダメージは同じ計算式である。
■対象の首を締める。
 首を締めると宣言したラウンドから、対象は、”溺れ、窒息”のルール(62ページ)にしたがって窒息していく。
 これは次以降のラウンドでも続き、攻撃者はこれ以上〈組み付き〉のロールを行う必要はない。

 上に挙げたオプションの最後の2つの〈組み付き〉の場合には、
どちらも犠牲者が攻撃者の手から逃れるための方法は抵抗表に従ったSTR対STRの競争に勝つこと以外にはない。
攻撃者が2人いる場合は、2人のSTRを合計する。

◆芸術(5%)
 歌、いずれか1種類の楽器、絵画、料理などの専門分野に分かれている。
すなわち文学以外の芸術で、創造的な人間が生涯をかけて修練にはげむような芸術である。
この技能に成功すれば、その作品あるいはパフォーマンスは人々に喜ばれ、満足を与える。
失敗すれば、音をはずしてしまったり、何の印象も与えられなかったということになる。
ラヴクラフトの世界の芸術家達は、伝統的な芸術にたずさわっている者たちばかりだが、
キーパーは「芸術」という言葉をもっと広い意味に受け取ってもかまわない。
どこからどこまでが〈芸術〉で、どこからが〈制作〉になるのかは、キーパーによって違うだろう
 探索者シートにはこの技能の中身を書き記すための、空いたスペースがある。
単に芸術というのではなく、プレイヤーは芸術の形や方法も指定しなければならない。
例えば、オペラ歌手とか油絵描きというぐあいにである。

◆経理(10%)
 この技能によって経理のやり方がわかり、会社あるいは個人の財政的な状態が理解できる。
帳簿を調べることにより、不正をしている雇用人を見つけたり、資金が吸い上げられているのを発見したり、
ワイロや口止め料を払っている事実を突き止めたり、実際の財政状態が本人の主張よりも悪いか、良いかなどを知ることができる。
古い会計書類に目を通すことにより、過去においてのどのように金を儲けてきたか、あるいは失ってきたかがわかる(穀物、奴隷売買、ウイスキー密売など)。
また、誰に対して、どんな理由で支払いがされたかもわかる。

◆拳銃(20%)
 ピストルに似たどの火器でも1発ずつ射撃する場合にこの技能を使う。
現代のマシンピストル(MAC11、ウージーなど)の連射の場合には、〈サブマシンガン〉の技能を使わなければならない。
1ラウンドに射撃できる回数は、武器の装填機構、再び対象を捕らえるのに必要な時間によって違ってくる。
 キーパーのオプションとして、黒色火薬ライフルを使う場合、それを正しく装填して射撃させるためには、
〈ライフル〉技能のほかに〈歴史〉技能も必要であることにしてもかまわない。

◆考古学(1%)
 この技能によって、過去の文化の遺産であるアーティファクトからその制作年代の鑑定や特定ができるし、ニセ物を識別もできる。
この技能を用いてある場所を完全に調べることにより、その廃墟を残した者の目的や生活の仕方を推理できる。
その場合には〈人類学〉の技能も助けになることだろう。
考古学の技能をを持つ者は、死滅した言語で書かれたものをみてそれを識別することができる。

◆こぶし/パンチ(50%)
文字どおりの技能である。
握りこぶし、空手チョップ、大振りのパンチ、乱暴な平手打ちなどが含まれ、
また、これに〈マーシャルアーツ〉が加わると威力が大きくなる。
この技能を用いて、〈キック〉と〈頭突き〉を受け流すことができる。
この技能にはノックアウト攻撃のルールが適用される。

◆コンピューター(1%)
 パーソナルコンピューターを使う場合や普通の市販のソフトウェアを使う場合には、この技能は必要ない。
パーソナルコンピューターであっても、システムに対して特別な操作をするような場合には、この技能が必要になるだろう。
〈コンピューター〉は現代の技能である。
この技能によって、探索者はいろいろなコンピューター言語で目的のプログラムを作ることができる。
新しいプログラムを書くだけでなく、わかりにくいデータの復旧や分析をしたり、保護されているシステムに入り込んだり、
複雑なネットワークを検索したり、進入、不正手段、ウイルスなどを検知したり悪用したりすることもできる。
 この技能を使う場合には、使うたびに少なくとも半日の時間がかかり、何回もロールに成功しなければならないだろう。
キーパーは実際の必要性と結果を判断しなければならない。
そして〈コンピューター〉のロールは、時にはプレイヤーに知らせずに行わなければならないかもしれない。
いったんコンピューター・ネットワークの中に入ることができたら、〈図書館〉を使うといいだろう。

