夏といえば、天神さん。
浴衣を着て下駄を履いて、保育園を通り越し、川沿いを阪神電車の東口駅近くまで歩いた。1キロくらいの道のりだったかと思うが、子供にしてみれば少々遠いと感じる距離だった。保育園までは自転車の後ろに乗せてもらっていたから、そこを通り過ぎてまだ先というのはなおさらそう感じさせた。
 今から思えば小規模なこじんまりとしたお祭りだったか、楽しみにしている夏の欠かせない行事だった。神社におまいりに行くというよりはむしろ、お祭りの雰囲気が好きでそれを堪能しに行っているようなもので、正直、お参りをした、という印象が残っていない。
 そう多くはない露店に目を奪われ、たいていは金魚すくいかヨーヨー釣りをした。リンゴ飴は着色がきついからという理由で買ってもらえなかった。金魚すくいはそんなにすくえないうちにすぐに紙が破れてしまったが、一匹だけ持って帰ることができた。口を縛った三角のビニール袋に赤く光る小さな金魚を一匹と藻を一本入れてもらって大切にうちまで連れ帰った。水道水のカルキを抜くため、天日で一日さらした水を金魚鉢に注ぎ、藻とともに金魚を解き放つ。悲しいかな、金魚は毎年たいてい数日後には腹を上にしていた。
 えべっさんの帰りと同様、うちにいる祖母たちへのお土産はたいていたこ焼きかベビーカステラだった気がする。


最終更新:2009年09月13日 20:34