◆サブマシンガン(15%)
 マシンピストルやサブマシンガンで射撃する場合に使う技能である。
スコルピオンのような現代のマシンピストルはあまりにも小さいので、
そういうものを単射する場合には〈射撃〉の技能を使うべきだろう。
なお、1880年代にはサブマシンガンは存在しない。

◆忍び歩き(10%)
 人に気づかれずに、そっと移動する技能である。
〈隠れる〉と組み合わせて使う場合は、探索者はD100ロールを1回だけして、その結果を自分の〈隠れる〉と〈忍び歩き〉の両方の技能値に照らし合わせる。
この組み合わせロールは、音を立てずに動かなければならない場合に使う。
〈隠れる〉の説明のところも参照されたい。

◆写真術(10%)
 静止した写真にも、ムービーにも適用される技能である。
この技能を使えば、はっきりとした写真を撮ることができ、それをうまく現像することができる。
また、半分隠れたようになっている細部をはっきりとさせることができるかもしれない。
技能に失敗したということは、ピンボケだったり撮りたかった物が撮れていなかったということだ。
現代では、この技能は。ビデオ・カメラ、ビデオ再生装置、デジタル写真にも適用される。

◆重機械操作(1%)
 戦車、掘削機、蒸気シャベル、大型の建設機械などを操作するのに必要な技能である。
この技能をもっていれば、特別に難しい操作や危険な操作の場合、あるいは危険な条件下での操作の場合でないかぎり、技能ロールをする必要はない。
いつもと全然違う種類の機械を用いる場合、そして遭遇する状況が慣れていない状況だった場合には、キーパーの意志で通常の技能値より低くしてもかまわない。
例えば、ブルドーザーを動かすことには慣れている者でも、船のエンジン・ルームで蒸気タービンを操作するのが上手とは限らないだろう。

◆乗馬(5%)
 乗用馬あるいはロバあるいはラバに乗る場合を想定した技能である。
ラクダに乗る場合も、成功率を低くして適用することができるだろう。
また、この技能で乗用の動物に関する基本的な世話の仕方や乗るための道具の知識も得られ、馬を疾走させる方法や地形の悪い場所でどう取り扱ったらよいかもわかる。
 乗用馬がいきなり後脚で立ったり、つまずくなど、思いがけない行為をしたとき、
探索者が落ちないで乗っていられる成功率は、その探索者の〈乗馬〉の技能値と同じ値である。
探索者が乗っていた馬(ロバ、ラバ)から落ちた場合、その理由が馬がつぶれたり、倒れたり、死んだせいであるにしろ、
〈乗馬〉ロールに失敗したせいであるにしろ、探索者は1D6ポイントの耐久力を失う。
しかし、〈跳躍〉ロールに成功すれば、そのうち1D6ポイントを軽減できる。
 動物に乗っているときに武器を効果的に振るうためには、その武器の技能と〈乗馬〉技能どちらも50%より高くなければならない。
キーパーは状況に応じて数値を修正してもかまわない。

◆ショットガン(30%)
 この技能は散弾銃ならどんな銃にも使える技能である。
散弾は広がる形で飛んでいくので、射程が遠くなっても命中率は変わらない。
しかし与えるダメージは変わる。射程10~20mでは、お互いにすぐ近くにいる1D3人の対象が1発分の弾で撃たれる。
20~50mでは、すぐ近くにいる1D6人が1発分の弾で撃たれる。
1発分の弾で一緒に撃たれるほど近くにいたかどうかは、キーパーが決める。
 二連式のショットガンは、目立たなくするためと持ち運びに便利なように銃身を切り落とすことができる。
アメリカでは銃身を切り落とした銃は1920年代までには違法なものとなっていた。
 ライフル・スラッグを撃つ場合には、〈ライフル〉の技能を使う。
キーパーのオプションとして、〈ライフル〉と〈ショットガン〉の技能を組み合わせて1つの技能にしてもかまわない。
散弾とスラッグという違いがあるだけにするのである。

◆信用(15%)
 狭い意味で言えば、探索者がどのくらい豊かで自信に満ちて見えるかということである。
人の好意を当てにしなければならないときや、銀行や会社から金を借りたいようなときに使うことのできる技能だ。
また厳しいチェックを通り抜けなければならない場合や、
信用状のようなものが必要なのにハッタリで押し通さなければならないような場合にも使う。
 例えばエドワード朝時代(20世紀初頭)のイギリスのような小さな町あるいは狭い社会の中では、
お互いがみんな顔見知りである。そんな所では、〈信用〉は経済的な価値だけでなく、人格的な評価の指標ともなるものだ。
スキャンダルやその人物の行いが〈信用〉値を大きく増減する原因になり、
金をたくさんためたとか、金を失ってしまったなどということは、〈信用〉値にはたいした変化を与えないか、全然影響を与えない場合さえある。
キーパーは場合に応じて、キャラクターにそのような区別をはっきりさせるようにするといいだろう。

◆心理学(5%)
すべての人によく知られている技能である。
人間を観察し、その人間の動機や性格などを探るための技能だ 。
一般的には、この技能のロールは技能の使用者ではなく、キーパーが行い、結果は秘密にしておく。
キーパーは技能の使用者がこの技能によって得る情報だけを伝える。
情報が真実である場合も、うその情報である場合もあるだろうが、キーパーはそのまま伝える。
プレイヤーはこの技能で相手の巧みなごまかしを見破ることができると期待してはならない。
それができるのは、相手の自信をぐらつかせることができた場合だけである。

◆人類学(1%)
 この技能によって、人の振る舞いを見ればその人間の暮らし方がわかる。
この技能を使う者が、違う文化圏へ行ってその文化を内部からしばらくの間観察するとか、絶滅してしまった文化に関する正確な記録を調べるなどすれば、不十分な証拠しかなくてもその文化のあり方やその文化の心をしることができる。
ある文化について1ヶ月あまりも研究すれば、その文化がどのように機能しているか理解し始める。
この技能を〈心理学〉技能と組み合わせて使えば、その文化圏の者の行動や信念を予測することができる。
もちろん、実際に存在する(存在した)文化に関してのみ有効である。

◆水泳(25%)
 水やそのほかの液体の中で、浮かび、かつ移動する技能である。
〈水泳〉のロールが必要になるのは危機や危険のあるときだけで、そうであるかどうかはキーパーが決める。
〈水泳〉のロールに失敗すると、”溺れ、窒息”のルールに従って窒息していく。
溺れている者は、各ラウンドに〈水泳〉のロールを試みることができる。成功すれば、水面に出て呼吸することができる。
2回目の成功で、水の中を移動し始めることができる。
2回目の〈水泳〉ロールに失敗すると、再び溺れ始める。

◆製作(5%)
 〈製作〉は特定の実用的な品物を作ったり修理したり、あるいは良い効果を作り出したりする技能である。
これには手先が器用であること、あるいは芸術的な応用力が必要だろう。
〈製作〉をなりわいとする者(職人)は、単純肉体労働よりも高い収入を得られるのが普通だが、頭脳的な専門職ほどではない。
 職人にはさまざまな種類がある。
家のペンキ塗り職人からライオンの調教師から金庫破りまである。
探索者シートにはどういう種類の職人であるのか明記しておかなければならない。
〈芸術〉の場合と同様で、例えば〈製作〉(靴の修繕)とか〈製作〉(理髪)とか、あるいは〈製作〉(真空管を作る)というように書き込む。
 何かを作ったり修理したりすることには、普通、道具と時間が必要であるが、必要な場合には、キーパーが決める。
ロールの結果が特別に低かった場合には、その職人は特別に素晴らしいものを作ったということである。
ロールに失敗した場合は、作った品物を最初に使ったときに壊れてしまったとか、
全体の中に組み込もうとしたらうまくはまらなかったということかもしれない。
〈製作〉のロールに成功することによってある品物に関する情報が得られるということもある。
例えば、その品物がどこでいつ制作されたのか、その品物の来歴の一部や技法、誰が作ったのかわかるといったようなことである。

◆精神分析(1%)
 この技能を使う者は、一時的狂気あるいは不定の狂気に陥った者を1日くらいの間なら正気にしておくことができる。
その期間を超えても狂気が続く場合、技能の効果は切れ、あとは時間が癒してくれるのを待つしかない。
この緊急の処置は、施すのに最高で1時間かかる。
また、この処置を施すことができるのは1つの件について1回だけである。
技能を持つ者が何人もいたとしても、誰かが1回だけ施すことができる。

■〈精神分析〉で手当をされると、不定の狂気に陥っている者の正気度ポイントが上がる。85ページの"正気度"の章を参照されたい。
■〈精神分析〉の技能では相手の正気度ポイントを、その相手の[POW×5]より上に上げることはできない。
 また[99-〈クトゥルフ神話〉のポイント]より上にもならない。

 この技能は情緒的な面の治療法全般をさしていて、単にフロイト的な療法だけをさしているのではない。
1890年代には、正式な精神療法というものはほとんど知られていなかったが、ある意味での精神療法のようなものは、人類の歴史と同じくらい古くからあった。
1920年代になってさえも、精神療法はインチキ臭いものと見られがちだった。
そのころには、精神分析者とか精神病学者たちを称する一般的な言葉は「エイリアニスト」というのもだった。
エイリアン(異質の者)を扱う学者ということだろうか。
現代ではいろいろな療法を組み合わせた療法が発展し、この技能は「精神科治療学」という名前で呼んだ方がいいかもしれない。

◆生物学(1%)
 生き物に関する科学である。植物学、細胞学、エコロジー、遺伝学、組織学、微生物学、生理学、動物学などがある。
探索者の理解度は、プレイする時代での理解度を表す。この技能を使うことによって、
恐ろしいクトゥルフ神話の細菌に対するワクチンを開発するというようなこともできるかもしれないし、
密林の植物の幻覚成分を分離することができるかもしれない。

◆説得(15%)
 対象に特定の考えや概念や信念をしっかりと納得させたいときに使う技能である(<言いくるめ>と同じように、<説得>も真実や事実には関係なく用いることができる)。
しかし、<言いくるめ>と違うところは、<説得>の項かは無限的・潜行的に続くということである。
ときには何年も続くかもしれない。何かの出来事や別の<説得>のせいで相手が別の方向に考えを向けるまで続くのだ。
<説得>を成功させて適応させるためには、1時間から数日の時間がかかる。
どのくらいの時間がかかるかは、説得しようとする内容による。

◆操縦(1%)
 基本的には<運転>と同じものだが、これは空を飛ぶものまたは水の上にうかぶものを操縦する技能である。
探索者がどのような種類のものを<操縦>する技能を持っているのか、
探索者シートに書き込むスペースがある。どのような種類のものであれ、すべて1%からスタートする。

■<航空機の操縦>の技能は時代によって違う。
<ボートの操縦>の技能は時代によって変わることはないし、帆船とモーターボートとの区別もしない。
悪天候、視界不良、ダメージなどの修正条件は、航空機の場合にも船の場合にも同じように適用される。
■この技能の技能値が15%未満の者は、苦境に陥る可能性がある。
そういう者は視界良好な穏やかな日であればロールなしで操縦することができるが、
そういう場合でも、離陸、着陸、ドック入れ、帆の張り替え、嵐や計器操縦や視界不良そのほかの難しい条件がある場合である。

<航空機の操縦>:下記に名前に示されているような普通のクラスの航空機のことが理解でき、操縦能力もどんどん高くなっていく。
着陸の際には、どんなに良い条件の下であっても<操縦>ロールをしなければならない。
ただし条件が良い場合には、成功率は2倍になる。難しい条件の下ではパイロットの通常の成功率で着陸する。
ロールに失敗したということはただ航空機に何らかのダメージを受けたというだけかもしれない。
次の離陸の前に修理しておかなければならないが、パイロットや乗客の方は普通に歩いて帰れる。
あるいはひどい傷を負わずに済むためには<幸運>ロールが必要かもしれない。
結果が「00」であった場合は、ひどい事故になってしまったということで、少なくともパイロットは死亡する。

■違う種類の航空機の操縦は別の技能として数えなければならなくなるので、
それぞれ別々にリストしておかなければならない。あるいはキーパーが適切に判断してもかまわない。
1890年代には、<気球の操縦>だけしかない。
1920年代には<気球/飛行船/民間プロペラ機の操縦>だけしかない。
現代には<民間プロペラ機の操縦>、<民間ジェット機の操縦。、<定期旅客機の操縦>、<ジェット戦闘機のの操縦>、<ヘリコプターの操縦>がある。

<ボートの操縦>:小さなモーターボートあるいは帆船が、風の中、嵐の中、潮流の中でどのようになるかが理解でき、
波や風の動きを読んで隠れた障害物や近づいてくる嵐を察知することができる。
風があれば、初心者にとって、手こぎボートを岸壁につけるだけでも難しい仕事だろう。

◆地質学(1%)
 岩の層を見てだいたいの年代を知ったり、化石のタイプを識別したり、鉱物や結晶をほかと区別したり
掘削や採鉱に適した場所を指摘したり、土質を鑑定したり、火山の噴火や地震や雪崩などの自然現象を予測するための技能である。
シャーロック・ホームズはロンドン周辺の土のエキスパートで、人のブーツについている泥を調べて、
その人間の行動を言い当てることができた。

◆跳躍(25%)
 この技能に成功することにより、探索者は垂直方向に飛び上がり、自分の身長分高いところにあるものをつかむことができ、
また身長分の距離を垂直方向に安全に飛び降りることができる。
また水平方向にも、助走なしで自分の身長分の距離を飛ぶことができるし、助走してから飛べば、身長の2倍の距離を飛ぶことができる。
高いところから落ちた場合に、落下による負傷に備えて<跳躍>ロールに成功すれば、落下で失う耐久力から1D6ポイントを差し引くことができる。

◆追跡(10%)
 この技能を使って、探索者は柔らかい土か葉っぱの上を通った人や車や動物の跡をたどっていくことができる。
足跡がついてから時間が経って追跡する場合には1日経過するごとに成功率を10%引く、
その間に雨が降れば、追跡は不可能になるだろう、生き物を、水の上、コンクリートの上、あるいは夜間に追跡することはできない。
ただし、特殊な状況の場合はこのかぎりではない。

◆頭突き(10%)
 酒場でのけんかにはなくてはならない素手の技能である。
<頭突き>は相手の腹に当てることが多いが、そのほか、こめかみ、脳天、鼻、あご、後頭部などに当てることもある。
混み合った中でも行なうことのできる技能だ。<頭突き>は驚くほど素早く行える攻撃であり、相手の戦意を失わせるほど強烈なものでもある。
<頭突き>で相手の攻撃を受け流すことはできないが、<マーシャルアーツ>で頭突きの効果を高めることができる。この技能にはノックアウトのルールが適用される。

◆電気修理(10%)
 この技能を使うことによって、探索者は電気装置(例えば自動点火装置、電動モーター、ヒューズボックス、警報器など)を修理したり再構成したりすることができる。
現代ではこの技能は<電子工学>とはほとんど関係がない。
電気器具を修理するためには、そのための部品とか道具が必要かもしれない。
1920年代においては、就職のためにこの技能と<機械修理>技能の組み合わせが必要になるかもしれない。

◆電子工学(1%)
 電子的な装置の故障点検や修理のための技能である。
また、簡単な電子的装置を作ることもできる。これは現代だけの技能である。
1890年代と1920年代においては、電子工学的な開発のためには<物理学>と<電気修理>を使う。
<電子工学>を使った仕事のための部品は、<電気修理>の場合とは違って、間に合わせのものでは駄目である。
部品はそれぞれ特定の目的のために精密にデザインされて作られているからだ。
正しいマイクロチップや回路基礎がなければ、技能だけ持っていても何の役にも立たない。

◆天文学(1%)
 この技能を使うことによって、ある特定の日たるいは特定の夜あるいは特定の時間に、どんな恒星あるいは惑星が頭上にあるかわかる、
たとえわからなくても、それを見つける方法はわかる。また、日蝕や流星群がいつ起こるかわかり、主要な星の名前もわかる。
また、別の世界に知られている範囲のことはある程度知っている。
銀河系の存在や構成なども知っている。専門家であれば、軌道を計算したり、星のライフ・サイクルについて議論したりすることもできる。
時代が現代であれば、赤外線天文学や超長基線電波干渉計などの専門家であることもありうる。

◆投擲(25%)
 手元にあるものを投げて対象に当てたいとき、あるいは投げた物の適切な部分を対象に当てたいとき(例えばナイフや斧を投げて、刃の部分が相手に当たるようにしたいとき)、
<投擲>の技能を使う。手のひらサイズのものでバランスの適度なものであれば、
その物のSIZを超えた探索者のSTR1ポイントにつき、3m投げることができる。
ただし、投げるようにデザインされている物の場合には、6mまで投げることができるし、バウンドしてもっと遠くまでいくかもしれない。
キーパーは実際のものに応じて、数値を修正しなければならない。
なぜなら、例えば野球の弾は投げ槍とは違う飛び方をするからだ。
 <投擲>のロールに失敗した場合には、投げた物は対象からランダムに離れた場所に着地する。
その際、実際のロール結果と、成功するために必要とされる数値の最大値とを比べ、投げた物が目標から何mの近さまで届いていたと見なしていいのかを決める。

◆登攀(40%)
 高い所へ上る場合、3mから10mごとにこの技能に成功しなければならない。
何mにするかは、登攀の難しさの度合いによってキーパーが決める。
登る場所の表面の状態、風、昼間か夜か、雨などの条件を考慮に入れて決めるのである。
 探索者が物音を立てずに登る必要がある場合には、
D100ロールの結果を<登攀>と<忍び歩き>の両方に照らし合わせてみる。
<登攀>には成功したが<忍び歩き>には失敗したという場合は、うまく登れたけれども物音を立ててしまったということである。
<登攀>に失敗して<忍び歩き>に成功した場合には、落ちたけれども大した音は立てなかったということになる。

◆図書館(25%)
 これはいろいろな意味でこのゲームでもっとも重要な技能である。
<図書館>の技能によって、探索者は図書館にある所定の本、新聞、参考資料、書類などを見つけることができる。
ただしそれらがそこにあった場合に限る。
この技能は1回試みるごとに、連続した4時間がかかる。したがって、探索者が1日に3回以上この技能を使うことはほとんどない。
 この技能によって、鍵のかかった本箱や希覯本の特別なコレクションなどのありかたを察することもできるが、それらの本に実際に到達するためには、
<言いくるめ>、<信用>、<説得>、<値切り>の技能、あるいはワイロ、あるいは特別な資格証明書などが必要になるかもしれない。

◆ナビゲート(10%)
 この技能を使う者は、嵐の中であれ、よく晴れた日であれ、昼間であれ、夜であれ、進路を定めて進んでいくことができる。
この技能値が高い者は、天文学上の表や図、機器、人工衛星による位置測定などに慣れている。
ただし、そういう物が時代に存在する場合に限る。このような技能のロール結果は秘密にしておくべきである。
探索者が自分で試みてから結果がわかる問題だからだ。
この技能はまた、ある地域の距離を測ったり地図を書いたりするのにも使うことができる。
面積が何平方kmもある島でも、1つの部屋の内部でもかまわない。

◆値切り(5%)
 納得できる値段で物を買うための技能である。
この技能を使うものは、まず自分がその物をいくらで買いたいか言わなければならない。
その値段と要求された値段との第2%ごとに、<値切り>技能値から1%を差し引く。
探索者がどんなにうまく<値切り>したとしても、売り手は自分が損をするまで値引きすることはないだろう。
キーパーはこっそりと最低値を決めておくのが普通である。
例:ハーベイ・ウォルターズはドイツでショットガンを1丁買うことにした。近くの古い廃墟で消息を絶った。
召使のクルトの行方を調べに行くのに持って行こうと思ったのである(実はクルトは<忍び歩き>のロールに失敗して、廃墟の住人にと捕らえられてしまったのだ)。
銃砲店の年取った店主は、そのショットガンは100ドルだという。
しかしハーベイには限られた予算しかない。ハーベイは店主に70ドルでどうかと持ちかけ、プレイヤーはD100をロールした。
ハーベイの<値切り>は20%だが、通常の価格より30%低い価格で欲しがっているわけだから、成功率は15%低くなる。
つまりたった5%の成功率しかないということだ。プレイヤーが出した目は「22」だった。失敗である。
次にハーベイは80ドルではどうかと聞いた。成功率は10%に上がった。
ロールの結果は「2」で、今度はうまくいった。

 実際に物を買う場合でなくても、価値を交換するような場合にはこの技能を使うことができる。
この<値切り>技能を、<信用>や<言いくるめ>あるいは<説得>の技能との"組み合わせ"ロール"(149ページ)にすれば、値切るのに大いに役立つかもしれない。
 単純な<値切り>はほんの数分で終わるが、複雑な契約などになると、
何週間もかかることがある。そんな契約の場合には<値切り>と<法律>を組み合わせるといいかもしれない。

◆博物学(10%)
 もともとはある環境のもとでの植物および動物の生活を研究する学問だった。
19世紀になるまでは、この学問は数多くの研究分野に分かれていた。
ここでは1つのゲーム技能として、農民、漁民、熱心なアマチュア、趣味人などの持っている知識や個人的な観察結果などを表す技能になっている。
この技能によって、一般的な意味での動植物の種が識別できたり、動植物の習慣や環境がわかる。
また、その種にとって何が重要であるかを推測することもできる。
博物学の知識は正確なものである場合も不正確なものである場合もある。
それは好みとか、判断力とか、伝統とか、熱心さの領域である。
郡農産品評会で馬肉の品評をするとか、チョウのコレクションを見て本当に内容的に素晴らしいコレクションなのか、
あるいは展示の仕方が素晴らしいだけなのか判断することができる。

◆物理学(1%)
 圧力、物体、運動、磁気、電気、光学、放射能、およびそれに関した現象に対する理論的な理解力を与えてくれる技能である。
また、アイデアをテストするための実験装置などを創る能力も与えてくれる。
知識の程度は、時代によって違う。実用的な機械(例えば自動車など)は物理学者の領域ではないが、実験的な機械ならその領域に入るかもしれない。
その場合は<電子工学>や<機械修理>の技能と共にこの技能が使われることだろう。

◆変装(1%)
 姿態、衣装、声などを変えて、別の人物あるいは別の種類の人間に見せかける技能である。
舞台化粧を施せばもっと効果的かもしれない、証明が暗ければもちろん助けになるだろう。
自分とは性別の違う人物、年齢や体の大きさの違う人物、話す言語の違う人物に変装したときには、
看破される可能性が高くなる。ある種類の人間というのではなく、ある特定の人物に変装する場合には、
<変装>の技能値を半分にしなければならない。ある特定の人物を装って看破されないためには、遠くから見らるだけにした方が無難である。
 変装している者が見た者が<目星>あるいは<心理学>のロールに成功すれば、疑いを持つかもしれない。
その場合、変装しているキャラクターのプレイヤーが<言いくるめ>ロールに成功すれば、どちらの技能の成功率も10%低くなる。
 ダイス・ロールの結果を説明することはキーパーの役割であるが、D100の結果が小さい目で<変装>に成功した場合には、
変装したキャラクターに相手を納得させるような命令を出す能力、あるいは親しい者たちからさえ見破られない能力を与えてもいいだろう。
<変装>のロールに失敗した場合は、装ってる人物には合わない振る舞いや表情をしたのに気づかれてしまうことになる。
90から100といった大きい目で失敗した場合には、相手にこう叫ばれてしまうだろう。
「この人、怪しいよ!早く調べて!」

◆法律(5%)
 関係のある法律、判例、法的工作手段、裁判手続きなどの知識を探索者がどのくらい持っているかを表す技能である。
本職の弁護士になればそういうことに堪能になるし、行政官庁へ顔も利くようになるだろうが、
弁護士になるには長い年月にわたって厳しい適用が要求される。また<信用>値が高いことが必須条件となる。
弁護士という職業ほど、探索者にありがちな、妙な振る舞いによって傷がついてしまう職業はないだろう。
アメリカにおいては、弁護士を開業するには特定の州の州法曹協会(State Bar)による認可が必要である。
外国にいる場合には、成功率が半分になる。ただし、探索者がその国の法律を[30-INT]か月間学んだ場合には、半分にしなくてもかまわない。

◆ほかの言語(1%)
 どの言語か指定する。探索者が知ることのできる言語の数には制限はない。
この技能は母国語以外の言語の理解/読み/書き/会話の能力を表している。古代語や道の言語(例えばアクロ語など)は選ぶべきではないが、
地球上の普通の言語であれば何語でもかまわない。
キーパーによっては、1つの書類や1つのスピーチの中に、別々の複雑なポイントがいくつか存在しているということで、
そのポイントごとにこの技能ロールを何回も要求してもよい。
また、キーパーはその言語の中に古代的な話し方とか文字があったとして、一時的に技能値を下げさせてもかまわない。
通常の場合には、本1冊全部を理解するために、技能ロールを1回行なうだけでいい。
 探索者がある言語に関して<ほかの言語>のポイントを数ポイント持っていた場合には、
その言語による会話を聞けば、いつもだいたいの意味は取れる。
母国でない言語を自分の母国語であるかのようなふりをするためには、
その言語について[INT×5]以上のポイントを持ってなければならない。
探索者シートには母国語以外の言語を書き込むためのスペースがある。
 現在存在する人間の言語を識別するためには、<考古学>ロールを使う。
人間以外の異界の言語を識別するためには、<クトゥルフ神話>あるいは場合によっては<オカルト>ロールを使う。

◆母国語(EDU×5%)
 どの言語かしていする。生まれたばかりのころや幼児時代には、たいていの人間は1つの言語しか使わない。
アメリカのほとんどの人間の言語は英語の何らかの方言だろう。プレイヤーが探索者のためにある言語を<母国語>として選んだら、
その言語の技能値は自動的に[EDU×5]から出発する。それ以後は探索者はそのパーセント値あるいはそれ以上で、
その言語の理解/読み/書き/会話を行なうことになる。
 母国語を使うのに、普通は技能ロールは必要ない。
書類が極端に読みにくいものであった場合、あるいは古い方言で書かれていたような場合は、
キーパーはその状況での成功率を低くしてもかまわない。
 作家の<母国語>の技能値は高いのが普通だ。

◆マーシャルアーツ(1%)
 <こぶし/パンチ>、<頭突き>、<キック>、<組みつき>で攻撃するときに、この技能を組み合わせて使うことができる。
攻撃ロールがこの技能を組み合わせて使うことができる。
攻撃ロールが攻撃者の<マーシャルアーツ>の値以下だった場合には、その攻撃によるダメージが2倍になる。
したがって、<こぶし/パンチ>が引き起こすダメージは2D3ポイント・プラス通常ダメージ・ボーナスということになる。
攻撃が命中すれば<マーシャルアーツ>はダメージを2倍にするが、ダメージ・ボーナスは2倍にならない。

■<マーシャルアーツ>の技能を持つ者は、どの攻撃を受け流すことにするか、その攻撃の直前になってから選ぶことができ、
ラウンドの初めに受け流しの宣言をする必要はない。
■<マーシャルアーツ>の技能を使っても、弾丸などの飛び道具を受け流すことはできない。

 本ゲームで述べる<マーシャルアーツ>とは以下のものである、柔道、合気術、合気道、カポエラ、空手、サバト、テコンドー、白鶴拳、七星螳螂拳など。
上記の中から1つ選ぶか、あるいは新しいものを発明してもかまわない。古い時代にはこれらの技能の各派は技を門外不出として秘密を守ってきたため、
マーシャルアーツは現代になるまでその文化の圏外にはほとんど知られていなかった。

◆マシンガン(15%)
 2脚以上の安定した銃架から連射するものであれば、どんな銃でもこの技能を使う。
2脚架から単発で射撃する場合には、<ライフル>の技能の方が高ければ、<マシンガン>の代わりにそちらの方を使う。
現代ではアサルト・ライフルとサブマシンガンと軽機関銃の違いはあまりにもわずかである。

◆目星(25%)
 この技能を使えば、秘密のドアや小部屋を見つけたり、隠れている侵入者に気づいたり、ひと目につかない手がかりを見つけたり、
色を塗り替えた車でもそれとわかったり、膨らんだポケットに気がついたりする。
ゲームの中で大変重要な技能である。

◆薬学(1%)
 この技能を使う者は、広い範囲の薬物を識別子、調合し、場合によっては投与することもできる。
自然の薬物でも人工的な薬物でもかまわない。
また、薬の副作用を理解し、その薬が望ましくない場合もわかる。
また毒物や解毒剤に関する実用的知識を持っていて、毒に侵された者に対して、<薬学>の技能を応急手当として使うことができる。
しかしこの技能では病気の診断をする能力は得られないし、薬を処方する資格も得られない。

◆ライフル(25%)
 この技能を使うものは、どんなタイプのライフルでも射撃できる。
すなわち、レバー・アクションでもボルト・アクションでもセミ・オートマチックでも同じである。
軍用のアサルト・ライフルで単発で射撃するとき、あるいは連射をする場合も、この技能を使う。
ショットガンでライフルド・スラッグを射撃する場合にもこの技能を使う。
 1ラウンドに射撃できる回数は、武器の装填機構、再び対象をとらえるのに必要な時間によって違ってくる。
 キーパーのオプションとして、黒色火薬ライフルを使う場合、それを正しく装填して射撃させるためには、
<ライフル>と<ショットガン>の技能を組み合わせて1つの技能にしてもかまわない。
散弾とスラッグという違いがあるだけにするのである。

◆歴史(20%)
 この技能を使用することによって、探索者はある国、都市、地域、人物が持っている意味をなにかと関連で思い出す。
特別にあいまいな事実を思い出さなければならない場合には、成功率は低くなる。
<歴史>ロールに成功すれば、昔は普通に見られたが今はほとんど知られなくなっている道具、技術、考えなどが識別できる。
最終更新:2024年07月03日 09:19